リーガルエッセイ
公開 2020.11.26 更新 2021.07.18

還付金詐欺の被害を防ぐために

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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先日、宮城県内で、介護保険料の還付などをうたって、高齢者らにATMを操作させて、犯人グループの預金口座に現金を振り込ませる、いわゆる還付金詐欺の被害が相次いでいると報じられていました。
そういえば、つい先日、還付金詐欺を防ぐために、都内の5か所の無人ATMに携帯電話を圏外にする機器を警視庁が設置したというニュースを見ました。
警察庁の発表によると、全国的に見ても還付金詐欺の認知件数、被害総額が増えているというのです。
令和元年の振込認知件数は2383件、被害総額は30億1002万円。
とても大きな数字ですよね。

還付金詐欺の特徴は2つあります。
1つ目は、市区町村や年金事務所の職員などを装って電話してくること。
2つ目は、「還付金を返す」と言葉巧みにATMに誘導してお金を振り込ませること。

ある日、市区町村の職員であると名乗る人から、「あなたは医療費を払いすぎてしまっていたことが発覚したので、それを還付させて頂く必要があります」と電話が入るんです。
そして、「携帯電話とキャッシュカードを持って、近くのATMコーナーに行ってください。今すぐ手続きをしないと無効になってしまって、還付できなくなってしまうんです。ATMに着いたらすぐに電話ください」などと言われる。
焦りますよね。
慌ててATMに行き、指定された番号に電話すると、還付のための手続であるとして、ATMの操作をあれこれ電話口で指示されるんです。
その手続きは、あたかも、言われたとおり操作すれば、自分に還付金が返ってくる手続きであるかのように聞こえます。
でも、実際は、受け取る手続きなどではなく、犯人グループの指定口座に振り込む手続き。
犯人側は、たとえば、「『残高照会』というボタンを押して、表示された数字を右から読んでください」と言って、被害者のかたの口座にいくらの残高があるかをあらかじめ確認しようとし、その限界まで振り込ませようとすることもあるとのこと。
このとき、普通に金額を言わせるのでなく、あえて、数字を右から読み上げるように言うのはなぜか?
被害者のかたに、今自分が何をしているのか、わかりにくくさせるためと考えられます。
また、振り込ませる場面では、「「お振込」というボタンを押してください。そして、あなたの個人番号である〇〇〇〇〇〇(数字)を押してください。終わったら、『確認』ボタンを押してください。」などと言って、本当は、金額を入力してそれを犯人グループの口座に振り込ませる手続きをしているのに、あたかも、還付のために必要な被害者自身に割り振られた個人番号なるものを入力しているかのようにだますこともあるようです。

途中で気づかないのか?と思うかたもいるかもしれません。
でも、公的機関からの電話だと最初に思い込んでしまうと、その後指示される手続きを疑ってかかるのは実はとても難しいことだと思います。

このような還付金詐欺の予防について、全国銀行協会が3つの予防策を公開しています。
1つ目は、ATMで還付金を返還することは絶対にないということを知っておくこと。
2つ目は、「携帯電話をもってATMへ」は詐欺だと知っておくこと。
3つ目は、それでも万一に備え、ATM利用限度額を低く設定しておくこと。

1つ目、2つ目の予防策で足りるようにも思うかもしれません。
でも、常日頃、1つ目、2つ目の予防策をきちんと認識していてもだまされてしまうような巧妙な手口で詐欺グループは近づいてきます。
ここでご紹介した以外の手口も多くあると思います。
だからこそ、いざというときの被害を最小限にするための策として3つ目の予防策は大事になってくると思います。
そして、かかってきた電話に「あれ?おかしいな?こんなことってあるのかな」と思ったら、振り込む前に自分で判断せずにすぐに相談。
相談先は、家族でも、近所のかたでもいいし、できれば交番など。
振り込んでしまった後で被害に気付いたらすぐに警察に通報。
大事に貯めてきたお金をだましとられる被害がなくなるよう、もっとこの還付金詐欺の実態についての情報が、たくさんのかたに届くことを願います。

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