離婚後は、離婚した配偶者から受領した、財産分与、慰謝料を蓄えておく必要があります。未成年のお子様がいるときは、離婚した配偶者からの養育費で、子どもの養育費は、一部賄うことができます。住居がないときは、実家に頼るなどして、至急、住居を確保する必要があります。仕事先を見つけ、収入を確保することも大切です。
また、収入を補うものとして、市区町村や福祉事務所で、公的扶助が受給できないか、確認してみて下さい。
離婚とお金について
夫婦が別居するにあたって、あらかじめ契約書や公正証書等により具体的な婚姻費用の分担の合意をしておく場合があります。このような合意はもちろん有効です。もっとも、勤めていた会社が倒産したり、生活環境が著しく変わってしまった等、様々な事情の変更により生活費の増額や減額が必要となる場合も考えられます。そのような場合には、その旨の調停を求めることは可能です。
夫婦が別居するにあたって、あらかじめ契約書や公正証書等により具体的な婚姻費用の分担の合意をしておく場合があります。ただし、婚姻費用の分担の合意をしていたとしても、夫に浪費癖があったりする場合などには、婚姻費用の支払を後回しにして浪費してしまい、結果、夫が破産してしまうということも考えられます。
もっとも、破産法上、婚姻費用の分担の義務に係る請求権については、免責されないとされています。したがって、夫が破産した場合であっても、婚姻費用を請求することができます。
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して形成した財産をそれぞれの財産への寄与度に応じて分配する手続きです。専業主婦の場合には、家事労働の財産形成への寄与度により判断されることになります。
この点について、家事労働が妻によりなされている結果、夫が仕事に専念でき、収入を得ることができていると考えれば、妻は家事労働により、財産形成の半分に寄与していると考えることができます。
ただ、実際の裁判では、夫が医者であったり経営者であったりして夫の才覚が財産の形成に大きく寄与している場合には、夫の側に寄与分を多めに認める裁判例もあります。
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦で協力して形成した財産をそれぞれの財産への寄与度に応じて分配する手続きです。したがって、夫婦それぞれが、相手方の寄与なく単独で形成した財産については、財産分与の対象とはなりません。婚姻前から、夫婦それぞれが有していた財産がこの典型例であり、「特有財産」と呼ばれます。
別居後に貯めたお金については、原則として、他方配偶者の寄与なく、単独で形成した財産ということができ、特有財産にあたるといえるでしょう。したがって、財産分与の対象とはならないと考えられます。
年金分割とは、夫婦間において、将来、受領できる年金額に格差があるという不都合を是正するため、離婚する場合に、年金の標準報酬額の改定を申し立て、申立者が、改定後の標準報酬に基づいて、将来の厚生年金を受領することができるとした制度です。
なお、分割の対象となるのは、婚姻期間中の被申立者の保険料納付実績であり、受給している厚生年金額の一部を他方に分けるものではありません。
財産分与とは、基本的には夫婦が婚姻中に協力して蓄積した財産を清算するというところを目的としています。そうすると、結婚生活中に、夫婦で築いてきた財産が全くないとなると、財産分与として請求することはできません。
ただ、例えば、厚生年金の保険料を支払ってきた場合などには、年金分割を請求することはできます。
財産分与の際には、譲渡所得税が課されるか否かが問題となります。
財産分与の対象財産が、金銭または預貯金などの金銭債権の場合には、課税されません。しかし、キャピタルゲインが生じる財産(価値が変動する財産)については、譲渡所得税が課される「資産の譲渡」にあたります。
もっとも、居住用不動産については、離婚後の財産分与について譲渡所得税の特例が認められたり、離婚前であれば贈与税の配偶者控除の適用が考えられます。財産分与にあたっては、不動産などの価値が変動する財産については税務についてもしっかりと調査する必要があります。
子ども名義の預貯金は、どのように使途・目的で預貯金をしていたかによって財産分与の対象となるかが決まります。たとえば、子どもの学費など、子どもの将来に備えて子どものために預貯金をしていたような場合には、子どもに対する贈与があったとして、子ども固有の財産と判断されるケースもあります。
それに対し、単に子どもの名義にしていたが、実質は夫婦で貯金しているにすぎない場合には、夫婦の共有財産として財産分与の対象となるケースもあります。
退職金は、労働の対価の後払い的性質を有していると考えられていますので、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産といえます。そのため、離婚の時点で既に支払われている退職金が財産分与の対象となることについては、争いがありません。問題は、将来支給される退職金です
将来支給される退職金については、不確定な要素によって左右されるものですので、裁判例の考え方も分かれていますが、将来支給されることがほぼ確実である場合には、財産分与の対象となると考えられています。将来支給されることがほぼ確実であるか否かを判断するためにも、退職金を支払う会社の規程等を入手しておくことが望ましいといえます。
財産分与の対象となる財産は、共同生活中に夫婦で形成した財産ということになりますから、婚姻前から有していた財産は、当該配偶者の固有財産として、財産分与の対象とはなりません。
ただ、残っていた住宅ローンの返済が婚姻中に行われていた場合、その返済は夫婦の協力によってなされたものと考えられますので、結婚前に夫婦の一方が購入した住宅であっても、結婚後にローン支払った部分(割合)については、財産分与の対象になります。
夫婦の一方が婚姻前から所有していた財産や、婚姻中に相続によって取得した財産、婚姻中に他から受けた贈与などは、夫婦双方の協力によって取得した財産ではないので、財産分与の対象となりません。したがって、父から相続した財産は分与の対象となりません。
法人名義の財産は、夫婦の財産ではありませんので、原則として財産分与の対象となりません。
もっとも、法人が株式会社である場合、会社の株式が一方配偶者の所有に属し、当該株式が婚姻生活中に形成されたものであるような場合や、会社とはいっても全くの名目だけでその実態は夫の個人財産と同視できるような場合には、財産分与の対象となる可能性が高いといえます。また、会社が婚姻後設立されたものであれば、会社の株式は財産分与の対象となります。
離婚の慰謝料を請求することはできても、相手方が生活保護の受給者である場合、生活保護費に対して、差し押さえや強制執行はできません。
「夫と離婚したいけど、離婚後の生活が不安…」、「養育費を支払ってもらえなくなったら、子どもとの生活ができない…」など、離婚後の生活に不安があるため、離婚の決断ができない方も多くいると思います。そのような不安を取り除き、離婚後も最低限の生活を送ることができるよう、様々な公的補助の制度が設けられています。
◆お金に関する公的扶助
児童扶養手当
児童扶養手当は、離婚や死別などの事情により、父または母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭の生活の安定と自立を促進し、児童の心身の健やかな成長に寄与するために支給されるものです。
母子福祉資金貸付け
母子福祉資金貸付金母子家庭の母等が、就労や児童の就学などで資金が必要になったときに、都道府県や指定都市などの公共団体貸付けを受けられる資金で、母子家庭の母の経済的自立を支援するとともに生活意欲を促進し、その扶養している児童の福祉を増進することを目的としています。返済時の負担軽減のため、貸付利率については無利子とされ(保証人を立てられない場合は原則として有利子となります)、資金の種類により、3年から20年で返済していくことになります。
ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭等医療費助成制度は、ひとり親家庭等に該当すると認定された世帯の保護者と児童が病院で診療を受けたときに、国民健康保険や健康保険など各種医療保険の自己負担分から一部負担金を差し引いた額が助成されます。健康保険に加入していることや市区町村が定める所得制限等の要件をみたす必要があります。
そのほかにも、特別児童扶養手当や障害児童福祉手当、生活保護、就労・就学支援などの制度が設けられています。詳しくは、弁護士にご相談ください。
◆生活に関する公的扶助
母子生活支援施設
母子生活支援施設とは、離婚した女子など及びその監護すべき児童を入所させて、保護するとともに、自立の促進のためにその生活を支援することなどを目的とする施設をいいます。いつでも相談できる職員が配置された施設内の独立した居室で生活することができ、保育サービス等も行っています。夫からDV被害を受けている方が入所するケースも多くあります。
公営住宅への優先入居
公営住宅とは、住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的に設置している住宅であり、入居者の決定にあたって公正な方法での選考がなされています。父子家庭・母子家庭の場合、住宅の困窮度が著しく高いものとされ、選考に際して、他の入居申し込み者よりも優先される運用となっています。
公営交通機関の割引制度や水道料金の減免等
児童扶養手当の受給者は、JRの通勤定期券の割引、粗大ごみ収集手数料の免除といった公的補助を受けることができます。
不動産の名義、連帯債務者や連帯保証人はどうするのか、ローンが残っている場合はどうやって返済していくのか、どちらかが住み続けるのか、あるいは売却・処分して手放すのかなど決めなければいけないことが非常に多いのです。
また、不動産購入の頭金などで、夫婦の一方が婚姻前までに貯めていた貯金を充てたり、一方の両親が資金援助をしたりした場合、それは特有財産であり、財産分与の対象から除外されることも理解しておきましょう。
住宅ローンは長期にわたって多額の金銭が絡む問題ですので、離婚の際にはしっかりと取り決めをしておくことが必要です。
◆【調査する】まずは不動産についての現状を把握しましょう
マイホーム(不動産)について取り決めをするにあたって、その不動産についての現状を把握することが不可欠です。不動産の名義、担保権(抵当権など)が設定されているか、不動産の価格、住宅ローンの契約内容、ローンの残高などについて調査をしましょう。
不動産の名義を調べる
土地・建物の名義を調べるには、法務局で不動産の登記簿謄本を取得する必要があります。不動産が担保に供されている場合にはどのような担保権(例えば抵当権)が設定されているのかも、この謄本を見ればわかります。なお、不動産を購入する際に金融機関から借入れを行った場合、金融機関が不動産に抵当権を設定しているのが通常です。
不動産の価格を調べる
不動産を売却するのかどうか、お二人のどちらが住み続けるのかなどを決めるにあたり、不動産の価格を調べておくことはとても重要です。
不動産の価格を調べるには、まずは、不動産業者に不動産の査定をしてもらうという方法がよいでしょう。
住宅ローンの残高を調べる
住宅ローンの残高は、返済計画を表にして記載した償還(しょうかん)予定表(よていひょう)(償還表(しょうかんひょう))、返済予定表といった書面が送付されてきているはずですので、そちらで確認することができます。
また、金融機関によっては、インターネット上で確認ができるようになっているところもありますし、窓口に問い合わせれば残高証明書を発行してもらうことも可能です。
◆【比較する】不動産の査定価格と住宅ローン残高を確認しましょう
調査が終わったら、不動産業者に査定してもらった不動産の査定価格と住宅ローンの残高を比べます。
アンダーローンとオーバーローン
不動産の査定価格が住宅ローンの残高より大きい場合は、不動産を売却したお金で返済することによって利益が出ます(アンダーローン)。
しかし、住宅ローンの残高が、不動産の査定価格よりも大きい場合、不動産を売却したとしてもその差額のローンが残ります(オーバーローン)。
この場合には、離婚後もローンの返済を継続しなければならないことになってしまいます。
住宅ローンの残高が不動産の査定価格を下回る場合には第三者への売却の検討を、上回る場合にはどちらかがローンを支払いながら住み続ける方向で検討していくのが一般的といえます。
担保権がついている場合は売却に注意を
住宅ローンに抵当権などの担保権が付いている場合、債務者は銀行との間で「抵当物件の所有者が所有権を第三者に譲渡する場合は、事前に銀行の承諾を得る」旨の約束をしている場合があります。
この場合には、いくら夫婦で住宅を売却するとの合意をしても、銀行の承諾がない場合には、銀行との契約に違反することになります。そのため、担保権がついている場合には、必ず金融機関と相談しましょう。
◆【売却する】マイホーム(不動産)の売却する
マイホーム(不動産)を売却する場合
マイホーム(不動産)を売却し、売却したお金で残りの住宅ローンを返済し、それでも余ったお金があれば夫婦の「財産分与」の対象になります。
財産分与では、原則半分の金額を分け合うことになりますが、夫がメインで住宅ローンを返済している場合でも、妻の実家などが住宅ローンの援助をしてくれたなどの事情があれば、財産分与の際に考慮される場合があります。
一方で、売却したお金で住宅ローンの返済をしても、まだローンが残る場合には、返済が継続することになります。
◆【売却しない】マイホーム(不動産)を売却しない
・夫(住宅ローンの債務者)が家に住み続ける場合
夫が住み続ける場合には、不動産が夫名義であれば,そのまま夫が住み続けて住宅ローンの返済も行っていくということになるでしょう。
しかし、ここで注意しなければならないのが、妻が連帯債務者や連帯保証人となっている場合です。
妻は金融機関に対して責任を負っていますので、仮に夫婦間で「住宅ローンは夫が返済する」と合意したとしても、この合意を金融機関に対して主張することはできません。
妻が負担を免れるためには、別途金融機関と妻が連帯保証人などから外れることを申し入れ、承諾してもらう必要があります。承諾が得られれば、連帯保証人から外れることもできますが、金融機関としては借金を保証する者がいなくなるわけですから、なかなか承諾してはくれないでしょう。一時的に一定の金銭を支払うことを約束させられたり、別の保証人などを付けるよう要求される可能性もありますので注意しましょう。
・妻(住宅ローンの債務者でない方)が家に住み続ける場合
夫が不動産の名義人かつ住宅ローンの債務者である場合、夫が家を出ていき,妻が家に住み続けるという場合には、誰がローンを支払うのかについて話し合いが必要です。
夫が住宅ローンを返済する(ローンの債務者を変更しない場合)
夫にとってはもう自分の家ではないため、住宅ローンの返済を負担に感じ、返済が滞ってしまう可能性も否めません。ローンの返済を滞納すれば、立退きをしなければならないため妻にとっては非常に深刻な問題です。
この場合には、しっかりと夫が住宅ローンを返済する旨の合意を取り、公正証書にまとめるなどをして、万が一の場合に備える必要があるでしょう。
妻が住宅ローンを返済する(ローンの債務者を変更しない場合)
妻が住み続ける以上、住宅ローンの名義を変更して、妻が債務者となりローンの返済をしていくことも考えられます。
債務者の変更については、変更後の債務者の資力が問われますので、実情としてはなかなか認められにくいといえます。そのため、名義は変えずに夫婦間で実質的に返済を妻がするという取り決めをする例も多いようです。
この際には、住宅の名義変更をすることが望ましいといえます。名義をそのままにしておくと、いざという時に夫の財産とされてしまうためです。しかし、金融機関としては、ローンの完済まで名義変更を認めてはくれないのが実情ですので、離婚時にローン完済後の名義変更について合意をしておきましょう。
高額所得者の離婚は支払うべき(支払われるべき)金額を見極めることが重要です。
高額所得者の離婚は、年収も高く、住宅ローンなどの負債を含む資産を保有していることが多いため、交渉によっては財産分与の割合が大きく変わることもあります。
また、養育費や婚姻費用、慰謝料なども年収に応じて高額になる傾向にあります。
◆財産分与
夫婦の財産から特有財産を除いたものが財産分与の対象となります。ただし、特有財産は、婚姻前に貯めた預貯金や有価証券、相続財産など、夫婦の一方が婚姻前から有する財産又は婚姻中自己の名で得た財産であることを明確に主張できる財産でなければなりません。
また、住宅ローンなどの負債も財産分与の対象となります。家などの不動産と住宅ローンの財産分与は争いになりやすいので注意が必要です。
財産分与の割合は、原則2分の1ずつ(清算的財産分与)とされていますが、財産形成における貢献度(寄与度)によっては割合が修正されることがあります。
夫婦で財産分与に関する合意が成立すればそれが優先されますが、高額所得者の場合、保有資産も多く、交渉によっては財産分与の割合が大きく変わることもあります。
◆養育費・婚姻費用
養育費は、特別な事情がある場合、内容によっては増額事由として認められる場合があります(たとえば、子どもが私立学校へ進学することを承諾している場合など)。また、婚姻費用(生活費)は、民法第760条で「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生じる費用を分担する。」とされているため、別居期間中であっても、自己と同程度の生活を相手方に保障する金額を支払わなければなりません。
養育費と婚姻費用は、家庭裁判所が公開している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に概算されますが、高額所得者の場合、算定表の年収上限(年収2000万円)を超えてしまうこともあります。
◆慰謝料
高額所得者は、浮気や不倫などの不貞行為、DVやモラハラなどが原因で離婚に至るような場合、慰謝料の金額が高額になるケースも見受けられます。
慰謝料は、「精神的苦痛に対する損害賠償」として相手方に請求する(請求される)ものです。性格の不一致や価値観の違いといった理由だけでは、請求する(請求される)ことはむずかしいとされていますが、離婚原因の内容や婚姻期間、子の有無、相手方の社会的地位や資力などの事情や状況で変わりますので、支払うべき(支払われるべき)金額はいくらなのか、弁護士にご相談されることをおすすめします。
会社経営者の離婚は、経営権争い、労働訴訟も想定し、守秘義務のある弁護士と慎重かつ戦略的に進めましょう。
会社経営者の離婚は、年収や役員報酬も高額であるうえに、保有資産(貴金属や美術品、高級外車などの動産、ゴルフ会員権や株式などの有価証券)も多いため、財産分与で争いとなる傾向にあります。
個人事業主の場合、事業に関わる財産(土地、建物、口座など)についても、婚姻後に築いた財産は基本的に財産分与の対象となります。
法人経営者(役員)の場合、法人名義の財産については、原則として、財産分与の対象とはなりませんが、経営者個人として法人に貸し付けていたり(貸付金)、法人の株式・出資持分を保有したりしている場合には、個人の財産となりますので、財産分与の対象となる可能性があります。
また、非上場企業の場合には、企業価値算定(株価算定)を行ったうえで、財産分与対象額を決めなければなりませんし、夫婦で法人の取締役などに就いていて、どちらかが辞職する場合には、持株比率の多いほうが会社を引き継ぎますが、その際、配偶者の保有する株式の株式価値を算出して財産分与することになります。
◆財産分与の割合
財産分与は、(1)清算的財産分与(2)扶養的財産分与(3)慰謝料的財産分与に分類されます。
清算的財産分与の割合は、原則2分の1ずつとされていますが、法人経営者(役員)などの場合、経営者としての才覚はもとより、その経営手腕によって事業拡大や資産形成がなされたと評価されることがあるため、配偶者への分与比率を下げられるといった例外が認められることがあります。
◆財産分与の対象から除外される財産
婚姻前から保有していた会社や財産や、婚姻後でも相続した会社や財産については、財産分与の対象から除外されます。
しかし、家族経営の場合や、会社の株式を夫婦でもっている場合には、後に経営権争いなどに発展する可能性もありますので、離婚条件の交渉は弁護士に委任することをおすすめします。
◆有価証券(株式等)
会社経営者の自社の株式などの有価証券は、財産分与の対象となります。
また、夫婦どちらかが会社経営者で、その配偶者が役員の場合、それぞれが株式などの有価証券を保有していることがありますが、この場合もそれぞれが保有する株式などの有価証券は財産分与の対象となります。
株式については、会社経営の今後に関わりますので、計画的かつ戦略的な交渉が求められます。
◆配偶者が取締役などの役員の場合
配偶者が取締役などの役員の場合、退任を求めるには通常、株主総会決議が必要となりますが、離婚を理由に退任請求(解任請求)を行うといった場合には、正当な理由がない取締役の解任として損害賠償を請求されることがあり、注意が必要です。離婚問題が経営権争いに発展するような最悪な事態を避けるためにも、弁護士と慎重かつ戦略的な交渉が必要です。
会社経営者が離婚を決心したら、離婚問題についての専門的知見が豊富で、かつ企業法務や労働問題の調停や裁判(訴訟)の経験をより多く積んでいる弁護士にご相談されることをおすすめします。
暮らしや生活にもとづいた離婚について考えていきましょう。
経営者の妻の離婚は、夫より賢く計画的に進めましょう。
夫が会社経営者で、妻が専業主婦の場合、財産分与について争われることが少なくありません。また、夫婦が共同経営者である場合や、親族などを含めた家族経営である場合には、経営権争いなどに発展するなど、交渉が長期化するおそれもあります。
一般的なサラリーマンなどの夫婦が離婚する場合の財産分与(清算的財産分与)は、原則2分の1ずつとされていますが、夫が会社経営者で妻が専業主婦の場合、夫の経営者としての才覚はもとより、その経営手腕によって事業拡大や資産形成がなされたと評価される場合には、妻への財産分与の割合が抑えられてしまうことがあります。
◆財産分与
婚姻前から保有していた会社や財産や、婚姻後でも相続した会社や財産については、財産分与の対象から控除されますが、一般的なサラリーマンなどの夫婦が離婚する場合の財産分与(清算的財産分与)割合とされる、原則2分の1ルールは、夫が会社経営者などの場合、夫の経営者としての才覚や経営手腕によって事業拡大や資産形成がなされたと評価され、妻への財産分与の割合が抑えられてしまうことがあります。
夫が法人経営者(役員)の場合、法人名義の財産は、原則として、財産分与の対象とはなりません。
また、夫が法人経営者(役員)であっても、夫(経営者)個人として法人に貸し付けていたり(貸付金)、法人の株式・出資持分を保有している場合には、個人の財産となりますので、財産分与の対象となる可能性があります。非上場企業の経営者の場合は、その保有株式については、企業価値算定(株価算定)を行ったうえで財産分与対象額を決めた上で財産分与を行う必要があります。
夫の出世や成功は、妻の理解やサポートによるところが大きい、評価されるべきとお考えであれば、「知らなかった」と後々悔しい思いをすることがないように、財産調査の段階から、弁護士などの専門家のサポートを受けることをおすすめします。
◆親権
親権について父母どちらも譲らず親権者が争われた場合、家庭裁判所は、
①乳幼児における母性優先の原則
②継続性の原則
③子の意思の尊重
④兄弟姉妹不分離の原則
⑤面会交流の許容
⑥奪取の違法性
などの判断基準を総合的に考慮し、最も重要とする「子の利益と福祉」をもって判断します。
子どもへの愛情の深さを訴えるだけでは叶わない場合もあります。
◆養育費・婚姻費用
夫とは離婚しても、子どもの将来を思えば、それ相応の教育費が必要となります。
養育費は「満18歳に達するまで」、「満20歳に達するまで」、「大学卒業まで」など、ケースによって色々な定め方が考えられますが、十分な教育をお考えであれば、養育費の金額や支払期間をしっかりと決めておく必要があります。
婚姻費用とは、別居期間における生活費のことです。
夫婦には同居義務(民法752条 「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」)がありますが、相手方に法律上の離婚原因(民法770条1項各号)があり、同居義務違反や、悪意の遺棄と評価されない別居するに正当な理由があるような場合には別居が認められます。別居期間の婚姻費用は、相手方に請求すれば認められるものです。
養育費や婚姻費用は、家庭裁判所が公開している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に概算されます。
◆慰謝料
慰謝料は、必ず支払う(支払われる)ものではありません。たとえば、浮気や不倫などの不貞行為、DVやモラハラなどが原因で離婚に至るような場合に、「精神的苦痛に対する損害賠償」として相手方に請求する(請求される)ことができますが、性格の不一致や価値観の違いだけでは難しいとされています。
また、慰謝料の金額は、離婚原因の内容や婚姻期間、子の有無、相手方の社会的地位や資力などの事情や状況で変わります。
経営者の妻が離婚を決心したら、離婚問題についての専門的知見が豊富で、かつ企業法務や労働問題の調停や裁判(訴訟)の経験をより多く積んでいる弁護士にご相談されることをおすすめします。
医師の離婚は、資産形成への貢献度をいかに主張できるかが大切です。
医師は、医師としての資質や適正があることは言うまでもなく、医師免許を取得するまでには本人の努力とともに多くの時間とコストを要しています。
さらに、開業医として医療法人を経営している場合などは、医師としての才覚はもとより、その経営手腕によって資産形成がなされたと評価されることが多いため、原則2分の1ずつとされる財産分与(清算的財産分与)において、例外が認められることがあります。
また、「夫婦共有財産に含まれない」とされる医療法人名義の財産も、実際には、法人資産と個人資産が混在している場合があるなど、財産分与の対象財産の範囲が不明確なこともあるのではないでしょうか。
◆財産分与
医師の離婚は、一般的なサラリーマンなどの夫婦と比べて年収も高い(高収入)傾向にあり、保有資産も多いため、財産分与対象財産の範囲や寄与割合など、財産分与について争われることが多いです。
開業医として医療法人を経営している場合などは、配偶者の実家から開業資金などの資金援助を受けていたり、不動産が病院と住居が一緒になった医院併用住宅であったり、また、配偶者が医療法人の理事として報酬を得ている一方で、医療法人へ資金を出資(負担)していたり、余剰資産を分散投資していたりするなど、法人資産と個人資産が混在していることも多く、資産の評価や財産分与の算定が複雑になりがちです。
そのため、弁護士などの専門家を活用し、財産調査や立証するための証拠の収集など手落ちのないように準備を整えた上で、夫婦共有財産の範囲について明確に主張・立証することが重要となります。
また、原則として2分の1とされている寄与割合も、医師の場合は修正される可能性があり、実際の裁判例においても、高額な収入の基礎となっている特殊な技能が、婚姻前の本人の個人的な努力によって形成されていて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されているような場合には、そのような事情を考慮して寄与割合を決めるべきであるとして、医師である夫の寄与割合を6割としたものがあります。
◆慰謝料
慰謝料は、必ず支払う(支払われる)ものではありません。たとえば、浮気や不倫などの不貞行為、DVやモラハラなどが原因で離婚に至るような場合に、「精神的苦痛に対する損害賠償」として相手方に請求する(請求される)ことができますが、性格の不一致や価値観の違いだけでは難しいとされています。
また、慰謝料の金額は、離婚原因の内容や婚姻期間、子の有無、相手方の社会的地位や資力などの事情や状況で変わります。
医師の場合、慰謝料の金額が高額になるケースも見受けられますが、支払うべき(支払われるべき)金額はいくらなのか、弁護士にご相談されることをおすすめします。
◆養育費・婚姻費用
養育費や婚姻費用を支払う(支払われる)必要がある場合、家庭裁判所が公開している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に概算されますが、医師の場合、算定表の年収上限(年収2000万円)を超えてしまうことも多いため、弁護士などの専門家のサポートが必要となるでしょう。
◆配偶者が医療法人の役員やスタッフ
開業医として医療法人を経営している場合、配偶者が医療法人の理事などの役員として報酬を得ている場合や、事務スタッフとして雇用契約を結んでいる場合は、慎重な対応が必要となります。
医師が離婚を決心したら、離婚問題についての専門的知見が豊富で、調停や裁判(訴訟)の経験をより多く積んでいる弁護士にご相談されることをおすすめします。
医師の妻の離婚には弁護士の交渉戦略が必要です。
医師は、人間の健康や生命を預かる専門家(スペシャリスト)。国から職業的な地位を保障され、社会的な信用度も高く、年収も高い(高収入)傾向にあります。
一般的なサラリーマンなどの夫婦が離婚する場合、財産分与(清算的財産分与)は、原則2分の1ずつとされています。しかし、医師の場合は例外が認められることもあり、妻への財産分与の割合が抑えられてしまうことがあります。
また、開業医として医療法人を経営している場合は、妻の実家から開業資金の出資を受けていたり、余剰資産を分散投資していたりなど、法人資産と個人資産が複雑になっていることも多く、財産調査(場合によっては財産開示請求)から気の遠くなる交渉が始まります。
◆財産分与
開業医で医療法人を経営している医師の場合、妻が医療法人の役員やスタッフとして報酬をもらっていることもあるのではないでしょうか。
医療法人の財産は夫婦の共有財産とならないため、原則として財産分与の対象とはなりません。しかし、医師(夫)個人と医療法人の間で出資や貸借などがある場合には、財産分与の対象となる場合があります。
「知らない」または「知らされない」で悔しい思いをすることがないように、しっかりと調査されることをおすすめします。
また、離婚を理由に退職しなければならない場合など離婚後に妻が生活に困る場合には、離婚後の生活が安定するまでの自立費用を請求することができ、扶養的財産分与として認められる可能性もあります。
◆親権
医師の場合、子どもを後継ぎにしたいと親権を求める場合があります。
親権について父母どちらも譲らず親権者が争われた場合、家庭裁判所は、
①乳幼児における母性優先の原則
②継続性の原則
③子の意思の尊重
④兄弟姉妹不分離の原則
⑤面会交流の許容
⑥奪取の違法性
などの判断基準を総合的に考慮し、最も重要とする「子の利益と福祉」をもって判断します。
子どもへの愛情の深さを訴えるだけでは叶わない場合もあります。
◆養育費
医師の妻は、子どもの教育に熱心な方が多いのではないでしょうか。夫とは離婚しても、子どもの将来を思えば、それ相応の教育費が必要となります。
養育費は「満18歳に達するまで」、「満20歳に達するまで」、「大学卒業まで」など、ケースごとに色々な定め方が考えられるため、医学部に限らず、大学さらに大学院までの十分な教育をお考えであれば、養育費の金額や支払期間を交渉したうえ、より高額な金額を長期間支払ってもらうようにしっかりと決めておく必要があります。
医師の妻が離婚を決心したら、離婚問題についての専門的知見が豊富で、調停や裁判(訴訟)の経験をより多く積んでいる弁護士にご相談されることをおすすめします。
プロスポーツ選手の離婚は、ネガティブな情報の取り扱いに注意しながら、セカンドキャリアを考慮した条件で離婚成立を目指しましょう。
プロスポーツ選手の離婚は、高額な年収(年俸+広告契約による収入など)の場合、資産も多く、慰謝料や財産分与、養育費などが高額になる傾向にあります。
しかし、ほとんどの選手は毎年の契約更改で年俸が変動し、結果を残せなければ、いつでも戦力外通告を受ける可能性があります。
競技によって差はあるものの、アスリートの現役(デュアルキャリア)期間は平均約17年※。ほとんどの選手が30代、40代で現役を引退し、セカンドキャリアを歩んでいます。
そのため、プロスポーツ選手の離婚は、ネガティブな情報の取り扱いに注意しながら、できるだけ早い段階で弁護士に相談し、セカンドキャリアを考慮した条件で離婚成立を目指すことをおすすめします。
※JSC(日本スポーツ振興センター)調査
◆マスコミ
プロスポーツ選手は、自身のパフォーマンスによって「勝利にどれだけ貢献できるか(プレイヤーズバリュー)」、「売り上げにどれだけ貢献できるか(マーケティングバリュー)」を求められる職業です。
最近では、マスコミよりも先に、相手方によるSNSでの情報の拡散や、週刊誌などへのリークなども十分あり得ます。
そのため、現役(デュアルキャリア)に限らず、現役引退後(セカンドキャリア)にも影響するようなネガティブな情報の取り扱いには注意しなければなりません。
◆慰謝料・財産分与
一般的なサラリーマンなどの夫婦の財産分与の割合は、原則として2分の1ずつとなりますが、プロスポーツ選手のように才能(能力)や努力によって共有財産を築いた場合、その配偶者の財産分与は2分の1以下になる可能性があります。
実際の裁判例においても、スポーツ選手など、高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって、一定の生涯資金を保障するような意味合いが含まれている等の事情がある場合には、そのような事情を考慮して寄与割合を決めるべきであるとした裁判例があります。
しかし、高額な年収(年俸+広告契約による収入など)のプロスポーツ選手ほど、預貯金や資産も多い傾向にあるため、慰謝料や財産分与について争われることが多いです。
◆契約金
プロスポーツ選手が、所属するクラブチームなどから支払われる契約金は、婚姻前に支払われた(取得した)ものであれば、選手本人の固有資産とみなされ財産分与の対象にはなりません。
しかし、婚姻後に支払われた(取得した)ものであれば、夫婦共有財産として財産分与の対象となる可能性が高いでしょう。
◆養育費(養育費の減額請求)
プロスポーツ選手が離婚する場合、高額な年収(年俸+広告契約による収入など)であればあるほど、子どもの養育費も高額になる傾向があります。
しかし、プロスポーツ選手のほとんどは、現役時代(デュアルキャリア)の収入と、現役引退後(セカンドキャリア)の収入に少なからず変化があるのではないでしょうか。
養育費は、家庭裁判所が参考資料として公開している「養育費・婚姻費用算定表」を参考に、年収に基づいて決定されますが、養育費が決められた後、例えば、現役引退後に大幅に収入が下がったという場合には、養育費の減額を請求することが認められています。
◆親権・面会交流
現役のプロスポーツ選手の場合、試合などで遠征する機会が多ければ、子どもと過ごす時間も限られるでしょう。また、現役引退後は、経済状況の変化も考慮しなければなりません。
親権について争いになった場合、どちらの親が子どもを監護養育するのにいい環境を与えられるのか、子どもにとって幸せなのかを、よく考える必要があります。
仮に、親権を取らない場合にも、子どもにとって親であることは変わりありません。
子どもを監護していない親(非監護親)が、子どもと直接会うなどの交流をする面会交流という制度が法律で認められています。そして、元配偶者が子どもとの面会交流に応じない場合には調停や審判を申し立てて請求することもできます。
プロスポーツ選手の離婚は、離婚問題についての専門的知見が豊富で、調停や裁判(訴訟)の経験をより多く積んでいる弁護士にご相談されることをおすすめします。
弁護士は、弁護士法第23条によって、秘密保持の義務が法定され、高度の守秘義務がありますので、ネガティブな情報の拡散やリークからのリスクヘッジとして、弁護士に相談することも選択肢の一つとしてお考えください。
熟年離婚は、離婚後(老後)に「経済的自立ができるかどうか」「変化する生活水準に許容できるかどうか」が非常に重要です。
慰謝料は必ず支払われるものではありませんが、財産分与と年金分割は正当に受け取るべきものです。
熟年離婚や高齢離婚をお考えであれば、冷静かつ計画的に、配偶者に離婚の意思を伝えるよりもまず、弁護士などの専門家にアドバイスを求めるなどしてみましょう。
◆財産分与
一般的なサラリーマンなどの夫婦が離婚する場合の財産分与(清算的財産分与)割合は、原則2分の1ずつとされています。
婚姻後に築いた財産(預貯金、不動産、動産、家財、有価証券など)だけではなく、住宅ローンや借金などの負債も財産分与の対象となります。
また、退職金は、将来受け取るべき退職金であったとしても、その退職金を受け取ることができる蓋然性が高い場合には、将来受給するであろう退職金のうち、夫婦の婚姻期間に対応する部分を算出し、これを現在の価値に引き直したうえで、清算の対象とすることができる場合があります。
婚姻前から保有していた財産、婚姻後でも相続した財産、別居後に築いた財産は財産分与の対象から除外されます。
◆年金分割
年金分割は、離婚する際に婚姻期間中の厚生年金(共済年金の組合員であった期間を含む)の納付実績を夫婦で分割することです。「合意分割制度」と「3号分割制度」があり、請求期限は原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年以内となります。少し複雑なところもありますので、くわしくは、お近くの年金事務所にお問い合わせされるとよいでしょう。
熟年離婚を決心したら、離婚問題についての専門的知見が豊富で、調停や裁判(訴訟)の経験をより多く積んでいる弁護士にご相談されることをおすすめします。