コラム
公開 2021.03.31 更新 2022.03.14

M&Aによる事業承継の方法と成功のポイントを解説!

そろそろ事業承継をしたいけど、後継者がいない。そのような場合は、M&Aにより第三者に事業承継することも検討してはいかがでしょうか?ここでは、M&Aによる事業承継の方法と成功のポイントを詳しく解説していきます。

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M&Aによる事業承継を検討してみましょう!

どれほど優れた経営者の方であっても、寄る年波には勝てません。しかし、体力の限界を感じ、そろそろ引退したいと思っても、事業を承継してくれる親族もおらず、かといって大事な従業員たちの生活もかかっているので廃業もできない・・・と行き詰ってしまう状況の方も少なくないのではないでしょうか。このような場合に、M&Aにより第三者に事業承継をすることを検討してみてはいかがでしょうか。

会社のことを知らない「第三者」に対し、大事な会社や従業員たちを任せることに不安を感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、M&Aによる事業承継の方法と成功のポイントを解説いたします。

M&Aによる事業承継とは

M&Aによる事業承継とは

「M&Aによる事業承継」と言われてもいまいちピンとこない人も多いのではないでしょうか。
そもそも「事業承継」とは、後継者を見つけてきて、その後継者を「社長」という肩書に据えることだけを指すものではありません。経営権や事業用財産を後継者に承継させ、事業を円滑に承継させることをも含意しています。
そして経営権や事業用財産を後継者に承継させる方法として、第三者に株式を売却したり、上場会社に合併してもらったり、事業譲渡を行ったりすることをまとめて「M&Aによる事業承継」と呼びます。ですから、一言に「M&Aによる事業承継」と言っても、その方法は様々あり、勿論それぞれの方法ごとにメリットやデメリットがあります。個々の会社ごとに最適な方法も異なってきますので、どの方法を選択すればよいかわからない場合は専門家に相談しましょう。

今回は、「M&Aによる事業承継」の代表的な方法として「株式譲渡による事業承継」にスポットを当てて解説いたします。
先ほど事業承継とは、経営権や事業用財産を後継者に承継させることだと説明しました。株式会社における経営権とは議決権(=自社株式保有数)を確保することであり、承継する財産も自社株式が大きな割合を占めています。そのため、語弊を恐れずに言えば、「株式譲渡による事業承継」とは、第三者に自社株式を売却することで、会社の経営権と財産を第三者に承継させる方法を指します。

M&Aによる事業承継のメリット・デメリット

M&Aによって第三者に事業承継するメリットは、なにより“後継者が見つからない場合でも、事業を継続し、従業員の雇用を守ることができること”でしょう。その他にも、自己が保有している自社株式を売却するので、引退する経営者も“売却益”を得ることができます。また、取引先や金融機関との交渉次第ではありますが、連帯保証人を経営者から後継者に変更してもらうことで、保証から解放される可能性もあります。
また、よい売却先が見つかれば、事業がさらに発展し、従業員の生活もより豊かになる可能性を秘めています。他方、デメリットとして、よい売却先が見つからず、後継者と従業員との間で軋轢や不和が生じてしまうリスクを孕んでいます。
そういったリスクをできるだけ回避するには、「よい売却先」を探すことが肝心です。そのため、個人的に繋がりのある信頼のおける企業に打診したり、仲介業者を頼って多くの売却先候補を探すのも大事ですが、そもそも「よい売却先」にとっても事業承継するメリットがなければ話はまとまりません。したがって、売却先に「この会社を買いたい」と思わせるための準備も入念にしておきましょう。

M&Aによる事業承継の流れとポイント

M&Aによる事業承継の流れとポイント

続いてM&Aによる事業承継の流れやおさえておくべきポイントについて解説します。

STEP1 準備~会社の現状把握と課題の改善~

繰り返しになりますが、成功の秘訣は「よい売却先」を見つけることです。
しかし、そもそも買い手候補が現れてくれないと話ははじまりません。また複数の候補が現れてくれた方が、より適性の高い候補者を選別することができますし、さらに株式の譲渡金額の交渉もしやすくなるといったメリットがあります。
そのため、焦って売却先を探すよりは、第三者にとって「事業承継したい!」と思われるように、会社の財務状況の課題や法的問題などを洗い出し、可能な限り課題の改善に取り組んだうえで売却先を探すのがよいでしょう。独力での改善が難しいようであれば各専門家の助力を得ながら進めていきましょう。

また、会社の株式についても状況把握をしましょう。
というのも、経営権を確実に掌握するには、全株式の3分の2以上の株式を保有する必要があるため、3分の2以上の株式を購入できないのであれば、買い手にとっては大きなリスクとなるからです。
会社の株主構成、株主の保有株式数など、株式に関する現状発行株式数を確認・把握し、友好的な株主や、経営に関心の薄い株主に根回しして、3分の2以上の株式を売却できるよう手配しましょう。

STEP2 交渉~売却先の選定と売却価格などの条件交渉から契約書作成~

課題の改善が終われば、売却先を探しはじめましょう!
M&Aの仲介業者やコンサルなどに相談して売却先を探すのであれば、STEP1の課題の分析・改善についても併せて相談することができるかと思います。
買い手候補が見つかれば、事業譲渡先としての資質の見極めや条件の交渉が始まります。候補者は候補者で、こちらの企業価値を把握するための調査を行います(デューデリジェンスなどと呼ばれます)。交渉する条件には、売却価格は勿論のこと、役員や従業員の待遇、経営者の個人保証の引き継ぎなど様々なものが含まれます。
お互い納得する条件が決まれば契約書を作成しましょう。
条件交渉や契約書作成に自信がなければ弁護士に依頼することも可能です。

STEP3 円滑な事業承継のための引き継ぎ

契約締結まで終わったら、事業承継をスムーズに行うためにも、従業員や取引先への説明を行い、事業承継について理解を得られるようにしましょう。
M&Aによる第三者への事業承継の場合は、親族内承継や従業員承継と比べ、従業員や取引先の理解を得たり、信用や顧客といった無形資産の引き継ぎに苦慮する場合が多いです。場合によっては、事業譲渡する側の会社の経営者が、譲渡後の一定期間、役員や顧問として会社に残るなどして、新しい経営者と従業員や取引先などが上手くいくようサポートすることも検討するとよいでしょう。

M&Aによる事業承継をスムーズに進めるには

M&Aによる事業承継をスムーズに進めるには

以上のとおり、M&Aによる事業承継をスムーズに進めるには、各専門家や仲介会社との連携が大切です。
とりわけ、M&Aによる事業承継は、親族内事業承継とは異なり、会社の価値の把握や買い手候補との契約締結など、専門的な知識を必要とする場面が多いです。

また、買い手候補からみてよい会社にするためにも、社内整備・社外との契約書の見直し、株主の確定など、専門家の援助を必要とすることも多いので、早めに専門家に相談するとよいでしょう。

専門家に任せることで、経営者は、買い手候補の選定や技術・信用・顧客などの無形資産の引き継ぎに専念でき、スムーズに事業承継を進めることができるようにもなります。

まとめ

M&Aによる第三者への事業承継は、近年、後継者不足の企業も多いため、増加傾向にあります。
成功のポイントとしては、よい買い手候補と出会うために早めに準備をすること、専門的知識を必要とする手続が多いため信頼のできる専門家に相談することになります。
本業と並行しながら、準備を進めることは大変かと思いますが、早めに専門家に相談をして、スムーズに事業承継を進められるようにしましょう。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
大阪大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了。企業法務としては、債権回収、労働問題(使用者側)、倒産を中心に、個人法務としては、相続、過払金返還、個人破産、発信者情報開示などの解決実績を持つ。
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