遺言無効確認請求訴訟の詳細や遺言が無効になる4つの原因、遺言書が無効となった場合に行うべき手続きなどについてわかりやすく解説します。
遺されていた遺言書を無効にしたい場合、遺言無効確認請求訴訟を検討します。遺言無効確認請求訴訟とは、裁判所に遺言の無効を確認してもらうための訴訟です。
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遺言の無効請求をしたい場合に取るべき手段
亡くなった親の遺していた遺言書が、生前の親の言動や遺言書が作られた時期などから見て不自然であり、無効を疑う場合もあるでしょう。
この場合に取るべき手段が、遺言無効確認のための調停申し立てや、遺言無効確認請求訴訟の提起です。
調停とは、裁判所でおこなう関係者同士での話し合いです。
遺言の無効確認には「調停前置主義」が取れられており、訴訟を提起する前にまずは調停を申し立てなければなりません。
調停で話し合いがまとまれば、まとまった内容で解決したこととなります。
一方、調停を経ても話し合いがまとまらない場合には、遺言無効確認請求訴訟へと移行します。
遺言無効確認請求訴訟の基本
遺言無効確認請求訴訟とは、遺言が無効であることの確認を裁判所に求めるための訴訟です。
仮に相続人の一部が「この遺言書は父の字でとは違う気がする」や「父がこのような遺言を遺すはずはない」などと考えていても、それだけで直ちに遺言書が名義変更などの手続きに使えなくなるわけではありません。
遺言書は、遺言者の最終的な意思を遺す、とても重要な法律文書です。
簡単に無効とされてしまえば、遺言者の意思が反映されなくなってしまいます。
そのため、他の相続人などが有効だと主張している遺言書を無効にするためには、それなりの証拠を提示して裁判所に判断してもらう必要があるのです。
時効はないが早めに請求する
遺言無効確認請求訴訟自体には、時効や期間の制限などはありません。
しかし、遺言書の無効を主張したい場合には、できるだけ早く調停の申し立てや訴訟の提起をすべきです。
その理由は、次の2つです。
証拠の散逸を防ぐため
遺言者の死亡や遺言書の作成時点から時間が経つにつれて、遺言書が無効であることの証拠集めが困難となります。
遺言の無効を主張するためには、無効と考える理由などに応じて病院や介護施設などの各機関から書類を取り寄せる場合も少なくありません。
しかし、各機関の記録は一定期間の経過とともに破棄されてしまう可能性があるうえ、関係者が退職するなどして連絡が取れなくなってしまう可能性もあるでしょう。
そのため、遺言の無効を疑う際にはできるだけ早くから弁護士へ相談し、調停や遺言無効確認請求訴訟の準備に取りかかることをおすすめします。
相続手続きが進んでしまう可能性がある
遺言が無効だと考えていても特に何もしないでいると、その間に遺言書を使った相続手続きが進行してしまう可能性があります。
遺言書が無効だと判断されれば、その遺言書に基づいて行われた名義変更により受け取った財産は原則として不当利得となり、返還の請求をすることが可能です。
しかし、その間に相手方が無資力となった場合などには、現実的に取り戻すことが困難となってしまうでしょう。
また、第三者に資産を売却されてしまった場合などにはさらに権利関係が複雑となり、解決までにさらに長い期間を要する可能性が高くなります。
請求権者は法定相続人など
遺言無効確認請求訴訟の請求権者は、法定相続人などの利害関係者です。
法律上の利害関係がない人が遺言無効確認訴訟を提起することは認められません。
管轄は相続開始地の裁判所
遺言無効確認請求訴訟は、被告の住所地及び相続開始時における被相続人の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に提起します。
遺言者の生前に提起はできない
遺言無効確認請求訴訟は、遺言者の生存中に争うことはできません。
遺言の効力が生じるのは相続が起きた時点からであり、生存中には何ら効力が生じていないためです。
調停前置主義である
遺言無効確認訴訟では、調停前置主義を取っています。
そのため、原則としていきなり訴訟を提起することは認められず、まずは調停を申し立て、調停が不調となった際に訴訟へと進むこととなります。
遺言が無効になる4つの主な理由
遺言書が無効となる原因はさまざまです。
中でも、代表的な無効原因としては次の4つがあります。
遺言書の形式不備
遺言が無効となる原因の一つに形式不備があります。
まず、自筆証書遺言であれば次の要件が課されています。
- 財産目録以外の全文を遺言者が自書すること
- 日付と氏名を自書すること
- 押印をすること
たとえば、全文がワープロで作成されたものや日付の記載が漏れているもの、押印が漏れているものなどは、形式不備により無効となる可能性が高いといえます。
自筆証書遺言は専門家などの関与なく作成するケースも多いため、形式不備により無効となってしまうケースも少なくありません。
一方、公正証書遺言は公証人の関与のもとで作成するため、形式不備で無効となる可能性は自筆証書遺言と比べればかなり低いといえます。
しかし、それでも無効となる可能性はゼロではありません。
公正証書遺言の要件は、次のとおりです。
- 証人2人以上の立会いがあること
- 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
- 公証人が遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること
- 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと
- 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと
たとえば、推定相続人などは証人として認められませんが、誤って推定相続人を証人としてしまった場合などには、形式要件を満たさず無効となります。
また、状況から見て遺言者の口授があったとは認められない場合などには、無効となる可能性があるでしょう。
遺言者が認知症などで遺言能力がない
遺言書を有効に作成するには、遺言能力が必要です。
遺言能力は法律で明確に定義されているわけではなく、作成した遺言の複雑さなどにより必要な能力が異なると考えられています。
たとえば、「長男の太郎に全財産を相続させる」など比較的平易な内容の遺言であれば、それほど高度の能力は必要ないと考えられます。
一方で、個々の財産をそれぞれ別の人に細かく割り当てる内容の遺言書などでは、比較的高い能力が必要とされるといった具合です。
遺言能力を理由に遺言書の有効性を判断する場合には、おおむね次のような事項から総合的に判断されるといわれています。
- 遺言の内容
- 遺言者の病状や認知症の程度
- 遺言をするに至った経緯
- 時間的関係
- 遺言の動機
たとえば、長男夫婦が高齢の遺言者と同居しており、長年良好な関係を築いているにもかかわらず、ほとんど顔を見せない長女に全財産を相続させるとの遺言書があった場合には、遺言能力欠如による無効が検討されることになるでしょう。
その遺言書が、遺言者が認知症を患っており、めずらしく長女が病室に見舞いに来た日に書かれたなどであればなおさらです。
このように、その遺言をした前後の状況などから見て総合的に判断されることとなるのです。
ただし、現実にはその判断が難しい場合が少なくありませんので、どの程度説得力の高い証拠を提示できるかがより重要となるでしょう。
公序良俗違反
民法には「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。」との規定があり、これは遺言も例外ではありません。
たとえば、不倫相手との不倫関係を維持する目的で作成した遺言は、公序良俗違反に該当し無効となる可能性があります。
ただし、その目的が不倫関係の維持ではなく、自分が亡きあとの不倫相手の生活を守る目的などの場合には無効と判断されない可能性も否定できません。
たとえば、籍の入った配偶者とは長年別居状態にあり、不倫相手とは内縁関係のような状態であった場合などには公序良俗に反しているとまではいえず、有効とされる可能性が高いでしょう。
遺言書の偽造
たとえば、本人の筆跡に似せて他者が勝手に作成した遺言書や本人が作成した遺言書を、他者が自分に都合の良いように勝手に書き換えた遺言書は、そもそも本人の意思が正常に反映されたものではないため無効です。
この場合、遺言者本人が過去に書いた日記など筆跡のわかるもので筆跡鑑定をしたり、当時の状況などと遺言書の内容を照らし合わせたりして、偽造の証拠を探っていくことになるでしょう。
遺言の無効請求が認められたらどうなる?
遺言無効確認請求訴訟をした結果として遺言の無効が確定した場合には、次のようになります。
遺言書が偽造であれば欠格要件に該当する可能性がある
遺言書が無効とされた原因が遺言書を偽造したことによるものである場合や、遺言者を脅したり騙したりして書かせたものである場合などには、その偽造や脅迫などをした人は相続人の欠格事由に該当する可能性が高いといえます。
欠格事由に該当すると相続人から外れるため、その人はもはやその相続で財産をもらう権利はありません。
ただし、欠格事由への該当は、代襲相続の原因となる点に注意が必要です。
たとえば、長男が遺言書の偽造をしたことで相続欠格になったからといって、長男一族がすべて相続人から外されるわけではありません。
長男が相続欠格になった場合には、長男の子が長男を代襲して相続人になります。
遺産分割協議を行う
遺言書が無効となった場合には、改めて誰がどの遺産を相続するのかを決めなければなりません。
そのため、相続手続きを進めるには遺言書が無かった場合と同様に、法定相続人全員で遺産分割協議をすることとなります。
なお、相続欠格に該当した人は、遺産分割協議にも参加することはできません。
遺産分割協議がまとまらなければ別途調停や審判で解決する
そもそも相続人同士で遺言書の無効を争っていた場合には、相続人同士の関係が良くない場合も多く、当人同士で遺産分割協議をまとめることが困難となるケースが少なくありません。
当人同士の話し合いで遺産分割協議がまとまらない場合には、まず家庭裁判所での調停で解決を図り、それでも解決できない場合には審判で解決を図ります。
調停とは、調停委員立ち合いのもと、家庭裁判所で行う話し合いのことです。
調停はあくまでも話し合いであり、裁判所や調停委員が決断を下すわけではありません。
調停をしても話し合いがまとまらない場合には、審判へと移行します。
審判では諸般の事情を考慮のうえ、誰がどの財産を取得するのかについて裁判所が決断を下します。
なお、遺言無効確認請求訴訟と遺産分割審判はまったく別の手続きです。
そのため、遺言無効確認請求訴訟でそのまま遺産分割の内容までを判断してもらえるわけではありません。
遺言無効確認請求訴訟で遺言が無効になったあとで、改めて遺産分割でももめてしまうと解決までにかなり長期の期間を要する可能性が高いため、この点にも注意しておきましょう。
遺言が無効とされなかった場合の対応策
遺言無効確認請求訴訟を行っても、遺言書が無効だと判断されない場合も少なくありません。
その場合には、作成された遺言書は有効なものとして、遺言書に従った相続手続きが行われます。
遺言が無効ではないとされた際には、次の方策として遺留分侵害額請求を検討します。
遺留分侵害額請求とは上でも触れたとおり、遺言書などで自分の遺留分を侵害された相続人から遺言書などで財産を多く受け取った人に対して行う金銭の請求です。
ただし、遺留分のある相続人は、配偶者の他、子や孫などの第一順位の相続人と、両親や祖父母などの第二順位の相続人に限定されています。
兄弟姉妹や甥姪が相続人になる場合であっても、これらの人には遺留分はありません。
また、遺留分侵害額請求には期限(相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から1年又は相続開始の時から10年)があるため、この点にも注意し、遺言が無効ではないと判断された時に備え、期限までに、遺言が無効であった場合には遺留分侵害額請求を行う旨書面などで伝えることが重要です。
まとめ
遺言書の内容にどうしても納得がいかず、遺言書を無効にしたいと考えるケースは少なくありません。
しかし、その一方で遺言書無効確認請求訴訟の結果、遺言書が無効になるケースは決して多くはありません。
遺言書は作成した本人がすでに亡くなっているという大きな特徴があり、無効だというためにはきちんとした証拠が揃っている必要があるためです。
遺言書を無効とするためには、どの程度きちんと証拠を集められるかがカギとなります。必要な書類を自分で検討して集めるのは決して容易ではないため、遺言書無効確認請求訴訟を検討する際には、ぜひ弁護士へご相談ください。
Authenseの弁護士が、お役に立てること
遺言無効確認請求訴訟を行うにあたっては、証拠の収集がとても重要になります。
たとえば、遺言者の入院していた病院に対してカルテの開示請求を行うなどが考えられますが、どこに対してどのような資料を求めるべきなのかについては専門的な知識が必要となりますので、遺言無効確認請求訴訟を検討される方は、弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
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