単元未満株主の売渡請求に対応する際は、法令に則った手順で手続を進めるよう注意しなければなりません。
単元未満株主の売渡請求とは、どのような手続きを指すのでしょうか?
また、単元未満株主の売渡請求手続は、どのようなスケジュールで進める必要があるのでしょうか?
今回は、単元未満株主の売渡請求手続の概要や基本のスケジュールについて、弁護士が詳しく解説します。
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単元未満株とは
単元未満株主の売渡請求手続を理解するには、その前提として単元未満株式について理解しておかなければなりません。
はじめに、単元未満株の基本について解説します。
単元未満株の概要
会社は、定款に定めを置くことによって、複数株の株式をまとめて「1単元」と定めることが可能です。
単元株制度が導入されている会社では1単元あたり1個の議決権を有することとされ、1単元に満たない株式を有する株主は議決権を行使することができません。
たとえば、ある会社が1単元を100株として定めた場合、99株しか有していない株主は、議決権を行使することができないということです。
また、単元株制度が導入されている会社においては、原則としてその単元単位で株式が売買されることとなります。
なお、1単元の株数を次のいずれかを超える数とすることはできません(会社法188条2項、会社法施行規則34条)。
- 1,000株
- 発行済株式の総数の200分の1
単元未満株と端株との違い
単元未満株と混同されがちなものに、「端株」があります。
端株とは、1株未満の株のことです。
株は1株を複数株に分ける「株式分割」や、複数株を1株にまとめる「株式併合」、既存株主などに一定割合の株式を無償で交付する「株式無償割当て」などにより、端株が生じることがあります。
単元未満株と端株との違いは、1株未満であるかどうかです。
ただし、端株であると同時に、単元未満株に該当することもあります。
たとえば、1単元を100株として定められた会社の株式を195.5株有している場合、このうち95.5株が単元未満株です。
また、このうち0.5株は端株でもあり、単元未満株でもあります。
単元未満株が生まれる主な理由
単元未満株が生まれる主な理由は、会社が単元株制度を導入したことです。
単元未満制度を導入した場合、その単元株式数は登記事項です(会社法911条3項8号)。
そのため、ある会社が単元株制度を導入しているかどうかを知りたい場合は、会社の定款を確認するほか、全部事項証明書を取得することでも確認できます。
単元未満株主の売渡請求手続とは
単元未満株主の売渡請求手続とは、単元未満株主がその株式の発行会社に1単元に満たない分の株式の買い増しを請求して、自身の保有する単元未満株を単元株にすることができる制度です。
売渡請求制度のほか、「買増制度」といわれることもあります。
たとえば、1単元が100株である会社の株式を70株持っている株主が、30株を売り渡すよう会社に対して請求することがこれに該当します。
ただし、単元未満株主の売渡請求は株主にとっての当然の権利ではなく、この請求をするためには会社の定款に単元未満株主の売渡請求を認める旨の規定がなければなりません(同194条1項)。
なお、これとは反対に、単元未満株式を会社が買い取るよう請求する「単元未満株主の買取請求」も存在します。
この買取請求には、定款の定めは必要ありません(同192条)。
単元未満株主の売渡請求手続のスケジュール例
単元未満株主の売渡請求は、どのような流れで進めればよいのでしょうか?
ここでは、市場価格がない株式(非公開会社の株式など)であることを前提に、一般的なスケジュールを紹介します。
日程 | 手続 |
---|---|
10/1 | 単元未満株主による単元未満株式売渡請求 |
(会社と請求者との協議) | |
10/18 | 会社又は請求者による価格決定の申し立て |
価格の決定 | |
代金支払・効力発生 |
実際に株主から単元未満株主の売渡請求をされた場合や定款に定めを置く場合には、機関法務に強い弁護士へご相談ください。
単元未満株主の売渡請求
はじめに、単元未満株主から会社に対して、単元株式数とするために必要な株式の売り渡しの請求がなされます。
この請求は、その単元未満株主に売り渡す単元未満株式の数(種類株式発行会社でる場合は、単元未満株式の種類と種類ごとの数)を明らかにして行わなければなりません(同194条2項)。
定款に単元未満株主の売渡請求ができる旨の規定を設けている以上、会社は原則としてこの請求に応じる必要があります(同3項)。
ただし、会社が売渡請求に応じられるだけの自己株式を有していない場合は、請求に応じる必要はありません。
なお、売渡請求の対象となる株式が振替株式(証券保管振替機構(ほふり)が集中管理する株式)である場合は、単元未満株主の売渡請求は会社に対してするのではなく、ほふりに対して請求することとされています。
単元未満株主の売渡価格の決定
単元未満株主から売渡請求がされたら、株式をいくらで売り渡すのかを決定します。
株式の売渡価格の決め方は、それぞれ次のとおりです。
市場価格がある株式の場合
売り渡しの対象が、市場価格がある株式である場合における売渡価格は、原則として請求日におけるその株式を取引する市場における最終価格(その請求日に売買取引がない場合や請求日が市場の休業日に当たる場合は、その後最初になされた売買取引の成立価格)です(同194条4項、193条1項1号、会社法施行規則36条1項)。
ただし、請求日においてその株式が公開買付け等の対象であるときは、請求日における公開買付け等に係る契約における当該株式の価格となります(会社法施行規則36条2項)。
市場価格がない株式の場合
売り渡しの対象が、市場価格がない株式である場合における売渡価格は、原則として会社と売渡請求をした単元未満株主との協議によって定める額です(会社法194条4項、193条1項2号)。
また、会社やその請求をした単元未満株主は請求をした日から20日以内に裁判所に対して価格決定の申立てをすることができ、この場合は裁判所が決定した額が株主の売渡価格となります(同193条2項、4項)。
価格の決定をするにあたって、裁判所は株式会社の資産状態その他一切の事情を考慮しなければなりません(同3項)。
期限(請求日から20日以内)に当事者がいずれも裁判を申し立てず、両者間の協議もまとまらなかった場合には、1株当たり純資産額に売渡請求の対象となっている株式数を乗じた額が、株式の売渡価格となります(同5項)。
効力発生時期の到来
株式の売渡価格が決まったら、単元未満株主が会社に対して株式の購入対価を支払います。
単元未満株式の売渡しの効果は、その請求に係る単元未満株の対価が支払われた時点で生じます。
単元未満株主の売渡請求手続に関するよくある疑問
最後に、単元未満株主の売渡請求手続に関するよくある疑問とその回答を紹介します。
単元未満株主の売渡請求手続は撤回できる?
単元未満株主による売渡請求は、原則として自由に撤回することができません。
ただし、撤回することについて会社に承諾を得た場合には、撤回することが可能です(同194条4項、192条3項)。
株主による単元未満株主の売渡請求権の有無の確認方法
先ほど解説したように、株主による単元未満株主の売渡請求は当然に可能なものではなく、単元未満株主の売渡請求ができる旨の定款の規定がある場合にのみ可能です。
そのため、単元未満株主の売渡請求が可能であるかどうかは、会社の定款を見ることで確認できます。
なお、会社の定款は全部事項証明書などのように法務局で取得できるものではありませんが、株主であれば、会社に対して請求することで閲覧することが可能です(同31条2項)。
まとめ
単元未満株主の売渡請求手続の概要とスケジュールについて解説しました。
単元未満株主は、議決権の行使をすることができません。
そのため、単元未満株を会社に買い取ってもらう「買取請求」のほか、今回解説した「売渡請求」の制度が設けられています。
単元に満たない分の株式を会社から買い受けることで、単元株を保有することが可能となります。
単元未満株主から売渡請求がなされたら、会社は原則として請求に応じなければなりません。
また、市場価格がない非公開会社などの場合には、株主との協議や裁判所への申立てなどによって価格を決める必要が生じます。
会社の定款に単元未満株主の売渡請求ができる旨の規定を置いており、かつ単元未満株主がいる場合はこのような請求がなされてもおかしくないため、あらかじめ必要な手続きや全体のスケジュールを把握しておくとよいでしょう。
自社のみでスケジュールを組んだりリスクを判断したりすることが難しい場合には、機関法務に関するサポート経験が豊富な弁護士へあらかじめご相談ください。
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