リーガルエッセイ
公開 2020.07.22 更新 2021.07.18

風営法で立ち入り調査

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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先日、官房長官が、ある報道番組で、新型コロナウイルスの感染拡大に関し、キャバクラやホストクラブについて「風営法で立ち入りができる。そういうことを思い切ってやっていく必要がある」旨発言したと報じられました。
報道によると、このような立ち入りを実施していく趣旨は、警察官が、風営法(正確には、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」といいます)に基づきキャバクラやホストクラブを立ち入り検査する過程で、自治体などが定めたコロナ感染防止の指針に従って営業されているかをチェックし、対策を呼び掛けることにあるとのこと。
現行法を使って感染防止対策のためにできることをひとつひとつやっていこうということですね。

風営法では、警察官が、風営法の施行に必要な限度で、営業所に立ち入ることができるとされています。
これは、具体的な犯罪の嫌疑をもとに捜査として立ち入っているのではなく、法律で、警察官が営業所に立ち入ることや業務に関し報告を求めたりすることが認められているのです。
警察官は、営業所に立ち入って、営業所が、きちんと営業許可をとっているか、その営業許可証を見えやすい場所に掲示しているか、営業所の構造や設備が、営業許可を得たときの基準で維持されているかなど風営法のルールが守られているかをチェックします。
そして、営業所に法令違反が認められるなどして著しく善良な風俗環境を害するおそれがあると認められるなどした場合は、営業許可が取り消されたり、6か月以内の営業停止となったりすることがあるのです。

風営法では、感染症対策が徹底されていないことを理由とした営業停止について定めているわけではありません。
ですので、今後、警察官が、風営法に基づき営業所に立ち入り調査し、その際、風営法のルールには従っているものの、都の感染症対策に従った対策をとっていないと認められた場合に、そのことを理由に営業停止処分をすることはできません。
あくまでも、警察官が営業所に立ち入り、そこで感染症対策についてチェックすること、そして対策不十分な場合はその指摘をすることが、事実上、営業所に感染防止対策を徹底させることになるだろうと見込んでの方針といえるでしょう。
立ち入り調査をする警察官も、感染リスクをなくすため、マスク、フェイスシールド、防護服などによる厳重な感染予防対策が必要になると思います。
現行法でできることを徹底して実施していくことで感染拡大の防止が図られることを願っています。

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