コラム
公開 2020.12.07 更新 2021.10.04

遺産分割でもめる理由は?知っておきたいトラブル回避

遺産分割でもめる理由やトラブルが起きやすいケース、もめないための対策を紹介します。相続が開始して遺産分割協議を行う場合、相続人同士でもめることもあります。トラブルになると時間も手間もかかり精神的な負担も増えるのでトラブル回避のための対策を事前に行っておくことが大切です。

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遺産分割の典型的なトラブル例とその原因

相続が起きたときの状況は人それぞれ異なり、遺産分割でもめる理由もさまざまですが、実際に相続トラブルが起きたケースを見てみると一定の共通点が見られます。
ここでは、遺産分割でもめる典型的なケースを紹介するので、将来ご自身が関わる相続が開始したときに似たような状況になる可能性がないか確認してみてください。将来的に遺産分割でもめる可能性が高い場合には、相続に強い弁護士などに相談して早めに相続対策を取ることをおすすめします。

相続人が多い場合

遺産を相続する相続人が多いケースでは、そもそも利害関係者の数が多くもめる可能性が高くなります。遺産分割協議ではすべての相続人の同意が必要ですが、相続人の人数が多いと全員で合意することは決して簡単ではありません。
さらに、相続人の数が多い場合、前妻の子と再婚後の妻と子のケースや、本来の法定相続人の死亡により代襲相続が発生しているケース、相続人に子どもがいないケース等、相続人同士の関係が元々良くないケースや、疎遠でお互いにあまり知らない者同士で遺産分割の話し合いをするケースが多くなりがちです。元々の関係性がよくなかったり、あまり知らない他人同然の人と遺産分割協議をするとなると「他の相続人には遺産を渡したくない」と考える人も出てくるため、話し合いがまとまらずもめるケースが多くなりがちです。

遺産に占める不動産の割合が高い場合

遺産に占める不動産の割合が高いケースでは、遺産を平等に分けることが難しく、主な資産である土地や家屋を誰が相続するのかを巡ってもめたり相続トラブルになったりすることがあります。現預金のように分割がしやすい財産であれば相続人の間で平等に分けられますが、分割が難しい不動産の場合は土地や家屋を相続した人の相続額が大きくなり、他の相続人との間で不公平が生じるため、土地や家屋を相続する相続人に代償金を支払う資力がない場合、もめることは少なくありません。

被相続人と同居していた相続人がいる場合

親が亡くなって相続が開始したとき、相続人の中に親と同居していた人と同居していなかった人がいるケースでは遺産分割でもめる場合があります。特に、同居していた相続人が、被相続人の面倒を主にみていた場合、もめることが多くなります。
たとえば、親と同居していた人は自分が実家を相続し、実家に住み続けられるものとばかり考えていたとしても、他の相続人が同意せず相続トラブルに発展するケースがあるからです。そもそも親と同居していたり、面倒を見ていたという理由で、高額資産である不動産を相続することの理由にはなりません。遺産を平等な金額で分割するために不動産の売却をする必要性があることも十分に考えられます。
故人と同居していただけでは相続では有利にならず、換価分割をすることになれば親と同居していた相続人は住む場所を失うことになります。もちろん、親の介護等、親の面倒を見ていたという点から寄与分が認められて相続で有利になるケースもありますが、寄与分は認められても数百万程度であることがほとんどであり、寄与分が認められたからといって実家を相続できるとは限りません。しかしながら、実家で親と同居していた相続人からすれば、実家を売却することに強い抵抗感があることが多いので、相続人間でトラブルになることが多いのです。

遺言書が相続トラブルの原因になる場合

遺言書に書かれている内容が不明確で相続トラブルになったり、法定相続人の一部にしか相続財産を渡さないという内容が記載されていて、相続財産の分配から除外された法定相続人の一部が快く思わずもめたりするケースがあります。
遺言書は本来相続トラブルを防ぐために作成するものですが、内容によっては逆に相続トラブルの原因になって相続人を紛争に巻き込むことにもなりかねません。
さらに、遺言の内容や効力を巡って相続人の間で裁判になることがあり、遺言の通りに遺産分割が行われない可能性もあるため注意が必要です。訴訟に発展して遺言の効力が認められなかったり、遺言を作成した被相続人の真意とはかけ離れた形で遺産分割が行われたりすると、せっかく作成した遺言が意味をなさなくなります。

特別受益を考慮する必要がある場合

相続が起きる前、生前に特定の相続人が贈与を受けるなどしていた場合も相続でもめる可能性があります。生前の贈与がなければ相続財産が増えたはずであり、生前贈与を受けた相続人以外の人が不満を抱いて相続トラブルに発展するケースがあるからです。

相続開始前に特別な受益を受けていた人がいる場合には、遺産分割においてこの点を考慮して各相続人の相続分を計算することになり、この仕組みを「特別受益の持ち戻し」と呼びます。しかし何が特別受益にあたるのかは判断が難しいことも多く、遺産分割で考慮に入れる特別受益の範囲などを巡ってもめることも少なくありません。

遺産分割でもめてトラブルになった場合のデメリット

遺産分割協議そのものには期限がなく、もめ続けていつまでも遺産分割協議で合意できなかったとしても罰則はありません。しかし、遺産分割でもめると精神的な負担が増えることはもちろんのこと、相続税の特例が使えなくなって税負担が増えるケースもあり、さまざまな形でデメリットが生じます。
遺産分割でもめてトラブルになった場合のデメリットを理解して、将来の相続でもめそうな場合には相続トラブルを回避するための対策を早めに行うようにしてください。

遺産相続までに時間がかかり精神的負担が増す

相続が開始するとさまざまな手続きが必要になります。ただでさえ、被相続人が亡くなった喪失感や、精神的苦痛を抱えながら、慣れない手続きをしなければならないため、相続人の精神的な負担はかなり大きくなります。このときに遺産分割でもめて他の親族と対立することになれば、精神的な負担はさらに増えてしまいます。
特に、遺産相続に関するトラブルでは感情的対立が原因であることが多く、感情的になるからこそ対立が激しくなるケースが少なくありません。解決できる見通しが立たないこと自体にストレスを感じることも多く、思いのほか精神的ストレスが溜まる点には注意が必要です。

親族同士の関係が悪化する

遺産分割でもめると親族同士の関係が悪化して、親族関係の断絶等、遺産分割が終了した後にも悪影響が出てしまう可能性があります。親族は、本来であれば互いに助けとなる存在であるだけに、遺産分割をきっかけに仲が悪くなると、日常の生活面にまで影響が出ることになりかねません。
たとえば、それまで仲が良かった親族であっても遺産分割をきっかけに仲が悪くなったり関係を断絶するケースもありますが、万が一ご自身に何かあったときに助けを求めたり連絡できる親族がいなくなれば自分自身が困ることになります。また、親族間で、お互いに、相続人ではない他の親族まで巻き込んで悪口を言い合う事態に発展してしまえば、被相続人の法事等もまともに開けない事態になりかねません。過去には、相続人同士で被相続人のお骨を取り合う事態にまで発展してしまった相続人もいました。

相続税の特例が使えなくなり、無申告加算税や延滞税が課される

遺産分割協議そのものには期限はありませんが、相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わらず、何の対策も取っていなければ、相続税の特例制度のうち使えなくなるものがあり、無申告加算税や延滞税が課されることになります。
そのため、特例制度の条件を満たしていて相続税負担を抑えたり納税を猶予してもらえたりする場合でも、相続が発生した翌日から10か月以内に、遺産分割が終わっていなければ特例制度を利用できず、無申告課税や延滞税も課されてしまい、税負担が増えることがあります。
なお、遺産分割協議が終わっていない場合でも、相続税の申告期限までに「3年以内の分割見込書」を提出したり、概算で申告すれば、無申告課税や延滞税は原則として免れますし、特例制度についても事後的な適用を含め、適用が可能になる場合があります。ただし、その場合でも、特例を適用しない状態で相続税額を計算していったん納税することになるので、納税資金としてまとまった資金の準備が必要になります。

遺産の有効活用ができない

遺産分割でもめてしまい誰がどの財産を相続するか決まらないと、遺産の有効活用がいつまで経ってもできない場合も出てきます。その場合には、土地や家屋の維持費や管理費に加えて固定資産税もかかり、活用できないまま費用だけがかかってしまいます。
なお、土地や家屋を売却すれば固定資産税などはかからなくなりますが、そもそも遺産分割協議で合意していなければ遺産の売却はできません。また、故人が事業を行っていた場合に遺産分割でもめると事業を承継する人が決まらず、事業の継続に影響する場合もあります。

遺産分割でもめないためにしておきたい対策

遺産分割でもめて相続人同士で対立した場合でも、弁護士などの第三者が間に入れば冷静な話し合いが可能になり、感情的な対立を抑えてトラブルを解決できる場合があります。
ただ、遺産分割で実際にもめてから解決策を考えるだけでなく、もめないために何ができるのかを事前に考えておくことも大切です。ここでは、遺産分割でもめないためにできる対策を紹介していきます。

相続が起きる前から遺産分割について話し合う

実際に相続が起きてから初めて遺産相続の話し合いを行うと、相続人同士の考え方の違いが急に明らかになって相続トラブルになったり事態の収集が付かなくなる可能性があったりします。
そこで、相続に関する話し合いはできる限り相続開始前から行っておくことが大切です。普段から遺産相続に対する考え方を共有しておくだけでも、相続開始後に感情的な対立からトラブルに発展する確率を下げられます。
もちろん、相続が開始する前から家族が亡くなったときの話をすることに抵抗感を覚える人もいるはずですが、相続トラブルが実際に起きてしまうと多くのデメリットが生じるので、相続開始前からできることは可能な限り行うようにしてください。
たとえば、相続開始後に相続人である兄弟姉妹がもめるケースでも、財産を残す側である親を交えて相続開始前に話し合いの場を設ければ、冷静に話し合える可能性が高まります。

被相続人が適切な内容の遺言書を残す

遺言が遺されておらず相続人が二人以上いるようなケースでは遺産分割協議が必要になり、相続人の間でもめる可能性があります。逆に、遺言で遺産の分け方がすべて指定されているようなケースでは、遺言の内容に従って遺産を分けるので、法定相続人の遺留分を侵害しておらず、遺言が有効である場合には、原則として遺産分割協議を行う必要がなく、相続人同士でもめる余地はありません。
遺言の内容によっては相続トラブルを引き起こす場合もありますが、遺言書を適切な内容で作れば相続トラブル回避のために大きな効果を発揮します。遺言書を作成する際には専門的な知識が必要になるので、弁護士などの専門家に相談しながら作成するようにしてください。

遺言書で遺言執行者を指定する

遺言書を作成して遺産の分け方について決めるだけでなく、遺言の内容を確実に実行するために遺言執行者を指定しておく方法もあります。

遺言の内容に従って相続手続きをする場合でも、相続人の誰かが非協力的だと手続きが進まないことがありますが、遺言執行者を指定して手続きを進める権限を付与しておけば、手続きが滞る心配もなくなり安心です。

まとめ

相続人が多い場合や遺産に占める不動産の割合が高い場合には、相続が起きたときにもめる可能性が高くなります。実際に相続トラブルが起きると多くのデメリットが生じるので、相続開始前から対策を行うことが大切です。

生前にできる相続対策には遺言書の作成などさまざまな方法がありますが、相続トラブルを回避するためには相続に関する専門知識が必要になります。遺産分割でもめて困っている方や生前の相続対策を検討している方は、Authense法律事務所にぜひご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
創価大学法学部卒業、創価大学法科大学院法務研究科修了。離婚問題、遺産相続などの家事事件を中心に、個人からの依頼案件を数多く担当。これまで解決に携わった案件数は500件を超える。
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