リーガルエッセイ
公開 2020.05.13 更新 2021.07.18

自粛警察

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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一般人がパトロール?「自粛警察」とは

最近、ニュースやSNSで「自粛警察」という言葉を聞いたことがありませんか?

私は、この言葉を、最初、警察署内でも新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、警察官が警察の業務を自粛しているのだと勘違いしていました。
もちろん、正式な言葉などではないのですが、このような意味で使われている言葉ではありませんよね。

「自粛警察」というのは、警察でない一般の人たちが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出の自粛、休業の自粛が推奨、要請等されている中、これに従っていないと思われるケースを警察に通報したり、SNSに投稿して指摘したりする行動を指しているようです。

事態の受け止め方、どう行動するかの考え方は人によって違う

今、強く感じるのですが、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえて、どう行動するか、という判断は、人によって全く違うなと思います。

その人の置かれた環境や年齢、疾患の有無などによっても違いますよね。
ご家族に基礎疾患を持つかたがいらっしゃるとか、高齢であるとか、自分が感染したら子どもの面倒を見られる人がいないという立場のかたなどは特に自身の行動も自粛しようとされたり、それを他人にも求めたりされることがあるかもしれません。

もちろん、そのような事情がなかったとしても、それぞれ今の事態の受け止め方、どう行動するかの考え方は違ってきて当然です。

そして、人には、だれでも自分の思いを表現する自由があります。
ですから、社会で起きている出来事について、「自分はこう思う。」「このようなことはおかしいと思う」などと表現することは自由なのです。

過度な「自粛警察」、刑事責任を負うリスクも

今回の事態に関しても、たとえば、「休業要請が出ているのだから、店は休業すべきだと思う」とか「街を歩いていたら、人で混みあっていた。感染リスクを減らすために、『stay home』しよう」などとSNSで呼び掛けることにも何ら問題はないはずです。

でも、これがある一定のラインを超えてしまうと、刑事責任を問われる立場になり得ます。

たとえば、営業している店の入り口ドア付近にべたべたと張り紙をしてドアが開けられないようにしたとしたら、器物損壊罪にあたる可能性があります。

営業している店の店主に対して、「営業を自粛しないと家族に危険が及ぶぞ」となどと言えば、脅迫して義務のないことをさせようとしたということで強要罪にあたる可能性があります。

さらに、勝手な思い込みやうわさに基づいて、「あの店は、従業員がコロナになったのに営業している。行かない方がいい」などというデマをSNSに投稿したら、名誉棄損罪や業務妨害罪にあたる可能性もあります。

もともとは、ご家族や大事な人を守りたいという気持ち、新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めたい、何かできないか?などという気持ちから発した言葉や行動だったかもしれませんが、これが一線を超えると自粛警察どころか自分自身が警察に逮捕されて処分を受ける立場になってしまう可能性があるのです。

先行きの見えない不安ややりたいことが思うようにできないストレスもある中、自分の中の基準と違う行動をとる人を見たとき、複雑な心境になりますよね。
どのような事情も犯罪を正当化することはないことはもちろんです。
さらに、自分が発する言葉や行動を受け取る側もいつもと違う状態にあるかもしれない、ということを気に留めることも大事ではないかと思います。

私自身、このような時期だからこそ、人の言動の受け止め方やそれを受けての反応の仕方、言葉の発しかたなどについて、少し立ち止まって、ひとつひとつ慎重に丁寧に見直してみたいなと思います。

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