コラム
公開 2020.12.02 更新 2022.03.14

相続税申告は必要?相続税の基礎控除について解説

遺産相続の相続税の基礎控除について、その金額や申告が必要な場合を、相続に強い弁護士が分かりやすく解説致します。

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相続税の申告が必要な人・申告期限について

相続税の申告が必要な人は、『被相続人の死亡に伴い、被相続人の財産を承継した人』になります。具体的には、法定相続人・受遺者・生命保険の受取人等になります。
「受遺者」とは、法定相続人ではないが、遺言書や死因贈与により、被相続人の財産を取得した人・団体のことをいいます。
これらの相続税の申告が必要な人全員が、相続税の申告をしなければならないというわけではありません。あくまで、被相続人の相続財産の合計金額が、基礎控除(計算方法については、後述します。)を超えた場合に、相続税の申告義務が生じます。そのため、被相続人の相続財産の合計金額が基礎控除を超えるか否かは、相続人や受遺者等にとっては大きな関心事となります。

また、相続税の申告には、期限があります。相続税の申告期限は、「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内」となります。
そのため、相続税の申告の必要性については、相続が発生してからすぐに判断しなければなりません。相続人の調査(戸籍の収集)、相続財産の調査(残高証明書等の取得)、遺産分割協議書の作成については、多くの時間がかかりますので、相続税申告が必要な場合は、迅速に相続手続を進めることとなります。

したがって、相続が発生したら、すぐに相続財産の合計金額が基礎控除を超えるかを確認する必要があります。

相続税の基礎控除について、計算してみよう

それでは、相続税の申告義務が生じるのは相続財産の合計金額がいくらからなのか、以下の例にならい、相続税の基礎控除の金額を計算してみましょう。

  • 相続税の基礎控除の計算方法
  • 「3000万円+600万円×(法定相続人の数)」

例1

被相続人
相続人 母・長女・長男

この場合、法定相続人は、母・長女・長男の合計3名になりますので、相続税の基礎控除の金額は、

  • 3000万円+600万円×3名(母・長女・長男)
  • =3000万円+1800万円
  • =4800万円

基礎控除の金額は、4800万円となりますので、被相続人の相続財産の金額が4500万円であれば相続税の申告の必要はありませんし、5000万円であれば、相続税の申告が必要となります。

例2

被相続人 長女(生涯独身で、父母は既に亡くなっている)
相続人 次女の長男・長女(次女は長女より先に亡くなっており、次女には長女・長男の2名の子どもがいる。代襲相続人にあたる。)
三女

この場合、法定相続人は、次女の長男・次女の長女・三女の3名となりますので、相続税の基礎控除の金額は、例1と同様、4800万円となります。
代襲相続(相続人となる者が相続開始以前に死亡する等で相続権を失った場合、その相続人の直系卑属がその相続人に代わり、その者が受けるべき相続分を相続すること)が発生している場合は、元々の相続人であった人(例2であれば次女)が1名であっても、代襲相続人が複数名(例2であれば、次女の長男・次女の長女の2名)であれば、代襲相続人の数が法定相続人の数としてカウント(例2であれば、2名)されることなります。

以上のとおり、相続税の基礎控除は、法定相続人の人数で計算するので、法定相続人
の数を正確に把握することが必要となります。
皆さまも、法定相続人の数が分かれば、基礎控除の金額がいくらなのかをぜひ確認してみて下さい。

相続放棄や養子がいる場合の基礎控除

相続税の基礎控除を計算するにあたり、少し注意が必要なケースをご紹介致します。
まずは、相続人の中に、相続放棄をした人がいる場合についてです。
被相続人の相続人が、相続放棄をすると、民法上は、「その相続人関しては、初めから相続人とならなかったもの」とみなされます。しかし、相続税の基礎控除を計算する場合は、相続放棄をした人も、法定相続人とカウントすることになります。

被相続人
法定相続人 配偶者・長男・長女(相続放棄済)

この場合、長女は相続放棄をしているため、被相続人の財産は承継しませんが、相続税の基礎控除を計算するための法定相続人の人数にはカウントします。そのため、基礎控除の金額は、

  • 3000万円+600万円×3名(配偶者・長男・相続放棄をした長女)
  • =4800万円

となります。

次に、被相続人に養子がいる場合です。民法上は、養子は実子と同じ相続分を得ますし、養子の数に制限は設けられていません。しかし、相続税の基礎控除を計算する場合は、被相続人に実子がいない場合は養子の数は2名、実子がいる場合は養子の数は1名までとの制限があります。

被相続人
法定相続人 長男・長女・養子①・養子②

この場合、民法上の相続人は、長男・長女・養子①・養子②の4名となります。しかし、相続税の基礎控除を計算するための法定相続人の数には、養子は、被相続人に実子がいる場合は1名までしかカウントできません。
そのため、基礎控除の金額は、

  • 3600万円+600万円×3名(長男・長女・養子1名分)
  • =4800万円

となります。

以上のように、民法上の法定相続人の数と相続税の基礎控除を計算するための法定相続人の数が異なる場合もございますので、法定相続人の数の計算が不安な場合は、迷わず税理士の先生その他専門家に相談しましょう。

生命保険の非課税枠について

最後に、相続税の生命保険の非課税枠について、ご説明いたします。
相続税の基礎控除は、相続税の申告が必要となる相続財産の最低金額をあらわしますが、そもそも相続税がかからない財産として、生命保険の非課税枠というものがあります。
被相続人を被保険者とする生命保険金については、原則として、税金がかかりますが、生命保険金の金額が、一定の金額以下(これを『非課税枠』といいます。)であれば、その生命保険金に税金がかかりません。
この生命保険金の非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」となります。

例1

被相続人
法定相続人 配偶者・長男・長女
生命保険金 1000万円

この場合、生命保険金の非課税枠は、500万円×3名=1500万円となります。
1500万円(非課税枠)>1000万円となりますので、生命保険金に相続税はかかりません。

例2

被相続人
法定相続人 配偶者・長男・長女
生命保険金 2000万円

この場合、生命保険金の非課税枠は、例1の計算通り1500万円となりますので、1500万円(非課税枠)<2000万円(生命保険金)となります。
ですので、相続税の対象となる生命保険金は、2000万円―1500万円=500万円となります。
したがって、生命保険金2000万円のうち、500万円は相続税の対象となります。
そのため、この500万円と被相続人の他の相続財産を足して、基礎控除を超えると相続税申告の義務が生じます。

なお、生命保険金については、民法上は、原則として、受取人の固有の財産とされており、相続財産の計算には入りません。そのため、相続税の計算の場合と取扱いが異なるため、注意が必要です。
被相続人が被保険者となっている生命保険金があれば、非課税枠の範囲内か否かを確認しましょう。

まとめ

相続税の基礎控除や生命保険金の非課税枠について、説明をさせていただきましたが、相続税の申告には、他にも非課税枠や特例等がございます。また、課税対象となる相続財産やその評価等難しいところも多いため、相続税の申告が必要となりそうな場合は、早めに税理士の先生に相談することをお勧め致します。
また、戸籍の収集、相続財産の調査や相続財産の分け方についてもアドバイスがほしいという場合は、相続に強い弁護士その他の専門家にぜひご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
上智大学法学部国際関係法学科卒業、慶應義塾大学大学院法務研究科修了。企業法務や顧問業務、個人法務など幅広い分野に対応。個人法務では、離婚、相続、労働事件などを取り扱う。
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