リーガルエッセイ
公開 2022.09.08

郵便法違反とは?ポストにミルクティーを流し込んだ男性が書類送検された事件について

郵便法違反とは?ポストにミルクティーを流し込んだ男性が書類送検された事件について
記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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郵便ポストにミルクティー

先日、郵便ポストに、ミルクティーを流し込み、空になったペットボトルをポストに押し込み、ポスト内の郵便物を汚したとして、郵便法違反の被疑事実で男性が書類送検されたと報じられました。

このニュースを見たとき、「郵便法」という法律を初めて聞いたというかたもいらしたのではないでしょうか。

郵便法というのは、郵便のサービスをなるべく安い料金で、広く公平に提供することで公共の福祉を増進することを目的として定められている法律です。

その郵便法78条には、「郵便専用の物件又は現に郵便の用に供する物件に対し損傷その他郵便の障害となるべき行為をした者は、これを5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。

つまり、今回報じられているような、ポストにミルクティーを流し込んで、郵便物を汚すという行為は、まさに、この「郵便の障害となるべき行為」といえ、この78条に該当する可能性があるのです。

この点、ちょっと本件とは離れますが、もし、空のペットボトルがポスト内に押し込まれていなかったら、犯人特定のための捜査はなかなか難しいものになっただろうなと思います。

もちろん、本件についてもまだ捜査中の事件であり、被疑者が犯人であるということが明確になっているわけではないという前提ではありますが、報道によれば、ポスト内に押し込まれていた空のペットボトルから被疑者のDNAが検出されたとのこと。

でも、犯人が、ミルクティーを流し込んだ後、そのペットボトルを現場から持ち去ってしまっていたら、ペットボトルからのDNA検出という手段は取り難かったわけです。

その場合は、目撃者からの聴取、付近の防犯カメラ等の捜査により犯人を特定する必要があったはず。
特定のハードルは高かっただろうと思うのです。

郵便の障害となるべき行為について、器物損壊罪よりも重い法定刑が定められているのは、やはり郵便というものが社会において果たしている役割の大きさにあるのではないかと思います。

もちろん、書き手の、読み手に対する思いを届ける手段という意味で、そのような心の通い合いを邪魔する行為であるという意味合いもあると思いますが、たとえば、私に身近なところでは、裁判所からの書類の送達、内容証明郵便、資格試験の申込手続き等社会において重要な意味を持つ書類のやりとりにも使われる郵便について、送ればそのままの状態で指定した相手先に届くという前提が崩れることは郵便サービスの根幹に関わる問題なのだと思います。

なお、この郵便法では、意外に身近なことについても定められています。

たとえば、「郵便物の誤配を受けた者は、その郵便物にその旨を表示して郵便差出箱に差し入れ、又はその旨を会社に通知しなければならない」という規定があります。
ここでいう「郵便差出箱」ってどこにあるの?と思いませんか?
これは、実は、いわゆる郵便ポストを指す言葉なのです。
そして、「会社に通知」とはどこの会社に通知することを指すかというと、「日本郵便株式会社に通知」することを指すのです。

つまり、自宅に、他人あての郵便物が誤配されたことに気付いたら、その郵便物に「誤配」ということを表示した上でポストに入れるか、誤配の旨を日本郵便株式会社に連絡しなければならないということになります。

意外と、誤配の場合、どう対応すればいいか、ルールとして認識している方は少ないかもしれませんよね。

このたび報じられた郵便法違反の事件について、今後の捜査に注目します。

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