コラム
公開 2024.02.23

単体777_新規_遺産分割調停の管轄の裁判所はどこ?原則と例外を弁護士がわかりやすく解説

相続人間での遺産分割協議がまとまらない場合は、遺産分割調停を申し立てることとなります。

では、遺産分割調停の管轄は、どの裁判所なのでしょうか?
また、管轄の裁判所が遠方であり出向くことが難しい場合は、どのように対応すればよいのでしょうか?

今回は、遺産分割調停の管轄について弁護士が詳しく解説します。

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遺産分割調停とは

遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員に遺産分割に関する話し合いを調整してもらう手続きです。

故人(「被相続人」といいます)の遺産を確定的に分けるためには、原則として相続人全員で遺産分けの話し合い(「遺産分割協議」といいます)をまとめなければなりません。
この遺産分割協議の成立には、相続人全員による合意が必要です。

しかし、遺産分割協議がうまくまとまらないこともあるでしょう。
その際は、遺産分割調停での解決を図ることとなります。

遺産分割調停はあくまでも話し合いの手続きであり、成立させるには相続人全員による合意が必要です。
とはいえ、相続人同士が直接対峙するのではなく、調停委員が交互に意見を聞き意見を調整する形で進行することから、冷静な話し合いがしやすくなります。
そのため、当事者間の遺産分割協議がまとまらない場合であっても、遺産分割調停が成立する可能性は十分にあり得ます。

なお、遺産分割調停が不成立となった場合は、自動的に遺産分割審判へと移行します。
遺産分割審判とは、諸般の事情を考慮のうえ、裁判所が遺産の分け方を決める手続きです。

遺産分割調停の管轄

遺産分割調停はどの裁判所に申し立ててもよいわけではなく、管轄が決まっています。
ここでは、遺産分割調停の管轄について解説します。

原則:相手方の住所地を管轄する家庭裁判所

遺産分割調停の管轄は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。
自身の居住地が東京都、被相続人の最後の住所地が愛知県、相手方の居住地が大阪府である場合は、原則として大阪家庭裁判所が管轄になるということです。

また、遺産分割調停の場合は、相手方が複数いる場合もあるでしょう。
その場合は、相手方のうち誰か1人の住所地を管轄する家庭裁判所に調停を申し立てます。

たとえば、相手方が3名いて、1人が愛知県、1人が大阪府、1人が福岡県に居住している場合、名古屋家庭裁判所か大阪家庭裁判所、福岡家庭裁判所のいずれかに申し立てればよいということです。

例外1:当事者が合意で定めた家庭裁判所

例外的に、相手方の居住地の家庭裁判所以外に遺産分割調停の申立てができるケースがあります。

そのケースの1つ目は、当事者が合意で定めた家庭裁判所に申し立てをするケースです。
たとえば、相続人が日本全国に散らばっている場合において、被相続人の最後の居住地の家庭裁判所を管轄とする場合などが考えられます。

この場合は管轄について合意ができていることを示すため、「管轄合意書」の提出が必要となります。
なお、多数決ではないことから、1人でも管轄に合意していない相続人がいる場合はこの方法をとることはできません。

例外2:申立人の住所地を管轄する家庭裁判所

例外の2つ目は、申立人の住所地の家庭裁判所に調停を申し立てる場合です。
これを「自庁処理」といいます。

自庁処理はどのような場合であっても認められるわけではなく、健康上の都合から遠方に出向くことが難しい場合や金銭的に困窮しており交通費が捻出できないなど特別な事情があり、これを裁判所が認めた場合にのみ可能となる措置です。
単に「遠くに行くのが大変だ」というだけでは、自庁処理は認められません。

管轄外の裁判所への申立てを推奨しない理由

先ほど解説したように、遺産分割調停の管轄は原則として相手方の居住地の家庭裁判所であるものの、例外的に他の裁判所への申立てが認められることがあります。
しかし、本来の管轄以外への裁判所への申立ては、原則としておすすめできません。
その主な理由を2つ解説します。

合意管轄は管轄をどこにするかで争いが起きやすいから

1つ目は、合意管轄にしようとした場合、管轄の裁判所をどこにするかで争いが生じやすいからです。

遺産分割調停を申し立てる以上、そもそも遺産分割に関して合意がまとまっていない状態であるはずです。
そのような状態で管轄についての合意を得ることは、容易なことではないでしょう。

むしろ、原則である相手方の居住地の家庭裁判所以外の裁判所を管轄とすることは相手方にとって不利益であり、さらなる争いの火種となるリスクさえあります。

自庁処理は相手方から反対意見が出やすいから

2つ目は、自庁処理をしようとした場合は、相手方からの反対意見が出やすいからです。

自身の居住地の家庭裁判所を管轄とする自庁処理を申し出た場合、裁判所から相手方に対して事情の聴取がなされます。
なぜなら、自庁処理では相手方が遠方の裁判所に出向く必要が生じ、相手にとっては不利益であるためです。
相手方から反対意見が出た場合は、自庁処理が認められない可能性が高くなります。

管轄の裁判所が遠方の場合の対応

遺産分割調停の管轄裁判所が遠方である場合、体調や状況などによっては出向くことが難しい場合もあるでしょう。
その際は、どのように対応すればよいのでしょうか?
ここでは、主な対処方法を2つ紹介します。

テレビ会議システムを活用する

遺産分割調停の管轄裁判所が遠方である場合は、テレビ会議システムを使うことで裁判所まで出向くことなく調停に参加できる可能性があります。
2018年(平成30年)4月から、全国のほぼすべての裁判所でテレビ会議システムの活用が可能となりました。※1
テレビ会議システムとは、最寄りの裁判所と管轄である遠方の裁判所をオンラインでつなぐことで、遠方の裁判所へ出向くことなく調停に参加できる仕組みです。

ただし、弁護士へ依頼せずに自分で遺産分割調停に対応する場合、テレビ会議システムでは本人確認が難しいことから、テレビ会議システムの利用が認められるかどうかは状況によって異なります。
弁護士に依頼しない場合においてテレビ会議システムの活用を希望する際は、管轄の裁判所へあらかじめご相談ください。

弁護士に依頼する

遺産分割調停の管轄裁判所が遠方であり出向くことが難しい場合は、弁護士へご依頼ください。
弁護士へ依頼することで、自分が遠方の裁判所へ出向くことなく、弁護士に代理で出席してもらうことが可能となるためです。
また、弁護士の事務所からテレビ会議システムをつなぐことで、裁判所に出向くことなく、自身も弁護士の事務所から遺産分割調停に参加することが可能となります。

遺産分割調停の対応を弁護士に依頼するメリット

裁判所へ出向いた経験のある人は少なく、遺産分割調停に自分で対応することに不安を感じる人も少なくないでしょう。
その際は、弁護士へ対応を依頼することが可能です。
最後に、遺産分割調停のサポートを弁護士へ依頼する主なメリットを4つ解説します。

調停に同席してもらえて安心だから

1つ目は、弁護士に依頼することで、遺産分割調停に同席してもらうことが可能となることです。

調停当日は、どのようなことを聞かれるのか、裁判所へ着いたら迷わず所定の待合室へたどり着けるかなど、不安を感じることも少なくないでしょう。

また、遺産分割調停の待合室は相手方と別れているとはいえ、家庭裁判所のロビーなどで顔を合わせてしまう可能性はゼロではなく、このことに不安を感じることもあると思います。
緊張や不安のあまり、本心とは異なる主張や自己の発言と矛盾する主張をしてしまったり、冷静に検討できないまま相手の要求を呑む発言をしてしまったりすれば、遺産分割調停で不利となってしまいかねません。

弁護士に同席してもらうことで、味方が同席しているとの安心感が得られ、調停に落ち着いて臨みやすくなります。

また、遺産分割調停の管轄裁判所が遠方である場合や病気療養中である場合など裁判所に出向くことが難しい事情がある場合は、本人は裁判所へ出向かず弁護士に代理で出席してもらうことも可能です。

申立ての手続きを代行してもらえるから

2つ目は、遺産分割調停の申立て手続きを代行してもらえることです。

遺産分割調停を申し立てるには、さまざまな書類を用意しなければなりません。
主に必要となる書類は、次のものなどです。※2

  • 遺産分割調停申立書
  • 当事者等目録
  • 遺産目録
  • 相続関係図
  • 申立ての実情
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本などすべて
  • その他、相続人の確定に必要な戸籍謄本や除籍謄本など
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 被相続人の除票または戸籍の附票
  • 相続人全員の住民票
  • 遺産である不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)、固定資産税評価証明書
  • 遺産である預貯金の通帳または残高証明書
  • 遺産である有価証券(株式や投資信託など)の残高証明書
  • 遺産である自動車の車検証または運輸支局等が発行する登録事項証明書

このように、遺産分割調停の申立てには、非常に多くの書類が必要です。
これらの他に、状況に応じて必要となる書類などもあります。

特に、「申立ての実情」などは、ここに記載した事項が申立人の主張のベースとなって調停が進行することとなります。
そのため、機械的に書類を埋めるのではなく、主張の内容をよく検討したうえで書面を作成しなければなりません。
申立書類に記載した内容と矛盾する内容の主張をすれば、調停において不利となるおそれがあります。

このような書類をすべて自分で作成したり取り寄せたりすることは容易ではないでしょう。
弁護士へ依頼することで、弁護士に書類を作成してもらったり取り寄せてもらったりすることが可能となります。

事前のシミュレーションができるから

3つ目は、遺産分割調停について事前のシミュレーションが可能となることです。

遺産分割調停の場で何を聞かれるのかがわからなければ、何をどのように主張してよいのかわからないかもしれません。
また、緊張のあまり本心とは異なる発言をしてしまうおそれもあります。

弁護士へサポートを依頼すると、遺産分割調停で聞かれそうなことや主張すべき内容についてアドバイスをもらえるほか、事前にシミュレーションをしたりすることも可能となります。
そのため、当日は事前の準備に従って、落ち着いて主張することができるでしょう。

調停を有利に進めやすくなるから

4つ目は、遺産分割調停を有利に進めやすくなることです。

弁護士へサポートを依頼することで、調停が不成立となり審判に移行した場合に想定される結果を踏まえ、主張の落としどころを探ることが可能となります。
法律上無理のない範囲で自己の主張をあらかじめまとめておくことで、調停を有利に進めやすくなるでしょう。

また、弁護士へ依頼することで、自身の主張を裏付ける証拠の提出についてもアドバイスを受けることが可能です。
たとえば、相手方が遺産を無断で使い込んだと主張するのであれば、これを裏付ける証拠を提出することなどが考えられます。
自身の主張を裏付ける証拠を効果的に提出することで、遺産分割調停を有利に進めやすくなります。

まとめ

遺産分割調停の管轄について解説しました。

遺産分割調停の管轄は、原則として相手方の住所地の家庭裁判所です。
例外的に、相続人全員が合意した裁判所や申立人の住所地の家庭裁判所を管轄とできる場合もありますが、管轄について争いが勃発する可能性が否定できません。
そのため、遺産分割調停の管轄は原則どおり、相手方の住所地の家庭裁判所と考えておいてください。

ただし、相手方の住所地が遠方である場合など、管轄の裁判所へ出向くことが難しい場合もあるでしょう。
その場合は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

弁護士へ依頼することで弁護士が代理で遺産分割調停に出席することが可能となるほか、状況によっては弁護士の事務所からテレビ会議システムを使って自身も遺産分割調停に参加することが可能となります。
詳しくは、遺産分割調停のサポート経験が豊富な弁護士へご相談ください。

Authense法律事務所には相続問題を専門とする弁護士が多く在籍しており、遺産分割調停についても多くのサポート実績があります。
遺産分割調停について弁護士のサポートを受けたい場合や、管轄の裁判所が遠方でお困りの際などには、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。
遺産分割に関するご相談は、初回60分間無料です。

記事を監修した弁護士
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