コラム
公開 2022.08.02

離婚した元夫との子は相続を受けられる?離婚と相続の仕組みを解説

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相続の権利は、離婚した元配偶者や離婚した相手との子にもあるのでしょうか?
今回は、離婚が絡む相続について相続人や相続分についてわかりやすく解説し、離婚した相手との子が未成年である場合の手続きについても紹介します。

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相続は離婚した元夫から受けられる?

昨今、おおよそ3組に1組の夫婦が離婚をしているといわれており、離婚は決して珍しいことではありません。
そして、離婚した元配偶者との間に子がいる場合も少なくないことでしょう。

では、離婚をした元夫が亡くなった場合、離婚をした元妻や、元妻が親権を持つ元夫との間の子に相続権はあるのでしょうか?

離婚した配偶者は相続人ではない

たとえば、元妻は、離婚した元夫の相続人にはなりません。

配偶者であれば、相続の権利を持ちます。
しかし、離婚をした時点で夫婦の関係は法律上終了しており、離婚をした相手はもはや配偶者ではありません。

そのため、亡くなる以前に離婚が成立している以上、元夫から相続を受けることはできないこととなっています。

子は離婚をして親権を持っていない親からも相続を受けられる

親子関係は、両親の離婚によって何ら変動するものではありません。

たとえば、離婚によって未成年の子の親権を母が持ったとしても、その子と父との親子関係が終了するわけではないのです。
そのため、両親の離婚によって、子の相続権は何ら影響を受けません。

つまり、離婚後に母が親権を持った子には、母からの相続を受ける権利があることはもちろん、親権者ではない父からの相続を受ける権利も持っています。

相続前に離婚した元夫の相続人は誰になる?

続が起きる前に離婚が成立し、その後元夫が死亡した場合に、元夫の相続人は誰になるのでしょうか?
4つのケースに分けて解説していきましょう。

離婚した元夫が再婚している場合

離婚をした元夫が再婚をしている場合、元夫の死亡時の配偶者である再婚相手は、常に相続人となります。

離婚した元夫に子や孫がいる場合

離婚をした元夫に子がいる場合には、子が相続人となります。
配偶者も子もいる場合には、配偶者と子はともに相続人です。

先ほども記載したとおり、親の離婚によって子の相続権がなくなることはありません。

そのため、元夫の子でさえあれば、元妻との間の子であっても再婚相手との間の子であっても、籍を入れていない内縁の配偶者との間の子であっても、等しく相続人となります。

なお、元夫よりも子が先に亡くなったが、孫(亡くなった子の子)がいる場合には、孫が代襲して相続人となります。
また、元夫より子も孫も先に亡くなりひ孫が存命である場合には、再代襲の結果、ひ孫が相続人となります。

離婚した元夫に子や孫がおらず両親が存命の場合

離婚をした元夫に子や孫などが1人もいず、元夫の親が存命の場合には、元夫の親が相続人となります。
この場合、元夫に死亡時点で配偶者がいるのであれば、配偶者と親がともに相続人です。

両親がともに存命であれば両親がともに相続人となり、父母のどちらか一方のみが存命であれば、その存命の父または母が相続人となります。

なお、父母がいずれも他界しており、存命の祖父母がいる場合には、その存命の祖父母が相続人となります。

離婚した元夫に子や孫がおらず両親も他界している場合

離婚をした元夫に子や孫などが1人もおらず、元夫の親や祖父母はすべて他界している場合には、元夫の兄弟姉妹が相続人となります。
この場合、元夫が亡くなった時点で配偶者がいるのであれば、配偶者と兄弟姉妹がともに相続人です。

また、兄弟姉妹の中に元夫より先に亡くなった人がいる場合には、その亡くなった兄弟姉妹の子である甥や姪が代襲して相続人となります。
ただし、兄弟姉妹もその子である甥姪も亡くなっている場合であっても、甥や姪の子が相続人となることはありません。

離婚した元夫との間の子の相続分はどれくらい?

離婚した元夫との間に子が2名いる場合、この2名の子の相続分はどのくらいになるのでしょうか?
3つのケースで解説します。

元夫が独身で他に子もいない場合

元夫の死亡時点で、元夫に法律上の配偶者がおらず、かつ元夫に他の子がいない場合には、相続人は2名の子のみとなります。

この場合における2名の子の相続分は、遺産総額の2分の1ずつです。

元夫が再婚している場合

元夫にこの2名以外に子はいないものの、再婚している場合には、死亡時点の配偶者と2名の子とがともに相続人となります。

この場合の相続分は、それぞれ次のとおりです。

  • 配偶者:2分の1
  • 前妻との間の子1:4分の1(=2分の1×2分の1)
  • 前妻との間の子2:4分の1(=2分の1×2分の1)

元夫が再婚しており再婚相手との間にも子がいる場合

元夫が再婚をしており、かつ再婚相手との間にも1人の子がいる場合には、死亡時点の配偶者とその配偶者との間の子、そして前妻との間の2名の子がともに相続人となります。

この場合の相続分は、それぞれ次のとおりです。

  • 配偶者:2分の1
  • 再婚相手との間の子:6分の1(=2分の1×3分の1)
  • 元妻との間の子1:6分の1(=2分の1×3分の1)
  • 元妻との間の子2:6分の1(=2分の1×3分の1)

再婚相手との間の子と、元妻との間の子の相続分は同じです。

離婚した元夫が遺言書を遺していたら相続はどうなる?

仮に元夫が遺言書を遺していた場合、相続の権利はどのようになるのでしょうか?

原則として遺言書どおりに相続される

有効な遺言書があれば、先ほど解説した法律上の相続分よりも、遺言書が優先します。
そのため、原則としてその遺言書に従って相続されることとなります。

たとえば、元妻との間に2名の子がいるにもかかわらず、元夫の遺言書で再婚相手に全財産を相続させるとされていた場合で考えてみましょう。
この場合は、その遺言書に従い、原則として再婚相手が実際に全財産を相続します。

子には遺留分がある

子や配偶者など一定の相続人には、「遺留分」の権利があります。
遺留分とは、一定の相続人に対して、遺言によっても奪うことのできない一定割合の遺産の取り分のことです。

遺留分を侵害したからといって、遺言書が無効になるわけではありませんが、遺留分を侵害された相続人は遺言書で多く財産を受け取った人に対して、「遺留分侵害額請求」をすることができます。
遺留分侵害額請求とは、侵害された遺留分相当額を金銭で支払うべき旨を請求することです。

先ほど挙げたように、2名の子がいるにもかかわらず、再婚相手に全財産を相続させる遺言があった場合、2名の子はそれぞれ再婚相手に対して遺留分侵害額請求ができます。

この場合に請求できる遺留分は、次のとおりです。

  • 子1:2分の1(全体の遺留分)×4分の1(子1の法律上の相続分)=8分の1
  • 子2:2分の1(全体の遺留分)×4分の1(子2の法律上の相続分)=8分の1

遺留分侵害額請求をするかどうかは、遺留分権利者(例の場合には子1と子2)がそれぞれ判断することとなります。
たとえば、子1は遺留分侵害額請求をせず、子2だけが遺留分侵害額請求をしても構いません。

子が相続人から廃除されれば遺留分ももらえない

亡くなった人(「被相続人」といいます)の子であれば、原則として遺留分の権利があります。
ただし、子が相続人から廃除された場合などには、遺留分の権利さえありません。

廃除とは、家庭裁判所が審判をすることにより、本来であれば相続人になったはずの人の相続の権利を剝奪することです。

廃除は家庭裁判所へ請求をしたからといって無条件に認められるわけではなく、被相続人に対して虐待したり重大な侮辱を加えたりした場合や、その相続人に著しい非行があった場合にのみ許可がされます。
ただし、廃除は代襲原因となるため、廃除をされた子に子(被相続人の孫)がいる場合には、孫が相続人となります。

廃除は生前に行うことができる他、遺言によって行うことも可能です。

離婚した元夫との間の子が未成年の場合の相続手続きは誰がする?

元夫が亡くなった時点で子が未成年であった場合には、相続の話し合いや相続の手続きは誰が行うことになるのでしょうか?

原則として親権者が代理して手続きをする

子の父である元夫が亡くなった場合、子の母が親権者なのであれば、原則として親権者である母が子を代理して相続の話し合いや相続の手続きを行うこととなります。

つまり、離婚をした元妻自身は元夫の相続人ではないものの、2人の間に未成年の子がいる場合には、子の代理人として元妻が相続手続きに関わることとなるわけです。

未成年の子が複数なら特別代理人の選任が必要

未成年の子が1人のみであれば、上で解説したように、その子の親権者である母が代理をすれば問題ありません。

しかし、未成年の子が2人いる場合には、そのうち1人については親権者である母が代理をし、もう1人の子については別途「特別代理人」を選任する必要があります。
なぜなら、相続においては子1と子2の利益はぶつかり合うと考えられるためです。

利益がぶつかり合う2人について、1人の親権者がまとめて代理をすることは原則として認められません。

特別代理人とは、相続の場面で一時的に代理を行う代理人です。
特別代理人は家庭裁判所で選任してもらう必要がありますが、成人であり、かつその相続の相続人でないのであれば、特に資格の制限はありません。

そのため、子の祖父母や叔父叔母など、信頼できる他の親族を候補者として挙げることが多いでしょう。

ただし、家庭裁判所によって候補者が適任ではないと判断された場合には、弁護士や司法書士などの専門家が選任される可能性があります。
もちろん、はじめから弁護士や司法書士などの専門家を候補者としても構いません。

まとめ

今や、離婚は決して珍しいことではありません。
ただし、離婚をした後の相続についてまで想定ができているケースは、さほど多くないのではないでしょうか?

特に、離婚をした相手との間に子がいる場合には、相続の権利が誰にあるのか改めて確認しておくことをおすすめします。

Authense法律事務所には、離婚や相続に詳しい弁護士が多数在籍しております。
離婚が絡んだ相続でお困りの際には、ぜひAuthense法律事務所までご相談ください。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

元配偶者が亡くなり、その元配偶者との間に子(特に未成年子)がいる方、または、離婚している両親のうち、親権者でない方の親が亡くなった方ご本人は、ご相談ください。たとえ元配偶者(離婚後の親)が親権を持っていなかったとしても、子には亡くなった元配偶者(離婚後の親)の遺産を相続する権利があります。遺言内容によっては遺留分侵害額請求の問題になることもありますし、遺産の内容によっては負債を相続してしまうリスクも発生しますので、相続の進め方について弁護士からアドバイスをさせていただきます。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(神奈川県弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学法学部法務研究科を修了。これまで離婚、相続など個人の法律問題に関する案件を数多く取り扱い、依頼者の気持ちに寄り添った解決を目指すことを信条としている。複数当事者の利益が関わる調整や交渉を得意とする。現在は不動産法務に注力。
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