リーガルエッセイ
公開 2020.12.17 更新 2021.07.18

路上ライブを行うために必要な道路の使用許可

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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路上ライブは違法?

駅前で路上ライブをしているのを見かけると、ついつい足を止めて歌に聴き入ってしまいます。
1日の疲れでぼーっとした状態で、あたりも暗くなった時間帯に目の前ですてきな歌声を聴くと、感傷的になってしまい、ほぼ100パーセントの確率で涙腺が崩壊し、いい大人が、ひとり、涙を流しながら歌を聴くというちょっと異様な雰囲気を作り出してしまいます。
そんなちょっと違和感のある聴衆なので、顔を覚えて頂くこともあって、リクエストさせて頂くことも。
遊びを知らない私にとって、日常を忘れられる大事な時間です。

ご存じのかたも多いかもしれませんが、路上ライブをするには、警察署から道路の使用許可をもらう必要があります。
道路交通法には、道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為で、公安委員会が、その土地の道路又は交通の状況により、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要と認めて定めたものをしようとする者は警察署長の許可を受けなければならないと定められています。
そして、たとえば東京都の公安委員会が定める道路交通規則には、「演説、演芸、奏楽、放送、映写その他の方法により、道路に人寄せをすること」を警察署長の許可を受けるべき行為として挙げています。
路上ライブは、演芸として許可を受けるべき行為といえそうです。
では、路上ライブをするかたがすべてこの許可を受けているか?
私は、ライブをしているかたに質問したわけではないですし、警察から確認したわけでもないので、実際どうかはわかりませんが、ライブ中、最寄りの交番から警察官が出てきて、ストップをかけ、それに従ってライブが中断となることが多いことからすると、許可を受けていないケースが多いのだと思います。
多くのかたが通る道路の使用上の安全のことを考えると、申請しても、そう簡単に許可されないのかもしれません。

たしかに、道路に人が広がって通行の支障になってしまったら、緊急時の通行にも影響しそうです。
一方で、路上ライブが、ふと足を止めた人に癒しをくれたり、また、歌っている人にとって夢をかなえる大事な一歩になったりということを考えると、何かいい方法がないかなとも思いますよね。
最近、コロナの影響か、路上ライブを見なくなったなと思っていたら、先日、同じ場所で、ちょっとした路上ライブイベントが開かれているのを見つけました。
数時間の間に、時間を区切って3組くらいのミュージシャンが、自分の持ち時間の範囲で路上ライブをするイベントです。
立てかけられた段ボールの看板に、イベントの名前や実施される時間帯などのスケジュールが書かれていましたし、聴衆のほかに、そばに立って道路の状況を見守っているかのようにみえるかたもいました。
じっと最後までその場にい続けたのですが、警察官が途中で止めることもなく、最後までライブが実施されました。

警察庁のホームページを見たところ、地域活性化等に資するという社会的な意義があり、地域住民、道路利用者等の合意に基づいて行われるイベント等については、道路使用許可手続きが円滑に行われるよう配慮した運用を実施しているとの記載があります。
イベントを主催するかたに質問して確認したわけではないので実際のところはわかりませんが、路上ライブをしたいかたやこれを応援するかたたちが、地域活性化に資するイベントを主催するという形で警察署に相談に行かれ、許可を受けたのかなと想像します。
もしそうであるとしたら、法令で決められた枠組みを使い、どうすれば実現できるか考えた成果ともいえそうです。
路上ライブファンとして、陰ながら応援しています。

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