リーガルエッセイ
公開 2024.09.17

子どもが学校内で他の児童から被害に遭ったら

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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学校内で他の児童から被害に遭った場合に大事なこと

先日、ある小学校で、2年生の女児が、複数名の6年生の男児らに下半身を触られる被害に遭ったと報じられました。
その記事によると、被害に遭った翌月に行われた全校による避難訓練において、被害女児が、加害男児らと同じ教室に入れられたことにより、加害男児らの顔を見た被害女児が発熱を繰り返し、欠席することが増えたり、学校で一人で女子トイレに行くことに恐怖を感じたりするようになったとのこと。
記事だけからは、避難訓練実施前に学校側が女児の被害を把握していたかが正確に読み取れませんでしたが、学校側は、被害を認識した後、女児のトイレに関する状況に関し、「加害者が女子トイレに来るわけないだろ」と言ったり、被害の2か月後ころ、女児ひとりを呼び出し、複数教員らが、加害男児らの反省の弁を代読するのを女児に聴かせたなどとも報じられています。
そして、この代読の対応について、保護者は知らされていなかったということ。

報じられた内容だけでは、詳細な事実関係を把握することができませんでしたので、この件について、具体的なコメントをすることは難しいのですが、学校など子どもたちの集まる場で、子どもたちの間で起きる問題にいかに学校や保護者が対応するかということはとても大事な問題だと考えますので、一般論として取り上げてみたいと思います。

実は、私の子も、小学生だったころ、通っていた学童施設で、同じ学童に通っていた男児から、お腹を殴られるという目にあったことがありました。
かなり強い力でお腹を殴られたとのことで、その日の深夜にはお腹の強い痛みを訴える子どもを連れて深夜救急に連れていき、詳しい検査をする必要がありました。
幸い深刻な事態にはならず、治療を要することにもなりませんでしたが、その後も1か月くらいの間は、子どもがお腹の痛みを訴えるたびに「あのときの症状が今になって出てきたのではないだろうか」と不安に感じ、子どもの様子を慎重に見守る日々でした。

私は、冒頭の記事を読んだとき、このとき、学童の先生がその報告の連絡をくださったときのことを思い出しました。
詳しく書くことは控えますが、学童の先生の説明は、男児側には悪意はなく、わざとやったわけでもなさそうで、ちゃんと「ごめんなさい」もできました、というものでした。
それを聴いたとき、私は、先生方の対応が、今回起きた出来事を、何事もなかったかのように丸く収めることのみを目指したものと感じられてしまいました。

学校や学童施設、習い事など、子どもたちが集まる場で、子どもたち同士の間で起きた出来事への対応って本当に難しいことは事実だと思います。

まず、大前提として、何が起きたかという事実を特定することが難しいのです。
年齢にもよりますが、子どもが、自分の身に起きたことを正確に説明することはとても難しいことです。
また、被害の内容によっては、起きた直後にはだれにも言うことができず、被害からしばらく経って初めて相談することができるといったこともよくあります。
保護者が、子どもの訴えを聴いて驚いて学校側に連絡したところ、学校側から「正確にいつのことだかわからない以上、何もしようがない」「相手の子にも確認しましたが、『覚えていない』とのことでした。時間が経っているからやむを得ないですね」「そのとき周りにだれがいたかも特定できないので、今さら調べようがありません」などと言われてしまうということも。
周りに、すべてを目撃している大人がいない状況では、そもそも、何があったのかということ自体がうやむやになってしまうということがあります。

事実関係がある程度明らかになったとしても、学校等の対応に問題があることも。
子どものしたことに対しては、大人に対して刑事責任を追及したり、社内での懲戒処分を問うたりすることとは異なり、あくまでも「教育」という視点で加害側のしたことをとらえたり、今後の改善を目指したりするということ自体は全否定されるべきものではないと思います。
ただ、加害に及んだ子どもの今後、と同時に、なにより被害に遭った子どもの負った傷、被害に遭った子どもの今後について、真剣に向き合う必要があるはずです。

加害行為に対し毅然と対応すること。
被害を受けた側が、受けた傷をさらに深めることがないように、細心の注意を払うこと。
これなくして解決などということはあり得ません。
もちろん、子どもたちの特性や家庭での様子なども踏まえ、家庭と学校等とが連携して対応する必要があるはず。
一刻も早く「解決」に導くために、学校等側が主導して、加害側に形ばかりの反省文を書かせたり、加害側と被害側とを同席させて、謝罪させ、それに対し許すことを事実上強いたりすることは、解決どころか、加害側には有害な成功体験を積ませ、被害側には傷や「被害を相談してもだれもなにもしてくれないんだ」という絶望感を深めるだけのこと。

わが子が学校等内で他の子から、何らかの被害に遭ったというとき、今お話ししてきたような場面に遭遇したかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
もしかしたら、わが子の被害に直面し、学校等側の対応に到底納得できないものを感じながらも、それに対して意見することが、もしかすると子どもの学校生活に悪影響を及ぼすのではないか、モンスターペアレントだなどと思われてしまうのではないかという思いを抱えながら、ただただ不安や憤りでいっぱいになっていらっしゃるかたもいらっしゃるかもしれません。

今何をするべきか、ということは、ひとくくりにすることなどできず、お子さんの被害の内容、お子さんの今の思いなどによって全く違ってきます。
ひとりひとりのお子さんが、どうしたら、負った傷をいやすことができるか、そのことが原因で学校に行くことができずにいる中で、どうしたら安心して学校生活を再開できるか。
ご事情をうかがい、ご一緒にじっくり考えご提案することができます。
一度、お気軽に弁護士までご連絡ください。

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