コラム
公開 2022.11.24 更新 2023.07.13

法務部とコンプライアンス部の違いは?分ける理由は?外注するメリットも弁護士が解説

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近年、法務部の他に、コンプライアンス部を設ける企業が増えています。
では、法務部とコンプライアンス部にはどのような違いがあるのでしょうか?

今回は、法務部とコンプライアンス部の違いや、コンプライアンス部員に必要なスキルなどについてくわしく解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。元裁判官。企業法務、M&A、労働法、事業承継、倒産法(事業再生含む)等、企業に係わる幅広い分野を中心とした法律問題に取り組む。弁護士としてだけでなく、裁判官としてこれまで携わった数多くの案件実績や、中小企業のみならず、大企業や公的企業からの依頼を受けた経験と実績を活かし、企業組織の課題を解決する多面的かつ実践的なアドバイスを提供している。
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法務部門とコンプライス部門との違い

法務部門とコンプライアンス部は、非常に似た役割を担っています。
実際に、1つの部署が法務部門とコンプライアンス部門の役割を持っている場合も少なくありません。

それぞれの主な役割は、次のとおりです。

法務部門の役割

法務部門の主な役割は、法的トラブルの予防や解決です。
たとえば、契約書のチェックや作成、紛争時の対応などを担います。

コンプライアンス部門の役割

コンプライアンス部門の主な役割は、社内にコンプライアンス違反が発生しないための仕組みづくりや、企業の日常的なオペレーションの監視、違反発生時の対応などです。
たとえば、パワハラ予防や機密情報漏洩防止などの社員教育や、社内規程の構築、コンプライアンス違反と思われる事態が発生した場合の調査などを主に担います。

法務部門と比較して、社会規範など法律以外の点についてもより目を向けることが求められます。

企業がコンプライアンス体制を整えるべき理由

企業がコンプライアンス体制を整えておくことには、企業にとってさまざまなメリットが存在します。
主なメリットは、次のとおりです。

思わぬ法令違反を予防できる

日本には非常に多くの法令が存在するうえ、改正も頻繁に行われています。
そのため、コンプライアンスを日々意識していなければ、知らずに法令違反をしてしまう可能性があるでしょう。

法令の存在や法令が改正された事実を知らなかったからといって、法令違反は見逃されるものではありません。
また、昨今では、コンプライアンス違反に対する世間の目は厳しく、SNSなどによる情報の拡散が早いことも相まって、ある会社のコンプライアンス違反が表沙汰になると、あっという間に拡散され、それによる会社のイメージダウンなど、大きなレピュテーションリスクを負ってしまうこともあります。

コンプライアンス体制を整えて、自社に関連する法令の洗い出しや改正のチェックなどを行うことで、思わぬ法令違反を防ぐことが可能となります。

社内の雰囲気が改善される

コンプライアンス体制が整っている企業では社内の風通しがよくなり、社内の雰囲気が改善されやすくなるでしょう。

コンプライアンス体制を整えることで、上司などからの指示で自分の意に反して不正行為を行うような事態が減る他、パワハラなどの問題行動も見逃されにくくなります。

優秀な人材の確保につながる

コンプライアンス体制を整えることで社内の風通しがよくなれば、真面目に業務を行いたい従業員にとって働きやすい企業となります。

その結果、これまでより優秀な人材を採用しやすくなるでしょう。

企業イメージが向上する

コンプライアンス体制を整えた企業であれば、取引先としても安心して仕事を任せやすくなります。
コンプライアンス体制の構築によって企業イメージが向上すれば、結果的に売上の増加や企業のさらなる発展へとつながるでしょう。

また、上場企業においては、コンプライアンス体制の構築により不祥事を予防することは、証券取引所からも求められており、投資家も投資判断の際に注目している観点ですので、株価という一つの企業価値を高めることにもつながるでしょう。

法務部門とコンプライアンス部門が同じ場合のメリット

法務部門とコンプライアンス部門が同じ場合の主なメリットは、次のとおりです。

業務の担当部署が明確となる

社内規程の整備など、法務部門とコンプライアンス部門の担当業務は重なる部分もあり、明確に線引きをすることは困難です。
そのため、新たな業務が発生した際、2つの部署が分かれていると、どちらの部署が担当すべきか問題になる可能性があるでしょう。

一方で、法務部門とコンプライアンス部門が同じであれば、こういった問題が発生しなくなります。

情報が集約されやすい

法務部門とコンプライアンス部門が分かれていると、同じ問題について別々にアプローチをする場合があるでしょう。
その場合には、情報共有がカギとなります。

法務部門とコンプライアンス部門が同じであれば、おのずと情報が集約されるため、情報の偏在による弊害を防ぐことが可能です。

法務部門とコンプライアンス部門が同じ場合のデメリット

法務部門とコンプライアンス部門が同じ場合の主なデメリットは、次のとおりです。

専門特化しにくい

法務部門とコンプライアンス部門が同じであれば、同じ人が両方の業務を担うこととなるでしょう。
そのため、行うべき業務の幅が広くなり、部署が分かれている場合と比較して専門特化がしにくいといえます。

監視機能が阻害される場合がある

たとえば、法務部門として契約書のチェックを行い、オーケーを出したところ、実は契約書の内容や、その契約に基づく取引について、コンプライアンス違反と思われる事情が発覚する場合があります。
コンプライアンス部門が別であれば、その点を指摘しやすいですが、法務部門がコンプライアンス部門を兼任している場合には、ミスの発覚を恐れて、指摘せずに隠蔽してしまったりすることにより、コンプライアンス部門の監視機能が阻害される可能性もあります。

人材採用がしにくい可能性がある

たとえば、これまでコンプライアンス部門での業務を専門的に行ってきた人を採用する場合、法務部門の業務も行うべきとなると、難色を示される可能性があります。

法務部門の業務とコンプライアンス部門の業務は重なる部分も少なくない一方で、いずれかのみを特化してキャリアを積みたいと考える人も少なくないためです。

なお、昨今では、大企業を中心に、法務部門とコンプライアンス部門を分ける企業が増えつつあり、双方の重要性が意識されるようになった結果だと思われます。

法務部員やコンプライアンス部員に必要なスキル

企業の法務部員やコンプライアンス部員に必要とされる主なスキルは、次のとおりです。

法令に関する知識

法務部員やコンプライアンス部員には、法令に関する広い知識が必要となります。
法令を理解しておかないと、契約書チェックやコンプライアンス指導などを正しく行うことができないためです。

コミュニケーションスキル

法務部員やコンプライアンス部員は、企業の経営層や社外の専門家などとやり取りをする機会が少なくありません。
また、コンプライアンス部では、社内の相談窓口を担っている場合もあるでしょう。

そのため、法務部員やコンプライアンス部員には、コミュニケーションスキルが求められます。

情報調査スキル

法務部員やコンプライアンス部員には、情報調査スキルが必要です。

法令は日々改正されたり新たな判例が登場したりするため、すべてを記憶しておくことは現実的ではありません。
そのため、必要に応じて必要な情報を調べることが必要となります。

また、コンプライアンス部では、自社のSNSでの炎上などを避けるため、他の炎上事例などに着目し調査するなど、法令以外の事例を調査するスキルも求められます。

文書作成能力

法務部やコンプライアンス部では、文書を作成する機会が非常に多いといえるでしょう。
そのため、法的な文書や社内への通知文書など、さまざまな文書を作成するスキルが必要となります。

自社サービスへの深い理解

法務部員やコンプライアンス部員は、経営陣から意見を求められるケースが少なくありません。
その際、企業内の部門である以上、単なる一般論ではなく、自社商品や自社サービスについてしっかりと理解したうえで、適切な助言をすることが必要です。

そのため、自社サービスや商品などについて、深く理解しておかなければなりません。

法務部やコンプライアンス部を外注するメリット

法務部やコンプライアンス部を自社で抱えず、外注(アウトソーシング)するという選択肢もあります。
では、法務部やコンプライアンス部の外注には、どのようなメリットがあるのでしょうか?
主なメリットは次のとおりです。

自社で人材を抱える必要がない

業務の特性上、法務部やコンプライアンス部の業務が常時同じ程度の分量で発生するとは限りません。
しかし、自社で部門を抱えるのであれば、繁忙期の業務量に対応できるだけの人員を常に確保しておく必要があります。

また、法務部員やコンプライアンス部員には高い専門性が求められるため、繁忙期だけ他の部署から人員を振り分けるというようなことも困難です。
雑務などには対応できたとしても、専門外の従業員がいきなり契約書チェックやコンプライアンス研修の講師などをすることは現実的ではないでしょう。

一方、法務部やコンプライアンス部を外注すれば、常に自社で人材を抱え続ける必要がなくなります。
必要に応じて、外部専門家を利用すればよいためです。

一定の専門性が担保される

自社で法務部やコンプライアンス部を持つ場合には、法務部やコンプライアンス部の質は、担当する従業員によって左右されてしまいます。
また、自社内にコンプライアンス部員の仕事の質を評価できる人がいなければ、コンプライアンスチェックの精度などの質が低かったとしても、気づかないままリスクを抱えてしまう場合もあるでしょう。

コンプライアンス部を新たに立ち上げる際、コンプライアンス部員を既存の社員から選定した場合には、社内に忖度などが生じて適切に機能しないリスクもあります。

一方で、法務部やコンプライアンス部を外注した場合には、一定の専門性や、独立性が担保されます。

自社での教育や採用コストが削減できる

法務部員やコンプライアンス部員には、高い専門性が求められます。
この専門性が担保された人材を自社で採用し、教育することは容易ではないでしょう。
先ほど解説した「必要なスキル」を備えた人であれば多くの企業が欲しい人材であるうえ、弁護士などの有資格者であればなおさら、従業員として採用することは容易ではないためです。

一方、法務部やコンプライアンス部を外注した場合には、自社で部員を採用したり教育をしたりするコストを大幅に削減することができます。

まとめ

法務部やコンプライアンス部は企業の根幹を担うともいうべき重要な部門であり、部員には高い専門性が求められます。
しかし、よほどの大企業でもない限り、これらの人材を自社で確保し、教育し続けることは容易ではないでしょう。

そこで、ぜひご検討いただきたいのが、法務部やコンプライアンス部の外注です。

Authense法律事務所では、法務機能アウトソーシングサービスを展開しております。
このサービスでは、法務責任者の右腕として即戦力となる人材を提供し、安定した法務体制を実現します。
また、コンプライアンス部門の重要な役割である公益通報者保護法などにより設置が求められている通報窓口についても、外部の専門家窓口としてのサービスを提供しております。
さらに、不正検査士の資格を有する元検事や、認定コンプライアンスオフィサーの資格を有する元裁判官など、コンプライアンスに精通した弁護士も所属しておりますので、それぞれの企業に応じたサービスの提供をご提案することが可能です。

法務部やコンプライアンス部のアウトソーシングをご検討の際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

参考文献

  • ※1 テスト参考文献 文中にコード無し

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