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3歳の女の子が犠牲になった事件
ちょうど1年前の8月に、保育園の送迎バスで5歳の子が降りていないことが確認されないまま閉じ込められて亡くなったという本当にいたましい事件についてこちらのエッセイで取り上げました。
保育園の送迎バスで5歳の男の子が犠牲になった事件について
たった1年前のいたましい事件。
報道で、何度も何度も、送迎バスの内部の様子まで映し出されながら、「なぜ降車確認に漏れが出たのか」という問題意識が示されていました。
厚労省でも、事件の後、通達を出し、子どもの欠席連絡等の出欠状況について保護者に速やかな確認をするとともに職員間で情報共有を徹底すること、登園時、園外活動の前後などの場面の切り替わりにおける子どもの人数確認はダブルチェック体制をとるなどして徹底することなどが明確にされていました。
結果として、それらが全く活かされていなかったと言わざるを得ない事態です。
昨年あれだけの報道があり、同じような送迎バス体制をとっている園の現場には衝撃が走ったはず。
自分の園でも全く同じことが起きる可能性があると考えて、園児たちの安全を守るための体制のどこかに穴がないかを考える機会を持ったのか。
そして、仮に十分な体制が整っているとして、その体制が形だけになっておらず、実際に機能しているか、運用面での問題点を洗い出すというところまで掘り下げたのか。
これらの対応を、単に園の経営に関わる方だけが行うのでなく、園児に関わるひとりひとりのスタッフの方にどこまで落とし込んだのか。
そんなことを考えざるを得ません。
これらが徹底されていたら、少なくとも、まだあのいたましい事件が多くの方の記憶に残るこんな時期に起きるはずがないと思うからです。
もちろん、関わるのは人であるのだから、ミスが起きることは避けられないのだと思います。
だからこそ、そのようなミスが生じ得ることを想定し、どこかでミスが起きても、すぐにフォローできる体制を作ることこそが大事であることをあの事件で痛感したはず。
万一、バスを運転していたスタッフが、すべての園児が降車したことの確認を漏らしてしまったとしても、バスに同乗していたもう一人のスタッフによる確認で発見できたはず。
万一、その場では発見できなくても、バスを駐車場に停めて園に戻る際にもう一度だけ車内を見回せば発見できたはず。
万一、バスに乗車していたスタッフのいずれも見逃してしまったとしても、バスから教室に場面が切り替わるタイミングで、教室で迎え入れるスタッフが、バスに乗車していたスタッフとの間で、出席している子どもたちの数を確認しあっていたら発見できたはず。
万一、そこでも連携が漏れてしまったとしても、教室で子どもたちの担任をするスタッフにおいて、お休みの子の保護者から園に何らかのお休み理由に関する連絡が来ているか確認し、来ていないのであれば、速やかに保護者に連絡してお休みの理由を確認することで発見できたはず。
このすべての「万一」がすべて漏れてしまうというのは、もはや、「たまたまのミス」などではない。
厚労省の通達を含む園におけるスタッフたちの従うべきさまざまなルールが、それを守ったという形を作ることを目的としているのではなく、たった一つのルールの不遵守が子どもたちの命に関わることであるという危機意識が完全に欠落しているために起きるべくして起きた事件であると思うのです。
この事件については、業務上過失致死罪の被疑事実で捜査が始まったばかり。
今後、事実関係が明らかになると思います。
その進捗を見守りつつ、子どもたちに関わる現場では、「うちで起きてもおかしくない事件」という意識で、直ちに徹底的に穴を見つけることが求められていると思いますし、それは、バスの送迎という狭い範囲でとらえられるべきではなく、園外活動等に範囲を広げて見直されるべきであると思います。
そして、私は、このような報道を見たときに、子どもたちに関わる現場とは違う、あらゆる業種において、もちろん、弁護士としての私自身も含め、「これは、保育の現場で起きた事件である」と他人事と捉えるのでなく、問題点を抽象化し、何か自分が仕事をする上でも気を付けなくてはいけない指摘があるのではないかと見直す視点が重要だと思っています。
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