前回は、働き方改革関連法案について、内容と施行日について説明しました。
今回は、改正法の主な点を①長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現、②雇用形態に関わらない公正な待遇の確保という2つに分けて説明します。
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1.改正法の主な点~①長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現
(1)時間外労働の上限規制
時間外労働につき、法律上は上限規制がなかったものを、法律で上限を定めることになりました。
改正法では、原則として、残業時間は月45時間以内、かつ年360時間以内とされています。また、臨時的な特別の事情がある場合であっても、残業時間は休日労働を含んで月100時間未満、そして2か月から6か月の平均時間は80時間を超えないとされており、年間上限は720時間を超えないこととされています(ただし、この720時間は休日労働を含みません)。
中小企業については2020年4月1日から改正法が適用されますが、罰則も設けられており、労働時間削減に向けて現時点から対応を行う必要があります。
また、36協定についても協定項目が増加しており、36協定においても今回の上限時間規制対応が必要になります。
なお、月45時間というのは、一日2時間程度となっています。
(2)月60時間超の時間外労働における特別割増の中小企業への適用
月60時間を超える時間外労働について、中小企業についても大企業と同様、割増率が50%となります。割増率の負担は大きいことから、経営面からも時間外労働時間削減に向けた取り組みが必要です。
(3)年次有給休暇の時期指定義務
労働者が、自ら時期を指定して会社に有給を申請するのは言い出しにくく、有給取得も消極的とならざるを得ません。
改正法では、10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての労働者に対し、毎年5日、時期を指定して会社が与えなければならないとされています。
(4)フレックスタイム制の改正
フレックスタイム制とは、始業及び就業の時刻を労働者の決定にゆだねる労働時間制をいいます。フレックスタイム制をとるためには、労使協定の締結など要件を充たす必要があります。
フレックスタイム制のもとで、労働すべき労働時間を定める一定の期間を清算期間といいますが、改正法では、このフレックスタイムの清算期間の上限を従来の1か月から3か月までとしました。
これにより、たとえば6月に働いた分を8月分の休んだ分に振り替えられることとなり、夏休み中の子どもと過ごす期間を確保しやすくなる等、ライフスタイルに応じた働き方が期待できるようになります。
(5)高度プロフェッショナル制度の創設
「残業代ゼロ法案」として激しい与野党対立があった分野です。
職務の範囲が明確で、一定以上の年収を有する労働者が高度の専門的知識等を有する業務に従事する場合、健康確保措置や本人の同意等を要件として、時間外・休日・深夜の割増賃金の支払いを不要とする制度です。
なお、本稿当時、労働政策審議会において、本制度の対象となる業務の素案が示されています。
(6)労働安全衛生法による労働時間把握義務
労働安全衛生法関連省令が改正され、従前は対象外であった裁量労働制・管理監督者も含めて、客観的な方法により労働時間を把握するよう義務づけられることになります。
2.改正法の主な点~②雇用形態に関わらない公正な待遇の確保
(1)不合理な待遇差を解消するための規定整備~同一労働同一賃金
①均衡待遇
短時間労働者・有期雇用労働者における正規雇用労働者との不合理な待遇差の禁止につき、判断基準が明確化されました。
短時間・有期雇用労働者に関する同一企業内における正規雇用労働者との不合理な待遇差の禁止に関し、個々の待遇ごとに、性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨を明確化しました。
改正に伴い、「パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)」の名称も「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」と変わります。すなわち、パートタイム労働者・有期雇用労働者などの「非正規労働者」に対し適用される法律になります。
②均等待遇
有期雇用労働者についても、正規雇用労働者と①職務内容②職務内容・配置の変更範囲が同一である場合の均等待遇を確保しなければならないとされました。
パートタイム労働者については従前からこのような規定がありましたが、改正により、パートタイム労働者・有期雇用労働者に同じ法律が適用されるに伴い、有期雇用労働者についても均等待遇が適用されることになりました。
③派遣労働者
派遣労働者について、①派遣先の労働者との均衡・均等待遇、または②一定の要件を満たす労使協定による待遇のいずれかを確保することが義務付けられました。
これら同一労働・同一賃金については、ハマキョウレックス事件や長澤運輸事件等裁判例で確立されてきた裁判例の判断と異なるところはないと考えられていますが、同一労働同一賃金に関するガイドラインを参考に、再度個々の待遇を検討する必要があるように思います(なお、平成30年11月27日、厚生労働省は労働政策審議会の部会で、「同一労働同一賃金」の具体的なルールを示す指針(ガイドライン)をまとめました)。
(2)非正規社員に対する待遇差の説明義務
短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明が義務化されます。
以上、改正法の概要を述べましたが、施行日も間近に迫っており、現時点で適宜準備を始める必要があります。ガイドラインや省令に関する情報をアップデートしながら、労働者個人に応じた多様な働き方を実現させ、労働生産性を向上させていきましょう。
※本ページは平成30年12月6日に作成したものです。