遺産分割調停を申し立てるには、さまざまな書類が必要となります。
では、具体的にどのような書類が必要となり、どのように作成したり取り寄せたりすればよいのでしょうか?
今回は、遺産分割調停に必要な書類について弁護士が詳しく解説します。
目次
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遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、裁判所で行う遺産分けの話し合いのことです。
遺産を有していた者(「被相続人」といいます)が亡くなると、遺産は原則として相続人全員による共有となります。
しかし、共有のままでは自由な処分などが制限されるうえ、預貯金の解約や有価証券の移管なども困難です。
そこで、相続人全員で話し合いをして、遺産を分けることとなります。
この遺産分けの話し合いを、「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議を成立させるには相続人全員による合意が必要であり、1人でも合意しない相続人がいる場合は協議を成立させることができません。
その場合には、遺産分割調停を申し立てて解決を図ることとなります。
遺産分割調停は、家庭裁判所の調停委員が当事者双方から交互に意見を聞く形で進行します。
1回の期日で調停が終結することはほとんどなく、4回から8回程度の期日が開かれることが一般的です。
調停の結果、相続人全員の意見が無事にまとまれば調停の成立となり、遺産の分け方を記した調停調書が作成されます。
一方、調停を経ても相続人間の意見がまとまらない場合は、裁判所に遺産の分け方を決めてもらう遺産分割審判へと移行します。
遺産分割調停の必要書類一覧:作成する書類
ここからは、遺産分割調停の申立てに必要となる書類について解説します。※1
ただし、ここで紹介するのは一般的な必要書類であり、実際に遺産分割調停を申し立てる際は、これら以外の書類が必要となることもあります。
裁判所から追加書類を求められたら、案内に従って用意しましょう。
はじめに、作成が必要となる書類について紹介します。
これらの書類の様式や記載例は、裁判所のホームページから入手できます。※2
なお、ここで作成した申立書や当事者目録などの書類の写しは、申立て後にすべて相手方に送付されます。
そのため、住所などが相手方に知られたくないなどの事情がある場合は、あらかじめ弁護士へご相談ください。
遺産分割調停申立書
1つ目は、遺産分割調停申立書です。
これが、遺産分割調停を申し立てるにあたってもっともメインとなる書類です。
裁判所のホームページに掲載されている記載例を参考に記載方法を解説します。
それぞれの記載方法は、次のとおりです。
- 家庭裁判所名:管轄の裁判所名を記載する。管轄は、原則として相手方の住所地を管轄する家庭裁判所であるものの、相続人全員の合意によってこれとは異なる裁判所とすることも可能
- 年月日:作成年月日を記載する
- 申立人の記名押印:遺産分割調停を申し立てる者の氏名を記載し、押印する
- 添付書類:申立書に添付する書類にチェックを入れ、通数を記載する
- 被相続人:被相続人の住所と氏名、死亡年月日を、除票や戸籍謄本などを見ながら正確に記載する
- 申立ての趣旨:原則として「被相続人の遺産の全部の分割の調停を求める」にチェックを入れる。調停が成立する見込みがない場合ははじめから審判を申し立てることもできるものの、裁判所の権限で調停に付されることが多い。遺産の一部のみについて分割を求める際は、下のボックスにチェックをしたうえで分割したい遺産を記載する
- 特別受益:被相続人から生前に贈与を受けているなど、特別な受益を受けている者がいる場合は「有」にチェックを入れる
- 事前の遺産の一部分割:遺産分割調停を申し立てる前に遺産の一部について分割が完了している場合は「有」にっチェックを入れる
- 事前の預貯金債権の行使:遺産である預貯金のうち一定額は他の相続人の同意を得ることなく払い戻しを受けることが可能だが、この権利を行使した相続人がいる場合は「有」にチェックを入れる
当事者目録
2つ目は、当事者目録です。
当事者目録とは、申立人と相手方の情報(住所、氏名、被相続人との続柄、生年月日)を記載する書類です。
なお、遺産分割調停には相続人全員が参加する必要があり、相続人全員が「申立人」か「相手方」のいずれかとなります。
この書類に記載した住所宛に、裁判所から書類が送られます。
そのため、書類がきちんと届くよう、マンションなどの場合はマンション名や部屋番号まで正確に記載してください。
先ほども解説したように、この書類のコピーは相手方全員に対しても送付されます。
そのため、相手方に知られたくない情報がある際は、あらかじめ弁護士へご相談ください。
相続関係図
3つ目は、相続関係図です。
相続関係図とは、被相続人の相続関係を図で示したものです。
相続関係図に決まった様式はないため、自分でExcel(エクセル)などで作成してください。
ここでは、裁判所のホームページに掲載されている例を紹介します。※1
相続関係図には被相続人の氏名や死亡年月日を書き、そこから他の相続人を線でつないで関係性を示します。
各相続人には、先ほど紹介した「当事者目録」の情報と合わせて「申立人」であるか「相手方」であるかがわかるように記載してください。
財産目録
4つ目は、財産目録です。
財産目録とは、被相続人の遺産を一覧にした書類です。
ここには、次のものを除き、被相続人の遺産をすべて記載します。
- 不明なもの
- すでに分割済みであり、別紙「分割済遺産目録」に記載するもの
遺産は、根拠となる資料を見ながら正確に記載してください。
根拠となる資料とは、不動産の場合は法務局で取得できる「全部事項証明書(登記簿謄本)」、預貯金は預貯金通帳や残高証明書などです。
その他、状況によっては次の書類も必要となります。
- 被相続人から生前贈与を受けているなど、特別の利益を受けた者がいる場合:特別受益目録
- 遺産分割調停の申立てまでに一部の遺産を分割している場合:分割済遺産目録
書類の作成方法がわからない場合は、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
遺産分割調停の必要書類一覧:取り寄せる書類
次に、遺産分割調停の申立ての必要書類のうち、取得が必要となる主な書類を紹介します。
これらの書類はすべて、請求から3か月以内の原本が必要です。
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
1つ目は、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本です。
これらをすべて確認することで、被相続人の子どもを洗い出すことが可能となります。
子どもは原則としてすべて相続人であることから、これらの書類によって「被相続人の子どもは誰か(または、子どもがいない場合は本当にいないのか)」を確認します。
そのうえで、状況に応じて次の書類も必要となります。
- 相続人が配偶者と子だけの場合や、被相続人の親が相続人である場合:追加書類はなし
- 被相続人の兄弟姉妹や甥姪が相続人に含まれる場合:被相続人の父母の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本
- 相続人のうちに、子または兄弟姉妹の代襲者が含まれる場合:本来の相続人(子または兄弟姉妹)の出生から死亡までの連続した全戸籍謄本
なお、代襲とは被相続人よりも先に、本来相続人であるはずであった者(被相続人の子どもや兄弟姉妹)が亡くなった場合に、その亡くなった者の子が代わりに相続人となることです。
これらの書類は、原則としてその時点でその請求対象者が本籍を置いていた地の市区町村役場で取得します。
取得手数料は、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本と原戸籍謄本は1通750円です。
請求先の市区町村役場まで出向ける場合は出向いて請求するとスムーズですが、市区町村役場が遠方であるなど出向くことが難しい場合は、郵送で請求することも可能です。
特に、兄弟姉妹や甥姪が相続人となる場合や代襲がある場合には集めるべき書類が多く、これらの書類を集めるだけでも一苦労でしょう。
自分で集めることが難しい場合は、弁護士にサポートを受けるとよいでしょう。
相続人全員の現在の戸籍謄本
2つ目は、相続人全員の戸籍謄本です。
戸籍謄本は、その相続人の本籍地の市区町村役場で取得します。
手数料は、1通あたり450円です。
被相続人の除票
3つ目は、被相続人の除票です。
除票とは、除かれた住民票を指し、被相続人の最後の住所などが掲載されています。
除票は、被相続人の最後の住所地を管轄する市区町村役場で取得できます。
手数料は市区町村によって異なり、1通200円から300円程度です。
相続人全員の住民票の写し
4つ目は、相続人全員の住民票の写しです。
住民票は、それぞれ住所地の市区町村役場で取得できます。
なお、正式には「住民票」そのものは役所にあるため、持ち出すことはできません。
これをもとに役所から発行される書類の原本を「住民票の写し」といいます。
手数料は市区町村によって異なっており、1通200円から400円程度です。
遺産分割調停の必要書類一覧:必要に応じて用意する書類
次に、遺産分割調停の申立てにあたって、必要に応じて必要となる書類を紹介します。
遺産に不動産がある場合
遺産に不動産がある場合は、次の書類が必要です。
なお、「1」と「2」については、取得から3か月以内の原本を提出します。
- 登記簿謄本または登記事項証明書:法務局で取得。なお、不動産の所在地を問わず全国どこの法務局からでも取得可能
- 固定資産税評価証明書:不動産の所在を管轄する市区町村役場で取得
- 次のいずれか
- 公図の写しに建物配置を書きこんだもの:公図は法務局で取得
- 住居表示のある住宅地図のコピー
遺産に預貯金がある場合
遺産に預貯金がある場合は、通帳や証書の写しまたは金融機関発行の残高証明書が必要です。
裁判所のホームページによると、 残高証明書を取得する際は次の点に注意しなければなりません。※1
- 死亡日の残高でなく現時点での残高を記載してもらう
- 口座番号を記載してもらう
- 口座がいくつかある場合には、口座番号ごとに残高を記載してもらう
- 定期預金等がある場合には、元金の額だけでなく、現時点で解約した場合の税引き後の利息額も記載してもらう
遺産に有価証券がある場合
遺産に有価証券がある場合は、株式の預り証または残高証明書が必要です。
残高証明書は、有価証券の預託先である証券会社に依頼することで発行してもらえます。
遺産に車がある場合
遺産に車がある場合は、運輸支局等で取得する登録事項証明書か、車検証のコピーが必要です。
車検証は、車のダッシュボードに収納されていることが一般的です。
相続税申告をしている場合
その相続について相続税申告をしている場合は、相続税申告書の写しが必要です。
控えが手元にない場合は、申告を依頼した税理士へご確認ください。
遺言書がある場合
被相続人が遺言書を遺している場合は、その遺言書のコピーが必要です。
なお、被相続人が全財産について承継者を指定した有効な遺言書を遺していれば、遺産分割調停を経ることなく遺言書を使って遺産の名義変更などの手続きをすることができます。
一方、遺言書から記載が漏れた財産がある場合などには、遺言書があっても遺産分割調停が必要となる可能性があります。
遺産分割調停にかかる費用
遺産分割調停には、どの程度の費用が掛かるのでしょうか?
ここでは、主にかかる費用について解説します。
収入印紙
遺産分割調停を申し立てるには、被相続人1人あたり1,200円の収入印紙が必要です。
収入印紙は、郵便局や法務局、市区町村役場などで購入できます。
予納郵便切手
予納郵便切手とは、裁判所が相続人への連絡に用いるために、あらかじめ納める切手です。
予納郵便切手は申立先の裁判所や相続人の数などによって異なるため、申立先の家庭裁判所にあらかじめご確認ください。
参考までに、東京家庭裁判所に申し立てる場合は次の予納郵便切手が必要となります。
- 相手方が5名までの場合:100円×10枚、 84 円×10枚、50円×10枚、20円×10枚、10円×20枚、2円×10枚
- 相手方が6名から10名:84円×10枚、50円×5枚を追加
(弁護士へ依頼する場合)弁護士報酬
遺産分割調停の対応を弁護士へ依頼する場合は、弁護士報酬がかかります。
弁護士報酬は自由化されており事務所によって異なるため、依頼を検討している事務所へあらかじめご確認ください。
遺産分割調停を弁護士に依頼する主なメリット
遺産分割調停を弁護士へ依頼することには、どのようなメリットがあるのでしょうか?
最後に、弁護士へ依頼する主なメリットを3つ解説します。
必要書類の作成や収集を任せられる
ここまで解説したように、遺産分割調停には非常に多くの書類が必要となります。
これらをすべて自分で用意することには、膨大な手間を要します。
また、書類の書き方が合っているのか、不用意なことを書いて不利になってしまうのではないかなどと不安になってしまうことも多いでしょう。
弁護士へ依頼することで弁護士に書類の作成や収集を任せられるため安心です。
調停の代理や同席をしてもらえる
弁護士へ依頼することで、遺産分割調停の当日に同席してもらうことが可能です。
事前にシミュレーションなどをすることもでき、落ち着いて調停に臨みやすくなります。
状況によっては、弁護士に代理で調停の場へ出席してもらうことも可能です。
遺産分割調停を有利に進めやすくなる
弁護士へ依頼することで、あらかじめ自身の主張や落としどころ、交渉の進め方などを定めやすくなります。
自身の主張を裏付けるために有効な主張書面を作成してもらえるほか、証拠についてのアドバイスを受けることも可能です。
そのため、遺産分割調停を有利に進めやすくなります。
まとめ
遺産分割調停の必要書類について解説しました。
遺産分割調停の申立てには非常に多くの書類が必要であり、自分ですべてを用意することは容易ではありません。
また、記載を誤ったり不用意なことを書いてしまったりすれば、調停において不利となる可能性もあります。
そのため、遺産分割調停を申し立てる際は、弁護士のサポートを受けるようにしてください。
Authense法律事務所では、遺産相続トラブルの解決サポートに力を入れており、これまでも多くの解決実績があります。
遺産分割調停の必要書類の作成でお困りの場合や、調停を有利に進めたい場合は、Authense法律事務所までご相談ください。
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