遺産分割はやり直しできるケースとできないケースがあります。
やり直しできる場合でも「贈与税」や不動産取得税などの税金が発生する可能性があるので注意しましょう。
遺産分割のやり直しができるケースと注意点を解説します。
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1.遺産分割は基本的にやり直しができない
遺産分割協議が成立したら、基本的にはやり直しができません。
いったん全員が合意して遺産分割協議書を作成した以上、協議内容が法的に有効となっているからです。
一部の相続人の都合では覆せません。
2.再協議すれば遺産分割をやり直せる
ただし例外的に遺産分割協議をやり直せるケースもあります。
それは相続人全員が「再協議」して納得した場合です。
遺産分割協議は、相続人全員が合意した結果として成立するものであり、全員が納得するなら、内容を変えても構いません。
ただし遺産分割協議後に不動産を売却したりして「第三者(譲受人)」が現れている場合には、取り戻しを請求するのは難しくなります。
遺産分割協議をやり直したからといって、すべて元通りにできるとは限らないので注意しましょう。
3.遺産分割協議を取り消せる場合
遺産分割協議をやり直せる場合の2つ目として「取消」ができるケースがあります。
3-1.だまされた、脅迫された、勘違いしていた
遺産分割協議の際、だまされたり脅迫されたりした事情があれば、相続人は合意を取り消せます。
また「錯誤(重大な勘違い)」があった場合には無効を主張できる可能性があります。
遺産分割協議が取り消されたら、遺産分割協議の効果が失われるのでやり直しをしなければなりません。
3-2.遺産分割協議を取り消せる具体的なケース
他の相続人や第三者から脅された
遺産分割協議に際し、他の相続人やその相続人から頼まれた第三者から脅迫されて無理に署名押印させられた場合、取消が可能です。
財産を隠されていた
一部の相続人が財産を隠したことが後から発覚した場合、遺産分割協議の前提が変わってしまうので取消が可能です。
後に生前贈与が発覚
遺産分割協議が成立した後、実は一部の相続人へ高額な生前贈与が行われていた事実が判明したら、遺産分割協議を取り消せる可能性があります。
3-3.取消権の時効は5年
取り消すことのできる行為であっても、取り消すことができることを知った上で、その行為の効果を後から承認することもできます。これを追認と言いますが、取消権は、追認をすることができるときから5年で時効になるとされています。
そのため、遺産分割の際、他の相続人や第三者から脅されたりだまされたりした場合には、早めに取消権を行使しましょう。
4.遺産分割協議が無効になる場合
法律上、遺産分割協議が「無効」になるケースもあります。
無効になったら遺産分割協議は成立していないのと同じなので、やり直しをしなければなりません。
遺産分割協議が無効になるのは、以下のような場合です。
4-1.相続人が全員参加していなかった
遺産分割協議には、法定相続人が全員参加しなければなりません。
1人でも欠けていたら遺産分割協議は無効になります。
その場合、全員参加させてやり直しが必要です。
ただし遺産分割協議後に「認知」が成立して新たな相続人が現れた場合には、やり直す必要がありません。
その場合、認知された相続人へ「相続分に相当する代償金」を払えば済みます。
4-2.親と子どもが両方参加していた
未成年の子どもとその親が同時に相続人になった場合、親は未成年の子どもを代理して遺産分割協議を成立させることができません。
親と子どもの利害が対立してしまうためです。
「親が自分の取得分を増やすと子どもの取得分が減ってしまう」という関係になるので、適切な分け方ができないと考えられています。
親と子どもの両方が相続人になる場合には、家庭裁判所で「特別代理人」を選任しなければなりません。
特別代理人を選任せずに親が子どもを代理して遺産分割協議を成立させてしまったら、無効になります。
その場合、遺産分割協議をやり直す必要があります。
4-3.認知症の人に成年後見人がついていなかった
相続人の中に「認知症」の人がいるケースでも要注意です。
認知症が進行して自分では適切な判断が難しい状態になっており、意思能力がないと判断される場合、1人では遺産分割協議を進められません。
このような場合、家庭裁判所で「成年後見人」を選任してもらう必要があり、成年後見人を選任しないまま意思無能力者に遺産分割協議書に署名押印させた場合、遺産分割協議は無効となります。
成年後見人を選任したうえで、あらためて遺産分割協議をやり直しましょう。
5.遺産分割協議をやり直す際の注意点
遺産分割協議をやり直す際には、以下の点に注意しましょう。
5-1.贈与税がかかる可能性がある
相続人全員が合意して遺産分割協議をやり直すとしても、いったん納付した相続税を返してもらえるわけではありません。
また再協議によって財産が移動すると「贈与」扱いとなります。
税務上は、「贈与税」が別途発生してしまうので注意しなければなりません。
しかも贈与税の税率は、かなり高くなっています。
すでに相続税の申告納税を終えている場合、遺産分割協議をやり直すと相続税と贈与税の二重課税になってしまうことに注意しましょう。
5-2.不動産の場合には登記費用や不動産取得税もかかる
遺産分割協議によって不動産の相続人を変更すると、登記にかかる費用や不動産取得税も別途発生してしまいます。
登記の際には登録免許税や司法書士費用がかかりますし、次年度には自治体へ不動産取得税を払わねばなりません。
遺産分割協議をやり直して不動産の所有者が移転した場合、コスト的にはかなりデメリットが大きくなると考えましょう。
5-3.完全なやり直しができない可能性もある
遺産分割協議をやり直しても、完全に元の状態に戻せるとは限りません。再協議や取消前に遺産を取得した「第三者」が現れる可能性があるためです。
再協議を行う場合
遺産の中に不動産がある場合で、相続人全員の再協議によって遺産分割協議をやり直す場合、再協議を行う前に不動産を取得した第三者との関係は、「登記の先後」によって定められます。
第三者が先に登記していたら、たとえ遺産分割協議によって取得しても取り戻し請求は認められません。
取り消す場合
詐欺や強迫によって取り消す場合、第三者が「事情を知らない場合」には取り戻しを請求できなくなります。
このように第三者が現れると遺産分割協議をやり直しても元に戻せるとは限りません。第三者が現れる前に、早めに対応しましょう。
まとめ
遺産分割のやり直しができるケースは限られています。
再協議を持ちかけたり取消権を主張したりしたとき、他の相続人とトラブルになってしまう可能性もあります。
また、やり直した場合には贈与税等の税金にも注意しなければなりません。
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