リーガルエッセイ
公開 2021.04.13 更新 2021.07.26

結論を分けた「法律の条文をどう解釈するか」について解説!

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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最高裁「父母以外は監護者になる申立てができない」

先日、最高裁で「父母以外は監護者になる申立てができない」という判断がされたことに関して、まずは、監護者とはどのような立場の人なのかということをとりあげてみました。

その上で、今回は、ご紹介した最高裁の判断についてお話ししたいと思います。

まず、どんな経緯があって最高裁の判断を求める事態となったのか?
最高裁の決定を読んでみたのですが、裁判所が認めた事実関係は、次のようなものでした。
ある夫婦の間に未成年の子がいました。
その夫婦が離婚。
その際、母が子の親権者になりました。
離婚後、母と子は、母の母、つまり、子にとっては祖母の家で、祖母と同居するようになりました。
子の母と祖母が二人で子を育てていたようです。
ところが、同居し始めて8年近く経ち、母は、子を祖母の家に残した状態で、自分だけが祖母の家を出て、別の男性と同居し始めました。
それ以降は、祖母が子を一人で育てていたとのことです。
そんな中、母と男性が結婚することになりました。
結婚するとともに、男性は、子と養子縁組したとのこと。
このような経緯が認められています。

そのような中、祖母が、子の監護者は自分だということを認めてもらうために裁判所に申立てをしたというのが今回の裁判の始まりだったようです。
そのような申立てをしたきっかけについて、祖母が、子と母の再婚相手の男性との関係がよくないことを報じている報道がありました。
報道や裁判所の決定だけからはわかりませんでしたが、子の祖母が、自分を法的な監護者であると認めてほしいと裁判所に申し立てた背景には、そのようにご自身の法的立場を明確にしなければならないと考える出来事があったのかもしれません。
このような祖母の申立てに対し、最初に申立てを受けた裁判所は、祖母を監護者として認める判断を出しました。
この判断を不服として、子の母らが上の裁判所に申立てをしましたが、上の裁判所でも、やはり祖母を監護者と認めました。
それでも納得がいかないとして子の母らが最高裁に不服を申し立てた、これに対する判断が今回報じられた決定でした。
最高裁は、それまでの裁判所の判断をひっくり返しました。
つまり、祖母を監護者として認めなかったのです。
もう少し正確に言うと、祖母は、子の父母じゃないから、祖母という立場で、自分を監護者として認めてください、と裁判所に申立てをできないよ、と言って申立てが門前払いされてしまったのです。

結論を分けたのは、法律の条文をどう解釈するかということ。
民法には、父母が協議離婚するときには、子の監護者をだれにするかということやその他監護に必要な事項を父母が協議して定めるという条文があります。
そして、その条文に続いて、「前項の協議が調わない(ととのわない)とき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める」と定めています。
この条文をどう読むか、というところがポイントになったのです。
この条文は、まず、父母が監護者をだれにするか話し合う、としていて、その話し合いが決裂したら裁判所が決める、としているのだから、素直にこの条文を文字通り読むと、裁判所に判断を申立てられる立場の人というのは、話し合いの当事者である父母、ということになります。
最初に申立てを受けた裁判所とその上の裁判所は、この条文をそのまま文字通り読むのではなくて、この条文の法意、つまり、この条文によって守ろうとしているものは子どもの利益であることを考えると、監護者をだれにするかの話し合いが決裂した場合、父母じゃなくても、事実上子どもを育てていた祖父母のような立場の人も裁判所に自分を監護者として認めてくださいという申立てができると判断したのです。
それに対して、最高裁は、この条文を文字通り読むとどうなるか、という点を重視しました。
父母しか監護者として認めてくださいという申立てを裁判所にできませんよ、としたのです。
そして、この条文が、子の利益を守ろうとしていることというのは、父母以外の第三者について、条文の文言に反してまで申立てを許す理由にならないでしょうと言っています。

たしかに、法律がある以上、あまりにも解釈を広げ過ぎてしまうと、解釈には、これを行う人によって幅があることを考えるとルールとして機能しなくなってしまうとは言えそうです。
でも、これにより導かれる結論が、法律により守ろうとした根本的な趣旨から離れたものになってしまうとすれば、いったい何のための法律なの?と思わざるを得ません。
もちろん、私は、この件の実態を何も知らず、単に裁判所の決定と報道を読んだ限りの情報しか知らないため、安易に、結論として何が子の利益になるのか、などと意見することなどできません。
ただ、本件のように、裁判所により判断が大きく分かれ、そして、その導かれた結論について一般的にも疑問が投げかけられる事態が想定できることが明らかになったなら、法律自体を変える議論がされるべきだと思います。
実際、報道によれば、その議論が始まっているようです。
大学教授や裁判官などが参加した家族法についての研究会で、裁判所が父母以外の第三者を監護者に指定できる内容の規定を民法に設けることを検討していて、これを受け、法務大臣が、子どもの養育をめぐる制度の見直しを法制審議会に諮問したとのこと。
今後の動きに注目していきたいと思います。

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