コラム
公開 2022.03.16

不動産を共有名義で相続するメリット・デメリットとは?

不動産を共有名義で相続するメリット・デメリットとは?

不動産を相続する場合、だれか一人の相続人に相続させて、その相続人の単独名義とすることが一般的ですが、複数の相続人の共有名義にすることも法律上は可能です。

今回は不動産を共有名義で相続することのメリットやデメリットについて、相続に詳しい弁護士が解説いたします。

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遺産に不動産がある場合の分割方法

まずは、不動産の相続に関して、前提となる知識から確認していきましょう。

ある2人の相続人が、現金1,000万円の遺産を相続する場合を想像してみてください。
この場合、2人の相続人は、それぞれ現金500万円ずつ相続することで、遺産を簡単に分割することが可能ですね。

それでは1,000万円の価値がある建物や土地が遺産だった場合には、どのように分割すればいいのでしょうか?

もし500万円の価値のある建物が2棟あるのであれば、それぞれ1棟ずつを相続することができるでしょう。
また、大きな土地であれば、1つの土地を2つの土地に分筆することで、それぞれ1筆の土地を相続することができるかもしれません。

しかし、建物が1棟しかない場合や、地形や広さの関係で分筆が難しい土地の場合などは上記のような方法で分割することはできません。

このような場合に、「換価分割」や「代償分割」といった方法で分割するのが一般的です。

換価分割とは

「換価分割」というのは、読んで字のごとく、建物や土地といった不動産を売却し、お金に「換価」したうえで、そのお金を分割する方法です。
遺産である不動産を、相続人がだれも利用していない、あるいは誰も利用する予定がないような場合であれば、換価して分割してしまうのが一番手っ取り早い方法といえるでしょう。

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代償分割とは

相続人の一人が遺産である建物に住んでおり、今後も住み続けたいというケースも少なくありません。
このようなケースでよく用いられるのが「代償分割」という分割方法です。

相続人であるAさんとBさんが、1,000万円の価値がある建物を相続するケースを例に考えてみましょう。
被相続人が亡くなる前から、Aさんは当該建物に居住しており、Aさんは今後も当該建物を使用し続けたいと考えているとします。
このとき、Aさんが当該建物を単独で相続する代わりに、その「代償」として、金500万円をBさんに支払う方法を「代償分割」といいます。

お分かりの通り、「代償分割」によって分割するためには、一部の相続人が、相当額の代償金を支払うことのできる資力を有していることが前提となりますので、今回のケースでいうと、Aさんが金500万円を支払う資力がない場合には、この方法を用いることはできません。

以上が、遺産に不動産がある場合の分割方法です。
上記説明は、不動産を相続人らで「分割」する方法を説明したものですので、基本的に、「分割」後の不動産は、特定の相続人の “単独”名義とすることがほとんどです(「換価分割」の場合はそもそも不動産を売却してしまうので、相続人のだれも名義人となることはありませんが)。
ただ、法律上、必ず特定の相続人の“単独”名義にしなければならないわけではありません。
不動産を複数の相続人の“共有”名義にすることも可能です。

それでは、不動産を共有名義にすることのメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
今回は、不動産を共有名義にすることついて、解説いたします。

不動産の共有について

不動産を共有名義で相続するメリット・デメリットとは?

「共有」とは、複数の人が1つの物の所有権を有していることをいいます。
不動産の共有は、複数の人が、1つの不動産の所有権を有していることになります。

共有となっている場合にも、単独所有の場合と同様に、共有者全員を所有者として、登記をすることが可能です。

ある1人の相続人が所有権を有している場合は、当該相続人は、不動産を自由に使用・収益・処分ができます。
しかしながら、不動産が共有の場合はそうはいきません。複数の相続人が所有権を有している状態ですので、共有者の1名で不動産を自由に使用・収益・処分することはできず、他の共有者の同意が必要となる場合があります。

例えば、共有不動産について、高く買い取ってくれる方が現れたので、ある共有者が不動産を売却したいと思っても、他の共有者が売却に反対すると、売却ができなくなってしまいます。
(なお、理論上は個々の共有持分のみを売却することも可能ですが、市場価額よりも売却価額が著しく低くなることが多いため現実的ではありません。)

以上のように、不動産を共有名義にした場合は、単独名義の場合と比べ、使用・収益・処分行為に大きな制約が出てきます。
不動産を共有名義にする最大の特徴(デメリット)はこの点です。
逆に遺産を勝手に売却されたくない相続人にとってみれば、共有名義にしておくことで他の相続人が当該不動産を売却しにくくすることが可能です。

不動産の共有名義のメリット・デメリット

以上が、不動産を共有名義にする最大の特徴(デメリット)ですが、そのほかのメリットやデメリットについても見ておきましょう。
メリットやデメリットをまとめると、概ね以下のとおりです。

メリット

  • 共有不動産にかかる経費を共有者間で負担し合える
  • 売却時に税金の特別控除を共有者全員受けることができる可能性がある

参考:国税庁HP No.3308共有のマイホームを売ったとき

不動産を共有取得する場合は、1名で所有する場合と比べ、費用面ではメリットがあります。不動産の維持管理には様々な経費がかかりますが、複数人で共有すれば、一人当たりの費用の負担も軽減することができます(民法253条1項参照)。

また、税金の特別控除が適用される可能性があります。ただし、相続人同士だと「マイホーム」の売却に該当しないことが多いため、上記特別控除が適用される場面はかなり限定的なものとなるでしょう。

上記には記載しませんでしたが、不動産を売却したくない相続人にとっては、共有名義にしておくことで、他の相続人が勝手に不動産を売却しにくくなるというメリットがあることになります。

デメリット

  • 共有者全員の承諾がなければ、不動産の売却等の処分行為ができない
  • 共有持分の過半数の承諾がなければ、不動産の管理行為ができない
  • そのため不動産の使用方法を巡って、共有者間で争いになることがある
  • 共有者の一部が死亡した場合、権利関係がさらに複雑になる可能性がある

不動産を単独で相続する場合と比べると、やはり不動産の管理や処分が困難になり、共有者同士の仲が悪い場合は、不動産を活用することすらできなくなる可能性があります。
共有者間で円滑にコミュニケーションがとれ、良好な関係を維持している場合は、共有不動産のデメリットはそこまで感じないかもしれません。
しかし、共有者に相続が発生すると、たちまち当事者が増え、共有者全員が良好な関係を維持していくことが難しくなることも多いです。

以上の解説をご覧いただければ概ねわかると思いますが、基本的には、不動産を共有名義にするのはデメリットの方が多いです。

それでも、世の中には、不動産を共有名義にしているケースが散見されます。
よくあるのは、相続人間で遺産分割協議が全くまとまらず、やむを得ず共有名義にしてしまったケースです。
しかし、上記方法は問題の先延ばしにすぎず、節税という観点から考えても賢い選択とはいえないでしょう。

相続人間で不動産を共有名義にするか否かを悩まれている場合には、共有者との関係性や今後の不動産の処分可能性、管理方法等を慎重に吟味し、専門家にもよく相談した上で、決断するのがよいでしょう。
安易に共有名義で登記してしまい、後々もめてしまい、共有不動産の売却や活用が何らできなくなってしまう危険性もあります。 

不動産の共有を回避するためには

不動産を共有名義で相続するメリット・デメリットとは?

既に、相続不動産を共有名義にしてしまった場合において、「共有」関係を解消したい場合は、共有物分割請求訴訟を提起して、共有関係を解消することも可能です。
しかし、訴訟を提起するとなると、費用や手続の負担が大きくなりますので、なるべく遺産分割のときに、「共有」とならないように協議を進めることをお勧めいたします。

被相続人の側でも準備できることがあります。
兄弟仲が悪いなど、相続人間の協議がうまくいきそうにないような場合には、あらかじめ、被相続人が、生前に、遺言によって特定の相続不動産を特定の相続人に相続させる旨定めておくことで争いを回避することもできるのです。

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まとめ

不動産を共有名義で取得する際のメリット・デメリットはお分かりになりましたでしょうか。
基本的にはデメリットが多いため、共有名義を回避する方向で、遺産分割協議を進めるとよいでしょう。
分からないことがあれば、弁護士などの専門家に相談の上、遺産の分割方法を判断するようにしましょう。

Authenseの弁護士が、お役に立てること

下記についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

  • 不動産を共有名義にさせない遺言の書き方のアドバイス
  • 遺産分割協議における交渉代理や分割方法に対するアドバイス
  • 共有物分割訴訟における訴訟代理
記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
大阪大学法学部法学科卒業、神戸大学大学院法学研究科実務法律専攻修了。企業法務としては、債権回収、労働問題(使用者側)、倒産を中心に、個人法務としては、相続、過払金返還、個人破産、発信者情報開示などの解決実績を持つ。
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