卒婚とは、離婚届を提出しないまま、夫婦がお互いに必要以上に干渉せず、自由に生きることを指す言葉です。
卒婚しても法律上の離婚は成立しませんが、相手から、必要以上に干渉されず自由に生きられるというがあります。
ただし、法律上、扶養義務や相続権は残ります。また、別の人と交際したら不貞行為となり、慰謝料を請求される可能性があります。
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卒婚と離婚の違い
卒婚は離婚と似ている点がありますが、実際には以下の点で大きく異なります。
離婚届を提出しない
卒婚する場合、夫婦が「お互いに必要以上に干渉しないで自由に生きる」ことに合意するだけなので、離婚届を提出しません。
戸籍上は「夫婦」のままになります。
離婚の場合、役所へ離婚届を出して戸籍上も夫婦でなくなる点が、決定的な違いです。
扶養義務が残る
卒婚しても、夫婦の法的な義務に影響は及びません。
互いに扶養義務があります。
相手が、経済的に困窮したときなどには、卒婚していても助けなければなりません。
一方、離婚すると扶養義務がなくなるので、相手が経済的に困窮しても、
あるいは自分が困窮してもお互いに扶養する必要はありません。
相続権が認められる
卒婚しても、相続権に影響はありません。
配偶者として相手の資産を相続できますし、自分が死亡すると相手に相続されます。
相続させないためには遺言書を書いておかねばなりません。
ただし配偶者には遺留分があるので、すべての権利までは奪えません。
離婚するとお互いに相続権はなくなります。
別の人と交際すると不貞になる可能性がある
卒婚しても、法律上、当然に、夫婦関係が破綻するものではありません。
別の人と交際すると「不貞」になってしまう可能性があります。
卒婚のメリット
卒婚には、以下のようなメリットがあります。
お互いが自由に生活できる
卒婚すると、夫婦がお互いに必要以上に干渉しないので自由に生活できます。
趣味に時間を費やすのも自由ですし、相手に遠慮せず友人と会ったり旅行にでかけたりもできます。
面倒な手続きが不要
実際に離婚すると、離婚届を作成して役所へ届け出なければなりません。
名字が変わると免許証や銀行預金、クレジットカードなどの名義変更も必要で、離婚条件を取り決めて離婚協議書を作成する必要もあります。
卒婚であれば、こういった面倒な手続きがすべて不要で手間がかかりません。
相続や年金がそのまま
離婚すると、相手の財産を相続できませんし、遺族年金も受け取れなくなります。
卒婚であれば、相手が先に亡くなると家や預貯金などを相続できて、遺族年金も受け取れます。
相手が死亡した際の金銭面では、卒婚のメリットが大きくなるでしょう。なお、離婚時には、財産分与制度があります。
周囲に知らせずに済む
離婚すると、各種書類上も夫婦ではなくなり、職場など周囲の人に離婚した事実を知られる可能性があります。
卒婚であれば、各種書類上も夫婦として記入でき、周囲の人に卒婚したことを伝える必要もありません。
卒婚のデメリット
卒婚には以下のようなデメリットがあります。
生活費が二重にかかるケースがある
卒婚して夫婦が別居する場合、生活費が二重にかかります。
資産や収入の少ない夫婦が、別居の卒婚を選択すると、生活が苦しくなる可能性があります。
不貞になる可能性がある
卒婚しても、必ずしも夫婦関係が破綻したとはいえません。
他の異性と関係を持つと「不貞」となり、慰謝料を支払わなければならない可能性があります。
完全には相手から自由になれない
卒婚しても相手に対する扶養義務が残るので、完全に自由になれるわけではありません。
卒婚を選択すべきケースとは
夫婦がそれぞれ自立して生活できており、かつ十分な収入がある場合には卒婚を選択しやすいでしょう。
反対に、夫婦のいずれかに、食事や掃除などの家事の負担が偏っている状態のまま卒婚すると、トラブルになる可能性があります。
また、夫婦の収入が不足しているのに別居の卒婚を選択すると、生活に困窮するリスクがあるので要注意です。
卒婚の手順
実際に卒婚を進めたいときには、以下の手順で進めましょう。
1.卒婚の条件を話し合う
まずは相手との間で、卒婚の条件を話し合い、以下のような事項を取り決めましょう。
- 別居するか同居を継続するか
- 生活費の分担方法
- 同居の場合、共有部の掃除などの家事分担
- 他の異性との交際を認めるか
- 病気になったり介護が必要になったりしたときの対処方法
- 親戚との関わり方
2.家族の同意を得る
子どものいる方は、子どもに事情を伝えて卒婚に理解を得ておくとトラブルが生じにくくなります。
3.遺言書を作成する
卒婚しても相手に相続権が認められます。
遺産を渡したくない場合には、遺言書を作成しておきましょう。
ただし相手の遺留分を侵害すると、遺留分侵害額請求をされる可能性があるので、遺留分については最低限、相手に遺す内容にしておくと無難です。
4.書面化する
相手との間で卒婚の条件についてまとまったら、内容を書面化するようおすすめします。
後に、夫婦間のトラブルを防ぐことができますし、万が一、不貞などの問題が現実化したとき、書面があると解決方針を立てやすくなるからです。
なお書面を作成したからといって、法的に配偶者としての義務が免除されるわけではありません。
心配な方は、弁護士へ相談するとよいでしょう。
5.計画を実行する
卒婚の準備ができたら、計画を実行しましょう。
たとえば別居するなら引っ越しをしなければなりません。
同居のままなら、お互いに干渉しない生活を開始します。
大きな変化が起こらない限り、当面は卒婚状態で生活を継続していくことになります。
将来生活に変化が起こったとき
将来的に介護が必要になったときなど、生活に変化が起こったら、基本的に卒婚条件として取り決めたとおりに対応しましょう。
ただし取り決めた事項のみによって対応できない場合には、そのときの状況に応じた判断が必要となります。
迷ったときには弁護士へ相談してみましょう、
まとめ
卒婚にはメリットだけではなくリスクもあります。
離婚か卒婚か、どちらを選択すべきかについては、ご夫婦の状況や親族関係によっても変わってきます。
また卒婚をする際には、将来トラブルにならないよう、夫婦間で卒婚の条件について、十分な話し合いをすべきです。
夫婦関係を見直したくて卒婚を検討しているなら、まずは弁護士へ相談してみましょう。
将来の法的なリスクを抑えるためのアドバイスを受けられて、ベストな選択が可能となります。
Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること
・離婚か卒婚かという判断は非常に重く、簡単にできるものではありません。
弁護士にご相談いただくと、離婚、卒婚それぞれのメリット、デメリットについて具体的にアドバイスいたします。
・卒婚前に夫婦間で取り決めておくべき事柄について、具体的に弁護士にご相談いただけます。
・卒婚後、予想していない事態が発生し、話し合いがつかない場合には、早めに弁護士に相談しましょう。
対応方法について、具体的にアドバイスいたします。
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