コラム
公開 2022.10.14

不動産を生前贈与!メリットとデメリットについて解説

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相続対策の1つとして、「不動産の生前贈与」がよくあげられますが、どのようなケースで用いるとよいのでしょうか?
また、不動産の生前贈与のメリットやデメリット、注意点はあるのでしょうか?

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記事を監修した税理士
黒瀧 泰介

 

代表社員税理士 公認会計士

黒瀧 泰介
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不動産の生前贈与について

不動産の生前贈与とは、生前に不動産を無償で渡すことをいいます。
相続対策の1つとして用いられることもあり、うまく活用すると相続税を低くする効果もあります。

不動産の生前贈与の手順としては、下記となります。

  • ①贈与者と受贈者との間で生前贈与契約を締結する
  • ②不動産の名義を贈与者から受贈者に移転する

ここでは、不動産の生前贈与のメリット・デメリット、注意点についてご紹介いたします。

不動産の生前贈与のメリット

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①贈与したい人に確実に不動産を承継することができる

生前贈与を行うと、不動産の名義が受贈者の名義に移転しますので、確実に不動産を贈与したい人に承継させることが可能です。 相続は、遺言書により承継者を決定することはできますが、遺言書の有効性が争われる可能性もあり、生前贈与に比べると、「確実性」は劣ります。

②特例等を使うことにより、贈与税を低くおさえることができる

贈与税の配偶者控除の特例や相続時精算課税制度を活用することで、贈与税を低く抑えることが可能です。 税理士に、相続税の試算を行ってもらい、生前贈与の方が税金がおトクになる場合は、不動産の生前贈与を検討してみてもよいでしょう。

贈与税の配偶者控除

婚姻20年以上の夫婦の間で、「自宅の贈与」を行った場合、贈与した自宅の2000万円分までの贈与税が非課税となります。

相続時精算課税制度

60歳以上の父母又は祖父母から20歳以上(令和4年4月1日以後贈与の場合は18歳以上)の推定相続人及び孫に対する生前贈与について、2500万円分までは、贈与税がかからない(2500万円を超える分については20%の税率で贈与税が課税されます。)という制度です。 ただし、相続時精算課税を選択して贈与した財産は、相続発生時に「相続財産」として課税されますので、注意が必要です。 また、一度相続時精算課税制度を選択すると、同じ贈与者から暦年贈与を受けることもできなくなります。

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不動産の生前贈与のデメリット

①登記費用が高い

不動産の生前贈与は、①不動産取得税、②登録免許税がかかります。 不動産取得税は、固定資産税評価額の3%、登録免許税は、固定資産税評価額の2%となります。 これに対し、相続で不動産を承継する場合は、不動産取得税はかかりません。 また、登録免許税も、固定資産税評価額の0.4%となります。 そのため、固定資産税評価金額が高い不動産の場合は、生前贈与を選択すると、登記費用が高くなってしまいます。

②贈与税の税率は、相続時よりも高い

不動産の生前贈与は、特例等を活用しない場合は、贈与税が課税されます。 贈与税の税率は、以下のとおりです。 なお、基礎控除額110万円を差し引いた後の金額を当てはめて計算をします。

特例贈与の場合

贈与により財産を取得した者(贈与を受けた年の1月1日において20歳以上の者(令和4年4月1日以後贈与の場合は18歳以上))が、直系尊属(父母や祖父母など)から贈与により取得した財産の場合

基礎控除後の課税価格 200万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 4,500万円以下 4,500万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 30万円 90万円 190万円 265万円 415万円

640万円

一般贈与の場合

「特定贈与」に該当しない贈与の場合

 

基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円

400万円

相続税の税率

これに対し、相続税の税率 は、以下のとおりです。 なお、基礎控除額を差し引いた金額の法定相続分を当てはめて計算します。 基礎控除額=3000万円+(法定相続人の数×600万円)

法定相続分に応ずる所得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

例えば、被相続人の財産が3000万円の場合は、相続税はかかりません。 しかし、生前に3000万円を3名の推定相続人に1000万円ずつ贈与すると、特定贈与の場合で受贈者1名あたり約177万円、一般贈与の場合で受贈者1名あたり約231万円がかかります。

不動産の生前贈与の注意点

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①相続税の計算において、相続開始前3年以内の贈与は、相続財産として加算される

相続が発生する直前に生前贈与をしたとしても、相続開始前3年以内の贈与は相続財産として加算されますので、税金が低くなるとして贈与をしたとしても、メリットを享受できなくなります。 また、贈与の方が、前述のとおり、登記費用などが高くなってしまいますので、むしろ支出が増えてしまうということにもなりかねません。 不動産の生前贈与の検討は、なるべく早めにしていただくことをお勧めします。

②贈与は原則として取消すことができない

不動産の生前贈与は、書面で贈与契約書を締結し、登記名義も移転しますので、原則として取消すことができません。 そのため、贈与者が、やはり他の相続人に不動産を承継したいと思っても、変更ができませんので、注意が必要です。 不動産の生前贈与は、後で取消すことが非常に難しいため、贈与者が納得した上で実行するようにしましょう。

③相続税の特例を活用できる不動産を贈与すると、かえって税金が高くなる場合がある

相続税の特例(小規模宅地の特例や配偶者控除等)を活用できる不動産を生前贈与する場合は、注意が必要です。 生前贈与をせずに、相続で承継した方が税金が低くなる場合もありますので、必ず事前に税理士に相談の上、贈与対象の不動産を決定するとよいでしょう。

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不動産の生前贈与は、「遺産分割」のときに影響が出る?

不動産の生前贈与は、「遺産分割」のときに特別受益に該当するとして、遺産分割の相続分の計算に反映される可能性があります。 「特別受益」とは、相続人間の公平を図るため、被相続人から生前贈与などの特別な受益を受けた相続人がいる場合、当該受益を相続分の前渡しとして、相続分の算定をする制度です。 遺産分割の場合は、「特別受益」に該当すれば、何年前の生前贈与であっても遺産の前渡しとして相続分の計算に反映されます。 そのため、不動産の生前贈与をする場合は、相続税と贈与税の計算だけではなく、推定相続人の相続分がどうなるかを弁護士などの専門家に相談しておくこともお勧めです。

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まとめ

「不動産の生前贈与」は、とても有用な相続対策の1つです。 しかしながら、税金面や遺産分割の面での注意点もありますので、税理士や弁護士に早めに相談をして、納得した上で手続きを実行にするようにしましょう。

記事を監修した弁護士
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