コラム
公開 2021.04.28 更新 2021.11.05

子どもへの生前贈与を非課税にするには?方法とポイントを解説!

できるだけ税金がかからないように子どもたちに生前贈与を行う方法を解説します。相続税は非課税枠が引き下げられ、遺産に対してできる限り税金が発生するような制度となっています。ご自身で築きあげた資産やご先祖から引き継いだ財産をできるだけ税金がかからずに家族に残してあげる方法として生前贈与が有効です。

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生前贈与とは?

生前贈与とは、生きている間にご自身の財産の一部あるいは全部を、特定の誰かに贈与することを指します。
遺言はご自身単独で作成することができますが、贈与は契約です。

贈与は契約ですので、贈与を受ける側(法律上は「受贈者」と言います)の承諾が必要となります。
受贈者側は贈与された分の利益を受けたことになるため、基本的には税金(贈与税)がかかります。

しかし、子や孫などの親族への贈与については、贈与税の非課税枠が設けられています。
非課税枠内であれば、贈与税がかからずに贈与できます。
こうして、生前贈与を非課税枠内で行っておくことで、相続税の対象となる遺産を減らし、相続税も減額させることができるのです。

生前贈与の非課税枠

遺産を相続する際には、相続税がかかります。
この相続税の対象となる遺産の額について、従前は、「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」によって算定される遺産額の範囲内については非課税とされてきました。
これを、相続税の基礎控除額と言います。

しかし、平成27年に税制改革がなされ、上記の基礎控除額の算定式が、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と変更されました。
このように相続税の基礎控除額が引き下げられたことで、相続税がかかる範囲が広くなりました。
これにより、相続の際に相続税が発生する世帯が増えることが懸念されるようになりました。

こうした相続税対策として、生前贈与は非常に有効です。
贈与の際には受贈者側に贈与税が発生しますが、この贈与税についても非課税となる枠が設けられています。
この贈与税の非課税枠内で生前贈与をすることによって、贈与税をかけることなく死亡時の遺産の額を減らして相続税も節税することができます。つまり贈与の際にも相続の際にも税金がなるべくかからないようにすることができるのです。
以下では、贈与税が非課税となる生前贈与の方法を紹介します。

暦年贈与

1月1日から12月31日までの1年間で、同じ人に対して110万円以下の贈与は非課税とされています。
こうした1年ごとの贈与のことを「暦年贈与」と呼びます。

この暦年贈与の非課税枠は受贈者一人ごとにあります。
そのため、例えば1年間に子や孫ら5人に110万円ずつを贈与すれば、合計550万円を非課税で贈与することができます。

ただし、この暦年贈与には注意点があります。
まず、相続人に対する贈与については、相続開始時から3年以内のものはさかのぼって相続財産に持ち戻されてしまうため、相続税の課税対象になってしまう点です。
したがって、贈与税の非課税枠内で相続人に対する贈与をしても、その贈与の3年以内に贈与者が亡くなった場合には、その贈与額が遺産に持ち戻され、相続税の算定基礎とされてしまいます。
この点を踏まえて考えると、子は法定相続人であるのに対し、孫はその親が存命の限りは法定相続人でありませんので、孫に贈与したほうが相続税対策としては有効です。

もう一つの注意点として、暦年贈与したつもりが定期贈与とみなされてしまうパターンがあります。
例えば毎年1月1日に100万円ずつ贈与することを10年繰り返していたなど、毎年同じ日付、同じ金額で贈与を行っていた場合には、暦年贈与とは認められず、定期贈与とみなされます。定期贈与とみなされると、贈与の開始時にすべての金額を贈与する意思があったものとして一括して贈与税が課せられます。

このケースの場合、10年で100万円ずつ贈与したつもりが暦年贈与と認められず、1年間で合計1,000万円贈与したとみなされ、受贈者(子、孫)側に多額の贈与税が課せられることが起こりえます。

こうした事態を回避するためには、毎年贈与の日付や金額を変えたり、贈与をするごとに贈与契約書を作成したりして対策をとる必要があります。
また、送金先口座も、受贈者が自由に管理したり引き出したりすることのできる口座にしておくことをお勧めします。例えば、毎年同じ時期に同じ金額だけ入金されていて、一度も出金された記録がないような受贈者名義の口座がある場合、税務署は、その口座に入金されている金額は受贈者に対する生前贈与とはみなさず、被相続人の「名義預金」とみなすことがあります。このように名義預金と判断された場合は、相続税の算定基礎に算入されてしまうため、相続税の対策をしたことにはならないので注意が必要です。

生前贈与で贈与税を減らすためにできること

生前贈与で贈与税を減らすためにできること

上記の暦年贈与が相続税、贈与税の節税方法として最も有効で、かつ実施しやすい方法として知られています。
ただ、贈与税を減らす方法としては、暦年贈与以外にも、税法上の特例を利用する方法があります。
ここでは、それらの方法を紹介していきます。

住宅取得資金

贈与税を非課税とする一つの方法に、「住宅取得資金の贈与の特例」というものがあります。
この特例は、子や孫が住宅を新築・取得・増改築したりするための資金、費用を贈与することで利用でき、住宅の新築・取得・増改築の時期や住宅の種類に応じて、500万円から最大1,500万円までが非課税額として設定されています。

ただ、この特例を使うためには、住宅の種類や、受贈者の属性などについて、さまざまな利用条件が細かく定められていますので、実際に利用できるかどうかは、専門家のアドバイスのもと、事前に調査や確認が必要です。
また、この特例が適用されるためには、その贈与した資金が実際に住宅の新築・取得・増改築費用として支払いに充てられたことの証明(建築業者との契約書や領収書など)も必要となります。

教育費としての贈与

住宅取得資金と同様の特例として、30歳未満の子や孫の教育資金を贈与するというものがあります。
最大1,500万円までが非課税とされています。

ただし、この特例の適用を受けるためには、金融機関において専用の口座を新たに開設し、その金融機関を経由して税務署に届け出ることが必要になるほか、住宅取得資金と同様に、この口座から教育資金を支出するためには、実際に教育費として費消されたことの証明が必要となります。
また、受贈者が30歳に達する日など、教育資金口座の契約終了日までに、教育資金として費消されずに残った贈与額については、別途、贈与税の課税対象になりますので、受贈者が贈与税の申告を行わなければならないことがあります。また、贈与者が死亡した時点で、教育資金として消費されずに残った贈与額については、一部、相続税が課税されることがあります。

結婚・子育て資金

結婚、子育て資金として、20歳以上50歳未満の子や孫に贈与した資金についても、特例で非課税とされています。
一人につき最大1,000万円までが非課税とされています。

ただし、この特例の適用を受けるためには、金融機関において専用の口座を新たに開設し、その金融機関を経由して税務署に届け出ることが必要になるほか、こちらも他の特例と同様に、この口座から結婚・子育て資金を支出するためには、実際に結婚、子育て資金として費消されたことの証明が必要です。
また、教育費としての資金贈与の特例と同様、贈与者が亡くなったときに口座内に残額がある場合や、受贈者が50歳に達した時など結婚・子育て資金口座の契約終了日に残額がある場合には、相続税や贈与税の課税対象となることがあります。

夫婦間の居住用不動産の贈与の際の配偶者控除

夫婦としての婚姻関係が20年以上継続している場合、配偶者への居住用不動産の贈与や居住用不動産の購入資金の贈与について基礎控除枠が拡大されます。

20年以上婚姻関係にある夫婦について、配偶者に対して居住用不動産や居住用不動産を購入するための資金を贈与した場合、通常の110万円の基礎控除に加えて、最大2,000万円までの控除が受けられます。
つまり、不動産の価格が2,000万円以下であれば贈与税が非課税となり、2,000万円を超える場合でも、超えた部分についてのみ贈与税の課税対象となります。

この特例についても、税務署に申告をする必要があるほか、贈与後もその不動産に住み続ける見込みがあるかなどの適用条件がありますので、条件を満たすかについて事前に確認する必要があります。

相続時精算課税

相続時精算課税とは、将来遺産となる財産を先に子や孫ら相続人に渡しておき、相続発生時に精算するという制度です。
生前において最大2,500万円までが贈与税の非課税枠として認められています。贈与額が2,500万円を超えた場合には、超えた分に対して一律20%の贈与税がかかりますが、その後の相続税の申告時に、相続時精算課税度により納めた贈与税が、相続税から控除されます。

ただし、この制度を利用するには税務署への毎年の申告が必要になるほか、この制度は暦年課税(毎年110万円の基礎控除)との併用はできず、一度、相続時精算課税の手続きをしてしまうと、暦年課税に戻すことはできません。
この制度を利用する場合には、慎重な見極めが必要です。

生命保険

生命保険は、その内容によって課税される税金の種類が変わります。
受け取った保険金には相続税・贈与税が課せられることがありますが、その内容、計算方法は保険契約の内容によって異なります。

例えば、相続税のかかる契約形態の死亡保険金の場合には、法定相続人が死亡保険金を受け取るとすると、「500万円×法定相続人の数」までの控除を受けることができます。
配偶者と子1人の合計2人が相続人の場合には、1,000万円まで税金がかかりません。
このように、生命保険には相続税の控除額があるため、相続税対策としては有効です。

ジュニアNISA

ジュニアNISAは、0歳から19歳までの未成年者を対象としたNISAです。
年間80万円までの資金を5年間非課税で運用(NISA枠での株式売買)できます。
資産運用したことによる収益に対して非課税となる点で有効な制度と言えます。
例えば、このジュニアNISAを利用し、祖父母から孫に対し、ジュニアNISAの上限額である80万円(年間)を毎年5年間継続して贈与し続ければ、贈与税の非課税枠の範囲内の贈与であるため、結果として、総額400万円を、贈与税をかけることなく生前贈与することができます。また、ジュニアNISAを利用した収益も非課税となるため、この点でも節税効果があります。

「夫婦間の居住用不動産の贈与の際の配偶者控除」と「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」の組み合わせ

「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」とは、自宅などの居住用財産を売却して譲渡所得(購入金額と売却金額との差額分の利益)益を得た場合でも、3,000万円までは譲渡所得税が非課税になるという制度です。

上記の「夫婦間の居住用不動産の贈与の際の配偶者控除」とは、配偶者に居住用不動産または居住用不動産の取得資金を贈与した場合に、贈与税を2,000万円まで非課税とする制度ですが、この「配偶者控除」と「3,000万円の特例」とを組み合わせることで、譲渡所得税の計算の際に控除できる金額(3,000万円)を2倍(2人分)にして、大幅に節税することができます。

例えば、次のようなケースです。

  • 1.自宅不動産のうち2,000万円に相当する持分を、配偶者に贈与します。上記の「配偶者控除」を利用すれば、贈与税はかかりません。
  • 2.贈与してから一定の時期が来たら、この自宅を売却します。この自宅売却時に「居住用財産の特例」が適用され、譲渡所得税の計算にあたって3,000万円の基礎控除が受けられます。3,000万円の控除は、夫婦それぞれが受けることができるため、2人分の6,000万円が基礎控除の対象となります。

生前贈与のデメリット

生前贈与のデメリット

ここまで、生前贈与を活用した税制面でのメリットをお伝えしました。
しかし、生前贈与はメリットだけではありません。
次のようなデメリットもあります。

贈与したことで生活資金が枯渇することも起こりうる

自分が思っていた以上に長生きするということは幸せなことですが、生前贈与を行いすぎて、手元にお金がないという事態が起こりえます。
特に老後は体が衰え、施設に入所しなければならないということもあります。
そのときに必要な資金が残っていないということもありえるのです。
生前贈与は計画的に行う必要があります。

贈与してしまったものは返してもらえない

贈与してから受贈者と揉め事が起きてしまったとしても、法律上は、贈与してしまったものについて、返してもらうことはできません。
生前贈与を行う際には、こうしたデメリットも考えておく必要があります。

まとめ

できる限り多くの財産を家族に残してあげたいというのは、誰しも思うことです。
相続対策を何もしないまま亡くなってしまうと、遺された相続人が大きな相続税を負担させられ、生活に困窮してしまうような事態も起こりえます。
そうした事態を回避するため、贈与税の基礎控除や特例を利用して生前贈与を行っておくというのは非常に有効な方法です。

ただし、贈与した後で相手とトラブルになってしまったり、贈与しすぎて手元にお金がなくなってしまうなどの不測の事態もありえます。
こうしたメリット、デメリットを十分に検討したうえで、生前贈与を活用していくようにしましょう。

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オーセンスでは、相続税に詳しい税理士と提携するなど、相続問題に関しワンストップのサービスを提供しています。相続税の対策だけではなく、将来、相続人の間で紛争にならないよう、どのような対策をした方がよいかなど、相続の発生前に考えるべきことはたくさんあります。ぜひ、ご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
一橋大学法学部法律学科卒業。相続を中心に、離婚、不動産法務など、幅広く取り扱う。相続人が30人以上の複雑な案件など、相続に関わる様々な紛争案件の解決実績を持つ。
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