コラム
公開 2023.07.10

単体1252_新規_公正証書遺言作成の必要書類は?作成の流れを弁護士がわかりやすく解説

公正証書遺言とは、公証人の関与を受けて作成する遺言書です。
作成には手間や費用がかかるものの、もっとも無効となりづらく確実な遺言方式であるといえます。

では、この公正証書遺言を作成するのには、どのような書類が必要となるのでしょうか?
今回は、公正証書遺言作成の必要書類や作成の流れなどについて、弁護士がくわしく解説します。

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公正証書遺言とは

遺言とは、自分が亡くなった後の財産の行き先などを決めておく手続きです。

遺言書が効力を生ずる際には遺言者はすでにこの世におらず、遺言者の真意を直接聞くことはできません。
そのため、遺言の方式は、民法で厳格に定められています。
この遺言方式の一つが公正証書遺言です。

公正証書遺言とは、公証人の関与のもとで行う遺言です。
費用や手間はかかるものの、無効になりづらい点が最大のメリットであるといえるでしょう。

公正証書遺言を作成するには、まず遺言者が公証人と2名の証人に対して遺言の趣旨を口授します。
これを公証人が筆記して遺言者と証人に読み聞かせるか閲覧させ、各自が署名押印をすることで公正証書遺言が完成します。

公正証書遺言の作り方の手順

公正証書遺言を作成するまでの基本の流れは次のとおりです。
なお、弁護士などの専門家へサポートを依頼した場合には遺言の内容を検討するにあたってアドバイスが受けられるほか、公証役場とのやり取りも代行してもらえます。
そのため、専門家を介した場合には自分ですべての手続きを行う必要はありません。

遺言の内容を検討する

はじめに、作成する遺言の内容を検討します。
たとえば、「自分の亡きあとは全財産を妻に相続させたい」「長男には自宅不動産を相続させて、二男には預金を相続させたい」「お世話になったA団体へ遺産を寄付したい」などが挙げられます。

ただし、相続にはさまざまなルールがあり、自由に内容を検討してしまうとトラブルの原因となってしまうかもしれません。
その代表的なものに「遺留分」があります。

遺留分とは、配偶者や子など一定の相続人に保証されている相続での最低限の取り分のことです。
この遺留分を侵害した内容の遺言書を作ることもできますが、相続が起きた後で遺留分を侵害された相続人から遺産を多く受け取った人に対して、遺留分相当の金銭を引き渡すよう請求(「遺留分侵害額請求」といいます)がなされるなどしてトラブルとなるかもしれません。

せっかく作成をした遺言書がトラブルの原因となることなど、誰しも避けたいことでしょう。
そのため、遺言内容の検討は自分一人で行うのではなく、弁護士などの専門家のサポートを受けて行うことをおすすめします。

必要書類を収集する

遺言内容の検討と同時進行で、必要書類を収集します。
公正証書遺言の作成に必要となる書類は後ほど解説しますので、そちらを参照してください。

公証役場へ事前相談に出向く

遺言内容がある程度固まり、必要書類もある程度揃ったら、遺言書を作成する公証役場へ事前相談に出向きます。

通常どおり公証役場へ出向いて遺言書を作成する予定である場合には、管轄に制限はありません。
たとえば、東京都に住所のある人が、愛知県の公証役場で遺言書を作成してもよいということです。
しかし、打ち合わせの利便性などを考えると、自宅や勤務先などに近い公証役場を選択することが一般的でしょう。

公証役場へ出向く際には、いきなり出向くのではなく、あらかじめ電話で予約しておくことをおすすめします。
なぜなら、突然出向いた場合には公証人が不在であったり予定が埋まっていたりして、対応してもらえない可能性があるためです。

事前相談の際には、遺言内容のメモとともに収集済の書類を持っていきましょう。
この時点で書類に不足があると公証人から追加取得の指示がなされるため、これに従って不足書類を集めます。

証人を検討する

公正証書遺言を作成するには、証人2名の立会いが必要です。
証人には欠格事由があり、次の人は証人となることができません(民法974条)。

  1. 未成年者
  2. 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  3. 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

証人には、遺言書の内容がすべて知られることとなります。
しかし、信頼できる相手として頭に浮かぶ相手は、ほとんどが「2」の欠格事由に当てはまってしまうことでしょう。

証人の適任者がいない場合には、公証役場から紹介を受けることができます。
また、公正証書遺言の作成サポートを専門家に依頼した場合には、専門家の側で証人を手配してくれることが一般的です。

文案を確認する

事前相談後には公証人が遺言書の文案を作成し、これを提示してくれることが一般的です。
あらかじめこの文案を確認し、自分の意図とずれていないかよく確認しましょう。

作成日を予約する

公証人の作成した文案に問題がなければ、公正証書遺言を作成する日と予約します。
作成当日には遺言者自身のほか、公証人と証人2名のスケジュールを合わせなければなりません。
そのため、候補日を複数挙げられると調整がスムーズでしょう。

予約当日に公証役場へ出向く

予約当日に公証役場へ出向きます。

当日は改めて本人確認が行われた後に、遺言者による遺言内容の口授や公証人による文案の読み上げ、遺言者と証人による署名押印などが行われます。
公正証書遺言の作成は法律の規定に則って厳格に行われるので、公証人の指示に従いましょう。

これで公正証書遺言の作成が完了です。

公正証書遺言の作成に必要な主な書類

公正証書遺言の作成に必要となる主な書類は、次のとおりです。※1
ただし、必要書類は作成しようとしている公正証書遺言の内容などによって異なります。

そのため、ここで挙げた書類は参考としたうえで、実際に作成する際にはサポートを依頼している専門家か公証役場に個別で確認するとよいでしょう。

遺言者に関する書類

公正証書遺言を作成する際には、遺言者に関する次の書類が必要です。

  • 次のいずれか
    • 印鑑証明書+実印
    • マイナンバーカードまたは運転免許証+認印
  • 戸籍謄本

遺産を渡す相手に関する書類

公正証書遺言を作成する際には、その遺言書で財産を渡す相手を特定する必要があります。
そのため、遺産を渡す相手の属性に応じてそれぞれ次の書類が必要です。

  • 親族である場合:遺言者との続柄がわかる戸籍謄本
  • 親族ではない場合:その者の住民票など
  • 法人である場合:その法人の全部事項証明書(登記簿謄本)など

相手が親族であれば、「遺言者の甥である山田太郎」など遺言者との続柄と氏名で相手を特定することが一般的です。
一方、親族ではない場合には相手の氏名や住所、生年月日で相手を特定します。
このような情報を誤りなく遺言書内に記すため、このような確認書類が求められています。

なお、遺産を渡す相手と遺言者とが同一の戸籍に入っている場合など1通の戸籍謄本で複数人の情報が確認できる場合には、同じ戸籍謄本を重複して複数通取得する必要はありません。

遺産に関する書類

公正証書遺言に個々の遺産を記す場合には、その遺産の情報を正しく記載するために次の書類が必要です。

  • 不動産:次の書類
    • 全部事項書証明書(登記簿謄本)
    • 固定資産税課税明細書または固定資産税評価証明書
  • 預貯金:通帳または残高証明書など
  • 有価証券:証券会社の残高証明書など
  • 自動車:車検証

不動産の全部事項証明書は、全国の法務局から誰でも取得が可能です。
土地と建物は別の不動産であるため、土地と建物それぞれの全部事項証明書を取得しましょう。

また、固定資産税課税明細書は毎年市区町村役場から送付される固定資産税の納付書に同封されています。
これを紛失している場合などには、不動産の所在地を管轄する市区町村役場から、固定資産税課税明細書を取り寄せてください。

なお、ここで挙げた財産は一例であり、これら以外の財産について遺言書に記載したい場合には、その財産を特定するための書類が必要となります。
具体的にどのような書類を集めるべきかわからない場合には、サポートを依頼している専門家か公証役場へ相談するとよいでしょう。

公正証書遺言に関するよくある疑問

最後に、公正証書遺言に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

自分で直接公証役場へ行けば公正証書遺言を作成できる?

公正証書遺言は、弁護士などの専門家へ依頼せず、自分で直接公証役場へ出向けば作成できるのでしょうか?

まず、弁護士などへ依頼せず、直接公証役場へ出向いて遺言書を作成すること自体は可能です。
ただし、公証役場はあくまでも作成したい内容を「公正証書化」する場所であり、法律相談をしたり遺言書の内容についてアドバイスを受けたりする場所ではありません。
遺言書の内容については、原則として自分で検討する必要があります。

たとえば、一部の相続人の遺留分(一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分)を侵害する内容の遺言書の作成を希望した場合であっても、一般的には公証人から「その内容は遺留分を侵害していて将来トラブルになるリスクがありますが、よいですか」などと確認されることはないでしょう。
そのため、法的には有効であったとしても、将来のトラブルの原因となる遺言書を遺してしまうリスクが生じます。

また、自分で公証役場と直接やり取りをする場合には、平日の日中に何度も公証役場へ出向く必要があるほか、必要書類も自分で集めなければなりません。

このように、弁護士などの専門家を介さずに公正証書遺言を作成することは可能であるものの、リスクや手間が生じます。
問題のない遺言内容を検討することは、さほど容易なことではありません。
そのため、せっかく遺言書を作ったにもかかわらず将来に問題を残してしまわないためには、弁護士など専門家のサポートを受けた方がよいでしょう。

公正証書遺言を元気なうちに作るのは早い?

現在元気なのであれば、公正証書遺言を作成するのはまだ早いのでしょうか?

結論をお伝えすれば、公正証書遺言はできるだけ早く、元気なうちから作成することをおすすめしています。
なぜなら、公正証書遺言を有効に作成することができるのは、意思能力が十分にある間のみであるためです。

仮に寝たきり状態となり、自分の意思がはっきりと表示できない状態となってしまえば、もはや公正証書遺言を作成することは困難です。
また、一般的には高齢になればなるほど判断能力が低下することから、非常に高齢となってから遺言書を作成した場合には、相続が起きた後で遺言の有効性が疑問視されやすいでしょう。

なお、遺言書作成後に仮に遺産を渡したい相手が変わるなどした場合には、遺言書を書き直すことが可能です。
遺言書はもっとも新しい日付のものが有効となりますので、一度作ったからといって変更できなくなるわけではありません。

まとめ

公正証書遺言を作成する際には、戸籍謄本や不動産の全部事項証明書などさまざまな書類が必要となります。
ただし、必要な書類は作成しようとしている遺言書の内容によって異なるため、実際に作成する際には公証役場やサポートを受けている弁護士などへ確認するとよいでしょう。

現在お元気な方の中には、「元気なのに、公正証書遺言を作るなどまだ早い」とお考えの方もいるかもしれません。
しかし、公正証書遺言はできるだけ早く作成することをおすすめします。
仮に認知症などとなれば、有効な遺言書を作成することが困難となったり、相続開始後に無効を主張されたりするリスクが高くなるためです。
そのような事態を避けるため、公正証書遺言の作成をご検討の場合には、できるだけ早く弁護士ご相談ください。

Authense法律事務所では、公正証書遺言の作成サポートに力を入れています。
公正証書遺言の作成をご検討の際には、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
公正証書遺言に関する初回のご相談は、60分間無料でお受けしています。

記事を監修した弁護士
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