コラム
公開 2022.04.07

特別寄与料の制度と手続きについて解説!

特別寄与料の制度と手続きについて解説!

2019年7月1日に施行された相続法改正の中で、特別寄与料の制度が創設されました。

法定相続人ではなく、親族であれば、特別寄与料の請求が可能となりました。

ここでは、特別寄与料の制度については、具体的な内容や手続きをご説明いたします。

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特別寄与料の制度の概要

2019年7月1日の相続法改正により、新たに特別寄与料の制度が創設されました。
改正前は、「寄与分」は法定相続人しか請求できませんでしたが、改正後は、法定相続人ではなくても、親族であれば、「特別寄与料」を請求できることとなりました。
寄与分と特別寄与料の要件については、相違点もございますので、以下、特別寄与料の概要をご説明いたします。

特別寄与料の請求ができる人

  • 法定相続人以外の親族

(※親族…6親等以内の血族及び配偶者並びに3親等以内の姻族のこと)

例)相続人の配偶者、甥・姪(ただし法定相続人ではない場合)
※内縁者は親族には該当しませんので、特別寄与料の請求はできません。

特別寄与料が請求できる行為

  • 無償での労務の提供
  • 無償での療養看護

※「寄与分」では、「財産上の給付」も条文に記載されています(民法904条の2第1項)が、「特別寄与料」では、「財産上の給付」は記載されていません(民法1050条第1項)ので、財産上の給付をした場合に特別寄与料が請求できない可能性が高いため、注意が必要です。
※「無償」については、完全に無償でなくても、低い対価等の場合であれば、認められる可能性もあります。

特別寄与料の計算方法

「寄与分」とほぼ同じとされており、例えば日当額に労務の提供・看護療養の日数を掛けた上で一定の裁量割合を乗じたもの等とされています。
※特別寄与料の価額は、相続開示に有った財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできません(民法1050条第4項)。

「特別寄与料」の制度については、何といっても、従前は「寄与分」の請求ができなかった、相続人の配偶者や甥・姪が「特別寄与料」という形で、遺産から金銭を取得できるということが大きな特徴になります。

特別寄与料の請求手続き

特別寄与料の制度と手続きについて解説!

続いて、特別寄与料の請求手続きについて、説明いたします。

①相続人との協議

まずは、法定相続人との協議で「特別寄与料」の金額の交渉をしましょう。
法定相続人全員の同意が得られれば、「特別寄与料」として、相続人の財産から金銭を取得することが可能となります。

②家庭裁判所に対して、協議に代わる請求

相続人との協議で「特別寄与料」が決まらない場合は、家庭裁判所に対して、協議に代わる処分を請求しましょう。
請求できる期間が決まっているので、要注意です。
期間は、下記①もしくは②の早い方の日までとなります。

  • ①相続の開始及び相続人を知ったときから6ヵ月
  • ②相続開始の時から1年

「特別寄与料」の主張を検討する方は、相続の開始を知っている場合が多いと思われますので、相続開始から6ヵ月以内に家庭裁判所に対し、請求をしなければならなくなります。

相続人との協議が終わってから家庭裁判所の請求の準備をするとなると、期限が過ぎてしまう可能性がありますので、「特別寄与料」を請求したいという場合は、早めに弁護士に相談をしておき、協議が調わない場合は、迅速に家庭裁判所に請求ができるようにしておくと良いでしょう。

特別寄与料の具体例

それでは、どのような方が「特別寄与料」を請求できるのでしょうか。

例1)長男の妻が「特別寄与料」を請求するケース

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  • 被相続人:長男の母
  • 相続人:次男
    • ※長男の父、長男は既に他界
    • ※長男の妻が、長男の母を介護していた

長男にお子様がいるケース

下記の2ケースが考えられます。

  • ①長男の配偶者が、「特別寄与料」を次男に対して請求する
  • ②長男のこども(代襲相続人)が、長男の配偶者の介護分を「寄与分」として次男に請求する

②の請求ですと、寄与分が、長男の配偶者ではなく、長男のこどもに帰属することになりますので、長男の配偶者が請求したいということであれば、①を選択するようにしましょう。

①の請求期間が過ぎてしまった場合は、②の請求を検討するとよいでしょう。
①②の選択は、個別具体的な事情によって判断がかわりうるため、必ず専門家に相談の上、決定するようにしてください。

長男にお子様がいないケース

  • 長男の妻が、「特別寄与料」を次男に対して請求する

従前は、こちらのケースは、長男の配偶者は、長男の母の相続では何ら財産を承継できなかったのですが、相続法改正により、特別寄与料が請求できるようになりました。

例2)甥・姪が「特別寄与料」を請求するケース

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  • 被相続人:父
  • 相続人:長男・次男
    • ※長男・次男は、海外に居住しており、父とは10年以上音信不通であった
    • ※父の兄の娘(被相続人の姪)が、父の介護をしていた

被相続人の姪は、被相続人の長男・次男に対し、特別寄与料の請求をすることとなります。
こちらも、相続法改正前は、被相続人の財産を姪が承継することはできませんでしたが、相続法改正により、特別寄与料が請求できるようになりました。

特別寄与料について誰に相談すべきか

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特別寄与料の請求できる立場となった場合は、誰に相談すべきでしょうか?

特別寄与料については、家庭裁判所への請求手続きが必要となる場合が多く、また、裁判所や法定相続人に「寄与行為」があったと認められるだけの客観的資料を提出することが必要となってきます。
そのため、遺産分割調停や審判等で「寄与分」の請求の経験のある弁護士に相談して、必要な書類や主張について、アドバイスを受けるとよいでしょう。

また、被相続人の生前であれば、遺言書を作成することによって、特別寄与料を請求できる立場の親族に財産を承継させることも可能です。
このような場合も弁護士等の専門家に相談するとよいでしょう。

特別寄与料の請求は、早めに専門家に相談することもポイントです。
家庭裁判所への請求期限も決まっているので、早めに専門家に相談をして、対応をするようにしましょう。

まとめ

特別寄与料の制度は、従前の「寄与分」の制度とは請求者や請求できる行為、請求方法が異なりますので、内容について、しっかりと確認するようにしてください。
また、相続法改正前は「泣き寝入り」をしていた、被相続人の介護等をしていた親族が、特別寄与料の制度によって、被相続人の財産の一部を取得できるようになりましたので、特別寄与料を請求しうる立場であれば、早めに専門家に相談をして、特別寄与料の請求について、検討するようにしましょう。

Authenseの弁護士が、お役に立てること

特別寄与については、関係性が薄かったり、仲が悪い親族(相続人)に対して、金銭を請求することが多いため、円滑に協議が進まなかったり、感情的な話に終始してしまうことになりかねません。
裁判所での手続きの期間制限もあるため、請求に当たっては、早い段階で弁護士に相談することをお勧めします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
上智大学法学部国際関係法学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。企業法務や顧問業務、個人法務など幅広い分野に対応。個人法務では、離婚、相続、労働事件などを取り扱う。
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