コラム
公開 2021.01.25 更新 2022.03.14

遺留分で兄弟姉妹の遺産相続争い!回避する方法は?

遺産相続時、遺留分が原因で兄弟姉妹間に激しい争いが発生してしまうケースが少なくありません。親の生前に子ども達の仲が良かったとしても、安心できないのが現実です。今回は遺留分による泥沼の争いを回避する方法をご紹介します。

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1.遺留分で兄弟姉妹が争うケースとは

そもそも遺留分によって兄弟姉妹が争うケースとは、どういった事例なのでしょうか?よくあるパターンをみてみましょう。

1-1.不公平な遺言が遺されていた

よくあるのは「不公平な遺言」が遺されたケースです。
親が「すべての遺産を長男へ相続させる」などの遺言書を遺した場合を考えてみてください。このような遺言があると、長男以外の子ども達は、遺言書に基づいて遺産を受け取ることはできません。「兄ばかり財産を受け取れるのは不公平」と感じて不満を持つでしょう。

不公平な遺言書が遺されると、他の子ども達が「遺留分」を主張する可能性があります。遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の遺産取得割合のことを指します。「長男にすべての遺産を相続させる」という遺言があっても、他の子ども達は長男へ「遺留分侵害額請求」を行い、遺留分相当額の金銭を取り戻せます。

遺留分侵害額請求をするときには、基本的に「お金の支払い」を求めます。弟や妹の遺留分を侵害する遺言書が遺されると、弟や妹は長男へ内容証明郵便を使ったりしてお金の請求を行うでしょう。長男が拒否したら家庭裁判所での調停や裁判になる可能性が高くなります。兄弟が絶縁してしまうケースも多いので注意が必要です。

1-2.高額な生前贈与が行われた

特定の相続人に「高額な生前贈与」が行われた場合にも、遺留分トラブルが生じやすくなっています。
たとえば父親から長男へ5,000万円が贈与されたため、他の子ども達が相続できる財産がほとんどなくなってしまったとしましょう。弟や妹は「兄ばかり財産をもらって不公平」と感じて不満を抱きます。この場合にも、弟や妹が相続する遺産の額によっては、長男へ「遺留分侵害額」を請求し、遺留分争いが発生してしまうのです。
親の生前、子ども達の仲が良くても不公平な遺言や生前贈与があると、骨肉の争いが発生してしまうケースが少なくありません。

2.遺留分による兄弟姉妹の争いの原因

遺留分による兄弟姉妹の争いの原因

「遺留分」がどういったものなのか、もう少し詳しくみてみましょう。

2-1.遺留分とは

遺留分とは、一定の相続人に保障される最低限の遺産取得割合です。
遺言や贈与によって遺留分を侵害された相続人は「遺留分侵害額請求」を行って、遺留分相当額の金銭を取り戻せます。

遺産相続の際、被相続人は遺言書で自分の望む相手に財産を相続させたり遺贈したりできます。生前贈与や死因贈与により、相続人以外の人へ財産を受け継がせることも可能です。

しかしあまりに不公平な内容になっていると、「財産を相続できるはず」と期待していた相続人が害されることがあります。

そこで一定範囲の相続人には「遺留分」が認められ、遺言や贈与があっても、最低限「遺留分」までは保障されるようになっているのです。

2-2.遺留分が認められる相続人

遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の法定相続人です。

  • ・配偶者
  • ・子ども、孫、ひ孫などの直系卑属
  • ・親、祖父母などの直系尊属

このように「子ども」には遺留分が認められるので、不公平な遺言があると子ども達の間で泥沼トラブルになることが考えられます。

2-3.子どもに認められる遺留分の割合

子どもに認められる遺留分の割合は、以下のとおりです。

相続人別の遺留分の割合

配偶者の遺留分 子ども1人の遺留分
配偶者と1人の子ども 4分の1 4分の1
配偶者と2人の子ども 4分の1 8分の1ずつ
配偶者と3人の子ども 4分の1 12分の1ずつ
1人の子ども 2分の1
2人の子ども 4分の1ずつ
3人の子ども 6分の1ずつ
4人の子ども 8分の1ずつ

3.遺留分による兄弟姉妹の争いを回避する方法

遺留分による兄弟姉妹の争いを回避する方法

安易に特定の子どもに遺言や生前贈与をすると、兄弟姉妹間で遺留分トラブルが発生してしまいます。回避するには、以下のように対応しましょう。

3-1.早めに生前贈与する

1つ目は、早めに生前贈与する方法です。
確かに生前贈与も遺留分侵害額請求の対象になります。ただ、対象となる「時期」が限定されているので、その時期以前に贈与が行われた場合、遺留分請求の対象になりません。
遺留分請求の対象になる生前贈与は以下のとおりです。

  • ・相続前1年間における生前贈与
  • ・当事者が「遺留分を侵害する」と知って行った生前贈与
  • ・相続人に対する相続前10年以内の生前贈与

子どもは相続人なので、「相続開始の10年より前」に行われた生前贈与の場合、例外的な場合を除き、遺留分請求の対象になりません。
長男などの特定の相続人に多くの遺産を遺したい場合、死亡の10年より先に生前贈与しておけば遺留分トラブルを避けられます。遺留分の懸念がある場合にはなるべく早い時期から遺留分対策を進めましょう。

3-2.遺言作成時、遺留分を侵害しないように注意する

遺言によって特定の相続人に多めの遺産を遺すときには「遺留分を侵害しない」ように注意しましょう。
子ども達それぞれに認められる遺留分の割合を計算し、遺留分を侵害しない程度で長男などの相続人へ遺産を遺すようお勧めします。長男に高額な不動産を残すなら、弟や妹たちには遺留分に相当する預貯金や株式などの資産を残してください。
そうすれば、兄弟姉妹が長男へ遺留分を請求するトラブルを防げます。

3-3.遺留分侵害額に備えて生命保険へ加入する

どうしても特定の相続人に多めの遺産を遺したいケースでは、遺留分侵害額請求に備えて生命保険に加入する方法が有効です。死亡保険金は相続財産にならないので、受取人が単独で取得できるからです。遺留分侵害額請求をされたら、その保険金から遺留分相当額を支払うことも可能になるため、トラブルをスムーズに解決できるでしょう。
生命保険に加入することで、相続税控除も認められるので、相続税対策としても有効です。

3-4.生前の遺留分放棄は難しい

もう1つ、遺留分を放棄させる方法もあります。生前であっても、本人が自ら家庭裁判所で遺留分を放棄したら、遺留分を失わせることができます。
ただ遺留分放棄が認められるには「遺留分を放棄すべき相当な事情」が必要です。また放棄者に対し、遺留分に相当する財産を渡すなど、保障もしなければなりません。「相続させたくない」というだけの事情では認められないので、ハードルが高くなるでしょう。

まとめ

親の死後、子ども達の泥沼の遺留分トラブルを避けるには、生前からの対策が必要です。仲の良かった兄弟姉妹が悲しい遺産争いを繰り広げることのないよう、早めに相続対策を進めましょう。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
同志社大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事から企業法務まで幅広い分野を取り扱う。なかでも遺産分割協議や遺言書作成などの相続案件を得意とする。
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