事業承継(社外承継)を行う場合、株式譲渡以外の方法はあるのでしょうか?
株式譲渡以外の方法について、どのような方法があるのでしょうか?
今回は、事業を第三者に承継させる方法として、「事業譲渡」、「会社分割」、「株式移転・株式交換」の特徴や手続内容について、弁護士が詳しく解説します。
目次
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第三者への事業承継の方法について
事業を第三者に対し承継させる方法の一つとして、当該会社の株式を譲渡する方法をとることがあります。これを「株式譲渡」といいます。
「株式譲渡」を行う場合、会社はそのまま存続し、雇用関係や取引先との契約なども承継されます。手続きが比較的簡単ということが特徴です。
しかしながら、
- ・株式を譲渡した人に譲渡所得税がかかる(譲渡所得税=譲渡所得×20.315%)
- ・会社の債権や債務も引き継がれることになるので、譲受側としては慎重な調査が必要となり、時間やコストがかかる
- ・少数株主が多数いる場合は、株式を譲渡すること自体が困難
などのデメリットもあることから、会社によっては「株式譲渡」以外の選択肢を検討した方が良いケースも少なくありません。
以下では、事業を第三者に承継させる方法として、「事業譲渡」、「会社分割」、「株式移転・株式交換」の特徴や手続き内容について、解説していきます。
株式譲渡以外の方法~①事業譲渡~
「事業譲渡」とは、会社が有している事業の一部又は全てを譲受側の会社に譲渡する手続きのことです。
譲渡の対象としては、不動産や工場、商品などの有形財産だけでなく、知的財産権や特許権、ノウハウ、ブランドなどの無形財産も含まれます。
事業譲渡にあたり、債券や債務は基本的には引き継がれません。
- 【事業譲渡の主な流れ】
- ①事業譲渡契約の締結
- ②取締役会決議(株主総会決議が必要な場合もあり)
- ③事業の引継ぎ・譲渡代金の支払い
デメリットとしては、対象事業が関わる全ての契約(取引先、従業員など)に対し、個別に相手方の同意が必要となります。そのため、株式譲渡と比べ、細かい手続きが増えてしまう場合があり、完了までに時間がかかることが挙げられます。
また、譲渡側には、事業譲渡の売却益に法人税がかかり、譲受側は消費税の負担もあります。どの程度の税金がかかるかも検討することが重要です。
事業譲渡は、譲受側が、譲渡側の特定の事業を承継したい場合などに用いられることが少なくありません。また、個々の契約の移行手続きが必要となることから、大規模ではなく、中小規模の事業の承継にも使用される手続きとなります。
株式譲渡以外の方法~②会社分割~
会社分割には、既存の会社に事業の権利や義務を承継させる「吸収分割」と、新しく会社を設立して当該会社に事業の権利や義務を承継させる「新設分割」があります。
会社分割では、事業を包括的に承継させるため、雇用契約や取引先との間の契約などはそのまま譲受会社に承継させることができます。
また、承継の対価については、金銭ではなく、譲受会社の株式の交付とすることも可能なので、資金準備の必要がありませんし、株主総会の特別決議さえ可決できれば、分割により事業を承継させることができます。
しかしながら、以下に記載してあるとおり、会社分割は、会社法上の手続きを履践する必要があるため、債権者保護などの手続きが必要となります。
なお、税金面では「適格要件」を満たせば、対価について非課税となります。
譲受側も消費税の課税はありません。
- 【会社分割の主な流れ】
- ①取締役会の決議
- ②分割計画書の作成・事前開示
- ③株主総会の特別決議
- ④反対株主の株式買取請求
- ⑤債権者保護手続き
- ⑥事後開示書類の開示
- ⑦登記手続き
吸収分割の場合は、事業を譲り受ける会社との分割契約の締結も必要となります。
株式譲渡以外の方法~③株式移転・株式交換~
株式移転・株式交換とは、全ての発行済株式を他の会社に取得させ、完全親子会社関係を創設する手続きのことです。
他の会社が新設会社である場合は「株式移転」、既存の会社である場合は「株式交換」といいます。
株式移転・株式交換では、事業を包括的に承継させるため、雇用契約や取引先との間の契約などはそのまま譲受会社に承継させることができます。
また、承継の対価については、金銭ではなく、譲受会社の株式の交付とすることも可能なので、資金準備の必要がありませんし、株主総会の特別決議さえ可決できれば、分割により事業を承継させることができます。
また、株主総会の特別決議さえ可決できれば、全ての株主の同意が得られない場合でも、完全子会社化をすることが可能です。
なお、税金面では「適格要件」を満たせば、対価について非課税となります。
譲受側も消費税の課税はありません。
- 【株式移転・株式交換の手続の流れ】
- ①株式交換契約・株式移転計画の作成・事前開示
- ②株主総会の特別決議
- ③反対株主の株式買取請求権
- ④債権者保護手続き
- ⑤事後開示書類の開示
- ⑥登記手続き
事業承継方法の手続き選択について
以上のように、事業を承継させる方法は複数あります。
どの手続を選択するかは、①そもそも手続を遂行できるか、②対象事業の契約関係者が多いか否か、③税金、④譲渡後の会社形態などを総合的に考慮しながら判断すると良いでしょう。
契約関係者が多い場合は、事業譲渡ではなく、会社分割や株式移転・交換を用いることが多いです。
また、株式移転・交換は、完全親子会社を創出しますので、会社形態を見据えた上で、手続を選択することになります。
手続については、税金の計算も重要となりますので、税理士が関与することが必要です。
また、契約書の作成や会社法に沿った手続きなども必要となるため、事業承継に詳しい弁護士に早めに相談されることをお勧めします。
まとめ
事業承継を検討している場合には、各手続きのメリット・デメリットを把握した上で、どの手続きを選択するか、慎重に検討するようにしましょう。また、税理士や弁護士などの専門家に相談しながら適切に進めていかれることを強くお勧めします。
オーセンスの弁護士が、お役に立てること
事業譲渡、会社分割や株式移転について、必要な契約書などの作成などを含め手続き完了までの間、会社法などの法律に則り適切にアドバイスをさせていただきます。適切に事業を承継したいとお考えの方は、是非一度オーセンスの弁護士にご相談ください。
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