コラム
公開 2025.09.06

単体1258_新規_遺留分侵害額請求の時効成立はいつ?弁護士がわかりやすく解説

故人が残した遺言書などで遺留分を侵害されている場合には、遺留分侵害額請求が検討できます。
遺留分侵害額請求をすることで、遺産を多く受け取った人から侵害された遺留分相当額の金銭の支払いを受けることが可能となります。
しかし、遺留分侵害額請求には時効があり、いつでも請求できるわけではありません。

では、遺留分侵害額請求の時効は、いつなのでしょうか?
また、遺留分侵害額請求を時効に間に合わせるには、どのような点に注意すればよいのでしょうか?
今回は、遺留分侵害額請求の時効について、弁護士がくわしく解説します。

なお、当事務所(Authense法律事務所)は遺産相続の専門チームを設けており、遺留分侵害額請求についても豊富な実績を有しています。
時効内の遺留分侵害額請求をご希望の際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

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遺留分侵害額請求とは?

遺留分侵害額請求とは、自身が遺留分を侵害された際に、遺産を多く受け取った人に対して、侵害された遺留分相当額の金銭の支払いを求めるものです。

遺留分とは、亡くなった人(「被相続人」といいます)の配偶者や子どもなど一定の相続人に保証された、相続での最低限の取り分を指します。

とはいえ、遺留分を侵害した遺言や生前贈与が無効になるわけではありません。
たとえば、相続人が長男と二男の2人である場合において、「長男に全財産を相続させる」という内容の遺言書も有効に作成できます。

しかし、このような遺言は、二男の遺留分を侵害しています。
そこで、二男は被相続人の死後、遺留分を侵害する内容の遺言書があったことを知った時点で、長男に対して遺留分侵害額請求をすることが検討できます。
遺留分侵害額請求がされたら、長男は実際に二男に対して、侵害した遺留分相当額の金銭を支払わなければなりません。

一方で、遺留分侵害額請求は二男側にとっての「義務」ではないため、請求をするか否かは二男側の自由です。
長男に対して「遺留分侵害額請求はしない」などと通知した場合のみならず、請求をしないまま時効を迎えた場合にも、遺留分の請求権は消滅します。

遺留分侵害額請求の時効

遺留分侵害額請求には、時効があります。
遺留分侵害額請求の時効は2段階(債権の消滅時効も含めると、3段階)となっているため、それぞれの時効に注意しなければなりません。
ここでは、それぞれの時効の概要について解説します。

遺留分侵害の事実を知ってから1年

遺留分侵害額請求の原則的な時効は、遺留分を請求しようとする人(「遺留分権利者」といいます)が、次の両方の事実を知ってから1年です(民法1048条)。

  1. 相続が開始したこと(つまり、被相続人が死亡したこと)
  2. 遺留分を侵害する贈与またはは遺贈(遺言書)があったこと

1年という期間は長いようで、遺産などを調べていればあっという間です。
そのため、被相続人の死後に遺留分を侵害されていることに気づいたら、早急に請求準備に取りかかることをおすすめします。

遺留分侵害額請求をご検討の際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

相続開始から10年

被相続人と疎遠になっていた場合など、被相続人が亡くなったことを長年知らずに過ごすこともあるでしょう。
しかし、遺留分権利者が死亡などを知ってから1年以内なら死亡からどれだけの期間が経っていても遺留分侵害額請求ができるとなると、法律関係が安定しません。
遺留分を請求される可能性がある側の立場で考えると、その不利益の大きさを理解しやすいでしょう。

そこで、たとえ遺留分権利者が被相続人の死亡や遺言書の存在などを知らないままであったとしても、相続開始(被相続人の死亡)から10年が経つと遺留分侵害額請求ができなくなるとされています(同1048条)。
そのため、たとえば被相続人が死亡してから12年後に死亡の事実などを知った場合には、その事実を知った直後であっても、遺留分侵害額請求はできません。

(参考)遺留分侵害額請求から5年間の時効にも注意

遺留分侵害額請求をすることで、遺留分権利者は「相手方からお金を払ってもらう権利」を持つこととなります。
これを、「金銭債権」といいます。

金銭債権には遺留分侵害額請求とは別の時効があり、それは「権利を行使できると知った時から5年」です(同166条1項)。
そのため、遺留分侵害額請求の時効期間内に遺留分侵害額請求をしたからといって、これだけでは安心できません。

請求後、相手が支払いをしないままさらに5年間が経過すると、遺留分侵害額が形を変えた金銭債権は消滅してしまいます。
つまり、実際に金銭の支払いを受けるまでは油断ができないということです。

遺留分侵害額請求の時効に間に合わせるポイント

遺留分侵害額請求を時効に間に合わせるためには、どのようなポイントに注意すればよいのでしょうか?
ここでは、時効に間に合わせる主なポイントを4つ解説します。

  • 具体的な金額算定の前に、まずは請求をする
  • 内容証明郵便で請求する
  • 遺言の無効を請求する際も、予備的に遺留分侵害額請求をする
  • 相続問題に強い弁護士に相談する

具体的な金額算定の前に、まずは請求をする

1つ目は、具体的な請求額の算定前に、まずは請求をすることです。

遺留分侵害額請求をするにあたって時間がかかりやすいのは、具体的な請求額を算定する段階です。
具体的な請求額を算定するには、自身の正確な遺留分額などを算定する必要があり、これには遺産の全容把握が必要となるためです。

遺留分侵害額請求の時効までに十分な余裕がある場合には、先に遺産を調査し、遺留分侵害額を把握したうえで請求してもよいでしょう。
しかし、時効が間近に迫っている場合には、時効期間内に請求することを重視して、金額までは明示せず、まずは遺留分侵害額請求の意思表示だけをすることをおすすめします。

時効期間内に行う必要があるのは遺留分侵害額請求だけであり、具体的な金額の算定や交渉や時効を過ぎてから行ってもよいためです。

内容証明郵便で請求する

2つ目は、内容証明郵便で請求することです。

前提として、遺留分侵害額請求の方法に法律上の決まりはありません。
つまり、口頭での請求であっても有効であるということです。

とはいえ、口頭で遺留分侵害額請求をした場合には、時効を過ぎてから「遺留分侵害額請求はされていない」と主張された際に、請求した事実の証明が困難となるでしょう。
そのため、実務上は内容証明郵便を使って請求することが一般的とされています。

内容証明郵便とは、日本郵便株式会社が「いつ、いかなる内容の文書が誰から誰あてに差し出されたか」を証明するサービスです。
内容証明郵便を使うことで、時効期間内に遺留分侵害額請求をした証拠が残ります。

遺言の無効を請求する際も、予備的に遺留分侵害額請求をする

3つ目は、遺言の無効を主張する場合であっても、予備的に遺留分侵害額請求をしておくことです。

遺言の内容に不自然な点などがある場合、遺言の無効を主張する争い方も検討できます。
しかし、その場合であっても、予備的に遺留分侵害額請求をしておくべきでしょう。

結果的に遺言が無効化できなかった場合に、その時点から改めて遺留分侵害額請求をしようとしても、その時点ですでに時効が到来していれば、遺留分侵害額請求は難しいためです。

相続問題に強い弁護士に相談する

4つ目は、遺産相続に力を入れている弁護士に相談することです。

遺留分侵害額請求には注意点も多く、自分で調べている間に時効が到来してしまっては本末転倒です。
そのような事態を避けるため、遺留分侵害額請求を検討している段階で、まずは弁護士へ相談するとよいでしょう。

弁護士に相談することで、そのケースにおける遺留分侵害額請求の具体的な進め方などが把握でき、的確な請求を実現しやすくなります。
遺留分侵害額請求について相談できる弁護士をお探しの際は、Authense法律事務所までお問い合わせください。

遺留分侵害額請求をする流れ

遺留分侵害額請求は、どのような流れで進めればよいのでしょうか?
ここでは、基本的な流れを解説します。

  • 当事者間で話し合う
  • 内容証明郵便で請求する
  • 調停を申し立てる
  • 訴訟を提起する

当事者間で話し合う

遺留分侵害額請求に気づいたら、可能な限り、まずは当事者間で話し合います。

遺留分の請求権者と請求の相手方は、近親者であることが少なくありません。
今後も良好な関係を維持したいのであれば、まずは話し合いによる解決を試みるとよいでしょう。

たとえば、長男と二男が相続人であるにもかかわらず「長男に全財産を相続させる」旨の遺言書があった場合、長男としてもこのような内容の遺言を心苦しく感じており、遺言とは異なる内容での遺産分割をすることなどで解決ができる可能性があります。

内容証明郵便で請求する

当事者間での話し合いが難しい場合や、話し合いによっても解決に至らない場合には、内容証明郵便を送って遺留分侵害額請求を行います。
先ほど解説したように、内容証明郵便を用いることで、時効前に請求した証拠が残るためです。

これを受けて、具体的な侵害額などについて両者の交渉が成立すれば、この時点で事案は解決となります。

調停を申し立てる

相手が遺留分侵害額請求に応じない場合や、具体的な金額の交渉がまとまらない場合には、裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てて解決をはかります。

調停とは、裁判所で行う話し合いの手続きです。
話し合いとはいえ、当事者間が直接対峙するのではなく、調停委員が当事者から交互に意見を聞く形で進行します。

訴訟を提起する

調停を経ても遺留分侵害額などについて合意が得られない場合には、訴訟を提起して解決をはかります。
訴訟では諸般の事情などを考慮して、裁判所が適正な遺留分侵害額などを認定します。

訴訟に至ると解決までに1年以上を要することも多いため、ある程度長期戦となる覚悟が必要となるでしょう。

遺留分侵害額請求について弁護士に相談するメリット

遺留分侵害額請求でお困りの際は、弁護士へ相談するのがおすすめです。
ここでは、遺留分侵害額請求について弁護士に相談する主なメリットを3つ解説します。

  • 遺留分侵害額請求を時効に間に合わせやすくなる
  • 遺留分の金額を正確に算定しやすくなる
  • 相手との交渉や調停・訴訟も任せられる

遺留分侵害額請求をご検討の際は、Authense法律事務所までご相談ください。
ご相談いただくことで、その後の対応の見通しを立てやすくなります。

遺留分侵害額請求を時効に間に合わせやすくなる

弁護士は、遺留分侵害額請求の時効を把握したうえで、その時効に間に合うように具体的な請求方法を検討します。
そのため、弁護士に相談してサポートを受けることで、遺留分侵害額請求を時効に間に合わせやすくなります。

遺留分の金額を正確に算定しやすくなる

遺留分侵害額の正確な算定は、容易ではありません。
先ほど解説したように、遺留分侵害額を算定するには、遺産の全容把握が必要となるためです。

しかし、相手方が遺産の開示に協力的ではない場合、自分で遺産の全容を把握するのは困難でしょう。
弁護士のサポートを受けることで、的確な遺産調査を実現でき、遺産の全容や遺留分侵害額を把握しやすくなります。

相手との交渉や調停・訴訟も任せられる

当事者間の交渉では遺留分侵害額などの齟齬が調整できない場合、調停や訴訟での解決をはかることとなります。
弁護士に遺留分侵害額請求を依頼している場合には、調停や訴訟への対応も弁護士に任せられます。
そのため、手続きの負担や精神的な負担の軽減が可能となります。

遺留分侵害額請求の時効に関するよくある質問

最後に、遺留分侵害額請求の時効に関するよくある質問とその回答を2つ紹介します。

亡くなってから5年以上が経ってから遺言書の存在を知った場合も、遺留分侵害額請求はできる?

被相続人が亡くなってから5年が経ってから遺言書の存在を知った場合、そこから1年以内であれば遺留分侵害額請求は可能です。

ただし、「遺言書の存在を知った日」がいつであるのかについて疑義が生じる可能性がある(仮に、亡くなった直後に遺言書の内容を知っていたのであれば、すでに遺留分侵害額請求の時効が経過していることになる)ため、遺言書の存在を知った経緯や知った方法などをできる限り記録しておくことをおすすめします。

また、亡くなってから10年が経過すれば、死亡の事実や遺言書の存在を知った時期に関わらず、もはや遺留分侵害額請求はできません。

遺留分侵害額請求は口頭でもできる?

遺留分侵害額請求は、口頭でも可能です。
法律では、遺留分侵害額請求の具体的な方法までは規定されていないためです。

ただし、先ほど解説したように、口頭での請求は「言った・言わない」のトラブルの原因となりかねません。
遺留分侵害額請求では時効期間内に請求したか否かが重要な分岐点となるため、請求した時期の証拠を残すために内容証明郵便を用いた方がよいでしょう。

まとめ

遺留分侵害額請求の時効や、遺留分侵害額請求を時効に間に合わせるポイントなどを解説しました。

遺留分侵害額請求の時効は、原則として、被相続人の死亡と遺留分侵害の事実を知ってから1年です。
ただし、相続開始(死亡)から10年が経過すると、もはや遺留分侵害額請求はできなくなります。

時効に間に合うよう、遺留分侵害額の算定前に請求だけでも進めることをおすすめします。
また、時効期間内に請求した証拠を残すため、遺留分侵害額請求は内容証明郵便を活用して行うとよいでしょう。

Authense法律事務所は遺産相続に特化した専門チームを設けており、遺留分侵害額請求についても豊富な実績を有しています。
遺留分侵害額請求を時効に間に合わせたいとご希望の際は、Authense法律事務所までお気軽にご相談ください。

記事を監修した弁護士
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