リーガルエッセイ
公開 2021.05.31 更新 2021.07.26

パートナーの親との同居問題について ドラマ「リコカツ」第7話

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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リコカツ第7話 ~パートナーの親との同居問題~

第7話を見終えて、私は、さきさんの元彼さんである弁護士が少し嫌いになりました。
元気のない女性に、意図的におもしろい話をしたり、からかったりして、女性に「ちょっとやめて(笑)」と言わせ笑わせた上で「よかった!やっと君の笑顔を見ることができた」という男性…。
いや、笑わせて元気づけてくれるところまではとってもすてきだと思うのです。
でも、「よかった!」以下のセリフは必要なのか?と思ってしまう。
こじらせ過ぎではないかという意見もあるでしょう。
そして、そんなことを言っている人に限って、「よかった!」以下のセリフを言われたときに誰よりも舞い上がりそうだという意見もあると思いますし、実際そうなのだろうと思います。

そんな第7話には、登場人物の中で唯一離婚前の状態であるさきさんのお姉さんの話が出てきました。
お姉さんが、青山弁護士から離婚する理由を聞かれたとき、夫のお母さんが息子夫婦と同居して孫であるお姉さんの子どもの面倒も見ると言ったことに不満があるような説明をします。
要は、パートナーの親との同居問題が原因ということでしょうか。
たしかに、ご相談者の中にも、「義理の両親との同居問題」ということを、離婚を考えた理由として挙げるかたは多いように思います。
パートナーの親と同居などしたくないということを理由に離婚することができるのか?
もちろん、相手も離婚を望んでいるのであれば、お互い離婚するという点で一致しているので、協議離婚することができます。
では、パートナーが離婚に応じないと言ってきたらどうなのか?
その場合、裁判所は離婚を認めてくれるのか?
これに対する回答は、「パートナーの親と同居問題で意見が合わない」という点のみを理由として離婚は認められにくい、ということになるのだろうと思います。
ただ、私は、これは、ちょっと形式的な回答に過ぎると思うので、実際にご相談を受けたときにはこんな回答の仕方はしません。
「離婚したいと思ったのはどうしてですか?」の問いに対して、「パートナーの親との同居問題です」とお答えになるかたの、その言葉の奥にどんな思いがあるのか、ということを相談者のかたとともに探っていくと、ちょっと違う気持ちが隠れていることがあるからです。
いろいろなケースがあるとは思いますが、私は相談者のかたのお話を伺っていて、「パートナーの親と自分たち家族が同居するのが嫌だから離婚したい」というよりは、「この同居問題をめぐる話し合いにおけるパートナーの対応に失望した」というのが本当の離婚の理由なのではないかなと感じることがあります。
つまり、同居するかしないか、というところももちろん大事ではあるのだけど、もっと本質的なのは、そういう夫婦にとって大事な問題に直面したときにひとつひとつの問題をお互いの立場を尊重して話し合いながら一緒に乗り越えていけるパートナーかどうかということ。
年々歳を重ねる親の今後を子としてどうやって支えていこうか、そんな問題は、兄弟姉妹の有無により程度も差はあっても、お互いにとって大事な問題のはず。
それなのに、たとえば、夫の両親が、「嫁は夫の家に嫁いだのだから、自分たちと同居して世話をして当然だ」と言ってきたとき、そのこと自体よりも、そのような両親の発言を受けて、夫がどのような対応をしたかということこそが実は離婚を考えたきっかけとなるのではないかと思います。
もし、夫が、そのような自分の両親の気持ちを理解しつつも、両親に対し、「妻にも妻の親があるし、同居するかどうかは、自分たち家族で話し合って考える」と説明し、その上で、妻に、両親との同居も一つの選択肢として相談したり、同居することについて妻がどう感じているか真摯に向き合おうとしたり、同居に不安を持つ妻の気持ちを汲んで、その不安を解消するための方法を一緒に考えようとしたり、そんな対応をしたら?
もしかしたら、離婚ということに考えが向かわず、むしろ、今後自分たち家族に降りかかるであろう子の教育に関する問題や自分の親の介護の問題などについても、今回と同じようにともに話し合いながら乗り越えていける最良のパートナーであることを再認識するきっかけにもなり得るのではないかなと思うのです。
さらには、このようなパートナーが一緒であれば、一時的に、パートナーの親と同居しても何も不安なことはない、と思えるかもしれない。
だから、私は、相談者のかたの抱える事情、気持ちを深く深く聞いていったときに、実は、その根底に、同居するかどうかではなく、「このパートナーとは今後の人生を一緒に歩んでいくことはできない」と認識した上での決意があるとわかった場合は、ほかの事情も詳しく伺い、もう夫婦関係を修復することはできないのか?ということを相談者のかたとともに考えます。
やはり修復は難しいという場合は、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があるとして、裁判で離婚が認められる可能性もあります。
ここは総合的な判断になるので、果たして、相手が離婚を拒んで裁判になったとき、裁判官は判決で離婚を認めてくれるか、という見込みについてはよく弁護士に相談し、ご自身のケースは、相手から拒まれたときにも裁判で離婚が認める可能性が高い案件なのかどうか、見極めることが大事。
それによって、その前段階の話し合いでどんな交渉のしかたをすべきか戦略を練る必要があるからです。
さきさんのお姉さんも、離婚の理由を尋ねられたとき、一言目に「彼ってマザコンなのよ」と言いました。
やはり、同居云々の前に、夫のあり方こそが原因だと考えているのかもしれませんね。

「君を傷ものにしてしまったのではないか」発言について

法律とは全然違うところで気になったことをひとつ。
緒原さんが、さきさんに電話して「自分は君を幸せにできなかった。傷ものにしてしまったのではないかと気にしている」という旨の発言をしました。
これ以上のやりとりはなかったのでよくわかりませんが、きっと、緒原さんは、自分と結婚し、そして離婚したことで、さきさんを、いわゆる「バツイチ」にしてしまった、これによって、さきさんの経歴にマイナスをつけてしまった、この経歴が今後のさきさんにとってネガティブに働くのではないかと気にしているのではないかと想像します。
実は、これまで離婚の相談を受ける中で、離婚したいのだけど、自分が「バツイチ」になることがおそろしい、「バツイチ」になったら、自分には子どももいるし、二度と恋愛などできないし、新しいパートナーとも出会えないのではないかという心境を打ち明けられたことが幾度となくあります。
その考え方、どう思いますか?
私は、「離婚したいが、バツイチになりたくないから離婚をためらう」というかたは、まず、「自分はなぜ離婚したいのか」をもっと掘り下げてよく考えてみたほうがよいとは思います。
バツイチ云々というのは単なる後付けの理由であって、ほかに、離婚に踏み切れない理由が隠れていることがあると思うから。
あと、「バツイチ」となったら、それは傷がつくことを意味し、子どももいれば、なおさら、新しいパートナーと出会えないのではないかという心境、それ自体を否定するつもりはなく、そういう気持ちになることもあるだろうなとは思うけれど、私は全くそうは思いません。
だって、かつて離婚したことがあるということは、結果として別々に生きる道を選んだものの、一人の人に、一度は「この人と一生を共に生きよう」と思わせるだけの魅力があったということだし、自分自身も結婚・離婚という大きな決断をできたということだし、さらには子どもをシングルで育てているという経験だって、それって「すごいね」「がんばってるね」という要素ではあっても、マイナスの要素になどなり得ないと思うから。
以前クライアントだったかたが「そうはいっても、実際、お付き合いしたいと思った彼が、私に離婚歴があって子どもがいることを気にしているんです」と言われたことがあります。
私は、「あなたがかつてほかの男性から一生を共にしようと思われた魅力があること、でもいろんな事情があって、あなたが新しい人生を切り開こうと前向きに踏み出すだけの勇気があったこと、お子さんを一人で育てるという偉業を毎日成し遂げていることを、あなたのマイナス要素として見るような相手を、あなたはパートナーにしたいんですか?私だったら、自分から願い下げ!」と言いました。彼女を励ますつもりで言ったのではなく、私は、心からそう思っています。
だから、緒原さんがさきさんに「君を傷ものにしてしまったのではないか」と言ったとき、さきさんには、「大丈夫」とけなげに答えるのではなく、「一人の男性に愛されたという経歴が増えただけです」と毅然と言い放ってほしかったなと思いました。
法律から離れたところなのに、とても思い入れのあることだったので、熱を込めてしまいました。

それにしても、緒原さんは、同僚からいただいたご祝儀を返していましたが、いわゆるスピード離婚の場合、ご祝儀をどうするか、ということを悩むかたもいるようです。
ここもちょっと気になるところですね。

いろいろな人間模様が一気に展開しているようで、いったいどんな着地をするのか。
第8話視聴後また更新します!

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