リーガルエッセイ
公開 2022.05.16

誤って振り込まれたお金を引き出したら犯罪?

誤って振り込まれたお金を引き出したら犯罪?
記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

「あれ?この入金なんだっけ?」でお金を引き出したら犯罪?

山口県のある町で、1世帯あたり10万円払うべきコロナ給付金を、間違って、ある1世帯に、4630万円ものお金を振り込んでしまったというニュースが報じられています。
このニュースの驚くべき点は、明らかに誤って振り込まれたこの金額について、振込を受けた男性が、返金に応じていないということ。
町が、返金せよ、ということで裁判を提起したということ、また、刑事告訴を検討中であることが報じられています。

返金を求める法的根拠についてもお話ししたいところなのですが、今回は、こうして、誤って振り込まれたお金を引き出してしまったり、ほかの口座に送金してしまったりしたら、それって犯罪になるの?という点をお話しします。

結論。
実は、いろいろな考え方があって、ここでお話しすることが必ずしも正解というわけではないということを前提としてお伝えします。
その上で、引き出したり、送金したりする、そのお金が、自分のお金じゃなくて間違って振り込まれたものだとわかっていたら犯罪になり得ます。
そのお金をATMから引き出したら窃盗罪が成立する可能性があり、振り込まれたお金を、別の口座にそのまま送金したら、電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性があります。

問題になってくるのは、引き出したり、送金したりする時点で、それが自分のお金じゃなくて間違って振り込まれたものだとわかっていたといえるか?ということ。
逆に言えば、「いや、そのお金、自分のものだと思っていたから、故意がないよ」という弁解が通用するか?ということ。
本件については、報道の範囲でしかわかりませんから、軽率なコメントはできません。
ただ、一般的に考えると、4630万ものお金がそのころ自分に振り込まれるなんてことが全く想定されていなかったとしたら、普通、自分のお金だなんて認識を持つこと自体がちょっと考え難いですよね。

そもそも、今回の場合、真相は知りませんが、仮に、引き出したり、送金したりしていたとして、その時点で、すでに町のほうから、「実は誤振込だったのです」と説明を受けていたのだとしたら、当然、引き出そうとしている、または、送金しようとしているお金が自分のものでなく、誤振込によるものだと明確に認識しているといえるでしょうから、「故意がない」なんて弁解は通用しないだろうと思います。

そう考えると、そのような前提事実があったとしたら、窃盗罪または電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性があると思います。

この話、実は他人事ではありません。
今やスマホひとつで、実に簡単に振り込みをすることができる分、もしかしたら、それに伴い、送金ミスなどということも起きているかもしれない。
自分の口座に、ある日、心当たりのない多額の入金があったら・・・?
もちろん個別の事情にもよりますが、誤振込だと分かった上でこれを引き出したと認められる場合には、窃盗罪に当たり得るのです。

弁護士へのご相談予約で、
初回相談60分無料 ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます
些細なご相談もお気軽にお問い合わせください
弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00

こんな記事も読まれています

CONTACT

法律相談ご予約のお客様
弁護士へのご相談予約で、
初回相談60分無料 ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます
些細なご相談もお気軽にお問い合わせください
弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00
弁護士へのご相談予約で、初回相談60分無料 ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます
弁護士との初回面談相談60分無料 ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます