コラム

公開 2021.10.07 更新 2021.10.18

建物の明渡訴訟とは?手続きや流れを解説

建物の明渡訴訟とは?手続きや流れを解説

明渡訴訟の流れや、自分で明渡訴訟をする場合のリスクなどについてわかりやすく解説します。
建物の明渡訴訟とは、賃料を長期間滞納したり問題行動したりする入居者を、物件から退去させるための訴訟です。
勝訴判決を得られれば、強制執行も可能です。

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建物の明渡訴訟とは

迷惑行為をしたり長期にわたって賃料を滞納したりする入居者を物件から立退させる場合に検討したいのが、建物の明渡訴訟です。
まずは、建物の明渡訴訟についてその概要を解説していきましょう。

明渡訴訟の概要

建物の明渡訴訟とは、賃料を長期にわたって滞納したり、ペット禁止の物件でペットを飼うなどの契約違反している入居者を、物件から立退させるための訴訟を指します。
違反の是正を求めても改善されず、任意の退去にも応じてもらえない場合などに、最終的に検討したい方法です。

訴訟では、裁判所が双方の事情を聞き、明渡しが妥当かどうかを判断します。
また、裁判の途中で双方の妥協点が見つかれば和解が成立する場合もあります。
物件を明け渡すことを命じる旨の判決が出たり和解をしたにもかかわらず引き続き物件に居座るような場合には、強制執行をすることも可能です。

明渡訴訟を検討すべきケース

たとえば、家賃の支払いが一度遅延した程度では、明渡訴訟をしても認められる可能性は低いでしょう。

建物の明渡請求が認められるためには、物件オーナーと入居者との信頼関係が破壊されたと認められる必要があります。1ヶ月や2ヶ月程度賃料の支払いが遅れただけでは、信頼関係が破壊されたとまでは言えないと判断される可能性が高いためです。

明渡訴訟を検討すべきケースは、たとえば次のような場合です。

賃料を長期間滞納している

家賃を長期間滞納している場合には、明渡訴訟を検討すべきケースの一つといえます。

何ヶ月間の滞納をもって「長期間」と判断するのかは事案ごとに異なるものの、おおむね3ヶ月程度を基準とすることが多いようです。
この期間は画一的に判断されるものではなく、物件オーナーとの信頼関係を破壊するに足りる期間かどうかが、事案ごとに判断されることになります。

近隣からの苦情が頻発している

騒音や異臭などにより近隣からの苦情が頻発している場合にも、明渡訴訟を検討すると良いでしょう。
ただし、苦情の場合には単に近隣の人がいわゆる神経質であり、通常の生活音などが気になって苦情を申し立てている場合もあります。

そのため、苦情の対象となっている入居者に問題があるとはじめから決めつけて対応するのはなく、まずは事前によく実態を調査するなど慎重に対応をする必要があるでしょう。

契約違反が是正されない

契約違反の状態をやめるよう求めているにもかかわらず改善がされない場合も、明渡訴訟を検討すべきケースの一つです。

契約違反には、たとえば次のようなケースが考えられます。

  • ペットの飼育を禁止されている物件でペットを飼育している
  • 物件に勝手に他者を住ませて入居人数をオーバーしている
  • 無断で物件をリフォームしている
  • 居住用の前提で貸した物件を勝手に事務所や店舗として使用している
  • 無断で物件を転貸している

契約違反の場合には、その違反の程度などにより明渡しが認められるかどうかが異なります。
悩んだ際には、まず弁護士に相談すると良いでしょう。

家賃を滞納している入居者への対処法

家賃を滞納している入居者がいる場合には、いきなり明渡訴訟を提起するのではなく、まずは次の方法で解決を試みましょう。

電話や書面などで請求をする

支払期日になっても家賃の入金が確認できない場合には、まずは口頭や書面で支払いを求めます。
単に振り込み手続きを忘れていたり口座の残高不足に気づかず引き落としができなかったりといったうっかりミスであれば、次回から是正される可能性は高いでしょう。
支払遅延が判明したらできるだけ早く入居者へ連絡すると良いでしょう。

内容証明郵便で請求をする

口頭や通常の書面で請求をしても家賃が支払われない場合には、内容証明郵便にて請求をします。
内容証明郵便には、滞納している家賃の金額や支払期日のほか、期日までに支払わない場合には賃貸借契約を解除する旨などを明記しましょう。
内容証明郵便とは、送付した文書の内容や送付された日付の記録が残る郵便です。
一般的に、内容証明郵便が送られてくる機会は日常生活において多くあるものではないため、入居者にプレッシャーを与え、滞納分の賃料の支払いにつながる可能性があります。

オーナーが滞納分の家賃を請求していたとの証拠が残るという意味でも利点があります。

退去や明渡しを求める方法

退去や明渡しを求める方法

契約違反などの問題行動をする入居者に物件からの退去と明け渡しを求める方法には、次の2つがあります。

任意での明渡しを求める

一つは、任意での明渡しを求める方法です。

たとえば、家賃の滞納が続き内容証明郵便を送るなどしても支払いが確認できないなど問題行動が是正されない場合は、信頼関係の破壊や契約違反などを理由に物件オーナーが賃貸借契約を解除することが可能です。
契約が解除された以上は物件に住み続ける理由はありませんから、物件からの退去を求めることができます。

訴訟をして強制的に退去させる

入居者が任意の明渡しに応じない場合には、建物の明渡訴訟を提起します。
裁判所が明渡しを認めれば、物件から退去し建物を明け渡すことを命じる判決が出されます。

この判決が出てもなお物件に居座り続ける場合もありますが、その場合には強制執行により強制的に物件から退去させることが可能です。

明渡訴訟の手順・流れ

明渡訴訟までの流れを、改めて確認しておきましょう。

口頭や書面などで問題を改善するよう求める

はじめに、口頭や書面などで問題の改善を求めます。
この時点で問題行動が改善されたり入居者が自主的に退去したりすれば、問題は解決です。

内容証明郵便で問題を改善するよう求める

口頭や書面でも問題が是正されない場合には、内容証明郵便で改めて問題の改善を求めます。
内容証明郵便には、滞納している賃料額等、支払期限、支払期限までに支払いがなされない場合には賃貸借契約を解除する旨を明記しましょう。
こうすることで、内容証明郵便が解除通知の役割も果たすことができます。

この段階で解決しない場合には、送付した内容証明郵便は後日の訴訟の証拠として使える場合もありますので、内容証明郵便を送ることを検討する段階から弁護士へ相談することをおすすめします。

明渡訴訟を提起する

明渡請求に応じず物件から退去しない場合には、明渡訴訟を提起します。
入居者が裁判を欠席し、反論を書いた答弁書が提出されていない場合には、物件オーナーの主張がそのまま認められます。
一方、入居者が裁判に出席し、滞納している賃料を支払う旨述べた場合などでは、裁判所から和解を提案される場合もあります。
オーナーの請求が認められると、物件から退去して建物を明け渡すことを命じる判決が下されます。

強制執行をする

明渡訴訟により物件から退去して明け渡すことを命じる判決が出たにもかかわらず、それでも入居者が物件に居座り続ける場合には、強制執行をして建物から退去させることができます。

なお、強制執行は執行官という特別の権限を持った人が行うものです。
いくら明渡しを認める判決が出たからといって、物件オーナーが自ら勝手に居室に入って家具を運び出したり、入居者の不在時に鍵を交換したりすることはできません。

このようなことをすれば、むしろ物件オーナーが罪に問われたり入居者から損害賠償請求をされたりするリスクがあります。

明渡訴訟を自分で行うデメリット・リスク

明渡訴訟を自分で行うデメリット・リスク

建物の明渡訴訟は、弁護士へ依頼せず物件オーナーが自ら行うこともできます。
もっとも、自分で明渡訴訟をする場合、次のようなリスクやデメリットが存在します。

専門知識を勉強する時間と手間がかかる

建物の明渡訴訟を行うには、専門的な知識が不可欠です。

インターネットで検索をすれば、ある程度の概要は確認できますが、インターネット上の情報はあくまでも一般的な事例が大半です。
弁護士が行う場合には、条文を読み込んだうえで実際の個別的な状況に合わせて理論を組み立て、過去の判例を調べたり必要な証拠を集めたりして訴訟の準備を行います。

こうした知識やスキルは一朝一夕に身につくものではなく、自分で訴訟を行うとなればかなりの時間や手間が必要となるでしょう。

入居者と直接やり取りをする必要が生じる

弁護士へ問題の解決を依頼した場合には、相手方である入居者とのやり取りは弁護士が行います。
一方、弁護士へ依頼せず自分で訴訟を行う場合には、入居者との連絡も自ら行わなければなりません。

明渡訴訟を検討しているということは、そもそも入居者が一筋縄ではいかないケースが多く、直接やり取りをすることによりストレスを感じることが多いでしょう。

解決までに時間がかかる可能性が高い

自分で明渡訴訟をする場合には、解決までに時間がかかる可能性が高いといえます。
訴訟に必要となる書類が不足していたり書面の内容が誤っていたりする可能性があり、後から裁判官に追加資料の提出や書面の訂正を求められる可能性が高いためです。
建物の明渡訴訟は、ただでさえ時間がかかるケースも少なくありません。
解決が遅れることにより、その分新たな入居者に物件を貸し出すタイミングも遅れてしまい、賃料を得る機会を逃してしまいます。

結果的に、弁護士へ依頼した場合にかかる報酬以上に本来得られたはずの賃料を逃してしまえば、本末転倒です。

不利な判断をしてしまう懸念がある

訴訟の過程で裁判所から和解を提案された際などに、その和解案を受け入れるのか当初の主張を維持するのかには難しい判断が必要となる場合もあります。
弁護士がついていれば、その経験などから適切なアドバイスをすることができる一方、自分で訴訟をした場合には自ら決断を下さなければなりません。

こうした際に結果的に不利となる判断をしてしまう可能性が高まる点も、自分で訴訟をするデメリットといえます。

まとめ

建物の明渡訴訟は自分で行うこともできる一方で、自ら訴訟をすることにはデメリットも少なくありません。
問題をできるだけ速やかに解決するためにも、ぜひ弁護士の活用をご検討ください。

賃貸物件の経営には入居者とのトラブルはつきものです。
明渡訴訟にまで発展すれば問題が長期化しやすいほか心理的な負担ともなりかねません。

そのため、トラブルとなる可能性を減らせるよう、リスクの高そうな方の入居を避けたり、きちんと保証人をつけたり、問題が小さなうちに解決しておいたりといった事前の予防が重要となります。
こうしたトラブルの予防についても、弁護士の活用を検討しましょう。

オーセンスの弁護士が、お役に立てること

弁護士は、これまでの経験から、より早く確実に問題のある入居者を退去させる方法を提案することができます。弁護士が付いていれば、訴訟になった場合も安心です。問題のある入居者でお困りの場合は、是非弁護士にご相談ください。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
第二東京弁護士会所属。愛媛大学法文学部卒業、早稲田大学大学院法務研究科を修了(法務博士(専門職))。企業法務に注力するとともに、建物明渡訴訟・立ち退き交渉といった不動産法務、離婚における調停・訴訟・不貞慰謝料請求など、様々な案件に取り組んでいる。顧問弁護士としては契約書レビューに加え、労働紛争や訴訟など、予防法務・臨床法務の双方を取り扱う。
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