コラム
公開 2020.04.22 更新 2022.03.14

相続の際に借入金が含まれている場合はどのように手続きすべき?

相続をする際、相続人が被相続人から引き継ぐ遺産としては、建物や土地といった不動産、株式、預貯金といったプラスの財産だけではなく、借入金などのマイナスの財産も引き継ぐケースがあります。

マイナスの財産のみであれば、相続人は相続放棄をすることが多いと思いますが、プラスの財産とともにマイナスの財産もある場合については、マイナスの財産についてどのように分割されるのか、どのように分割すればいいのかが問題となります。

そこで今回は、相続する遺産の中に借入金債務があった場合、どのように遺産分割や相続の手続きをすれば良いのかを解説します。

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

借入金は分割して相続される

借入金は分割して相続される

借入金の相続についての概要やどのように相続されるのかを紹介します。

借入金は法定相続分に応じて分割相続

複数人の相続人がいる場合、借入金といったマイナスの財産(債務)は法定相続分に応じて分割して相続します。遺留分がある際にも相続債務を負担することに変わりありません。そのため、相続債務をどのように負担するか、相続方法に関して知っておく必要があります。

可分債務については、法定相続分によって分割されることが一般的です。可分債務とは、分割して給付することが可能な債務を指します。また法定相続分とは、法律で定められている、相続時の法定相続人がどのような割合で遺産を受け取るのかという数値です。

例えば、相続人が配偶者と子ども2人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子どもが4分の1ずつとされます。200万円の借入金があったと仮定し、当該借入金債務を相続することになった場合には、配偶者が100万円、子どもが50万円ずつ借入金債務を相続します。借入金は不可分債務ではないので、自身の相続分のみに責任を負います。

債権者に対しては、原則として遺産分割や遺言によって相続の割合は変更できない

借入金債務の相続は、相続開始の時点で、法定相続分に応じて相続します。遺産分割や遺言によって相続人間の債務割合を変更したとしても、債権者に対しては、遺産分割の内容や遺言の内容を主張できません。

仮に、相続人間で遺産分割を行い、借入金債務の負担分の割合を変えたとしても、金融機関等の債権者から法定相続分に応じて請求された際には、法定相続分に従って支払う必要があります。

法定相続分と異なる借入金の相続には債権者の承諾が必要

遺産分割協議や遺言で債務の相続を決められると、債権者に不利益になる場合があります。通常であれば亡くなった人の借入金だった内容が、被相続人が亡くなることによって支払い能力がない相続人に相続された場合、借入金の残債を回収できなくなる可能性があるためです。

そのため、遺言や遺産分割協議で債務の相続人を決める場合でも、債権者の承諾を得なければ法定相続分に沿った請求権が残ります。債権者は、法定相続分に応じて借入金の返済を相続人全員へ請求する、もしくは、遺言や遺産分割協議に沿った債務の相続を承諾したうえで債務の相続人に借入金返済を請求する方法のいずれかを選ぶことが可能です。相続人の誰が借入金を相続したとしても、一方的に債権者に対する主張をすることはできません。

なお、借入金の代表格である住宅ローンの場合、通常は、主債務者が亡くなれば保険金で住宅ローンが支払われる団体信用生命保険に加入しているため、相続で住宅ローンが問題になることはほとんどありません。また、住宅ローンの場合、当該住宅に抵当権が設定されていることがほとんどなので、そういった意味でも、債権者と相続人が借入金の弁済を巡ってトラブルになる可能性は低いといえます。

借入金の相続における免責的債務引受とは?

借入金の相続の際の免責的債務引受について、内容と注意点を解説します。

法定相続分で借入金を相続すると不平等が大きくなるケース

原則通りに法定相続分で借入金を相続すると、不平等が発生するケースがあります。例えば、遺言によってプラスの財産の多くを1人の相続人が相続した、財産価値が大きい不動産が特定の1人に相続されたなどです。

債務である借入金を法定相続分によって相続すると、相続人の間で不平等が大きくなりトラブルに発展することがあります。不平等が大きい場合は、免責的債務引受(民法第472条)を利用して相続人の1人が他の債権者の借入金を引き受けることが可能です。

免責的債務引受(民法第472条)とは

免責的債務引受とは、特定の相続人に借入金といった債務を引き継がせる旨の債務引受契約をする行為です。免責的債務引受が行われると、債務は元の債務者から新しい債務者へ移るため、旧債務者は債務を免れます。そのため、免責的債務引受後、債権者が元の債務者に対して取り立てを行うといった行為は認められません。

免責的債務引受には金融機関等の債権者との契約、もしくは、債権者の承諾が必要

免責的債務引受をするには、債権者と引受人が債務引受契約をするか、もしくは、引受人と債務者が債務引受契約をしたことについて、債権者が承諾することが必要です。

借入金の相続税控除手続きもお忘れなく!

マイナスの遺産である借入金は、債務控除の対象になります。
債務控除のついても説明しますので、確認してみましょう。

債務控除とは

相続財産に対して課せられる相続税は、プラスの財産からマイナス財産を差し引いた財産に対して課せられます。借入金はマイナスの財産であるため、現金、不動産、有価証券などプラスの財産から借入金の評価額分を差し引きます。

これを債務控除と呼び、他に債務控除できるものとしては、葬儀費用、税金、被相続人にかかった医療費など、確実にマイナスとなるものが挙げられます。

借入金の相続に伴う手続きは複雑になりがち

担保や債務控除の計算など、非常に煩雑であり、知識がなければ判断できない内容が多いです。また、金銭が絡む問題であり、非常にデリケートな内容であることから、相続人間での話し合いを進めにくいことも少なくありません。

スムーズに遺産分割協議やローンの負担方法を決めるためには、弁護士に相談したほうが良いでしょう。

まとめ

借入金は、原則として法定相続分の割合で相続します。債権者側の権利を守る必要があることから、プラスの財産と異なり、誰がどれだけの負担をするかについて相続人同士で決めたとしても債権者の承諾が必要です。

借入金の相続に関しては非常に複雑になりやすいからこそ、オーセンス法律事務所までお問い合わせください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
東京大学法学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科修了。遺産分割協議、遺留分侵害額請求、遺言無効確認など、相続に関わる様々な紛争案件の解決実績を持つ。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問合せはこちら

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。

こんな記事も読まれています

コンテンツ

オペレーターが弁護士との
ご相談日程を調整いたします。