コラム
2020.12.15

交通事故で接骨院、慰謝料に影響あるって本当?

交通事故の「慰謝料」、事故後に通院を続けたかどうかによって、貰える金額が変わってしまうことがあります。交通事故の被害に遭い、ケガを負った場合、「慰謝料」というお金を加害者に支払ってもらうことができますが、その際に事故に遭ったらまずどこを受診すべきか、そして整骨院や接骨院に通う場合の注意点についても解説します。

記事を監修した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部政治学科卒業、桐蔭法科大学院法務研究科修了。交通事故分野を数多く取り扱うほか、相続、不動産、離婚問題など幅広い分野にも積極的に取り組んでいる。ご依頼者様の心に寄り添い、お一人おひとりのご要望に応えるべく、日々最良のサービスを追求している。
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慰謝料とは?

はじめに、「慰謝料」とはどういうお金なのかを整理しておきましょう。

慰謝料とは、精神的な苦痛を受けたときに、その原因を作った相手に請求できるお金です。
事故の加害者が被害者に支払う「損害賠償」のひとつであり、人的損害が生じた「人身事故」において、ケガを負った被害者は加害者に対して慰謝料の支払いを求めることができます。
ケガの治療のために必要な入院・通院費用などの実費とは別に、ケガを負ったことによる苦痛や悲しみといった精神的な損害を、金銭に換算して賠償してもらうのが慰謝料なのです。

慰謝料の計算方法

ここで問題になるのが、「どうやって慰謝料の金額を算出するか」という点です。

被害者が受けた精神的な損害をお金で賠償するのが慰謝料ですが、「事故でケガをしたことでどれぐらい辛い思いをしたか」という精神的損害の程度は、人によって大きく異なります。
また、ケガの治療費などとは違い、客観的に何円分の損害が生じたかを算定することは困難です。

このため、慰謝料を算定する際には、一定の基準を用いて金額を決定します。
交通事故の慰謝料の金額を決めるための基準は3種類あります。

自賠責基準

車を運転する人に加入が義務付けられている「自賠責保険」による基準が自賠責基準です。
被害者に対する最低限の補償であり、3つの基準の中では最も賠償金額が低いです。

任意保険基準

任意保険基準は、各任意保険会社がそれぞれ独自に定めている基準です。
おおむね自賠責基準よりは高額であるものの、弁護士基準と比較すると低額となります。

弁護士基準

裁判基準とも呼ばれる基準です。
自賠責基準や任意保険基準と比較して、賠償金額が最も高額となります。
ただし、この弁護士基準による金額の慰謝料を加害者に請求するには、弁護士に交渉を依頼する必要があります。

入通院慰謝料の金額の計算方法

交通事故の慰謝料には、以下の3種類があります。

  • ・入通院慰謝料…入院や通院による精神的損害に対する慰謝料
  • ・後遺障害慰謝料…後遺障害が残ったことよる精神的損害に対する慰謝料
  • ・死亡慰謝料…被害者の死亡に対し、遺族に支払われる慰謝料

今回は、このうち「入通院慰謝料」について見ていきます。

自賠責基準

自賠責基準では、入通院慰謝料は日額(1日あたり)4,300円と定められています。
(※令和2年4月1日以降に発生した事故の場合)

計算方法としては、以下の2つのうちの少ない方の金額となります。

  • ・4,300円 × 総治療期間
  • ・4,300円 × 実治療日数 × 2

総治療期間とは初診から治療を終了した日までの総日数のことを、実治療日数とは実際に入通院した日数のことをいいます。

弁護士基準

弁護士基準を用いた場合は、以下の表による金額が基準となります。

・通常の入通院慰謝料

入院
0月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
通院 0月 0 53 101 145 184 217 244 266 284 297 306
1月 28 77 122 162 199 228 252 274 291 303 311
2月 52 98 139 177 210 236 260 281 297 308 315
3月 73 115 154 188 218 244 267 287 302 312 319
4月 90 130 165 196 226 251 273 292 306 316 323
5月 105 141 173 204 233 257 278 296 310 320 325
6月 116 149 181 211 239 262 282 300 314 322 327
7月 124 157 188 217 244 266 286 304 316 324 329
8月 132 164 194 222 248 270 290 306 318 326 331
9月 139 170 199 226 252 274 292 308 320 328 333
10月 145 175 203 230 256 276 294 310 322 330 335

(単位:万円)

・他覚症状のないむち打ちの入通院慰謝料

入院
0月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月
通院 0月 0 35 66 92 116 135 152 165 176 186 195
1月 19 52 83 106 128 145 160 171 182 190 199
2月 36 69 97 118 138 153 166 177 186 194 201
3月 53 83 109 128 146 159 172 181 190 196 202
4月 67 95 119 136 152 165 176 185 192 197 203
5月 79 105 127 142 158 169 180 187 193 198 204
6月 89 113 133 148 162 173 182 188 194 199 205
7月 97 119 139 152 166 175 183 189 195 200 206
8月 103 125 143 156 168 176 184 190 196 201 207
9月 109 129 147 158 169 177 185 191 197 202 208
10月 113 133 149 159 170 178 186 192 198 203 209

(単位:万円)

入通院慰謝料の具体例

では、先に紹介した方法により、自賠責基準と弁護士基準それぞれの入通院慰謝料を算出してみましょう。
例として、交通事故でむち打ちになり、3か月の通院が必要となったものとします。
3日に1回の頻度で通院し、月に10日、3か月で30日通院したものとして計算します。

自賠責基準による入通院慰謝料

先に紹介したとおり、以下の計算式によって算出した金額のうち、低い方の金額が入通院慰謝料です。

  • ・4,300円 × 90日(総治療期間) = 387,000円
  • ・4,300円 × 30日(実治療日数) × 2 = 258,000円

すなわち、このケースでは258,000円が入通院慰謝料となります。

弁護士基準

弁護士基準の場合は、他覚症状のないむち打ちの入通院慰謝料の表より、入院0か月・通院3か月の金額を確認します。
このケースでは、53万円という金額が入通院慰謝料の金額の基準となります。

以上のとおり、弁護士基準の方がより高い金額となることが分かります。

「通院」には病院だけでなく接骨院・整骨院・鍼灸院も含まれる?

ここで気になるのが、「通院」という言葉が指す範囲です。

通院というと、病院に通うことをイメージされる方も多いと思います。
交通事故によるケガの治療においては、診療科としては整形外科に通うケースが多いでしょう。
実際、事故の治療のために病院に通うことは、入通院慰謝料の算定における「通院」として認められます。

一方、接骨院や整骨院の看板に「交通事故」の文字を見たことがある方もいらっしゃると思います。
実際、痛みの緩和などを目的として、交通事故によるケガの治療のために接骨院・整骨院に通うケースはあります。

しかし、接骨院や整骨院に施術を受けに行った日数は「通院」として認められないおそれがあります。
そうならないためには、以下の点に注意が必要です。

事故後の初診は必ず病院へ

交通事故に遭ったあとは、まずは接骨院などではなく、必ず整形外科など病院を受診しましょう。
レントゲンやMRIなどといった画像検査に限らず、様々な検査や診察によって医学的な診断を行い、診断書を発行することができるのは医師だけです。
また、事故直後の状態を診断してもらうだけでなく、その後の治療によってどのように症状が改善したかという経過も、病院のカルテに記録されていきます。

「病院に行くほどのケガじゃないだろうから」と病院を受診せず、しばらく経ってから事故の影響による痛みが出てきた場合には、その時点で病院を受診しても「事故を原因とする症状である」と認められない可能性すらあります。
交通事故に遭ってしまったら、まずは病院を受診しましょう。

医師に接骨院・整骨院での治療を相談する

むち打ちなどによる痛みやしびれが続く場合には、接骨院などでの施術が効果的な場合があります。
しかし、接骨院などに通うことが慰謝料算定における通院と認められるには、医師の許可があり、治療効果があると判断されている必要があります。
接骨院などで施術を受けたいと思った場合は、自己判断ではなく必ず事前に医師に相談しましょう。
また、交渉の相手方である加害者側の任意保険会社にも、医師の了承のもと接骨院などで施術を受ける旨を伝えましょう。

病院にも定期的に通院する

先に説明したとおり、検査や診療によって交通事故による症状の程度を診断し、治療の必要性を判断するのは病院の医師です。
接骨院などでの治療が了承されたからといって病院に通うのを一切やめてしまうと、相手方の保険会社から、接骨院などで施術を受ける必要性を疑われる可能性もあります。
接骨院などに通うだけでなく、必ず定期的に病院でも診察を受けましょう。

整体院やカイロプラクティックの注意点

接骨院や整骨院で施術を行うのは、国家資格である柔道整復師です。
これらに対し、整体院やカイロプラクティック、リラクゼーションマッサージ店などは、開業に国家資格を必要としない民間療法です。
仮に症状の軽減に本当に効果があったとしても、慰謝料算定のうえでは通院日数に含めることができませんので、注意しましょう。

これらの点に気を付けておかないと、治療のために何度も接骨院や整骨院に通っても、その日数が慰謝料算定のための「通院日数」に含められず、実際に症状が治癒するまでに要した期間よりも短い日数しか認められない可能性があります。
そうなれば、結果として入通院慰謝料の金額が大きく減額されてしまうおそれもあるとともに、その治療費も全額自己負担となってしまうおそれもあるのです。

まとめ

交通事故の加害者から適切な金額の入通院慰謝料を受け取るためには、事故によるケガの症状を医師から診断してもらったうえで、その治療に必要な入通院があったと認められることが前提となります。
そのため、病院を受診せずに接骨院や整骨院に通っていると、入通院慰謝料を含む適切な損害賠償が受け取れない可能性があります。
また、適切な頻度で病院を受診していたとしても、自賠責基準による慰謝料と、弁護士に依頼した場合の弁護士基準による慰謝料では大きく金額が変わってきます。
必要な治療を受けたうえで適切な金額の慰謝料を受け取るためにも、交通事故に遭った際には、なるべくお早めにオーセンスの弁護士にご相談ください。

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