コラム
公開 2021.07.19 更新 2022.03.14

相続関係一覧図とは?作り方と記載すべき法定相続人について解説!

相続関係一覧図とは、被相続人の相続関係を一覧にした書類です。必要情報を収集し、情報を整理してから作ります。
相続関係一覧図には用紙の大きさや向きに制限は原則としてありませんが、法務局のホームページに相続情報一覧図作成のひな形があります。戸籍などの原本還付を受けるため、相続手続きを行う際には作成しておくとよいでしょう。

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相続関係一覧図とは

相続関係一覧図とは、その名のとおり、被相続人の相続人の情報を見やすく一覧にした図です。

相続人が誰なのかということは、当事者は把握していることが多いでしょう。
例えば、「父の相続人は、長男である自分と、弟である二男の2人だけ」といった具合です。

しかし、このことを証明するためには、口頭で伝えるのみでは足りません。
相続人を確定するためには、戸籍謄本や除籍謄本、原戸籍謄本などの書類一式を取り寄せて調査をする必要があります。
不動産の名義変更をしたり、預貯金の解約などをしたりする際には、原則としてこれら戸籍謄本などの提示も必要となってきます。

しかし、戸籍謄本などの書類一式を、すべては見たことがないという方か多いかと思います。
見たこともない戸籍謄本などの束から相続関係を洗い出すのは、容易なことはでありません。

そこで、戸籍謄本などの情報を見やすくまとめた相続関係一覧図は非常に役に立ちます。
なお、相続関係一覧図ではなく相続関係説明図と呼ばれることもありますが、両者は原則として同じものを指しています。

相続関係一覧図とはどんなもの?

相続関係一覧図は、亡くなった人の相続人が誰かということをわかりやすく一覧図で記したものです。
被相続人を中心とした家系図の中で相続に関係する人だけを抜き出したようなもの、というイメージをしていただくとわかりやすいかと思います。

相続関係一覧図が必要になる場面

相続関係一覧図は、相続手続きの場面で活躍します。
具体的には、下記のような場合です。

  • ・被相続人名義の不動産の名義変更をする場合
  • ・被相続人名義の預貯金の解約や名義変更をする場合
  • ・被相続人名義の証券口座の解約をする場合

ただし、相続関係一覧図がないからといって手続きを受けつけてもらえないわけではありません。相続関係一覧図がなくても、名義変更などの手続き自体を行うことは可能です。

では、何のために相続関係一覧図を作成するのでしょうか?
その理由は、次の2点にあります。

戸籍謄本などの原本還付を受けるため

相続関係一覧図がなくても手続きできるとはいえ、相続関係一覧図がなければ、提出した戸籍謄本や除籍謄本の原本がそのまま持っていかれてしまう場合があります。
その代表的な手続きは、不動産の名義変更です。

相続手続きで必要となる戸籍謄本などは量が多いため、手続き先の数だけ取得していては、手間も費用もかさんでしまいます。

しかし、戸籍謄本や除籍謄本などの束と一緒に相続関係一覧図を提出すれば、手続きが済んだ後に戸籍謄本や除籍謄本の原本を返してもらうことが可能です。
相続関係一覧図を作成する主な理由は、これにあります。
相続財産の中に不動産がある場合には、相続関係一覧図の作成をした方がよいと考えてください。

なお、金融機関や証券会社では、相続関係一覧図がなくても戸籍などの原本を返してくれる場合が大半です。とはいえ、取り扱いは、金融機関や証券会社ごとに異なりますので、あらかじめ手続き先の金融機関や証券会社に確認するとよいでしょう。

手続きをスムーズにするため

もう一つの理由は、提出先での手続きをスムーズにするためです。
被相続人の相続関係は、提出された戸籍謄本や除籍謄本の束を確認すればわかるのですが、前情報もなくこれらの書類を読み解くのは、一苦労です。

そのような際、相続関係一覧図があることで、戸籍などを確認するためのヒントとなるため、提出先での戸籍の確認がスムーズになると考えられます。

そのため、例えば金融機関や証券会社で、相続関係一覧図を求められなかったとしても、これを提出することで、手続きにかかる時間が多少なりとも短縮される可能性があるといえます。

相続関係一覧図の作り方

相続関係一覧図の作り方

では、相続関係一覧図はどのように作成すればよいのでしょうか?
ここでは、相続関係一覧図を作成するための手順を解説します。

必要書類を収集する

相続関係一覧図を作成する際には、まず作成に必要な書類を収集するところから始めます。
必要な書類についての詳細は後述しますが、被相続人の死亡から出生までさかのぼる戸籍謄本や除籍謄本、原戸籍謄本などが必要です。

情報を整理する

必要な書類を収集すると、その書類の数は膨大となる場合もあります。
その中から、相続関係一覧図の作成に必要な情報を整理していきます。

記載する対象者ごとに書類をまとめてクリップ留めをしたり、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本に通し番号を振ったりすると見やすいでしょう。

作成する

情報の整理ができたら、その情報をもとに実際に一覧図を作成します。

相続関係一覧図には、用紙の大きさや向きに制限は原則としてありませんが、A4またはA3の用紙で作成することが一般的です。
また、Excelなどのパソコンソフトを使って作成してもよいですし、手書きで作成しても構いません。

なお、法務局のホームページに、法定相続情報証明制度に利用するための相続情報一覧図作成のひな形が掲載されています。(法定相続情報証明制度については、後に説明をします。)
法定相続情報一覧制度を活用しない相続関係一覧図を作成する際にも、余分な文言を削除して活用してもよいでしょう。

相続関係一覧図に書くべき法定相続人

まずは、相続関係一覧図に書くべき相続人を確認しておきましょう。
ここでは、誰が法定相続人になるのか、場合分けして解説をします。

配偶者

被相続人に配偶者がいれば、配偶者は常に法定相続人になります。
なお、ここでいう配偶者とは、法律上の籍の入った配偶者のみを指します。
いわゆる内縁関係の場合には、たとえ長年連れ添っていたとしても、法定相続人にはなりません。

第一順位の法定相続人

第一順位の法定相続人は、被相続人の子です。
ここでいう子には、実子はもちろん、養子も含まれます。

なお、例えば離婚した元配偶者に子がいる場合、その子と長年交流がない場合であっても、元配偶者の子も、子である以上は法定相続人になります。

一方で、配偶者の連れ子の場合には、連れ子と養子縁組をしていないのであれば、その連れ子は法定相続人にはなりません。

また、仮に被相続人が死亡する以前に亡くなった子がいる場合には、その子の子である孫がいる場合には、その孫が相続人(代襲相続人)になります。
そして、例えばその孫も亡くなっておりその孫に子がいる場合には、そのひ孫が法定相続人となることもあり得ます。

第二順位の法定相続人

第一順位の法定相続人が誰もいない場合には、第二順位の法定相続人に権利が移ります。
第二順位の法定相続人は、被相続人の直系尊属のうち、親等の近い人です。
例えば、父母が存命なのであれば、その父母が法定相続人となります。

また、父と、母方の祖母が存命なのであれば、父が法定相続人です。
母方の祖母も直系尊属ではあるのですが、父よりは親等が遠いため、父が存命である以上は法定相続人にはなりません。

第三順位の法定相続人

第一順位の法定相続人も第二順位の法定相続人もいない場合には、第三順位の法定相続人に権利が移ります。
第三順位の法定相続人は、被相続人の兄弟姉妹です。
また、兄弟姉妹の中に被相続人の死亡以前に亡くなった人がいれば、その亡くなった兄弟姉妹の子である甥や姪が代襲して相続人となります。

なお、甥姪が相続人となる場合、第一順位の場合とは異なり、甥姪が死亡していても、その子は相続人とはならないと決められています。

相続関係一覧図作成に必要な書類

相続関係一覧図作成に必要な書類

それでは、相続関係一覧図の作成に必要となる書類について解説していきましょう。
相続関係一覧図の作成に必要となる書類には、以下のものがあります。
以下の書類は相続関係一覧図を作成するためだけではなく、預貯金の解約や不動産の名義変更などの相続手続きをする際にも必要となる書類です。
そのため、相続関係一覧図が作成できたら、相続関係一覧図と一緒にまとめておくとよいでしょう。

被相続人に関する必要書類

被相続人について必要となる書類は、次のとおりです。

  • ・除票
  • ・出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・原戸籍謄本

除票

除票とは、被相続人の死亡直前の住所のわかる住民票です。

除票は、被相続人が最後に住んでいた住所にある市町村役場で取得します。
手数料は市町村によって異なりますが、1通300円前後であることが一般的です。

出生から死亡までの連続した戸籍・除籍・原戸籍謄本

相続関係一覧図を作成するには、被相続人の死亡から出生までが記載された、連続した戸籍謄本、除籍謄本、原戸籍謄本が必要となります。

それぞれ、被相続人が本籍地を置いていた市町村役場で取得します。
手数料は全国一律で、戸籍謄本は1通450円、除籍謄本と原戸籍謄本は1通750円です。

相続人に関する必要書類

次に、相続人についての必要書類を紹介します。

  • ・戸籍謄本
  • ・戸籍の附票または住民票
  • ・被相続人の子などのうち被相続人以前に死亡した人がいれば、その死亡から出生までさかのぼる戸籍や除籍、原戸籍謄本
  • ・兄弟姉妹などが相続人の場合には、被相続人の父母の死亡から出生までさかのぼる戸籍や除籍、原戸籍謄本

戸籍謄本

まず、各相続人の戸籍謄本または戸籍謄本が必要です。
戸籍謄本とは、その戸籍に入っている方全員が記載されたものです。戸籍抄本というものもありますが、抄本は、請求した対象者のみが記載され、それ以外の方は記載されないものになります。

戸籍謄本や戸籍抄本は本籍地の市町村役場で取得でき、1通450円です。

戸籍の附票または住民票

相続関係一覧図を作るには、戸籍の附票または住民票も必要です。
戸籍の附票と住民票は、いずれも住所を証明する書類ですが、戸籍の附票は本籍地の役所で取得する一方、住民票は住所地の市町村役場で取得する点が異なります。

市町村により手数料は異なりますが、いずれも1通300円前後です。

被相続人の子などのうち被相続人が死亡する前に死亡した人がいれば、その死亡から出生までさかのぼる戸籍や除籍、原戸籍謄本

被相続人の子などのうち、被相続人の死亡以前に死亡した人がいる場合には、その出生までさかのぼる戸籍や除籍、原戸籍謄本も必要です。

兄弟姉妹などが相続人の場合には、被相続人の父母の死亡から出生までさかのぼる戸籍や除籍、原戸籍謄本

相続人が兄弟姉妹や甥姪である場合には、被相続人の両親の出生までさかのぼる戸籍や除籍、原戸籍謄本も必要です。

相続関係一覧図作成の注意事項

相続関係一覧図作成の注意事項

続いては、相続関係一覧図を作成するにあたっての注意事項を解説します。

住所の表記は正確に記載する

一つ目の注意点としては、相続関係一覧図に記載する住所は、住民票(もしくは附票)どおりに正しく記載することです。
日頃は「1丁目1番1号」という住所を「1-1-1」と書くこともあるでしょうが、相続関係一覧図作成の際には正確に記載するように注意してください。

法定相続情報証明制度との違い

相続関係一覧図と名前が似たものに、法定相続情報証明制度に基づく「法定相続情報一覧図」というものがあります。
初めて聞いた方もいらっしゃると思いますが、非常に重要ですので、ぜひこの機会に覚えて欲しいと思います。
この制度がどういったもので、相続関係一覧図とどのような違いがあるのか説明します。

法定相続情報証明制度とは、わかりやすく説明すると、相続関係を証する戸籍謄本や除籍謄本などの一式書類と一緒に相続関係一覧図を法務局に提示することで、その内容を法務局が確認した上で、相続関係一覧図に一定のお墨付きを与える制度になります。
この、法務局がお墨付きを与えたものが「法定相続情報一覧図」です。
すなわち、法定相続情報一覧図は、法務局が内容を認めた相続関係一覧図というイメージです。

他方で、通常の「相続関係一覧図」は、あくまで作成した方が、戸籍類を確認して作成しただけのものであり、何らかのお墨付きがあるものではありません。
この点が、最も大きな違いです。

また、相続手続の際にも両者には大きな違いがあります。

まず、法定相続情報一覧図を提示して不動産の名義変更や預貯金の解約などの相続手続きを行う場合には、手続きの度に戸籍謄本や除籍謄本の束を提示する必要はありません。
必要な相続人に関する情報は、法定相続情報一覧図に記載されており、その情報が正しいことを法務局が証明しているためです。

一方で、相続関係一覧図を用いて手続きを行う場合には、原則どおり戸籍謄本や除籍謄本など一式もあわせて提示する必要があります。

相続手続をしなければならない先が多い場合や、金融機関などに相続に関係のない戸籍の情報を知られたくないという場合には、法定相続情報証明制度を利用することも検討されるとよいでしょう。

まとめ

相続関係一覧図の作成は、戸籍類の収集ができれば難しいものではありません。
戸籍などの原本還付を受けるため、相続手続きを行う際には作成しておくことをおすすめします。

とはいえ、被相続人が前妻との間にも子がいるなどの場合には、相続人を把握したり、その戸籍謄本を取り寄せたりするにも一苦労です。
戸籍の収集や確認は時間がかかりますので、多少費用をかけても専門家に任せてしまった方が早いことも少なくありません。
お困りの際は、ぜひ弁護士までご相談ください。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

相続人が多かったり、被相続人が転籍を繰り返しているような場合、戸籍類の収集には非常に時間がかかります。また、過去の戸籍になると、手書きの戸籍もあり、字を判読するのにも苦労します。弁護士に戸籍の収集をご依頼いただければ、このような煩わしい手間を省くことが可能です。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(大阪弁護士会)
同志社大学法学部法律学科卒業、立命館大学法科大学院修了。離婚、相続問題を中心に、一般民事から企業法務まで幅広い分野を取り扱う。なかでも遺産分割協議や遺言書作成などの相続案件を得意とする。
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