コラム
公開 2023.02.27

単体1248_新規_生前整理とは?メリットや進め方のポイントを弁護士がわかりやすく解説

生前整理とは、元気なうちに身の回りの整理をすることです。
あらかじめ身の回りの整理をしておくことで、自分が亡くなった後の家族の負担を軽減できる点などがメリットです。

では、生前整理は、どのように進めていけばよいのでしょうか?
今回は、生前整理のメリットや生前整理の進め方などについて、弁護士がくわしく解説します。

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生前整理とは

生前整理は法律用語ではなく、法令で定義のあるものではありません。
しかし、一般的には、自分が生きているうちに自分の身の回りの整理をしておくことを指すことが多いでしょう。

日本ではもともと生きているうちに「死」について考えることは縁起が悪いとされ、タブー視されてきました。
しかし、昨今の「終活」ブームのなか、生前に死への対策をする人は珍しくなくなり、生前整理をする人も増えつつあります。

遺品整理との違い

生前整理と対比して使用される言葉に、「遺品整理」があります。
遺品整理とは、家族などが亡くなった後、家の中に遺っていた「遺品」などを片付けることを指します。

生前整理と遺品整理の主な違いは、次のとおりです。

  生前整理 遺品整理
誰が行うか 自分で行う 家族が行う
いつ行うか 本人の生前に行う 本人が亡くなってから行う

生前整理の種類

具体的な「生前整理」が何を指すのかは、状況によって異なります。
ただし、一般的には、次の2つの整理を指すことが多いでしょう。

身の回りの「モノ」の整理

生前整理の1つ目は、身の回りの「モノ」を整理することです。

長年暮らしてきた家は、多くの物であふれていることが少なくありません。
たとえば、衣服や食器、写真、書籍、趣味で集めた品物などです。

生前整理として、これらのうち手元に残さないものは捨てたり、人にあげたり、売ってお金に換えたりすることなどが考えられます。
現像した写真などは、データ化して保存することもあるでしょう。

荷物が多い場合には、専門業者に依頼して整理をする場合もあります。

財産の整理

生前整理の2つ目は、財産を整理することです。
たとえば、使っていない銀行口座を解約したり、生前贈与をしたりすることなどが考えられます。

こちらについては、後ほど詳しく解説します。

生前整理の主なメリット

生前整理をすることには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
主なメリットは、次のとおりです。

遺族の負担を軽減できる

生前整理の最大のメリットは、自分が亡くなった後の家族の負担を軽減できる点にあります。

まず、同居していなかった家族が遺品整理をすることになった場合、どこに何があるのかわからないことが一般的です。
そのため、遺品整理をしようにも、何から手を付けたらよいのかわからず、途方に暮れてしまう場合が少なくないでしょう。

家族が行う場合には、同時に銀行預金の解約など相続手続きも進めなければなりません。
しかし、通帳などの在り処がわからなければ、これを探すだけでもひと苦労です。

また、自分で集めた物でなければ、何が大事で何が大事でないのか判断することも容易ではないでしょう。
そのため、捨てるに捨てられず、整理が進められないことにもなりかねません。

あらかじめ生前整理をしておくことで、このような家族の負担を大きく軽減することが可能となります。

自分の気持ちがすっきりする

生前整理の2つ目のメリットは、自分の気持ちがすっきりすることです。

生前整理は「死」に向けて行うものではありますが、決して後ろ向きのものではありません。
長年の生活で増えた物を片付け、すっきりした部屋で暮らすことで、そこからまた人生を歩んでいく活力が生まれやすくなるでしょう。

相続トラブルの防止につながる

生前整理をしておくことで、相続トラブルの防止につながる可能性があります。

相続トラブルは、相続人同士が疑心暗鬼となったことから発生するケースが少なくありません。
たとえば、相続人の1人が亡くなった人(「被相続人」といいます)のお金を使い込んだり遺品を隠したりしたのではないかなどと疑われたことから、争いが勃発するなどです。

生前整理の一環で自分の財産一覧表を作成したり、家がすっきりして大事なものの在り処がわかりやすくなったりすることで、このようなトラブルを避けることにつながります。
また、遺言書まで作成しておくと、相続トラブルを防ぐ効果がさらに大きくなるでしょう。

生前整理を行う際のポイント

生前整理を行う際には、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
ここでは、生前整理を行うポイントについて解説します。

一気にすべてをやろうとしない

生前整理は、一気にすべてをやろうとしないことがポイントです。

長年の生活で積み重なった物は膨大であり、すぐに片付けきれるようなものではありません。
一気にやろうとしてしまうと途中で疲れてしまい、なかなか整理が進まなくなってしまうでしょう。

また、一気にやろうとすると途中で面倒になってしまい、「すべて捨ててしまおう」という極端な思考になってしまう可能性もあります。
必要なものまで捨ててしまえば、その後の生活が不便になって結局買い直すことになるなど、不都合が生じるかもしれません。

そのため、生前整理には時間がかかることを知っておき、「今週は衣服だけ」「今週は書籍だけ」「今週は預金を解約しよう」というように、小分けにして進めていくとよいでしょう。

家族に相談しながら行う

生前整理をする際には、家族にも相談をしながら行うとよいでしょう。

たとえば、自分にとっては「ただの安い食器」であったとしても、家族にとっては「小さい頃の食卓を思い出す、大事なお皿」かもしれません。
家族に相談し、可能であれば家族と共に行うことで、家族が欲しい物は持っていってもらうことが可能となります。

また、いざというときに備え、家族にどこに何があるのかを教えるきっかけともなります。
信頼できる家族に財産の内容や通帳の在り処などを教えておくことで、相続が起きた際の手続きがスムーズとなりやすいでしょう。

「モノ」の整理は買取業者などの活用も検討する

物が多い場合には、自分ですべてを整理することは容易ではないでしょう。
また、物をため込んでしまいやすい人の場合には、自分で整理をしようとするとほとんどの物が捨てられず、いつまで経っても片付かないということにもなりかねません。

そのため、思い切って生前整理の専門業者や買取業者などに依頼することも一つの手です。
こうすることで、一気に生前整理が進むことでしょう。

ただし、生前整理を請け負う業者は玉石混淆であり、中には悪質な業者もいるようです。
依頼する際には信頼できる業者を選び、自分のみならず家族にも立ち会ってもらうとよいでしょう。

生前整理(財産整理)の進め方・やり方

生前整理のうち、財産の整理はどのように進めていけばよいのでしょうか?
基本的な進め方は、次のとおりです。

自分の財産を洗い出す

財産の整理は、初めに自分の財産を洗い出すことから始めます。
財産とは、たとえば次のものなどです。

  • 不動産(土地・建物)
  • 預貯金
  • 証券口座
  • 会員権
  • 貴金属

この段階では、金額や価値にかかわらず、細かい財産もすべて洗い出しておくとよいでしょう。

併せて、「財産」ではありませんが、契約しているサブスク(継続課金)サービスやクレジットカードなどについても洗い出しておくことをおすすめします。
特に、自動引き落としになっているサブスクサービスは契約自体を忘れていることもあるため、通帳やクレジットカードの明細などを確認して、洗い出すとよいでしょう。

財産の一覧表を作成する

次に、洗い出した財産やサブスクサービスなどを、一覧表にまとめましょう。
財産の一覧表をつくる目的は、主に次の2点です。

  1. 処分する財産などを自分が検討するため
  2. 自分の死後、家族に自分の財産を伝えるため

一覧表には決まった様式はなく、手書きであってもパソコンなどで作成しても構いません。
ただし、パソコンで作成した場合には、いざというときに家族が開けない可能性があるため、印刷をしておくとよいでしょう。

不要ものは処分・解約する

作成した一覧表を確認しながら、財産やサービスの整理を進めます。
たとえば、次のことなどが考えられます。

  • 少額しか入っていない銀行口座の解約
  • ほとんど使っていない証券口座の契約
  • 使っていないサブスクサービスの解約
  • 使っていないクレジットカードの解約
  • 使っていない会員権の売却

これらを行い財産やサービスの「数」を減らしておくことで、自分の財産の全容が把握しやすくなります。
また、いざというときに家族が行う相続手続きの負担も、大きく軽減することが可能となるでしょう。

これと併せて、先送りにしているトラブルがあれば、解決へ向けて動くことも検討するとよいでしょう。
たとえば、とうの昔に亡くなった故人名義の不動産がある場合や、隣地との境界が定まらない土地がある場合などです。
これらのトラブルは、今のうちに解決しておかなければ、次世代まで引き継がれてしまうためです。

そのため、生前整理をきっかけに、弁護士へ相談しておくことをおすすめします。

生前贈与を検討する

財産の全容が確認でき、今後の生活に余裕がありそうな場合には、子どもや孫などへの生前贈与も検討するとよいでしょう。
生前贈与とは、生きているうちに、自分の財産を渡しておくことです。

生前贈与をする相手に、特に制限はありません。
そのため、「あげます」「もらいます」という意思の合致さえできるのであれば、誰に対してであってもすることができます。

ただし、高額な財産を贈与した場合には、贈与税にも注意が必要です。
贈与税は「もらった側」に年間110万円の非課税枠がありますが、これを超えると納税義務が発生するため、あらかじめ税理士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

また、子どもが複数いるにもかかわらず一部の子どもにだけ多額の贈与をした場合には、相続の際にトラブルとなる可能性があります。
この点で心配な場合には、弁護士へご相談ください。

遺言書の作成を検討する

生前整理の一環として、遺言書の作成も検討するとよいでしょう。
遺言書とは、自分が亡くなった時点で遺っていた財産の行き先などを、生前に決めておくための書類です。

すべての遺産について行き先の決まった有効な遺言書があれば、相続発生後、相続人同士で遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」といいます)をする必要はありません。
このことから、遺言書を作成しておくことで、相続トラブルが防止できる可能性が高くなります。

ただし、無効な遺言書やあいまいな遺言書があれば、むしろ相続トラブルの原因となってしまいかねません。
そのため、遺言書は無理に自分一人で作成せず、弁護士など専門家のサポートを受けて作成した方がよいでしょう。

まとめ

生前整理とは、自分が元気なうちに、物の整理や財産の整理をしておくことです。
生前整理をきちんと行っておくことで、いざというときにおける家族の負担軽減につながるでしょう。
また、生前整理の一環として遺言書を作成しておくことで、相続トラブルの予防ともなります。

ただし、問題のない遺言書を自分で作ることは、容易ではありません。
そのため、遺言書の作成は、弁護士などの専門家に相談して行うことをおすすめします。

Authense法律事務所には、相続トラブルの解決や遺言書の作成にくわしい弁護士が、多数在籍しています。
生前整理の一環としえて遺言書の作成をご検討の際や、生前整理として先送りにしていたトラブルを解決したいとお考えの際には、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
相続や遺言に関するご相談は、初回無料にてお受けしています。

記事を監修した弁護士
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