遺産に土地が含まれる場合、相続人の間で遺産をどのように分けたら良いのか悩んだり、揉めたりすることは少なくありません。遺産分割の方法には異なる4つの方法があるので、土地の利用状況等を踏まえながら最適な方法を選択して遺産分割を行うことが大切です。そこで今回は、4つの遺産分割方法の特徴、遺産に土地が含まれる場合の遺産分割のポイントや、土地を相続するまでの手続の流れを解説していきます。
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遺産分割とは
遺言書が残されておらず、相続人が複数人いるケースでは、遺産の分け方を相続人同士で話し合って決めなければなりません。
- ・ 遺産を分けるのが「遺産分割」
- ・ 遺産の分け方を決めるための協議が「遺産分割協議」
- ・ 協議した結果を記載した書面が「遺産分割協議書」
です。預貯金や土地等、遺産には様々な財産が含まれるので、相続人の状況や遺産に含まれる財産の種類に応じて遺産の分け方を決めていく必要があります。
なお、「遺産分割協議」は、必ずしも相続人が直接集まって行う必要はありません。ただ、相続人全員が参加しなければなりません。メールや電話等で協議する形でも大丈夫ですが、参加すべき相続人が一人でも欠けているとその遺産分割協議は無効となります。
遺産分割協議をして合意ができたら、「遺産分割協議書」を作成します。遺産分割協議書を作成する法的な義務はありませんが、後々にトラブルが起きることを避けるためにも、遺産分割協議書を作成することが一般的です。
遺産分割の方法は4種類
遺産分割の方法には、大きく分けて次の4種類があります。いずれの方法にもメリットとデメリットの両方があるので、それぞれの遺産分割方法の特徴を理解しておくことが大切です。
- ・ 現物分割
- ・ 代償分割
- ・ 換価分割
- ・ 共有分割
現物分割
現物分割とは、遺産をそのままの形、つまり現物で分割する方法です。例えば、遺産である土地を相続人2人で分筆して分けるケースが現物分割に当たります。
遺産をそのままの形で受け継ぐことができ、換価分割のように売却等の手間がかからない点が現物分割のメリットです。
ただし、現物分割にはデメリットもあり、分割が難しい財産が遺産に含まれる場合には、相続人間で公平に分けることが難しく、適しません。広大な土地を分筆して平等に分けられるケースもありますが、土地を1人の相続人が相続してしまうと、他の相続人の取得分が少なくなるケースも多くあります。そのため、土地が遺産に含まれる場合は、他の分割方法を選択することも多くあります。
代償分割
代償分割とは、ある遺産を特定の相続人が相続する代わりに、代償として他の相続人に現金等を渡す方法です。例えば、相続人である兄弟2人が遺産を分ける際、5千万円相当の土地を兄が、現金1千万円を弟が相続し、兄が弟に自分の資産の中から現金2千万円を渡すケースが代償分割にあたります。
最終的に受け取った財産額が兄弟ともに3千万円となって公平性を保てる点と、大切な遺産をそのままの形で相続できる点が代償分割のメリットです。
ただし、上記の例で言えば、弟に渡す現金2千万円を兄が持っていることが前提となります。代償として渡せる資産がなければ代償分割はできません。また、遺産に土地が含まれるケースで代償分割をする場合、土地の評価額が争いになることも、少なくありません。
換価分割
換価分割とは、遺産を売却して得た現金を相続人で分ける方法です。例えば、土地を売却して現金化するケースが換価分割に当たります。
遺産を現金にすれば、相続人の間で平等に分けることができます。代償分割と違って、代償として渡す資産を準備する必要がないことや、土地の評価額についての争いを回避できることがメリットです。
ただし、大切な遺産を現物のまま残せないことや、遺産の買い手が見つからないと、そもそも換価分割ができないことがデメリットです。
共有分割
共有分割とは、遺産を複数の相続人の共有名義にして相続する方法です。例えば、遺産に土地が含まれる場合は、その土地を複数の相続人が共同で所有することができます。
換価分割のように売却の手間は掛からず、代償分割のように代わりの資産を渡す必要もなく、平等に相続できる点がメリットです。
ただし、土地を共有にしてしまうと、売却や建築をする際に共有者全員の同意が必要になり、一人でも反対する人がいると手続が進まないことがデメリットです。
相続財産に土地が含まれる場合の遺産分割のポイント
相続財産に土地が含まれる場合も、4つの遺産分割方法の中から最適な方法を検討して選択することになります。それぞれの遺産分割方法がどのようなケースで適しているのか、具体的に確認していきましょう。
土地が広くて分筆できる場合は「現物分割」の選択が可能
遺産に含まれる土地の面積が広く、建物が立っていない更地であれば現物分割が可能です。分筆しても各土地を有効に活用できそうな場合は、現物分割を選択しても問題ありません。
逆に、分筆後の土地の面積があまりに狭くなるようなケースでは、利用価値や売却価格が下がるリスクがあるため注意が必要です。このような場合には、土地の価値を下げずに済む他の遺産分割方法を検討することをお勧めします。
特定の相続人が居住する場合は「代償分割」を行う
遺産に土地と建物が含まれ、故人と一緒にそこで暮らしていた相続人がいる場合は、引き続き生活するためにその相続人が土地も建物も相続するのが一般的です。
ただ、他にも相続人がいる場合は、不動産を相続した人の取得額が大きくなり、他の相続人と不公平になることも少なくありません。相続人全員が納得すれば問題ありませんが、そうでない場合は、相続人間の公平性を維持するために代償分割を行います。
なお、代償分割を選択する場合であっても、代償として現金を渡す相続人は、相続後のご自身の生活に支障がないかどうかも含めて検討するようにしましょう。
また、遺産である土地建物で暮らしていた配偶者は、土地建物の所有権は相続せずに、配偶者居住権を取得する方法も考えられます。配偶者居住権とは、故人の配偶者が自宅に住み続けられる権利です。もっとも、配偶者居住権を設定すると、実質的に不動産の売却ができなくなる点には注意が必要です。
相続した不動産に住み続けるのか、将来売却する可能性があるのか、ご自身のライフプランに照らし合わせながら相続方法を検討するようにしてください。
住む予定がなく土地を手放しても良ければ「換価分割」を行う
例えば、親が亡くなって子が相続をする場合は、子が実家を離れて遠方で生活していると、住む予定のない土地や建物を相続しても困ることは少なくありません。そのため、土地や建物を手放しても良いと相続人の方が考えるのであれば換価分割を選択します。
ただし、その土地や建物がある場所によっては、そもそも買い手が見つからず換価できないこともあるので注意が必要です。換価分割を選択する場合には、いくらで売却できるのかを事前に確認するようにしましょう。
土地の「共有分割」は避けたほうが良い
先ほど紹介したように、土地を共有状態にすると、売却するにしても建物を建築するにしても共有名義者全員の同意が必要になります。
そのため、土地の有効活用の妨げになることも少なくありません。活用できないまま所有するだけの「負動産」と化すリスクもあるため、土地の遺産分割方法は他の3つの方法から選択することをお勧めします。
土地の遺産分割で揉めやすいケース
例えば、土地をお持ちの方が、「自分の財産をどう分けるのかは、子ども達で話し合って仲良く決めて欲しい。」と考えて遺言書を作成しないことがありますが、相続人同士の話合いに任せてしまうと揉める可能性が当然出てきます。
相続を「争族」にしないためにも、土地をお持ちの方が生前に遺言書を作成して遺産の分割方法を決めておくことをお勧めします。
また、遺産分割で揉める場合として多いのは、相続人同士の意思疎通が欠如して感情的に対立してしまうケースです。「自分が土地を相続すべきだ。」と思っていても、他の相続人がそれに同意してくれるとは限りません。
揉めない円満な相続を実現するためには、相続が起きた後の対応だけでなく、相続が起きる前の対策も重要です。遺産分割に対する考え方は、相続が起きる前から早めに相続人同士で共有しておくようにしましょう。
遺産分割を行って土地を相続するまでの流れ
ご家族が亡くなって相続が起きると様々な手続が必要になります。遺産分割を行って土地を相続するまでの流れを理解し、必要に応じて弁護士、税理士や、司法書士等の専門家に手続を依頼するようにしましょう。
相続人調査と相続財産調査を行う
遺産を相続する権利を持つ法定相続人が誰なのか、まずは相続人調査を行います。故人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を取り寄せて確認します。手間も時間も掛かるので、弁護士等の専門家に依頼したほうが良いでしょう。
また、相続の対象になる遺産に何が含まれるのか、相続財産調査も必要です。不動産だけでなく、銀行や証券会社の口座の状況も確認をします。信用情報機関に照会を行ってマイナスの遺産がないかどうかを確認することもあります。
遺言書の有無を確認する
遺言書が残されていればその内容に従って遺産を相続し、遺言書が残されていない場合は相続人同士で話し合って遺産の分け方を決めることになります。遺言書の有無によって相続の手続の流れが異なるので、遺言書の有無は最初に確認しなければなりません。
自筆証書遺言が残されていないか自宅の中を探したり、公正証書遺言が作成されていないか公証役場で照会を行ったり、法務局で遺言書が保管されていないかどうかを確認することになります。
遺産分割協議を行う
相続人が複数人いるケースで、遺言書が残されていない場合や遺言書で一部の財産のみ分け方が指定されている場合には、遺産の分け方を話し合う遺産分割協議を行います。
遺産分割協議そのものに期限はありませんが、早めに終えることが大切です。遺産を相続できないままだと財産を有効活用できず、相続トラブルも大きくなりがちです。
遺産分割協議で揉めそうな場合には、早めに弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。
相続税申告と相続登記を行う
遺産総額が相続税の基礎控除額を超えるケースでは、相続税の申告と納税の義務が生じます。遺産に土地が含まれる場合には、小規模宅地等の特例制度のことなど、税理士にも相談してみましょう。
また、遺産分割協議によって誰が土地を相続するのかが決まったら、土地の名義を故人から相続する人に変える相続登記を行います。相続登記の期限もありませんが、土地の正当な権利者として登録する大切な手続ですので、司法書士にも相談し、相続登記は早めに終えるようにしてください。
遺産分割協議で合意できなければ調停や審判に移行する
遺産分割協議を行って相続人同士で合意ができれば問題ありません。ただ、合意できずに揉めるケースも少なくありません。そのような場合は、裁判所に調停の申立てを行います。
調停は、調停委員が間に入るため、揉めている相続人同士が直接話し合うよりも合意できる可能性が高まることがメリットです。
調停でも合意できない場合には審判に移行します。審判では、裁判官が遺産分割の方法に関する最終的な判断を示すことになります。
まとめ
遺産分割の方法には、「現物分割」、「代償分割」、「換価分割」と「共有分割」の4つの方法があり、土地の遺産分割においてもいずれかの方法を選択することになります。それぞれの遺産分割方法の特徴を理解して、相続が起きたときの状況に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。
土地の遺産分割では様々な要素を考慮する必要があり、一般の方がご自身で遺産の相続方法を考えることは容易ではありません。相続に強い弁護士であれば最善の遺産分割方法をご提案できます。土地の相続でお困りの方はAuthense法律事務所に是非ご相談ください。
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