リーガルエッセイ
公開 2020.10.05 更新 2021.07.19

「ディープフェイク」によるアダルト動画 ついに摘発

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、刑事分野の責任者として指導にあたる。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

2年前ころ、オバマ前大統領がトランプ大統領について批判するような動画を見たことがありました。
実は、それは偽動画で、当時、偽動画であることを説明した上での報道をたまたま途中から見てしまったために、最初偽動画とは気づかず「こんな発言するなんて、ちょっと信じられない!」と驚いた記憶があります。
また、イギリスを拠点とするエネルギー企業のCEOが、ドイツにある親会社のCEOを装う相手に、あるところに22万ユーロを至急送金するよう依頼を受け、22万ユーロをだまし取られる被害にあったというニュースが報じられたこともありました。
これは、ドイツのCEOの音声データをAIに学習させ、再現させたことによる犯行だったとのこと。
そして、先日、警視庁が、芸能人の顔を合成したアダルト動画をインターネット上に投稿した男性らを名誉棄損罪で逮捕したと報じられました。
これらは、いずれも「ディープフェイク」による犯罪といわれます。

「ディープフェイク」とは

ディープフェイクというのは、AIに、写真データや音声データなどを大量に読み込ませ、本物そっくりの動画や音声を作成する技術をいいます。
2017年に、米企業が運営するインターネット掲示板に、女優の顔を埋め込んだアダルト動画が投稿された事件が起きましたが、そのときの投稿者の名前が「ディープフェイク」という名前だったためにこう呼ばれるようです。

過去に、いわゆるアイコラ画像がインターネット上の掲示板に掲載されていた件で、ネット掲示板の管理者に対し名誉棄損罪が適用された裁判例がありました。
アイコラ画像というのは、アイドルなどの有名人の写真を、別の写真と合成することで別の状況にある写真のように作り変えることで、問題となったアイコラ画像は、裸の写真と有名人の顔部分とを合成した写真でした。

写真であっても、精巧に合成されていれば、有名人の実際の写真が流出したのではないかと受け取られるおそれがあります。
だからこそ、そのような写真を掲載したり、掲示板に放置したりすることが、顔を使われた有名人の社会的評価を低下させると判断されたのです。
これが動画となり、実際に、有名人の顔で、その表情の動きもいつもテレビで見ている様子と違和感なく、声もその有名人の声であるとなると、さらに、本物であると信じて受け取られるおそれは高まるといえますよね。
それも、動画1本あたり、何万枚というような大量の画像をAIに読み込ませて機械学習を繰り返して動画が作成されていたとすれば、本物との区別など難しいレベルの動画になっていた可能性もあります。
精巧な偽動画を作成されてしまった人の社会的評価が低下することは明らかだといえそうです。
しかも、今は、いったん、注目を集める偽動画が投稿されると、SNSによりあっという間に拡散するおそれがあり、被害は甚大です。
しばしば、有名人のプライベート写真などが流出したと報じられることもあります。
そんな中、拡散された動画を見た人は、まさかとは思いながらも「本物のプライベート画像が流出したのではないか」と受け止める人もいるでしょう。

ディープフェイクは、このようなアダルト動画の作成のみならず、冒頭に挙げた海外の事例のように、犯罪の道具として使われることもあり、AIの技術が進めば進むほどその被害は深刻になるものと思われます。
「被害に遭うのは、ふだん、テレビに出ているような有名人や政治家くらいで、自分は大丈夫」と思うかたもいるかもしれません。
でも、SNSでご自身の画像を公開したり、YouTubeで動画を公開したりしているかたは今多くいますよね。
そのようなものが材料として使われ被害に遭ってしまうおそれは否定できません。
もし、被害に遭ってしまったら、すぐに、警察、弁護士にご相談ください。

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