コラム
公開 2022.02.04 更新 2022.03.14

相続における生命保険の手続・取り扱いについて解説!

相続における生命保険の手続・取り扱いについて解説!

相続が発生し、生命保険を受け取りたい場合、どのような手続をとらなければならないのでしょうか?

また、生命保険金は、遺産分割や相続税申告のときには、どのように取り扱われるのでしょうか?

相続に詳しい弁護士が、生命保険の手続・取り扱いについてご紹介いたします。

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生命保険の手続

相続が発生し、相続人が生命保険金を請求したいという場合、どのような手続をすれば良いのでしょうか?
 
まずは、お亡くなりになった方(以下「被相続人」といいます。)が加入されていた生命保険の保険証券を見て、被保険者が被相続人であることや、受取人が相続人のうち特定の人となっていることを確認しましょう。
 
被保険者と受取人が誰かを確認したら、受取人から保険会社に連絡をして、生命保険金の請求手続の必要書類を確認するとよいでしょう。
保険証券が見つからない場合は、保険会社に連絡してみましょう。
また、保険会社から定期的に届く、保険契約のお知らせ等の書類が、被相続人のご自宅にないかを確認してみるとよいでしょう。

保険の加入の有無すら分からない場合は、後述する「生命保険契約照会制度」の利用も検討してみてください。

生命保険金を請求するには、一般的には、以下のような書類が必要となります。

  • 保険会社所定の支払請求書
  • 被保険者の除籍謄本又は住民票
  • 受取人の本人確認書類
  • 死亡診断書
  • 保険証券

※各保険会社の取り扱いや、死亡事由等により、必要書類が異なりますので、必ず保険会社に連絡の上、必要書類を確認するようにしましょう。

生命保険金の請求手続に必要な書類は、預貯金の相続手続に比べ、少ないことが多いです。
そのため、相続発生後、葬儀費用の支払等のために早期に金銭を受領したい場合は、生命保険金の請求手続をするとよいでしょう。

生命保険の遺産分割での取り扱い

相続における生命保険の手続・取り扱いについて解説!

被保険者が被相続人となっている生命保険金は、遺産分割でどのように取り扱われるのでしょうか?

被相続人が保険契約者であり、被保険者となっている場合で、受取人が相続人のうち特定の人に指定されている生命保険契約の場合、受取人が取得する生命保険金は、遺産分割の対象となる相続財産ではなく、受取人固有の財産であるとされています。

そのため、例えば、保険契約者兼被保険者が被相続人、受取人が被相続人の配偶者であった場合、配偶者が取得する生命保険金は、遺産分割の対象とはならず、原則として、配偶者が全額取得することができます。

また、生命保険金が、受取人固有の財産となるため、相続放棄をしても受取人が生命保険金を取得することができます。

以上のとおり、被相続人が保険契約者であり、被保険者となっている場合で、受取人が相続人のうち特定の人に指定されている場合の生命保険金は、遺産分割の対象でなく、相続放棄をしても受領することができるため、葬儀費用や相続税の資金として活用することができる、とても有用な財産となります。

もっとも、生命保険金について、特別受益に準じて持ち戻しの対象となる場合があるので、注意が必要です。
判例や裁判例では、生命保険金の金額、生命保険金の遺産の総額に対する比率、受取人と被相続人との同居の有無や受取人が被相続人の介護に貢献した度合い等の受取人と被相続人や他の共同相続人と被相続人の関係等の事情を考慮して、持ち戻しの対象となるか否かが判断されています。

生命保険金が特別受益として持ち戻しの対象となるか確認したいという場合は、相続に詳しい弁護士に相談してみてください。

生命保険の相続税における取り扱い

生命保険は、遺産分割において、受取人固有の財産として取り扱われますが、相続税申告においては、「みなし相続財産」といって、相続財産とみなして相続税が算定されることとなります。
ただし、生命保険金全額が相続財産とみなされるのではなく、一定の控除額が認められています。

【生命保険の控除額】

  • 500万円×法定相続人の数

例えば、法定相続人が2名で、生命保険金の金額が2,000万円の場合、生命保険の控除額は500万円×2名=1,000万円となりますので、相続税の課税対象は、生命保険金全額ではなく、生命保険金のうち、1,000万円についてのみということとなります。

以上のとおり、遺産分割の場合と相続税の場合とでは、生命保険金の取り扱いが異なりますので、十分な注意が必要となります。

生命保険金に対する相続税額等を詳しく知りたいという場合は、資産税に強い、税理士に相談されるとよいでしょう。

生命保険契約照会制度

相続における生命保険の手続・取り扱いについて解説!

2021年7月1日から、生命保険契約照会制度が活用できるようになり、どの生命保険に加入しているか分からなくても、調査ができるようになりました。

生命保険契約照会制度の内容

生命保険の契約者又は被保険者(以下「本人」といいます。)が死亡又は認知判断能力が低下等している場合に、生命保険協会に対し、本人が契約者又は被保険者となっている生命保険契約の有無を照会できる制度です。
インターネットや郵送にて照会の請求ができ、1回の照会につき、3,000円(税込)の利用料が掛かります。
照会対象は、一般社団法人生命保険協会に加盟する会員会社の保険契約のみとなりますので、ご注意下さい。

参考:一般社団法人生命保険協会HP会員会社一覧

本人が死亡している場合は、本人の法定相続人(その代理人を含む。)と遺言執行者が、照会申請をすることができ、本人の法定相続人が照会申請する場合の必要書類は、下記となります。

  1. 照会者の本人確認書類
  2. 法定相続情報一覧図や照会者と被相続人の関係を示す戸籍等
  3. 死亡診断書

必要書類の収集等が面倒であれば、弁護士や司法書士等の専門家に書類の収集や照会請求を依頼することも可能です。

その他の請求者や必要書類等については、生命保険協会のHPをご参照ください。
参考:一般社団法人生命保険協会「生命保険契約照会制度」

被相続人が生命保険に加入しているか分からない場合や加入している保険契約がよく分からないという場合は、この生命保険契約照会制度を利用して、契約の有無を確認してみるとよいでしょう。

まとめ

生命保険の請求手続は、預貯金等の名義変更手続に比べ、簡単なことが多く、また、遺産分割の対象とならないこともあるので、相続発生後の必要な資金の支払に充てることが可能です。
もっとも、遺産分割や相続税の際の取り扱いが異なっていたり、「特別受益」に準じて持ち戻される可能性もありますので、生命保険金を含め、相続対策については、早めに専門家に相談されることをお勧めいたします。

Authenseの弁護士が、お役に立てること

・弁護士にご相談いただければ、受け取った生命保険金が特別受益に準じて持ち戻しの対象となるか等を、裁判での基準を前提にご説明することができますし、相続手続全体に関するアドバイスをすることもできます。

・生命保険契約照会手続に必要な戸籍を過不足なく取り寄せ、申請手続を代わりに行うこともできます。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
日本大学法学部卒業、日本大学大学院法務研究科修了。個人法務及び企業法務の民事事件から刑事事件まで、幅広い分野で実績を持つ。離婚や相続などの家事事件、不動産法務を中心に取り扱う一方、新規分野についても、これまでの実践経験を活かし、柔軟な早期解決を目指す。弁護士会では、人権擁護委員会と司法修習委員会で活動している。
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