契約書のリーガルチェックやレビューを自社で行う場ありますが、弁護士に外注することもできます。
では、契約書のチェックやレビューを外注することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
また、弁護士ではなくAIを使って契約書レビューをする際は、どのような点に注意する必要があるのでしょうか?
今回は、契約書のチェックやレビューの外注について、弁護士がくわしく解説します。
目次
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契約書のリーガルチェックや審査、レビューとは
契約書とは、2者以上の者が取引のルールを定め、双方による合意を示す書類です。
契約には、原則として民法や商法などの法令が適用されます。
しかし、実際に取引では法令とは異なる内容の定めをしたい場合や、法令より詳細な内容を定めたい場合が少なくないでしょう。
そのため、契約書を取り交わすことで、原則としてその契約書の内容が法令に優先して適用されることとなります。
契約書は、このような非常に重要な書面です。
よく理解しないまま契約を締結してしまうと、自社にとって不利益が生じるかもしれません。
特に、消費者対事業者との契約とは異なり、事業者間での契約は自己責任の側面が強くなります。
そのため、相手方から提示された契約書に押印をしたり、相手方に提示する契約書の案を作成したりする際は、契約書の内容を社内で精査するステップが不可欠です。
この契約書精査のことを、契約審査やリーガルチェック、契約書レビューなどと呼びます。
契約書のチェックや審査、レビューに不備があった場合のリスク
契約書のチェックやレビューは、非常に重要な業務です。
では、契約書のチェックやレビューに不備があった場合、どのような事態が生じる可能性があるでしょうか?
ここでは、チェックの不備によって生じ得る主なリスクについて解説します。
- 自社に不利益が生じる可能性がある
- 契約内容が実態に即さずトラブルとなるおそれがある
- トラブル発生時の対応が困難となるおそれがある
- 法令違反で罰則の対象となる可能性がある
自社に不利益が生じる可能性がある
相手方が契約書の案を作成する場合、各条項が相手方にとって都合のよい内容となっていることがあります。
また、インターネットや書籍などから入手したテンプレートをそのまま流用した場合も、相手企業にとって有利な内容となっている可能性が否定できません。
なぜなら、契約書の最適解は一つではなく、いずれの立場に立つのかによって最適な条項は異なるためです。
そのため、自社にとって不利な内容をレビューで見落としてしまうと、実際の運用において不利益が生じるおそれがあります。
契約内容が実態に即さずトラブルとなるおそれがある
インターネットや書籍などに掲載されている契約書のテンプレートは一般的な内容となっており、必ずしも実際の契約内容に即しているわけではありません。
レビューにおいてその部分を見落としてしまうと、契約内容が実態に即さないこととなり、トラブルとなるおそれがあります。
たとえば、実際には自社では行う予定のない内容が自社の義務として契約書に盛り込まれている場合などが考えられます。
その場合、相手企業からその事項の履行を求められたり、履行を拒絶した場合に契約解除や損害賠償請求などへと発展したりする可能性があります。
トラブル発生時の対応が困難となるおそれがある
契約書の内容に不備があっても、契約内容がスムーズに進行し相手方と良好な関係が築けているうちは、問題が顕在化しないかもしれません。
しかし、契約内容に不備があると、トラブル発生時の対応が困難となったり、自社にとって不利な解決となったりするおそれがあります。
具体的には、相手方が重大な義務違反をした場合にスムーズに契約の解除ができなかったり、十分な損害賠償を受けられなくなったりする事態などが考えられます。
法令違反で罰則の対象となる可能性がある
契約書は、まったく自由に作成してよいわけではありません。
締結しようとする契約の内容によっては、特定商取引法や下請法などの法令により、記載内容に指定や制限が設けられていることがあります。
そのため、契約書のレビューに不備があると、必要な記載が漏れるなどして、法令違反で罰則の適用対象となる可能性があります。
契約書のチェックやレビューを弁護士に外注するメリット
契約書のチェックやレビューは自社の法務部門などで行う場合もある一方で、弁護士に外注することも可能です。
ここでは、契約書のチェックやレビューを外注する主なメリットを3つ解説します。
- 確かな知識でチェックやレビューが受けられる
- 自社でかける時間を大きく削減できる
- トラブル発生時から逆算したレビューが受けられる
確かな知識でチェックやレビューが受けられる
1つ目は、確かな知識でチェックやレビューが受けられることです。
自社の法務部門でチェックにあたる場合、担当する部員の経験や知識などによりチェックの品質にばらつきが生じやすくなります。
弁護士に外注する場合は、確かな知識でチェックやレビューを受けられ、一定の品質が担保されます。
自社でかける時間を大きく削減できる
2つ目は、自社でかける手間や時間を大きく削減できることです。
契約書を不備なくレビューするには、相当の時間や労力がかかります。
また、法務部員が育っていない場合には、採用や育成段階からコストや時間を掛けなければなりません。
契約書のレビューを弁護士に外注することで、自社で膨大な時間をかける必要がなくなり、本業や他の業務に注力しやすくなります。
トラブル発生時から逆算したレビューが受けられる
3つ目は、トラブル発生から逆算したレビューを受けられることです。
契約書のレビューは、トラブル発生時の対応から逆算して行うことが肝要です。
とはいえ、その契約類型で起き得るトラブルを自社で漏れなく想定することは、容易ではないでしょう。
また、仮に裁判に発展した場合に契約書がどのように活きるのか、イメージが湧きにくいと思います。
弁護士はトラブルに発展した際の対応まで一貫して行うため、トラブル時点から逆算した契約書レビューを得意としています。
契約書のチェックやレビューを弁護士に外注するデメリット
契約書のチェックやレビューを弁護士に外注することには、デメリットもあります。
ここでは、レビューを外注する主なデメリットを2つ解説します。
費用が掛かる
1つ目は、弁護士報酬が発生することです。
なお、弁護士報酬は自由化されており、事務所によって金額や報酬体系などが異なります。
また、1件1件レビューを外注する方法のほか顧問契約を締結する方法もあり、その場合の報酬体系もまちまちです。
そのため、契約書レビューの外注をご検討の際は、まずは依頼を検討している弁護士事務所へ問い合わせ、料金体系などを確認しておくことをおすすめします。
時間がかかる可能性がある
2つ目は、依頼先の事務所や依頼の時期などによっては、レビューの依頼から結果の返答までに時間がかかる可能性があることです。
依頼する際は、レビューまでに要する期間についてもあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
なお、一般的には1回限りの依頼であるスポットより、顧問契約先の方が優先される傾向にあります。
この点も併せて、依頼前に確認しておくとよいでしょう。
契約書のチェックやレビューを弁護士に外注する流れ
契約書のチェックやレビューを弁護士に外注する場合、どのような流れとなるのでしょうか?
ここでは、契約書が完成するまでの一般的な流れについて解説します。
- 社内で契約書の原案を作成する
- 弁護士にチェックやレビューを依頼する
- 弁護士からの指摘を受ける
- 契約書を完成させる
社内で契約書の原案を作成する
はじめに、自社で契約書の原案を作成します。
相手企業から契約書の原案が提示された場合はこれをチェックに回しますが、自社で希望する修正点を添えてレビューを依頼するとスムーズです。
弁護士にチェックやレビューを依頼する
自社や相手企業が作成した契約書案について、外注先の弁護士にチェックやレビューを依頼します。
この時点で、レビューに要する期間などを確認しておくことをおすすめします。
契約内容や相手企業との関係性、契約の背景などについて、弁護士から必要な質問がなされることがあります。
弁護士からの指摘を受ける
提出された契約書案を弁護士が確認します。
近年では、オンラインでチェックを依頼することも多いでしょう。
そのうえで、修正すべき点や修正案などのレビューがなされます。
契約書を完成させる
弁護士からの指摘事項を踏まえ、契約書案を完成させます。
完成した契約書案について、再度弁護士のレビューを受ける場合もあります。
自社としての契約書案が完成したら、これをもとに相手企業との契約交渉を行います。
状況によっては、弁護士が相手企業との交渉に同席することもあります。
契約書チェックやレビューをAIで行う際の注意点
AIの進化はめまぐるしく、契約書レビューやチェックを行うAIも多数登場しています。
そのため、契約書レビューは弁護士に依頼することのほか、AIの活用が選択肢に入ることもあるでしょう。
AIによる契約書チェックは一般的に、弁護士に依頼するよりも安価です。
また、入力後すぐに結果が表示されることも多く、スピーディーでもあります。
しかし、AIによる契約書レビューには注意点も少なくありません。
最後に、AIによる契約書レビューの注意点を4つ紹介します。
- すべての契約書に対応しているわけではない
- 柔軟な対応が難しい
- 責任の所在が不明確となりやすい
- トラブル発生時に対処法を相談できない
すべての契約書に対応しているわけではない
AIは一般的に、定型的な契約書のチェックやレビューにのみ対応しています。
特殊な契約条項や複数の契約内容を1通にまとめた契約書などには、対応していないことが少なくありません。
一般的には、契約書の雛形などを掲載した書籍に収録されていることの多い契約書だけに対応しているケースが多いでしょう。
柔軟な対応が難しい
AIによる契約書チェックでは、柔軟な対応が難しい傾向にあります。
実際の契約は、相手企業との関係性や契約に至った背景などを踏まえて、内容を検討することが少なくありません。
しかし、AIはそういった内容を考慮せず、一般的な最適解を提案する傾向にあります。
そのため、背景などの事情を踏まえた柔軟な修正は、自社で別途行わなければなりません。
責任の所在が不明確となりやすい
AIは完全ではなく、出力結果が誤っていたり最適ではなかったりする場合もあります。
しかし、自社でこれに気付くことは困難でしょう。
また、AIのミスによって企業に損害が生じても、AIがその責任を取ってくれることはありません。
AIはあくまでもパソコンや電卓などと同じ「道具」であり、その出力結果の責任は原則としてこれを使用する企業にあると考えられるためです。
そうであるにもかかわらず、日頃からAIに頼っているとAIの結果を妄信してしまい、よりミスに気付きにくくなるおそれがあります。
一方で、万が一弁護士が重大なミスをしたことで企業に損害が及んだ場合は、原則として損害賠償請求などの対象となるでしょう。
トラブル発生時に対処法を相談できない
AIを使ってレビューした契約に関してトラブルが生じても、AIに具体的な対処法を相談することはできません。
そのため、トラブル発生時には改めて弁護士を探す必要が生じます。
一方、契約書のレビュー時点から弁護士に依頼していたり、弁護士と顧問契約を締結していたりする場合は、事情をわかっている弁護士にスムーズに相談しやすくなります。
まとめ
契約書のチェックや審査、レビューの外注について解説しました。
契約書のレビューやチェックを弁護士に外注する場合、弁護士報酬がかかります。
また、依頼から結果の連絡までに時間がかかる可能性もあります。
しかし、弁護士に契約書のレビューを外注するメリットは少なくありません。
たとえば、想定されるトラブルから逆算して契約書レビューを受けられたり、レビューの品質が担保されたり、自社で要する時間を大きく削減できたりします。
契約書のレビューは単発で外注することもできますが、契約書の件数が多い場合は顧問契約を締結することも一つの手です。
契約書レビューの料金や料金体系などは事務所によって異なるため、まずは信頼できそうな事務所に相談することから始めてみるとよいでしょう。
Authense法律事務所では企業法務の専門チームを設けており、契約書レビューやトラブル対応など企業様に必要なリーガルサポートを総合的に担っています。
契約書のリーガルチェックなどの外注をご検討の際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
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