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大学生の「不適切動画」問題
先日、神戸大学のサークル所属とされるメンバーらが、合宿先の宿泊施設内で、胴上げをした際、頭突きで天井に穴をあけたり、室内の障子を破り顔を突っ込んだりし、その様子を撮影した画像等と思われるものがSNS上で拡散されたと報じられました。
この事態を受けて、大学側はホームページ上で「本学学生による不適切行為がSNS上に掲載されている」として、事実関係の調査をするとともに再発防止に努める旨のメッセージを公開しました。
そういえば、つい先日も、関東の大学生らが、高知市内の山中で観光名所となっていた「ごとごと石」を下に落とそうとして結果石が動かない状態にし、器物損壊の罪で罰金刑になったという報道を見たなと思い出しました。
もう少し遡ると、ある大学の部内で大麻取締法違反をした学生が次々に立件されたという報道もあったなと思い出しました。
そんなとき、同じ「大学生」というくくりで、主語を大きくひとまとめにして「最近の大学生は…」と考えることは軽率だなと思いますし、昔と今とで、情報が拡散される手段が変わり、果たしてこのことが本当に「最近の」といえるのかも疑問。
それにしても、仮に報じられている内容が事実であれば、「不適切」という言葉とは程遠いと感じます。
宿泊施設の天井に穴をあける行為は、建造物損壊罪に当たり得るし、障子を破る行為は、器物損壊罪に当たり得るし、このような行為に及んだことで宿泊施設が一定期間この部屋にお客様を宿泊させたりすることができない状態にしたわけですから威力業務妨害罪にも当たり得ます。
ここで、天井に穴をあける行為と障子を破る行為は、なぜ同じ器物損壊罪ではないのか?と思われるかたもいるかもしれないですね。
ここは、建造物損壊罪と器物損壊罪との違いを知る必要があるところ。
建造物損壊罪の法定刑は5年以下の懲役。
器物損壊罪の法定刑は3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料。
法定刑で見ると、建造物損壊罪の方が重くなっているので、このいずれの犯罪にあたるかということをめぐり裁判で争われることもあるのです。
過去にも、ある市営住宅の1階居室の出入り口に設置された金属製開き戸を金属バットでたたいてへこませた行為に関し、建造物損壊罪と器物損壊罪のいずれが成立するのかという点が争われた裁判があります。
その裁判では、最高裁が、建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、その物と建造物との接合の程度のほか、その物の建造物における機能上の重要性も総合考慮して判断すべきであるとした上で、問題となっているドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続詞、外界との遮断、防犯、防風、防音などの重要な役割を果たしているから、建造物損壊罪の客体に当たると認められ、適切な工具を使用すればドアの取り外しが可能であったとしても器物損壊罪になるわけではないのだと説明しています。
つまり、その物が、建物から取り外し可能な物かどうか、その物がその建造物にとって重要な機能を果たしているか否かという観点から評価されることになるということ。
宿泊施設の天井に関しては、そもそも、建物から取り外し可能な物とはいえず、その損壊は建造物損壊罪になり得、障子については、建物から簡単に取り外し可能であるし、玄関ドアなどと違って、建物にとって必ずしも機能上の重要性があるとはいえないからその損壊は器物損壊罪になり得るといえそうです。
これは、以前「ごとごと石」の事件についても思ったところではあるのですが、関わった人たちが自分たちの行為がもつ意味とかそれによる影響とかについて、ちょっとだけでも想像できなかったのかなと思ってしまいます。
大学生活を大学で学べるという当たり前ではない環境を得られたのは、そこに至るまで懸命に支えてくれた周囲の環境があったからこそ。
もちろん、その環境で自分自身がときにスランプと闘いながら懸命に頑張り続けたからこそ得られた大学生活。
来月から新生活が始まる学生の方もいらっしゃいますよね。
これまで頑張ってきた緊張の糸がゆるみ、ちょっと大胆な行動に出てしまうこともあるかもしれません。
でも、どんなときでも、ここまでの道のりやそこに関わってこられた方々の姿を心に留めながら、頑張ってきた自分を大事に過ごしてほしいなと思います。
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