リーガルエッセイ
公開 2024.03.06

子ども同士でのお金のやりとりについて

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記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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子ども同士でのお金のやりとり

先日、小学6年生の児童が、同級生から、記念メダルなどを純金製などと持ち掛けられて、約93万円をだまし取られたという事件があった旨報じられました。

お金をだまし取られた児童の保護者の方が警察に相談し、警察は捜査していると報じられています。

ただ、この報道は「捜査」としている点において正確ではありません。

刑法には、「14歳に満たない者の行為は、罰しない」という条文があります。
つまり、14歳に満たない年齢の場合、いまだ成長過程にあるので、刑罰が科されないのです。
小学6年生は、14歳に満たない年齢ですから、これにあたります。
やっていることは、詐欺罪に該当する行為と評価できたとしても、小学6年生の場合は、詐欺罪が成立するとして刑罰を科すことはできません。

では、おとがめなしなのか?というとそうではありません。
14歳未満の子どもが犯罪にあたる行為をした場合には、少年法に基づき、警察による調査や児童相談者による措置がなされることがあります。
警察がこの件を調べることはあっても、それは法的に「調査」であり、「捜査」ではないのです。
その後、家庭裁判所に送致され、保護処分が下されることもあります。

報じられた件について、事実関係はわかりませんが、仮に、報じられているように、詐欺にあたる行為があったとした場合、その行為について、子ども自身が民事裁判で責任を問われる可能性があるのか。

この点は、本人に「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」が認められるか否かによります。
このような知能が認められると評価された場合は、損害賠償などの責任を本人が負うこともあります。
ただ、過去の裁判例によると、(子どもの判断能力の発達の程度によっても異なりますが)だいたい12歳くらいまでの子どもは、この知能を備えていないとされることが多いように思います。
子ども自身がこの知能を備えていないという場合は、保護者が代わって責任を負います。
そのような法的な話はいったんおくとして、またこのたび報じられた件については、報道限りでしか事実関係がわからないので、いったんこの件を離れるとして。

私自身、自分が子どもの時代は、小学校でお金のことが話題にのぼることなんてなかったような気がしています。
でも、本当にそうだったかなと思い返してみると、たとえば、小学校で、シール、折り紙、メモ帳など小さな文房具や雑誌のおまけなどをお友達との間で交換したり、あげたりもらったりなんていうことはあったように思います。
そして、そういうことって、その量が増えたりする中で少しずつエスカレートして、お金をめぐるトラブルに発展することもあったんじゃないかなと思います。
さらに、その背後にいじめの問題が潜んでいることもあるかもしれません。

お金の教育、というと、少し大げさで構えてしまうかもしれませんが、こういった物のやりとりなどという子どもにとって身近なところから話をしてみるのもいいかもしれません。

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