コラム
公開 2022.07.21 更新 2022.07.22

相続手続きの流れは?手続きの期限や必要書類をわかりやすく解説

相続の手続きは、どのような流れで進めればよいのでしょうか?
中には期限のある手続きも存在するため注意が必要です。相続手続きの全体像や期限のある手続き、相続手続きを専門家に依頼した方がよいケースなどについて、相続に詳しい弁護士がわかりやすく解説します。

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主な相続手続きの流れ:遺言書がない場合

身内が亡くなった際、相続手続きはどのように進めればよいのでしょうか?
はじめに、遺言書が遺っていなかった場合の相続手続きの一般的な流れを紹介します。

相続人を調査する

はじめに、亡くなった人(「被相続人」といいます。)の相続人を調査しましょう。
相続人となるのは、次の人です。

  • 配偶者相続人:入籍した配偶者がいれば、その配偶者は常に相続人です。
  • 第一順位の相続人:被相続人の子や、子がすでに他界している場合にはその他界した子の子である孫などです。他家に嫁いで名字の変わった子や、離婚した元配偶者との間の子なども相続人となります。
  • 第二順位の相続人:被相続人の両親などです。第一順位の相続人が誰もいない場合に相続人となります。
  • 第三順位の相続人:被相続人の兄弟姉妹や、兄弟姉妹がすでに他界している場合には他界した兄弟姉妹の子である甥姪です。第一順位と第二順位の相続人が誰もいない場合に相続人となります。

一般的に、配偶者や第一順位の相続人が相続人である場合には、比較的容易に相続人を把握できるでしょう。
一方で、第三順位の相続人が相続人である場合には縁遠い人が混じっていることも多く、把握するのは困難です。

いずれにしても、後の相続手続きにおいては相続人を確定するための戸籍謄本や除籍謄本などが必要となりますので、この段階で戸籍謄本などを集めておきましょう。
自分で集めることが難しい場合には、弁護士や行政書士などの専門家へ調査を依頼することをおすすめします。

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相続財産を調査する

相続人の調査と同時進行で、被相続人の遺した財産を調査しましょう。
相続人が被相続人の財産状況をある程度把握している場合や、被相続人が財産状況をある程度まとめておいてくれた場合には、調査は比較的スムーズです。

しかし、2022年現在、被相続人の財産がどこか国の機関などで一括管理されているわけではありません。
そのため、財産状況が不明である場合には、被相続人の住んでいた家を調査するなどして、一つひとつ調べていく必要があります。

一般的には、毎年4月から6月頃に市区町村役場から送付される固定資産税課税明細書で、被相続人の持っていた不動産の概要がわかります。

ただし、評価が低かったり非課税であったりなどの理由で固定資産税がかかっていない不動産や、他者と共有となっており他者が固定資産税をまとめて支払っている不動産は、固定資産税課税明細書に掲載されません。
そのため、これはあくまでも参考としつつ、法務局などで詳細の調査をするようにしましょう。

預貯金は、通帳やキャッシュカード、郵送物などがあればその金融機関にある可能性が高いと考えて、調査をしてください。

その他、証券会社などとの取引は郵便物を確認したり、通帳の入出金履歴を調べたりすることで推測していく必要があります。
同居しておらず財産状況が不明である場合や、財産の数が多くてとても調べきれないといった場合には、専門家にサポート依頼することも一つの手です。

遺産分割協議を行う

相続財産と相続人が確認できたら、相続人全員で遺産分割協議を行いましょう。

遺産分割協議とは、相続人のうち誰がどの財産をどれだけ相続するのかという話し合いです。
相続人が1人でも漏れると、遺産分割協議は無効となるため注意が必要です。

相続人全員が合意するのであれば、原則としてどのように分けても構いません。
話し合いがまとまったら、話し合いの結果をまとめた「遺産分割協議書」を作成します。

話し合いがなかなかまとまらない場合には、弁護士へ相談しましょう。

各財産の名義変更や解約手続きをする

遺産分割協議がまとまったら、相続財産である預貯金の解約や不動産の名義変更などの手続きを行いましょう。
相続手続きに必要となる書類は、後ほど詳しく解説します。

相続税申告をする

相続財産や被相続人が行った一定の過去の贈与財産の総額が相続税の基礎控除額を超える場合には、相続税の申告が必要です。
相続税の基礎控除額は、次の式で計算します。

 基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

基礎控除額がいくらであるのかを把握しておき、基礎控除額を超えそうな場合には早期に税理士などの専門家へ相談しましょう。

主な相続手続きの流れ:遺言書がある場合

遺言書 素材

被相続人が有効な遺言書を遺していた場合には、手続きの流れが大きく異なります。
遺言書がある場合の相続手続きの流れは次のとおりです。

遺言書の検認手続きをする

遺言書が次のものである場合には、すみやかに検認手続きを行いましょう。

 自宅などで保管していた「自筆証書遺言」

一方、遺言書が次のものであった場合には、検認は必要ありません。

 公正証書遺言
 法務局での保管制度を活用した「自筆証書遺言」

検認とは、以後の偽造や変造を防ぐ目的で行う、家庭裁判所での手続きです。
被相続人が遺した遺言書が検認の必要なものである場合には、検認をしなければ名義変更などの手続きに使用することはできません。

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各財産の名義変更や解約手続きをする

遺言書ですべての財産の行き先が明確に定められていれば、遺産分割協議は必要ありません。
そのため、遺言書を使って遺言書どおりに、各相続財産の名義変更や解約を進めましょう。

遺言書で遺言執行者が定められていれば、これらの手続きは原則として遺言執行者が行います。

相続税申告をする

遺言書の有無と、相続税申告の要否には一切関係がありません。
そのため、遺言書がない場合と同様に、被相続人の財産状況などから相続税の申告が必要となる場合には、必ず期限内に申告を行いましょう。

期限のある主な相続手続き

相続手続きの中には、期限のある手続きが存在します。
それぞれの手続き期限に注意して、期限内に手続きを済ませるようにしましょう。

死亡届 の提出

死亡届は、原則として死亡後7日以内に提出する必要があります。
死亡届の提出先は、死亡者の死亡地や本籍地、または届出人の所在地の市区町村役場です。

死亡届を出さないと火葬に必要な火葬許可証がもらえませんので、通常はこの手続きを忘れることはないでしょう。

住民票の世帯主変更届など役所関係の手続き

葬儀が終わったら、すみやかに役所関係の手続きを行います。

必要な手続きは被相続人の生前の状況などによって異なりますが、主な手続きは次のとおりです。

 住民票の世帯主変更届 :死亡後14日以内。世帯主が死亡した場合で、残った世帯員が2人以上いる場合に必要です。
 年金受給者の死亡届 :死亡後14日以内(国民年金の場合は10日以内)。年金の受給を止めるための手続きです。期限に遅れると、多くもらいすぎてしまった年金の返還が必要となります。同時に、未支給年金があればその受給手続きをするとスムーズです。なお、日本年金機構にマイナンバーが収録されている人については、原則届け出をする必要はありませんが、未支給の年金が残っているようなケースでは、その未支給の年金を受給するには未支給年金請求の届出を出す必要があります 。
 介護保険資格喪失届 :死亡後14日以内。介護保険証を返納する手続きです。

なお、最近では役所内にワンストップで手続きができる窓口があったり、必要な手続きの一覧を渡してくれたりする役所が少なくありません。

相続放棄

相続放棄を希望する場合には、原則として自己が相続人になったことを知った日の翌日から3ヶ月以内 に手続きを行わなければなりません。

相続放棄とは、相続人がはじめから相続人ではなかったこととするための手続きです。
相続放棄が認められれば被相続人の借金などマイナスの財産を引き継がずに済む一方で、不動産や預貯金などプラスの財産も一切相続することができなくなります。

被相続人に借金が多くその借金を引き継ぎたくない場合や、他の相続人と一切関りを持ちたくないなどの理由で行うことが一般的です。

相続放棄の手続きは家庭裁判所で行いますが、郵送でやり取りをすることも可能です。
自分で手続きをすることに不安がある場合には、弁護士や司法書士などの専門家へ相談するとよいでしょう。

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準確定申告

準確定申告とは、亡くなった人について行う確定申告のことです。
通常の確定申告とは、期限や対象期間が異なります。

通常の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの所得を、原則として翌年2月16日から3月15日の間に行います。
一方、準確定申告の期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から4ヶ月以内 です。

被相続人に事業所得や不動産所得がある場合のほか、亡くなる直前に不動産などの資産を売却していた場合などには、忘れずに申告と納税をするようにしましょう。

相続税の申告

相続税の申告期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内 です。
相続税の申告が必要となる場合には、必ず期限内に申告をするようにしましょう。

なお、相続税の申告にはそれぞれの財産の評価など、膨大な作業が伴います。
そのため、申告期限ギリギリで税理士を探し始めるのでは、税理士に断られてしまう可能性や申告期限に間に合わない可能性が高いでしょう。

相続税の申告が必要となりそうな場合には、できるだけ早い段階から税理士に相談するなど準備をしておくことをおすすめします。

不動産の相続登記

2022年現在、不動産の相続登記には期限はありません。
しかし、相続後に名義変更をしないまま放置されることが所有者不明土地を増大させることにつながっており、社会問題となっています。

そのため、2024年4月からは、相続登記に期限が設けられることとなりました。

改正後は、不動産の相続を知ってから3年以内に相続登記を行わなければなりません。
特に理由のないまま期限を超過した場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

今後は、不動産の名義変更についても期限内に行うように注意しましょう。

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生命保険金の受け取り

生命保険金を受け取る権利は、相続の開始から3年で時効によって消滅してしまいます。

相続が起きて、自己が受取人に指定された生命保険契約を発見した場合には、できるだけ早期に請求手続きを済ませておきましょう。

相続での名義変更手続きで原則として必要となる書類

書類 素材

相続財産の解約や名義変更をする際には、さまざまな書類が必要となります。
手続きに必要となる代表的な書類は次のとおりです。

ただし、状況や手続き先によってはこれら以外の書類が求められる場合もありますので、実際に手続きをする際には手続き先に確認したうえで書類を提出することをおすすめします。

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等

相続手続きの際には、被相続人の出生から死亡までの連続した「戸籍謄本」「除籍謄本」「原戸籍謄本」が必要になります。
これは、被相続人の相続人を確定するためです。

なお、兄弟姉妹など第三順位の人が相続人となる場合には、これに加えて被相続人の父母それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本も必要となります。
書類の取り寄せ先は、その時点で本籍を置いていた市区町村役場です。

なお、遺産分割協議書ではなく遺言書で手続きをする場合には、必要な書類が軽減されるケースが多いです。

被相続人の住民票の除票

被相続人の最後の住所を確認するため、被相続人の住民票の除票が必要です。

除票は、被相続人の最後の住所地を管轄する市区町村役場で取得します。

遺産分割協議書または遺言書

誰がその遺産を相続することになったのかを示すため、遺産分割協議書または遺言書が必要となります。

その財産を引き継ぐ人が遺言書で明確に定められていれば、遺言書を提出しましょう。
検認が必要な遺言書の場合には、検認手続きが済んでいなければなりません。

一方で、遺言書がない場合や、手続きしようとする財産について遺言書で行き先が決まっていない場合には、遺産分割協議書を提出します。

遺産分割協議書には、相続人全員の実印での押印が必要です。

相続人全員の印鑑証明書

遺産分割協議書で手続きをする場合には、相続人全員の印鑑証明書が必要となります。
遺産分割協議書に押した印が実印であることを証明する必要があるためです。

相続人全員の現在の戸籍謄本

相続手続きの際には、相続人全員の現在の戸籍謄本が必要となります。
これは、その相続人が現在も生存していることを確認するためです。

手続き先ごとに求められる所定様式

相続手続きの際には、ここまで挙げた共通書類のほか、手続き先ごとに独自の書式を求められることが一般的です。
たとえば、不動産の名義変更であれば登記申請書、預貯金の解約であればその金融機関の独自書式の提出が必要となります。

登記申請書は穴埋め形式ではなく一から作成しなければなりません。
一方、金融機関の書式は金融機関ごとに定められた様式ですので、手続き先の金融機関から入手しましょう。

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相続手続きを専門家に依頼すべき場合とは?

相続手続きを専門家に頼らず完結させられる場合がある一方で、専門家の手を借りなければ難しい場合も存在します。
中でも、次の場合には特に専門家へ依頼した方がよいでしょう。

相続人同士に争いが起きている場合や争いになりそうな場合

相続人間で遺産分割協議がまとまらないなど争いが起きている場合には、当事者間での対応ではらちが明かない可能性が高いでしょう。
このような場合には、早期に弁護士へ相談してください。

なお、弁護士法72条の規定により、相続争いの仲裁や代理交渉をすることができる専門家は弁護士のみとされています。

相続税申告が必要となる場合

相続税の申告や納税が必要な場合には、税理士へ依頼した方がよいでしょう。

相続税申告を自分たちで行うことが、法律で禁じられているわけではありません。
しかし、相続税申告は複雑であり、専門家以外が誤りなく仕上げることは困難です。
計算を間違えたり本来であれば適用できる特例を見落としたりして、余分に税金を支払ってしまうかもしれません。

また、自分で行った申告では申告漏れや誤りがある可能性が高ため、税務調査に入られるリスクも高くなります。

無用なリスクを避けるため、相続税申告は専門家へ依頼した方がよいでしょう。

難しい手続きを代行して欲しい場合

相続手続きの中でも、不動産登記は比較的難易度の高いものです。
自分で行うことは容易ではなく、仮に自分で行おうとすれば手続き方法を調べたり法務局に事前相談へ出向いたりすることに、多大な手間が生じてしまうことでしょう。

不動産登記の専門家は、司法書士です。
難しい手続きは無理に自分で行うのではなく、専門家へ依頼することをおすすめします。

手続きに割く時間が取れない場合

相続手続きは、平日の日中におこなうべきものが少なくありません。
これは、忙しい人にとっては非常に大変です。

手続きに必要な時間を取ることが難しい場合には、手続きを専門家へ依頼するとよいでしょう。
どこまでの手続きを代行してくれるのかは事務所によって異なりますが、行政書士などは、金融機関の解約手続きなどまでまとめて代行してくれることが少なくありません。

まとめ

身内が亡くなると、慣れない膨大な手続きが必要となります。
中には期限のある手続きも存在しますので、期限管理に注意しつつ漏れなく手続きを進めるようにしましょう。

相続手続きを、自分で全て行うことは容易ではありません。
必要に応じて専門家を活用することをおすすめします。

Authense法律事務所には相続問題に詳しい弁護士が多数在籍しており、これまでも多くの相続問題の解決にあたって参りました。
相続でお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

相続手続きについては、期限が決まっているものも複数ある一方、戸籍の収集だけで1~2か月かかることもあり、思った以上に時間的余裕がないことが多くあります。
また、相続人同士で話し合いがつかない場合には手続きを進めることが困難となります。このため、相続に関して悩まれている場合には、速やかに弁護士等の専門家にご相談されることをお勧めします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。相続に関する相談会や、労働問題のセミナーなどにも取り組んでいる。
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