遺言書の内容に納得がいかないというケースもあるでしょう。遺言書がある場合は必ず遺言書に従わないといけないわけではなく、内容に問題がある場合には無効となることもあり得ます。遺言書が無効になるのはどんなケースなのか、わかりやすく解説します。
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遺言書が無効になるのはこんな場合
遺言書には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があります。
いずれの遺言書も、作成の方式が民法で定められています。
民法の方式が守られていない遺言書は、それだけで無効となります。
自筆証書遺言と秘密証書遺言は、遺言者がご自身で作成するため、民法に定められた方式が守られていないことがよくあります。
特に、自筆証書遺言は遺言者ご本人以外の方の関与なく作成されるので、民法上の方式が守られていないことが多いです。
こうした、民法上の方式が守られていない遺言書は無効となります。
また、法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言、秘密証書遺言は、家庭裁判所で内容の確認を行わなければなりません。この手続を「検認」と呼びます。
さらに、認知症の方が作成された遺言書など、遺言能力を欠いた状態で作成された遺言書も無効となります。
その他にも、遺産に含まれない財産が遺言書に含まれていたり、他にも遺言書が存在した場合には、遺言書が無効となることもあります。
方式が守られていない
先ほど紹介したように、遺言書には、自筆証書遺言、秘密証書遺言、公正証書遺言の3種類があり、それぞれ作成方式が異なります。それぞれにどのような特徴や方式があるのかを把握し、どのような場合に無効となってしまうのかを理解しておく必要があります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、その全文、日付、氏名を自書し、押印しなければなりません(民法968条1項)。
自書、つまり、自分で手書きすることが必要です。
遺言書の中に加除その他の変更箇所があれば、その部分について変更の旨の記載と押印が必要です(同条3項)。
これらが守られていない遺言書は、それだけで無効となります。
例えば、全文と氏名の自書があっても、日付の記載漏れがあれば無効です。
日付については「〇月吉日」という記載の仕方も無効であるとされています。
また、全文がワープロで作成され、署名だけが自書であっても無効となります(ただし、財産目録だけならばワープロでも可能とされています、同条2項)。
自筆証書遺言は、遺言者が一人で作成するため、方式が守られていないことも多々あります。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、以下の方式が定められています(民法970条)
- ・遺言者が遺言者に署名、押印すること
- ・遺言者が遺言書を封じ、遺言書と同じ印章で封印すること
- ・遺言者が公証人及び証人2名以上の前に封書を提出し、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること
- ・公証人が、その証書を提出した日付、及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともに署名し、押印すること
これらが一つでも守られていなければ、その遺言書は無効です。
また、証人については、未成年者や、遺言者の相続人やその配偶者、公証人の配偶者、4親等内の親族等の欠格事由があります(民法974条)。
公正証書遺言
公正証書遺言には、以下の方式が定められています(民法969条)
これらが一つでも守られていなければ、その遺言書は無効です。
- ・証人2人以上の立会いがあること
- ・遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
- ・公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること
- ・遺言者及び証人が、各自これに署名し、押印すること(ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して署名に代えることができる)
- ・公証人が、その証書は上記の方式に従って作成されたものである旨を付記して、署名、押印すること
手続きが守られていない
3種類の遺言のうち、自筆証書遺言、秘密証書遺言については、遺言を執行するためには、家庭裁判所での検認という手続きが必要です(民法1004条)
この検認という手続きは、相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして、遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
ただし検認は、遺言書を有効とするものではなく、検認の手続きを経たから有効というわけではありません。
自筆証書遺言、秘密証書遺言については、法律上は保管者の定めがなく、遺言者がご自身で保管されていることがあります。
そのため、遺言者が亡くなられた後、遺産を整理する中で、突如として遺言書が発見される場合があります。
秘密証書遺言は当然封印されていますし、自筆証書遺言でも封がされていることがあります。
その場合、家庭裁判所での検認において、相続人の立ち会いのもとで開封されなければなりません。
被相続人に遺言能力がない
法律上、遺言書は、15歳以上の者が作成できると定められています(民法961条)。
これは、遺言書を作成するには、15歳程度以上の判断能力が必要とされているということです。
法律上は、遺言能力と呼びます。
この遺言能力を欠いて作成された遺言書は無効です。
遺言能力がなく無効であるとされる典型例は、認知症を発症している方が作成した遺言書の場合です。
公正証書遺言であっても無効とされることがあります。
遺言書の内容が現状と合致しない
遺言書の内容が遺産の内容と合致していない場合、遺言の内容無効とされることがあります。
遺言者が死亡した際に、存在しない財産について遺贈する旨を定めている場合(民法996条)や、
遺言により遺贈を受ける人が遺言者よりも先に死亡している場合です(民法994条)。
他にも遺言書がある
遺言書は、生前はいつでも撤回できますし、何通でも作成することができます。
遺言書が複数ある場合、最新の日付のものが有効とされ、前の日付の遺言書は、最新の遺言書と抵触する部分は撤回したものとみなされます(民法1023条)。
遺言書の無効を主張したい場合の対処方法
遺言書の内容が自分にとって納得がいかないものであった場合、
まずは、遺言書が有効なものかどうかを確認しましょう。
過去の裁判例においても、遺言書が無効とされたケースがあります。
確認すべき項目
方式の確認
先に挙げたように、遺言書は法律上の方式に則って作成される必要があります。
公正証書遺言の場合、方式の不備は少ないと考えられますが、それでも念のため確認しておくべきです。
自筆証書遺言であれば、手書きかどうか、日付の記載はあるか、押印はあるか、訂正箇所への押印があるか等、確認しましょう。
秘密証書遺言でも、署名押印はあるか、封印と遺言書の印章が同じか、封筒に公証人、証人、遺言者の署名押印があるかも確認してください。
手続の確認
法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言、秘密証書遺言で封印されている場合は、家庭裁判所での検認手続なく開封されていないかを確認しましょう。
遺言者以外の保管者がいた場合には、保管に至る経緯や保管状況を確認し、遺言者が保管していた場合にも、保管状況や遺言書発見に至る経緯も確認してください。
遺言能力の確認
遺言書の日付を確認し、その当時、すでに認知症を発症していなかったかなど、遺言者の遺言作成当時の常況を確認しましょう。
遺言の内容、他の遺言の有無等
遺言書の内容に、遺産に含まれていないものが入っていないか、他に遺言書がないかを確認しましょう。
これらの確認は、ご自身で行うこともできますし、弁護士に相談すればアドバイスをしてもらうことができます。
実際に行う手続
遺言書が無効であると考えた場合、受遺者・相続人と話しあう必要があります。
話し合いがつかない場合は、裁判所で争い裁判所に遺言書の有効・無効を判断してもらうことになります。
受遺者を含めた相続人全員が遺言書の無効に納得している場合
遺言書により遺贈を受ける人を受遺者と呼びます。
受遺者が相続人である場合もありますし、相続関係にない第三者である場合もあります。
遺言書の無効を主張する場合は、まず、この受遺者と話しあう必要があります。
遺言書が無効であることを受遺者が納得した場合、相続人で遺産分割を行うことになります。
受遺者が相続関係にない第三者である場合、遺贈を放棄してもらい、相続人間で遺産分割を行います。
受遺者が相続人でもある場合には、受遺者を含めて遺産分割を行うことになります。
遺産分割協議を行い、話し合いがつかなければ、家庭裁判所で遺産分割調停、審判を行うことになります。
遺言書の効力について相続人間や受遺者との間で争いある場合
遺言書が無効であることについて受遺者と話し合いがつかず、争いがある場合には裁判所での解決を図ることになります。
遺言が執行される前であれば、受遺者や他の相続人を被告として、地方裁判所に対して遺言無効確認訴訟を起こすことになります。
遺言書に基づいて、遺産の不動産の登記が移転されたり、遺言者の預金が解約されるなどの遺言執行されてしまっていたりした場合は、移転登記の抹消や金員の返還を求める訴訟を地方裁判所に対して起こし、その訴訟の中で遺言書の無効を主張し、裁判所に判断してもらうことになります。
方式が守られているかの確認方法
遺言書は、民法の定める方式に従って作成されていなければ無効です。
まずは、この方式が守られているかどうかを確認しましょう。
自筆証書遺言の場合
以下の項目を確認しましょう。
- ・全文(財産目録を除く)が遺言者による手書きか
- ・日付、氏名が手書きされているか
- ・押印されているか
- ・加除変更箇所に加除変更を加える旨と押印があるか
公正証書遺言
以下の項目を確認しましょう。
- ・公証人が立ち合って作成されたものか
- ・証人はだれか、証人適格があるか
- ・遺言者の署名、押印があるか
- ・どこで作成されたものか(公証役場ではない場合には要注意)
秘密証書遺言
以下の項目を確認しましょう。
- ・遺言書への遺言者の署名押印の有無
- ・封の押印(遺言書の押印と同じ印章か)
- ・公証人、証人の署名、押印
- ・証人の適格性
手続きが守られているかの確認方法
法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認がなされているかも確認しましょう。
被相続人の遺言能力の確認方法
遺言書作成当時において、遺言者が遺言書を作成できるだけの能力、状況にあったかも確認しましょう。
目安は遺言書作成当時に15歳程度の判断能力があったかどうか
生前の遺言書作成当時の遺言者が正常な判断ができたかどうか記憶喚起してみてください。
当時に交わした会話を思い返したり、メールのやり取りを見返したりしましょう。
遺言能力なしとされる典型例は認知症の有無
当時、病院に通っていたかどうか確認してみてください。
相続人であれば、病院のカルテや看護記録、訪問介護の業務日報等を取り寄せることもできます。
特に、看護記録には、病院での遺言者の言動が細かく書かれていることが多いです。
その中に、日常会話が成り立たない様子などが記載されていないか確認しましょう。
遺言内容の合理性も含めて検証する
遺言書作成当時の遺言者の状況から、遺言書を作成する動機や経緯があったかどうかを遺言書の内容が不自然ではないかなどを確認してください。
また、以前のものでも良いので、併せて他にも遺言書を作成していないかも確認しましょう。
以前の遺言書を今回の遺言書で変更する理由があったかどうかということの確認も大切です。
公正証書遺言であっても無効とされることもある
公正証書遺言でも、裁判所で無効と判断されることがあります。
特に、公証役場で作成されたものではなく、病院や介護施設に公証人が出張して作成しているような場合は、注意が必要です。
典型的な例としては、遺言者が認知症を発症して入院されているような場合、その当時に身の回りの世話をしていた人が基本的な遺言書の原案を作って公証人に伝え、公証人が出張して、付添人が遺言者を半ば誘導して意思確認がされている場合があります。
ですので、公正証書遺言であっても、作成された日付、その日付当時の遺言者の状況、遺言書が作成された場所等を確認すべきです。
遺言書の内容が現状と合致するかの確認方法
遺言書の内容が、遺産の内容と合致するかも確認しましょう。
遺産の内容については、不動産については登記名義を確認します。
不動産が不明の場合でも固定資産税の納付書等が残っていないか探してみてください。
預貯金については相続人であれば銀行に照会することができます。
株式等の有価証券についても相続人であれば証券会社等に照会が可能です。
そして、遺産の内容と遺言書の内容が合致しているかを確認しましょう。
他にも遺言書がないかの確認方法
公正証書遺言の有無は、全国のどこの公証役場に対しても照会すれば回答が得られます。
法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言、秘密証書遺言は、どこに保管されているのかがわからないため、遺言者の自宅などを探してみる必要があります。
銀行の貸金庫に入っている場合もありますので、そうした保管場所がないかどうかも遺産整理する中で探してみましょう。
まとめ
自分にとって納得できないような内容の遺言書がでてきたからといって、慌てる必要ありません。まずは、遺言書の方式、手続が法律上の要件を満たしているか確認しましょう。
法律上の要件を満たしていても、相続開始時存在しない財産が遺言に含まれていることもありますので、その遺言書よりも後に書かれた遺言書がないかも確認しましょう。
さらに、遺言作成当時に被相続人に遺言能力がないことから遺言書が無効とされることもあります。
公正証書遺言であっても、遺言能力を欠いていたとして無効とされることもあります。
加えて、遺言書が有効としても最低限の相続人の権利として遺留分があります。
これらの相続人としての権利、主張が認められるかどうか、見通しや主張、立証方法等を含めて適切なアドバイスをしてくれるのが弁護士です。
遺言書について疑問に感じることがあったら、まずは弁護士に相談してみましょう。
弁護士に相談することで解決への糸口が見つかるはずです。
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