リーガルエッセイ
公開 2020.05.12 更新 2021.07.18

深刻な騒音トラブル、どのように解決していくか

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

騒音トラブルが殺人事件に発展?!

今年は、「忘れてたけど、今ってゴールデンウィークだったんだね」という会話を何度もしたような気がします。
新型コロナウイルスの感染拡大が収束する見通しも持てない中、緊急事態宣言の延長を受け、今年は、ゴールデンウィークも自宅で過ごすかたが多かったのではないでしょうか?
そのような中、このゴールデンウィークの期間中、騒音トラブルに端を発したと見られる殺傷事件が2件立て続けに報道されました。

報道を見るだけでは、これらの事件の原因になったと見られている騒音トラブルが、果たして、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い自粛生活が長引いていることが背景にあったのかどうかはわかりません。
また、現時点の報道を見るだけでは、騒音の有無や当事者のかたのこれまでのご関係等もわかりませんのでこの事件に関してお話しすることはできませんが、事件とは少し離れて、騒音トラブルをとりあげてお話ししてみたいと思います。

騒音トラブルも、これに端を発した殺傷事件も、これまでにも報道で見聞きすることはありましたよね。
でも、今ほど騒音トラブルが深刻化したことはないと思うのです。
というのも、騒音トラブルが深刻化しやすい状況がそろってしまっていると思うからです。

騒音を感じる側の立場で考えると、これまでは朝早くに自宅を出て出勤し、深夜遅くになって帰宅、家では寝るだけという生活を送っていたかたが、在宅勤務になり、朝から晩まで自宅で仕事をするという生活になったという場合。

休日も外出していたので、自宅で長時間静かに過ごすということ自体がなかったところ、初めて、隣室や上階の足音や声を意識するようになったというかたもいらっしゃるのではないでしょうか?

騒音源となってしまう側の立場で考えると、これまでは小学生の子どもたちが平日の日中は学校に行き、外で遊び、帰宅後は子どもたちも疲れ果てて夜も早めに寝るという生活だったのが、休校が長引き、外出もできない中でひたすら自宅で過ごす日々になったという場合。
自宅にこもることでのストレスも限界でどたばたと走り回り、運動不足のために夜もなかなか寝ずに騒ぐ毎日、いくら注意しても聞いてくれない、というかたもいらっしゃるのではないでしょうか?

これまでにも騒音が気になっていたけれど、仕方ない、と思えていたものが、自粛生活が長引く中で普段よりナーバスになってしまい、これまでは堪えることができた音に敏感になってしまうというケースもあるかもしれません。

今、騒音トラブルは、多くのかたが隣り合わせとなっているともいえる深刻な問題だと思います。
今回は、騒音に困っていらっしゃるかたの立場でどのように解決していくか、ということを考えてみたいと思います。

騒音に困ったら、まずは「記録する」

騒音に困った場合は、第三者に相談するという方法が考えられますが、その大前提として、その騒音がどのようなものなのか、ということを記録するとよいでしょう。

具体的には、数日間にわたり、1日の中で、いつごろの時間帯に、家のどのあたりで、どのような音が聞こえるのか、ということをメモしていくのです。
そんなことしている精神的余裕がない!というお気持ち、わかります。
我慢できないという場合は、まずどなたかに相談してみるということでももちろんよいと思います。

でも、騒音の原因となっている家に最終的にお話に行くにしても法的手続きをとるにしても、どのような音がどのような頻度で生じているのか、ということをどこかのタイミングで特定する必要はあるでしょう。

もし可能であれば、音がどの程度の大きさなのかということを測定しておくことも有効です。
測定器を無料で貸し出している自治体もあります。
これらにより、人によって評価がわかれる音というものが、客観的に見える形になります。

管理会社等に相談

賃貸でお住まいの場合は、大家さん、持ち家でお住まいの場合は、管理組合、そしていずれの場合も大家さんや管理組合が管理業務を管理会社にゆだねている場合は管理会社に相談してみましょう。

ご自身で直接お相手の家に行くとか手紙を出すとかいう方法をお考えになるかたもいらっしゃるかもしれませんね。
でも、まずは、管理会社等に相談してみることをお勧めします。

音についてはどう感じるか、人それぞれですし、音を受け止める方も、出す方も、その背景にいろいろな事情があると思うのです。
ですので、直接話すとなると、自分は冷静に、穏便に話すつもりでも、思いがけない形で受け止められてしまい、事件に発展してしまうこともあり得ます。
管理会社等に相談しても、これを受けてどのような対応をしてくれるかは管理会社によるでしょう。
でも、話を聞き、いろいろな方法を提案してくれたり、試したりしてくれる場合も多くあります。

たとえば、実際に音を確認してくれ、発生源の特定をしてくれたり、すべての住民のかたが目にする掲示板に騒音の注意喚起の貼り紙をしてくれたり、それでも止まない場合は、ポストに、注意喚起の手紙を投函してくれたり。
場合によっては、直接お相手の家に行って、お話をしてくれる場合もあります。

音を出している側は、それが誰かにとっての騒音になっているということの自覚がない場合もあり、注意喚起することで解決する場合も多くあります。
まずは、管理会社等に相談してみましょう。

それでも止まない場合は、弁護士や警察への相談も

管理会社等に相談したものの、管理会社等が十分に対応してくれないとか、対応してくれたものの、騒音について改善がない場合もあるでしょう。
また、相手の住人のかたとの関係が悪化してしまい、日常生活に不安な思いをされるということもあるかもしれません。

管理会社等に相談したことで、顔を合わせると相手が暴言を吐いてくるとか、騒音がかえってひどくなり、明らかにいやがらせとして音を立てるようになったとか、相手の対応に不安を感じるときは、警察に相談してみることもお勧めします。
警察から見て、刑事事件に発展することが差し迫っていると認めたときなど、状況に応じて相手に警告してくれることもあり得ます。

そのような状況とまではいえなくとも、管理会社等が十分な対応をしてくれず、騒音も収まらずお困りの場合は弁護士に相談することもお勧めします。
その場合は、弁護士がお話を伺い、どのような方法をとるのが効果的か検討します。
伺った管理会社の対応によっては、弁護士から管理会社に連絡し、まずは管理会社に対応を求めることも考えられます。
また、弁護士から相手に連絡し、話し合いを持ち掛けたり、警告したりすることも考えられます。
慰謝料請求の裁判を起こすことも選択肢となってくるでしょう。

家は、多くの人にとって、本来一番ほっとできる場所のはずです。
さらに、今は、外に出たくとも、いなくてはならない場所ともなってしまっています。
ただでさえ、この情勢でいろいろな不安を抱いてしまうのに、さらに、そこに大きなストレスがかかるのは本当に苦しいものだと思います。
お気持ちの余裕があれば、まずは、音の記録をとり、その上で管理会社、弁護士等に相談することで、1日も早く穏やかな時間を過ごすことができますように。

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