コラム
公開 2022.06.03 更新 2022.06.22

被相続人の預貯金が使い込まれていた!不当利得返還請求について解説!

被相続人の預貯金が使い込まれていた!不当利得返還請求について解説!

相続人のうちの1名が、被相続人の預貯金を使い込んでいた・・・ということが発覚した場合はどうすれば良いのでしょうか?
相続における不当利得返還請求とは、どのような制度なのでしょうか?
手続きや注意点について、相続に詳しい弁護士が詳しく解説します。

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被相続人の預貯金の使い込みとは

相続人のうちの1名が、被相続人の預貯金の通帳を管理しており、被相続人の「生前」に、その通帳内のお金を使い込んでいた場合を想定します。
このような場合に、他の相続人は、お金を使い込んでいた相続人に対して、相続発生後に何らかの請求ができるのでしょうか。

まず、相続が発生した場合、預貯金などの金融資産については、原則として、相続発生時の残高(正確には遺産分割をする時点)を基準として相続をすることになります。

例えば、被相続人が亡くなる1年前に、被相続人名義のA銀行の口座には5,000万円が入っていたとします。当該口座を管理していた相続人が預金を使い込んでしまい、相続発生時に残高が1,000万円となっていた場合には、この残額の1,000万円を基準として相続を考えることになってしまいます。

しかし、他の相続人としては、そのような不合理なことを容認することは難しいと思います。
そこで、今回は、一部の相続人が、被相続人の預貯金からお金を引き出して、無断で使い込んでしまった場合、他の相続人がどのような手続きをとることが可能なのかということについて解説いたします。

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不当利得返還請求などの概要

不当利得返還請求などの概要
被相続人の預貯金を、一部の相続人が使い込んでいた場合、他の相続人は「不当利得返還請求」や「不法行為責任に基づく損害賠償請求」を行うことが可能です。
ここでは、「不当利得返還請求」について解説していきます。

不当利得返還請求(民法703条)に関しては、次のように定められています。
「法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、 その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。」

「不当利得返還請求」が認められるためには、①請求者が損失を被ったこと(預貯金が消滅したこと)、②被請求者側に利得があること(被請求者側が払戻金を取得したこと)、③「①と②」の因果関係、④被請求者の利得に法律上の原因がないこと(被請求者に預貯金の引出し権限がないこと)の要件が必要になります。

お金を取り戻したいと考える相続人は、これらの要件を、被相続人の預金の取引履歴や、生活状況などが分かる資料などを用いることにより、丁寧に主張立証していく必要があります。

なお、不当利得返還請求には、時効もありますので、ご注意下さい。
不当利得返還請求の時効は、①権利を行使することができることを知ったときから5年間、②権利を行使することができるときから10年間となります。もし使い込みが判明してから、そのまま何もせずに放置しておくと、権利が時効により消滅してしまうため注意が必要です。
預金の使い込みなどが判明したら、なるべく早く弁護士に相談することをお勧めします。

不当利得返還請求の手続き

不当利得返還請求を行う方法としては、交渉と裁判があります。
交渉の段階では、遺産分割と一緒に協議される場合も少なくありません。その場合、不当利得として返還をする金額の合意ができれば、合意書や遺産分割協議書に明記することにより、解決することも可能です。
 
もし交渉により解決する見込みがない場合には、不当利得返還請求「訴訟」を提起することになります。
この訴訟は、家庭裁判所で行われる遺産分割調停とは異なり、民事裁判所(地方裁判所・簡易裁判所)にて審理することになります。

そのため、遺産の分け方も決まっていない場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を行いつつ、民事裁判所で不当利得返還請求を提起することとなります(実務上は、不当利得返還請求を先に解決させてしまい、その後に遺産分割調停を行う場合もあります。)。

交渉であれば遺産分割と一体的な解決を目指せます。しかし、訴訟になった場合には、遺産分割と同意に解決していくことが難しくなりますので、ご注意下さい。

不当利得返還請求訴訟のポイント

不当利得返還請求訴訟のポイント
不当利得返還請求の訴訟になった場合のポイントについてもご説明いたします。
請求する側は、自らの主張を裏付ける客観的証拠の提出を行うことが必要となります。
預貯金の取引履歴や被相続人の当時の生活状況などから、引き出された金銭は、被相続人が費消したものとはいえないことを主張していかなければなりません。

また、引き出した金銭を、預貯金を管理していた相続人が費消したことも主張する必要があります。
一番事情を熟知している「被相続人」が既に亡くなっているため、客観的な資料がほとんどなく、証明ができないということも少なくありません。

そのため、不当利得返還請求を検討する場合には、訴訟も視野に入れつつ、なるべく早く弁護士に相談をして、資料などの収集のアドバイスを受けるようにしましょう。

不当利得返還請求の対策

相続人のうちの1人が被相続人の生前の預貯金の管理をする場合、使い込みなどのリスクは大なり小なり発生する可能性があります。
そのため、できれば、被相続人の生前に、被相続人の財産の管理方法をご家族で話し合っておくと良いでしょう。
また、被相続人が認知症などで判断能力が無くなっている場合には、後見制度を活用し、裁判所の監督の下、被相続人の財産を管理する体制を整えることも検討されると良いでしょう。
このような生前対策をとっておくことで、将来、不当利得返還請求といった争いを回避することができるかもしれません。

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まとめ

被相続人の預貯金が無断で使い込まれていたような場合、難しい交渉や裁判になる可能性がありますので、弁護士に早めに相談をするようにしましょう。
また、被相続人の生前であれば、財産管理についての対策をとることも可能ですので、できる限り早めに専門家に相談されることもお勧めです。

Authense法律事務所の弁護士が、お役に立てること

・被相続人がご逝去した後に、被相続人の預金通帳を確認していた際、被相続人の生前の時期に使途不明と思われる預金が引き出されており、一部の相続人の預金の使い込みが疑われる場合、一度弁護士にご相談ください。不当利得返還請求を行うか否かも含め、ご相談をお受けいたします。

・被相続人がご逝去した後に、一部の相続人が被相続人の遺産を使い込んでしまったような場合には、今回取り上げたテーマとはまた別の問題が生じることとなります。このような場合でお悩みの方も、併せてご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
同志社大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事から企業法務まで幅広い分野を取り扱う。なかでも遺産分割協議や遺言書作成などの相続案件を得意とする。
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