コラム
公開 2021.12.13 更新 2022.03.14

遺言無効を請求された場合の対応方法

遺言無効を請求された場合の対応方法

被相続人が作成した遺言について、一部の相続人から遺言無効を請求された場合、どのような点に注意すれば良いのでしょうか?

また、遺言者が、遺言作成時に認知症を患っていた場合、遺言は無効となるのでしょうか?

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はじめに

相続が発生し、被相続人の遺言書が発見された場合において、遺言の無効確認の請求訴訟を提起されることも少なくありません。
遺言書が無効だと考える相続人が、他の相続人を被告として、遺言無効確認請求調停又は訴訟を申し立てることになります。
遺言無効確認請求は、調停前置といって、調停を経てから訴訟を提起するルールとなっておりますが、調停で解決される可能性が低い場合は、調停を経ずに訴訟を提起されることも少なくありません。

遺言無効確認請求訴訟では、主に下記2点の理由で、遺言無効を主張される場合が多いです。
①遺言書の形式的な要件をみたしていない
②遺言能力が無い

①については、例えば自筆証書遺言では、ⅰ:自書(財産目録以外は、遺言者が手書きで作成する)、ⅱ:日付の記載、ⅲ、遺言者の署名・捺印 が形式的要件となります。
こちらの形式的要件が欠けている場合は、遺言無効確認請求訴訟を提起し、当該遺言に効力が無いことを主張していきます。

②については、遺言能力、つまり、遺言の内容を理解し、遺言の結果を弁識しうるに足る意思能力を遺言作成時に遺言者が有していたか、が問題となります。
最近では、高齢化社会となっており、遺言作成時の年齢が、80代や90代である場合も少なくありませんので、高齢であり認知症を患っていた遺言者が遺言能力を有していないなどの主張がなされることも多いです。
 
ここでは、遺言無効を請求された場合の対応方法について、解説いたします。

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形式的要件をみたしていないと主張された場合

遺言無効を請求された場合の対応方法

自筆証書遺言の場合、前述のとおり、形式的要件をみたしていなければ、遺言書の効力は生じません。
特に、要件の中でも、ⅰ:自書したか否かが争われ、遺言無効の訴訟が提起される場合が多いです。
自書、すなわち、遺言者が遺言を自分で書いたのかが争われる場合は、筆跡鑑定が行われることが多いです。遺言者の筆跡が重要となりますので、年賀状や手紙など、他に遺言者の筆跡、特に遺言者自身の名前の筆跡がわかる書類がないか、確認してみてください。
また、遺言者の遺言時の体調や精神上の障害の存否も大事となってきますので、遺言時の診断書やカルテなども重要な証拠となります。
これらの資料も収集しましょう。
 
資料の調査や筆跡の鑑定などが難しい場合は、弁護士などの専門家に早めに依頼をして、資料の有無や資料に沿った主張書面の作成をお願いすると良いでしょう。

遺言能力が無いと主張された場合

遺言能力が無いと主張された場合は、
ⅰ:遺言時における遺言者の精神上の障害の存否、内容及び程度
ⅱ:遺言内容それ自体の複雑性
ⅲ:遺言の動機、遺言者と相続人との関係、遺言作成に至る経緯
などがポイントとなります。

ⅰについては、遺言時における医師の診断書・カルテや認知能力のテスト結果などがあれば、それらを証拠として提出した上で、遺言能力があることを主張していくと良いでしょう。
ⅱについては、遺言内容が簡単であれば、簡単であるため遺言内容は理解していたという旨の主張をしていくと良いでしょう。
ⅲについては、例えば、遺言者を介護していたなどの理由がある場合は、そういった事情も主張し、遺言者がなぜ当該遺言を作成したのかを主張していくと良いでしょう。

認知症を患っていると遺言能力は無いのですか、と質問されることもありますが、認知症といっても症状は千差万別で、軽度であれば、十分に遺言の内容を理解できる能力を有していることもあります。
ただし、遺言時に認知症を患っていた場合は、認知症の程度や具体的な状況を丁寧に主張する必要がありますので、専門家に相談することを強くお勧めします。
また、これらの主張をまとめるのは非常に難しいので、弁護士に依頼をして、遺言者が遺言時に遺言能力があったということを主張立証してもらいましょう。

公正証書遺言ですと、公証人が、作成時の遺言者の遺言能力を簡易的ではありますが、確認をしておりますので、遺言能力が無いことの立証が非常に難しいです。
将来、遺言能力を争われそうな場合は、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言にて遺言書を作成される方が良いでしょう。

遺言無効の請求をされたら…

遺言無効を請求された場合の対応方法

他の相続人から遺言無効の請求をされたり、裁判所から遺言無効確認請求訴訟の訴状が届いた場合は、まずは請求内容を確認し、意味が分からない場合は弁護士に相談をして、相手がどういう内容を主張しているのか把握するようにしましょう。
そして、相手の主張が認められないようにするために、資料を収集したり、主張内容を書面でまとめたりするようにしましょう。

まとめ

遺言無効の請求をされたら、とにかく請求内容を確認した上で、資料の収集などの対応をすることが重要です。
また、訴訟対応については、弁護士に依頼をして、遺言が有効であることを示す資料の収集と主張書面をしっかりと作成してもらうようにしましょう。

遺言の無効主張がされると、相続手続きがなかなか終わらず、非常に時間がかかることになります。
そのため、可能であれば、生前から弁護士などの専門家に相談をして、遺言の無効主張がされづらい遺言書の作成を検討するとことをお勧めします。

Authenseの弁護士が、お役に立てること

・遺言無効の請求又は調停や訴訟が提起された場合については、資料の収集や書面の作成など専門的な知識を要求されます。このため、このような場合には弁護士にご相談されることをお勧めします。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
早稲田大学法学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科修了。相続に関する相談会や、労働問題のセミナーなどにも取り組んでいる。
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