公開 2023.10.31 更新 2024.06.13BusinessTopics

監査等委員会とは?個別開催スケジュールを弁護士がわかりやすく解説

会社法

監査等委員会とは、取締役による業務執行の適法性や妥当性を監査する株式会社の機関です。
株式会社が定款で定めることで監査等委員会を設置することができ、監査等委員会を設置した株式会社を監査等委員会設置会社といいます。

監査等委員会を開催するには、原則として1週間前までに招集通知を発しなければなりません。
ただし、この期間や定款の定めで省略することができるほか、監査等委員全員の同意によって省略することも可能です。

今回は、監査等委員会の基本事項や監査等委員会を開催する個別のスケジュールの考え方などについて弁護士が詳しく解説します。

目次
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監査等委員会の基本

監査等委員会とは、定款に定めることで設置することができる株式会社の機関の一つです。
監査等委員会は、取締役による業務執行の適法性や妥当性を監査する役割を担います。

はじめに、監査等委員会の基本について解説します。

監査等委員会が設置される「監査等委員会設置会社」の組織形態

株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができます(会社法326条2項)。
この規定によって監査等委員会を設置した会社を「監査等委員会設置会社」といいます(同2条11号の2)。

この監査等委員会設置会社の組織形態に関するルールは次のとおりです。

  • 取締役会を置かなければならない(同327条1項)
  • 監査役を置いてはならない(同4項)
  • 会計監査人を置かなければならない(同5項)

なお、取締役会を設置するためには取締役が3人以上でなければならず、監査等委員会設置会社では自ずと3人以上の取締役が必要となります(331条5項)。

監査等委員会の構成員

監査等委員会はその株式会社の取締役から構成されますが、その過半数は社外取締役でなければなりません(同331条6項)。

社外取締役とは、株式会社の取締役のうち、次のすべての要件に該当する者を指します。

  1. その株式会社やその子会社の業務執行取締役等でなく、かつ、その就任前10年間その株式会社やその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと
  2. その就任前10年内のいずれかの時においてその株式会社やその子会社の取締役、会計参与(会計参与が法人であるときは、その職務を行うべき社員)または監査役であったことがある者(業務執行取締役等であったことがあるものを除く)にあっては、その取締役等への就任前10年間その株式会社やその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと
  3. その株式会社の親会社等(自然人であるものに限る)または親会社等の取締役、執行役、支配人その他の使用人でないこと
  4. その株式会社の親会社等の子会社等(その株式会社とその子会社を除く)の業務執行取締役等でないこと
  5. その株式会社の取締役、執行役、支配人その他の重要な使用人または親会社等(自然人であるものに限る。)の配偶者や二親等内の親族でないこと

つまり、その会社と関係の深い者やその会社からの影響を強く受けるおそれがある者の多くは、社外取締役には該当しないということです。

監査等委員の任期

監査等委員会の構成員である監査等委員の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までです(332条1項)。
一方で、監査等委員会設置会社における取締役のうち、監査等委員以外の者の任期は2年ではなく1年に短縮されています(同3項)。

また、監査等委員ではない取締役の任期は定款または株主総会の決議によって「短縮」することができますが、監査等委員である取締役の任期は短縮することができません(同1項・4項)。

監査等委員会の主な役割

監査等委員会は、取締役の業務執行について適法性や妥当性を監査する役割を担っています。
これを実現するために、監査等委員会は次の権限や義務などを有しています。

監査等委員会による調査

監査等委員会が選定する監査等委員は、いつでも取締役や会計参与、支配人、その他の使用人に対して職務の執行に関する事項の報告を求めることができるほか、会社の業務や財産状況の調査をすることもできます(同399条の3第1項)。

また、必要に応じて子会社に事業の報告を求めたり、子会社の業務や財産状況を調査したりすることも可能です(同2項)。

取締役会への報告義務

取締役が不正行為や法令・定款違反をしている場合などには、監査等委員は遅滞なく、その旨を取締役会に報告しなければなりません(同399条の4)。

株主総会に対する報告義務

取締役が株主総会に提出しようとする議案や書類などに法令・定款に違反や著しく不当な事項があると認めるときは、監査等委員はその旨を株主総会に報告しなければなりません(同399条の5)。

監査等委員による取締役の行為の差止め

監査等委員は、取締役が会社の目的範囲外の行為や法令・定款に違反する行為をしている場合やこれらの行為をするおそれがある場合において、会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、その取締役に対してその行為をやめるよう請求することが可能です(同399条の6第1項)。

監査等委員会の運営

監査等委員会の決議は、議決に加わることができる監査等委員の過半数が出席し、その過半数をもって行うこととされています(同399条の10第1項)。
ただし、決議について特別の利害関係を有する監査等委員は、議決に加わることができません(同2項)。

なお、取締役会では一定の要件のもとで決議を省略することができますが、監査等委員会の決議は省略することができません。

監査等委員会の個別開催スケジュール

監査等委員会の開催頻度は、法令で規定されているわけではありません。
ただし、監査の実行性を高めるためには、監査役会などと同様に1か月から2か月に一度程度は監査等委員会を開催することが望ましいでしょう。

個々の監査等委員会を開催する際のスケジュールの考え方は次のとおりです。
監査等委員会の開催スケジュールでは招集通知のタイミングにのみ留意すればよく、さほど複雑なものではありません。

招集通知の発送

監査等委員会は、各監査等委員が招集します(同399条の8)。
実務上は委員会規程などで監査等委員会の長などを招集権者として定めることが多いものの、その場合であっても他の監査等委員が委員会を招集できなくなるわけではありません。

監査等委員会を招集する際には、監査等委員会の日の1週間前までに、各監査等委員に対してその通知を発します(同399条の9第1項)。
ただし、1週間を下回る期間を定款で定めることも可能です。
また、監査等委員の全員の同意があるときは、招集手続を経ることなく監査等委員会を開催することも認められています(同2項)。

招集通知の方法は特に定められておらず、口頭などでの招集が違法となるわけではありません。
ただし、実務上は緊急の場合などでない限り、開催日時や議題などを記載した招集通知を送付することが多いでしょう。

監査等委員会の開催

招集通知に記載をした日時において、監査等委員会を開催します。
監査等委員会の決議は、議決に加わることができる監査等委員の過半数が出席し、その過半数をもって行うこととされています(同399条の10第1項)。

なお、取締役会とは異なり、決議の省略は認められていません。

監査等委員会の終了後に作成すべき議事録の取り扱い

監査等委員会の終了後には、議事録を作成しなければなりません。
議事録は、書面または電磁的記録で作成します(同399条の10第3項・4項)。
監査等委員会議事録に関する主な規定は、次のとおりです。

監査等委員会議事録に記載すべき事項

監査等委員会議事録に記載すべき具体的な事項は、会社法施行規則に定められています。
議事録の内容とすべき事項は次のとおりです(会社法施行規則110条の3第3項)。

  1. 監査等委員会が開催された日時及び場所(監査等委員や取締役、会計参与などが遠隔から出席した場合には、その出席の方法を含む)
  2. 監査等委員会の議事の経過の要領及びその結果
  3. 決議を要する事項について特別の利害関係を有する監査等委員があるときは、その氏名
  4. 会社法の規定により監査等委員会への報告義務のある取締役や会計参与、会計監査人が意見や発言がしたときは、その意見や発言の内容の概要
  5. 監査等委員会に出席した取締役、会計参与、会計監査人の氏名または名称
  6. 監査等委員会の議長が存するときは、議長の氏名

作成をした監査等委員会議事録には、出席した監査等委員が署名又は記名押印しなければなりません(会社法399条の10第3項)。

なお、監査等委員会の決議に参加した監査等委員が議事録に異議をとどめなかった場合には、その決議に賛成したものと推定されます(同5項)。
そのため、決議事項に対して異議や補足意見を述べた監査等委員は、その内容が適正に議事録に反映されているかどうかをよく確認したうえで署名や押印を行う必要があるでしょう。

監査等委員会議事録の据置き

作成した監査等委員会議事録は、監査等委員会の日から10年間、その監査等委員会設置会社の本店に備え置かなければなりません(同399条の11第1項)。
また、その会社の株主や債権者、親会社社員が権利行使にあたって必要があるときなどには、裁判所の許可を得たうえで議事録の閲覧や謄写の請求をすることが可能です。

そのため、監査等委員会議事録を作成する際には、株主など閲覧や謄写がなされる可能性があることを念頭に置いておく必要があるでしょう。

まとめ

監査等委員会を開催するには、原則として開催日の1週間前までに招集通知を発しなければなりません。
ただし、この期間は定款の定めで短縮することができるほか、監査等委員全員の同意によって招集通知を省略することも可能です。

また、監査等委員会の開催後には議事録を作成し、これを本店に10年間据え置かなければなりません。
監査等委員会の開催時には招集通知のタイミングに注意を払いスケジュールを設定しましょう。
監査等委員会の適切な運営に不安がある場合には、機関法務に詳しい弁護士のサポートを受けることをおすすめします。

記事監修者

Authense法律事務所
弁護士

山口 広輔

(第二東京弁護士会)

第二東京弁護士会所属。明治大学法学部法律学科卒業、慶應義塾大学法科大学院修了。健全な企業活動の維持には法的知識を活用したリスクマネジメントが重要であり、それこそが働く人たちの生活を守ることに繋がるとの考えから、特に企業法務に注力。常にスピード感をもって案件に対応することを心がけている。

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