コラム
公開 2021.09.22 更新 2021.10.05

離婚調停で離婚理由を上手に伝える方法

離婚調停で離婚理由を上手に伝える方法

離婚調停は、話合いの手続きのため、離婚訴訟において離婚が認められる理由(法定離婚事由)は必要ありません。
しかし、離婚調停を有利に進めるためには、調停委員に対し、離婚理由をうまく説明することが大切です。
今回は、離婚調停で離婚理由を上手に伝える方法をご説明します。

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1.離婚調停の申立て理由

離婚調停を申し立てる際は、申立書に「申立ての動機」を書くことになります。

平成31年の司法統計資料によると、男女別の「離婚調停申立ての動機(離婚理由)」は以下のとおりです。

男性

  • 1位 性格の不一致
  • 2位 精神的に虐待する
  • 3位 異性関係
  • 4位 家族親族との折り合いが悪い
  • 5位 浪費する

女性

  • 1位 性格の不一致
  • 2位 生活費を渡さない
  • 3位 精神的に虐待する
  • 4位 暴力を振るう
  • 5位 異性関係

男女ともに「性格の不一致」がもっとも多数です。もちろん離婚理由は1つでないことが多いですが、この統計は離婚を申立てた理由のうち、主なものを3つまで挙げる方法で統計を取っています。
男性の場合には、2位が「精神的に虐待する」となっており、女性による言葉の暴力に傷つく方が多いことがわかります。妻の「異性関係」や「家族親族との折り合いが悪い」、「浪費する」といったお金の問題なども離婚理由に挙がっています。

女性の場合、離婚理由の2位は「生活費を渡さない」ことであり、子育てで収入がない女性が、こういった状況に陥ることが多いようです。3位は「精神的に虐待する」、4位は「暴力を振るう」となっており、5位が「異性関係」です。

※参考:裁判所「婚姻関係事件数―申立ての動機別」

2.離婚訴訟で認められる離婚理由とは

離婚訴訟で認められる離婚理由とは

離婚調停における離婚理由では、「性格の不一致」が圧倒的に多数となっていますが、離婚調停で離婚するには「お互いの合意」が必要です。相手が離婚に応じない場合や離婚条件で折り合いがつかない場合、調停離婚は成立しません。
その場合、「離婚訴訟」により、判決で離婚を認めてもらう必要があります。

ただし、訴訟で離婚が認められるには、「法定離婚事由」が必要になります。法定離婚事由とは、具体的には以下の5つの離婚理由です。

不貞

法律上の「不貞」というためには、配偶者と浮気相手との間に「肉体関係」が必要となります。プラトニックな関係では「不貞」にならず、離婚理由として認められません。

悪意の遺棄

正当な理由もなく、一方的に家を出て同居を拒む、十分な収入があるにも関わらず生活費を渡さないなどが該当します。

3年以上の生死不明

配偶者が生死不明の状況が3年続いたら、裁判で離婚することができます。

回復しがたい精神病

相手が強度の精神病にかかっており回復する可能性が極めて低い場合は、裁判で離婚が認められる可能性があります。

その他婚姻関係を継続し難い重大な事由

上記の4つに当てはまらない場合でも「婚姻関係を継続し難い重大な事由」があれば、裁判で離婚することが可能です。たとえば、身体的DVや長期間の別居などにより、婚姻関係の継続が困難になっている場合です。

訴訟で離婚が認められない理由

以下のような理由だけでは、法定離婚事由に該当せず、原則として、訴訟において離婚は認められません。

性格の不一致

離婚調停の申立ての理由として1位になっている「性格の不一致」ですが、法定離婚事由には該当せず、この問題だけでは、訴訟において離婚は認められません。裁判で単に「性格が合わず、苦痛を感じる」などと主張しても、離婚できない可能性が高いので、注意が必要です。

実家との折り合いが悪い

「実家との折り合いが悪い」ことは、離婚調停の申立ての理由として、多くの男女が挙げています。ただ、この問題は、直接、夫婦の問題ではなく、法定離婚事由に該当しません。実家や親族関係で離婚したい場合には、相手が親族に加担したり、紛争の調整を怠ったりしたことから、婚姻関係が破綻したことを説明する必要があります。

酒を飲み過ぎる

相手が、酒を飲み過ぎることから、離婚したい方は多いのですが、「過度な飲酒」だけでは、法定離婚事由にはあたりません。もっとも、過度な飲酒に伴い、暴力等があれば、離婚理由になる可能性があります。

浪費・ギャンブル

相手が浪費する、金銭感覚が合わないといった理由で、離婚を希望される方も多いのですが、それだけでは法定離婚事由にはあたりません。このような問題による離婚事由を裁判所に認めてもらうためには、遊興費の性質や、具体的な状況からどれだけ婚姻関係の継続が困難になっているかを裁判所に示す必要があります。

政治思想や宗教観の不一致

思想信条の不一致というだけでは、離婚は認められません。宗教や政治思想などが違ったとしても、夫婦の間では、互いに相手の考え方や立場を尊重すべきと考えられているからです。裁判で離婚を認めてもらうためには、宗教活動によって家庭を顧みないなどの事態が生じ、婚姻関係が破綻していることを主張する必要があります。

3.離婚調停で離婚理由を上手に伝える方法

3-1.証拠を用意する

法定離婚事由があるとして、離婚調停を有利に進めたいなら、必ず事前に証拠を集めましょう。たとえば、相手が不倫している、相手に暴力を振るわれているなどと主張したとしても、十分な証拠がなければ、相手がその事実を争うことがあります。その際、証拠があれば、その事実を前提に、調停をすすめることができます。

離婚理由に関するどのような証拠を集めたらいいかわからないときは、早めに弁護士に相談しましょう。

3-2.具体的な「出来事」を話す

離婚理由を説明するときには、なるべく「具体的な出来事を説明する」ことが大切です。
たとえば「暴力を振るわれています」とだけ主張しても、調停委員は、具体的な場面をイメージすることができません。
そうではなく「〇月〇日、相手に○○と言ったとき、相手からいきなり顔をげんこつで殴られて、顔を怪我しました。」などと具体的な出来事を伝えると、調停委員もイメージすることができ、離婚理由があることを理解してもらいやすくなるでしょう。
調停に出席する前に、離婚理由について、当日、何を話したいのか整理しておくことをおすすめします。

3-3.「離婚したい」強い気持ちを伝える

離婚調停で離婚意思を伝えるときには、調停委員に「離婚したい」という強い気持ちをわかってもらうことが重要です。
よくあるのは、当日調停の席に着くと、萎縮してしまうパターンです。
調停委員から「婚姻生活を続ける可能性はないか、もう一度考えてみては?」などと質問されると、自分の気持ちを伝えられなくなってしまう方も少なくありません。

3-4.弁護士に依頼する

弁護士に依頼すると、弁護士も、離婚調停の場に同席し、話を整理して具体的に離婚理由を主張してくれます。また、弁護士に同席してもらうことで、精神的に安心し、離婚にかける強い意思も、調停の席で委縮することなく伝えられます。

離婚調停を検討している場合は、まずは一度弁護士に相談してみてください。

まとめ

離婚調停で、離婚理由について上手く伝えることは重要です。調停を有利に進めるため、事前に証拠を集め、当日は、具体的な出来事を主張しましょう。困ったときには、お早めに弁護士までご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業(3年次卒業)、東京大学大学院法学政治学研究科修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事事件や刑事事件など幅広く取り扱う。
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