コラム
公開 2023.02.27

単体1247_新規_贈与契約書とは?書き方のポイントを弁護士がわかりやすく解説

贈与契約書とは、贈与証拠を残すために作成する書類です。
贈与自体は口頭でも成立しますが、契約書を残すことで、「言った」「言わない」のトラブルを避ける効果を期待できます。
また、税務上や名義変更手続きの必要性などから、贈与契約書を作成する場合もあるでしょう。

では、贈与契約書は、どのように作成すればよいのでしょうか?
今回は、贈与契約書のサンプルを紹介するとともに、贈与契約書の作成ポイントなどについて弁護士がくわしく解説します。

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贈与契約書とは

贈与契約書とは、贈与の証拠を残すために作成する書類です。
贈与契約書は、贈与の対象物や贈与の日付などを記載したうえで、財産をあげた人(「贈与者」といいます)と、もらった人(「受贈者」といいます)が署名捺印をして作成します。

贈与契約の成立には書面は要件とされておらず、口頭の合意のみでも成立します(民法549条)。
ただし、次で解説するさまざまな理由から、贈与契約書を作成するケースが少なくありません。

贈与契約書が必要な理由

贈与契約書は、何のために作成するのでしょうか?
贈与契約書を作成する理由としては、主に次のものが挙げられます。

理由1:当事者間のトラブルを予防するため

先ほども解説したように、贈与契約は口頭であっても成立します。
ただし、口頭で約束をしたのみでは、「言った」「言わない」のトラブルとなる可能性が否定できません。

また、当事者同士ではトラブルにならなくとも、贈与者が亡くなった後で、他の相続人とトラブルとなる可能性もあるでしょう。
たとえば、「贈与ではなく、勝手にお金を使い込んだのではないか」と疑われるケースなどが考えられます。

きちんと贈与契約書を交わしておくことで贈与の事実が明確になるため、こういったトラブルを予防することが可能となります。

理由2:不動産登記など名義変更手続きで必要となるため

不動産を贈与した場合などには、名義変更の手続きで、贈与契約書などの添付が必要となります。
そのため、名義変更の手続きで使うことを目的として贈与契約書を作成する場合も少なくないでしょう。

理由3:税務署から贈与を否認されないため

税務署から贈与を否認されないために、贈与契約書を作成する場合があります。

生前に有効に贈与が成立している財産であれば、亡くなる前の一定期間に贈与した財産を除き、相続税の対象とはなりません。
しかし、仮に贈与が成立していないと税務署側に判断されれば、贈与を受けたはずの財産も、相続税の課税対象とされてしまいます。

たとえば、亡くなった人(「被相続人」といいます)の妻がずっと専業主婦であるにもかかわらず多額の財産を持っているような場合には、税務署から名義財産を疑われる可能性が高いでしょう。

名義財産とは、名義こそ妻になっているものの、実態は被相続人の遺産である財産などのことです。
そのため、妻名義となっている資産の出どころが調査されるケースは少なくありません。

これが確かに被相続人である夫からの贈与であり、その証拠もある場合には問題ないでしょう。
「証拠」とは、過去に贈与税の申告をした事実や、贈与契約書などです。
一方、有力な証拠がない場合には贈与が成立していないと判断されて、遺産として相続税の課税対象とされる可能性があります。

このような事態に備えて、贈与をした時点で贈与契約書を取り交わし、証拠を残しておくことがあります。

贈与契約書のサンプルと書き方のポイント

贈与契約書は、どのように作成すればよいのでしょうか?
現金(預金)の贈与を前提とした贈与契約書のサンプルは、次のとおりです。

 

                  贈与契約書

贈与者 法律太郎(以下「甲」という)と、受贈者 法律一郎(以下「乙」という)は、下記のとおり贈与契約を締結する。

                   記

第1条 甲は乙に対して現金300万円を贈与するものとし、乙はこれを承諾した。

第2条 甲は、前条に基づき贈与した現金を、令和5年5月31日までに、乙が別途指定する銀行預金口座に振り込むものとする。なお、振込手数料は甲の負担とする。

この契約を締結する証として、この証書を2通作成し、甲乙双方が署名捺印のうえ、各1通を保管するものとする。

                       令和5年5月1日

                          (甲)住所  東京都〇〇区〇〇1丁目1番地
                                 〇〇マンション101号室
                             氏名  法律 太郎  印

                          (乙)住所  東京都〇〇区〇〇2丁目2番地
                                 コーポ〇〇202号室  
                             氏名  法律 一郎  印

 

また、贈与契約書の書き方のポイントは、次のとおりです。

贈与を行った日付を明記する

贈与契約書には、贈与契約を締結した日を明記しましょう。
例でいうと、「令和5年5月1日」がこれにあたります。

これは、実際に贈与契約の履行(お金の振り込みなど)をした日ではなく、「あげます」「もらいます」の意思表示が合致して、贈与契約を締結した日です。

贈与者と受贈者を明記する

贈与契約書には、贈与者と受贈者の情報を明記します。
一般的には、住所と氏名を記載すれば問題ないでしょう。

何を贈与するのかを明記する

贈与契約書には、何を贈与するのかを明記します。
お金の場合には、「現金300万円」などです。

また、贈与対象物が不動産などである場合には、その後名義変更の手続きが必要となります。
そのため、名義変更の手続きに利用できるよう、地番などで明確に特定しなければなりません。
これについては、後ほど解説します。

双方が署名押印する

贈与契約書には、贈与者と受贈者の双方が署名と捺印をします。
受贈者の印鑑は認印でも構いませんが、贈与者は実印での捺印が望ましいでしょう。

贈与契約書作成時の注意点

贈与契約書を作成する際には、どのような点に特に注意すればよいのでしょうか?
注意点は主に次のとおりです。

内容をよく理解したうえで署名押印する

贈与契約書に限ったことではありませんが、契約書などの書面に署名や押印をする際には、内容をよく理解したうえで行うようにしましょう。
たとえば、贈与者としてはA土地のみを贈与するつもりであったものの、契約書には「A土地とB土地を贈与する」と書かれているかもしれません。

意図とは異なる内容であっても、署名や捺印をしてしまうと、後から覆すことは容易ではありません。
贈与をするということは近しい間柄であることが多いと考えられますが、そうであっても、内容をよく読まずに署名押印をしてしまうことは避けましょう。

名義変更に必要な際には財産の特定に注意する

土地や建物などを贈与する場合には、贈与に伴う名義変更手続きで、贈与契約書の添付が必要となります。

しかし、財産の特定ができなかったり記載があいまいであったりすれば、それだけでは名義変更ができず、手続きが煩雑となる可能性があるでしょう。
たとえば、当人同士では「北区のアパート」や「隣の駐車場」などで話が通じていたとしても、原則としてこのような表記では登記をすることはできません。

そのため、あらかじめ法務局から全部事項証明書(登記簿謄本)を取り寄せて、次の事項の記載で対象の不動産を特定します。

  • 土地の場合
    • 所在
    • 地番
    • 地目 
    • 地積
  • 建物の場合
    • 所在
    • 家屋番号
    • 種類
    • 構造
    • 床面積

名義変更が必要となる財産を贈与する場合には、第三者が見てその財産が特定できるように記載しましょう。

印紙の貼付が必要となることがある

印紙とは、契約書や領収証などの書類に貼付することで納付すべきとされている税金です。
すべての書類に印紙の貼付が必要というわけではなく、印紙を貼るべき書類は、印紙税法で定められています。※1

まず、現金や預貯金、自動車などの贈与にまつわる契約書では、原則として印紙の貼付は不要です。

一方、不動産や船舶などの贈与は印紙を貼るべきケースに該当し、200円の印紙を貼らなければなりません。
なお、印紙税の額は契約書の記載金額によって決まることから、「贈与であっても土地の評価額などを書いてしまえば印紙税が高くなる」などと誤解しているケースもあるようですが、これは誤りです。

贈与はそもそも無償契約であり、贈与契約書に土地の評価額などを記載したからといって、その評価額が印紙税計算上の「記載金額」となるわけではありません。
このことは、国税庁のホームページにも明記されています。※2

連年贈与とならないよう注意する

贈与契約書を作成する際には、連年贈与とされないように注意しなければなりません。

まず理解しておくべきなのは、贈与の成立は「お金が動いたとき」ではなく、双方が「あげます」「もらいます」と合意をした時点であるということです。
たとえば、2023年1月1日に「100万円をあげます」「もらいます」と合意をして100万円を渡したのであれば、2023年に100万円を贈与したといえるでしょう。

一方、同じ2023年1月1日に100万円を渡したのだとしても、合意の内容が「1,000万円を贈与します。まず100万円は2023年1月1日に渡して、2024年に100万円、2025年に100万円……と10年に分けて渡します」「もらいます」という合意だったのであれば、これは2023年に1,000万円を贈与したこととなります。
つまり、2023年1月1日1,000万円を贈与したうえで、実際の支払いは10年の分割払いにしただけということです。
これが、連年贈与です。

贈与税は、原則として1月1日から12月31日までの贈与に対して課税されます。
ただし、1年あたり110万円という非課税枠があるため、受贈者が1年間に受けた贈与がこれ以下であれば、結果的に贈与税はかかりません。
そのため、受贈者が2023年中に受けた贈与が100万円のみであれば、贈与税はかからないでしょう。

一方、連年贈与とされた場合には、2023年中に1,000万円の贈与を受けたものとして、多額の贈与税がかかります。
このような事態とならないよう、贈与契約書にはまとめて複数年分の贈与を書くことは避け、贈与の都度、作成するべきでしょう。

贈与契約書の作成を特に専門家へ依頼すべきケースとは

贈与契約書の作成は、さほど難しいものではありません。
しかし、次の場合には、専門家に贈与契約書の作成を依頼したり、贈与契約の締結前に専門家に相談したりしておくことをおすすめします。

価値の大きな財産を贈与する場合

土地や家屋など、価値の高い財産を贈与する際には、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
価値の高い財産を贈与した場合には高額な贈与税かかる可能性があり、あらかじめ贈与税の試算をしてもらった方がよいためです。

また、贈与をした財産の種類や双方の関係性などによっては、非課税などの特例が使えるかもしれません。

贈与を確実に有効にした場合

贈与契約書の内容に問題があったとしても、親しい身内同士の贈与であれば、効力面ではさほど問題にならないかもしれません。
そもそも贈与契約自体は口頭で成立するものであるうえ、契約書の表記に問題があれば、作り直しが容易であるためです。

しかし、他者からの贈与や身内からであっても苦心して取り付けた贈与であるなど、万が一書類に問題があっても再度の押印には協力してもらえない可能性があるケースもあるでしょう。
このような場合には、弁護士に贈与契約書の作成を依頼するなど、慎重に進めることをおすすめします。

将来の争いが予見される場合

贈与に関して将来の争いが予見される場合には、あらかじめ弁護士へご相談ください。
たとえば、長男と二男がいるにもかかわらず、長男だけに多額の贈与をするなど偏った贈与をした場合には、将来の相続でトラブルとなる可能性があります。

この場合には、あらかじめ弁護士へ相談しておくことで、将来の相続も見据えたアドバイスをもらうことが可能です。

まとめ

贈与契約書は、贈与の証拠となる書類です。
適正な贈与契約書を作成しておくことで、当事者同士のトラブル予防につながるほか、税務リスクの軽減にもつながります。
また、名義変更手続きの必要性から作成する場合もあるでしょう。

ただし、1人の子どものみに多額の贈与をするなど偏った贈与をすると、将来の相続でトラブルとなる可能性が否定できません。
そのため、贈与にあたっては、弁護士などの専門家へご相談ください。

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記事を監修した弁護士
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